心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

文字の大きさ
上 下
29 / 63
2章 知名度広がる

29話 魅了された者たち

しおりを挟む
 3年生は自由登校となり、光琉は仕事が忙しく、度々学校を休むようになった。

 と言っても毎朝迎えに来て学校まで送ってくれるし、帰りは光琉が来れない日も、香坂家の運転手さんが迎えに来てくれる。

「日向、絶対に1人にならないって約束して」

 学校に着き、車を降りてから光琉に抱きしめられフェロモンを付けてもらう。俺の家の前と、毎朝2回付けてくれるのが嬉しい。と実はこっそり思っている。

「分かってる」
「それ、毎日やってて飽きないのか?」

 毎朝俺を玄関で待っていてくれる宇都宮からしたら、鬱陶しくて仕方ないかもしれないけど。

「光琉も気を付けてな」
「うん。行ってくるね」
「うん…」

 離れ離れになるのが寂しい。

 光琉とは付き合う前からずっと一緒にいて…そりゃあ休みの日とか会わない日もあったけど、学校で一緒にいない日なんてなかったら。

「ごめんね? 明日は学校休まずに済むと思うから」
「うん…」

 ダメだって分かっているのに、光琉の服を掴む手を離せない。 

「あぁ~! 日向が可愛すぎる!!」

 もう一度抱きしめてほしくて光琉に念を送ると、気持ちが通じて抱きしめてくれた。

「日向、そろそろチャイムなるぞ」
「先が思いやられるな」
「大学では学部が違って離れることも増えるのになぁ」

 と、いつの間にか近くにいた一樹と宇都宮が話しているけど、聞こえないふり。

「はいはい。もうピヨちゃん行くよ~」
「はぁい…」

 俺の頬に手を当て額にキスをしてから、行ってくるねと光琉が車に乗り込んでしまった。

「気を付けてな」

 道中もだけど、大人の女性とかオメガとかにも…。

 あーあ、行っちゃった。

「オメガもフェロモンが付けられたらいいのに」

 つい口走ってしまった言葉に、宇都宮が答えてくれる。

「付けられるぞ?」
「え!? そうなのか?」

 って…そりゃそうか。オメガのフェロモンにも匂いがあるんだから。

「でも薬飲んでたら分かんないじゃん」
「まぁな」
「期待させんなよな」

 しかも番になったら番相手にしか匂いも……それ以前の問題があったわ。

「あのさ。オメガのフェロモンってアルファみたいに威嚇? できるのか?」

 一樹、俺も今それに気が付いたよ。

「匂いがつくだけだな」
「だよな。威嚇ができたらいいのに」

 光琉が惑わされることなんてないって分かってる。でも、心配なんだ。

「ピヨちゃんさ、運命の番なのに心配しすぎ」
「………あっ……」

 世のオメガが心配する、番のアルファの運命の番。俺、その心配をする必要なかったんだった。

「あはは~」
「本当にさ、お前ら恵まれてる自覚を持てよな」
「ごめんごめん」
「光琉も光琉で毎朝俺に威嚇してくるし。なら任せるなって話しだよ」

 宇都宮に威嚇してたんだ。それは全く気付かなかったわ。

「それより日向。高校卒業したら同棲するんだよな?」
「その予定。でも俺、まだ光琉のご両親に挨拶してないんだよな」

 番うってことは先に結婚があるってこと。その逆も然り。それに俺達は結婚の約束もしているわけで…

「番う前だしそうなるだろ」
「? でも俺の親には挨拶してくれたぞ?」

 そういうのって先に挨拶するもんじゃないのか?

「いや、当たり前だから。もし俺が光琉でも同じようにする」

 なぜ?

「分かった! いくら家族でも番う前のオメガを自分以外のアルファに会わせたくないんだ!」

 1人で会うんじゃなく光琉もいるのに? アルファって心配性だよな。

「なんでピヨちゃんより一樹の方が理解が早いんだよ」
「日向がこれだからな。周りがしっかりしちゃうんだって」
「なるほど。それは言えてるな」

 軽くディスられてる気もするが。

「でだ。話し戻すけど、家決まったのか?」
「あ、うん。大学の近くにした」

 イコール高校の近くってことだけど、大学の正門に近い場所に決めたんだ。

「賃貸?」
「えっと…」
「そんな訳ないだろ。な、ピヨちゃん?」
「光琉が……買っちゃった」
「は!?」

 うん。そりゃ一樹も驚くよな。俺も驚いたし。

 俺、煩すぎなければどこでもって希望を出しちゃったから…ここなら煩くないでしょ? ってマンションの最上階を買ったらしい。

「遊びに行きたい!」
「いいけど」
「あー、光琉の許可をとってからにしろよ。多分一樹は大丈夫だと思うけど。嫌な顔はされるだろうな」
「おっけ」

 なんで?

「………ピヨちゃん。アルファのこともう少し勉強しような」

 そういえば家に一樹がよく来るって前に話したら、光琉、嫌そうな顔してたかも。なんとなくそれからは家に呼ばないようにしてたんだった。

「アルファって大変だな」

 まぁ…俺も家族以外は一樹と蓮、宇都宮と稜ちゃん以外は呼びたくないけどな。



しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

処理中です...