心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

文字の大きさ
上 下
29 / 63
2章 知名度広がる

29話 魅了された者たち

しおりを挟む
オレは、リューブさんに言われて映像を見ているんだが、驚きの連続で何も言えずに見入ってしまった。


「す、すげぇなこいつら」
「本当ね、ワタシたち、そんな人たちを前にしてたのね」
「ぼぼぼ、ボク、殺されなくてよかった」


一緒に映像を見ていた2つのPT【氷の盾】と【雷の弓】が感想を言っていたが、オレはそれ以上にやらかしていて、死ななくて良かったと力が抜けたよ。
仲間のみんなも同じ様で、俺と一緒に力が抜けていた。


「リーフ、今後はもっと言葉を選べよ」
「何よケンシュ、あたいはこれが普通なのよ、注意ならイルファにしなさいよね」
「わ、ワタクシですの」
「だってそうじゃない、飛空艇で散々言ったでしょう」


あの時、イルファだけでなくオレたち全員がリューブさんたちを舐めていて、その時実力の差を見せつけられた。
それだけで済んだのは幸運としか思えず、今回の事もあって何回死んでいるんだとゾッとした。


「兎に角さ、今後気を付けよう」
「テムンの言う通りだ、もう失敗する訳にはいかない、エーンシュも分かったな」
「うん、もうしません」


口数の少ないエルフであるエーンシュは、リューブさんの傍にいた双子のエルフを嫌っていて、それもあって殺気を飛ばしていた。
その注意から始まり今に至るが、今後は絶対に勝手なことはしないと心に刻んだんだ。


「それにしてもさ、あの子たちってここまで動けるのね、驚きだわ」
「そうですわね、あの服だから想像できませんでしたけど、凄いですわ」


オレたちに指導してくれた子供たちの戦いは、鋭く動いて敵を翻弄していて、あの速度でどうして急に体の方向を変えれるのよっと、シーフのリーフが驚いていた。
移動もそうだが、彼女たちの動きには違和感があって、それが何なのかを探っていたら、映像の1つが終わってしまった。


「はぁ~凄かった」
「あの動き、どうやれば出来るのじゃろうな」
「やっぱり気を使うんじゃない?」


氷の盾のメンバーがそんな話で盛り上がっていたが、オレにはそうは見えなかったんだ。
そして、何とか分かる映像はないかと探したら、基本動作を説明するモノがあり、それを見て分かったよ。


「そうか、小走りで移動していたのか」
「それだけじゃないわよケンシュ」
「そうだなリーフ、あの子たちは攻撃の動作に入る時、服の袖をなびかせている、あれで錯覚するんだ」
「錯覚ってだけじゃないわ、あの服相当丈夫だから攻撃されても平気だし、その分攻撃の幅が広がるのよ」


敵にワザと攻撃させ、その隙を突く動きをしていて、それが違和感の原因だった。
攻撃を誘う動きこそが違和感の理由で、あれをやられたら知性のないモンスターはひとたまりもないと感想が漏れたよ。


「だが、それが分かれば映像が更に面白いな」
「そうね、あの子たちの基本がそれなのよね」
「そうだ、服だけでなく髪をなびかせるのも、変わった髪飾りが揺れるのもそれだ」
「綺麗だけど、それ以上に危険って事ね」


綺麗なバラには棘があって危険と良く言うが、取り扱いには注意しなくてはいけない良い例だった。
訓練の映像であるのが良く分かり、オレたちはその映像から目が離せず、基本が出来てなかったのを痛感した。


「なぁみんな、これからトレーニングしようと思うんだが」
「奇遇ね、あたいもそう思っていたわ」
「ワタクシもですわ」
「ぼ、僕も」


無言でエーンシュも頷いてくれて、オレたちは訓練場でそのまま基礎訓練を行った。
気功術を覚えているからいつもよりも動けるが、映像と比べると鈍いのが良く分かって未熟な自分にがっかりだ。


「これは、依頼を失敗する訳だな」


自分たちの現状を理解し、それを教えてくれたリューブさんたちに感謝したよ。
あの動きに追いつきたい、そう思って頑張る事にしたオレは、メシの時間になってリーフに声を掛けられるまで集中していて、気づけば汗だくだったよ。


「ケンシュ平気?」
「ああ、まだまだ動ける、これも気功術のおかげかな」
「それなら良いけど、手が震えてるわよ」
「そうか、限界がちか、い」


緊張が切れたのか、オレはその場で座り込んでしまい、しばらく立てない程の疲労感が押し寄せて来た。
息が切れ、リーフから水を貰って一気に飲んだんだが、それでも足りない程に喉が渇いていた。


「どうして今まで気づかなかったんだ」
「もしかして、気功術のせいじゃない?」
「そうかもしれない、これはもっと知らなくてはいけないな」
「映像を見た方が良いですわケンシュ、ワタクシの魔法も威力が上がっていて調整したいのですわ」


テムンもエーンシュも調整したいほどに攻撃の威力が変わっているらしく、映像をもう一度見る事になった。
しかし、訓練場の映像板は2つのPTに使われていて、まだ見ていたのかと驚いたよ。


「あの人たち、ずっと見てたわよ」
「そうだったのか、まぁ気持ちは分かるけどな」
「そうね、あの子たちの戦いって目を奪われるのよね」


まるで踊っている様に見え、戦いが煌びやかになる。
戦技はほとんど使わないのに凄いと思うが、使う様になればさらに凄い映像になるだろう。


「ちょっと見てみたいが、オレたちにも生活があるからな」
「そうね、見てばかりじゃダメよね」
「そうだなリーフ」


そう言いながらオレたちは食事屋に移動し、店に置かれてた映像板でリューブさんの投稿を見た。
料理がテーブルに置かれても映像に夢中で、オレたちはすっかりリューブさんのファンになってしまったよ。


「勉強になるなんてものじゃない、どうして今まで気づかなかったんだ、これなんて剣術の基本を独自に改良して、すっごく分かりやすくしてる」
「こっちのも凄いよ、僕が最近悩んでいた握り手の工夫の仕方が出てる」
「そうなのか?彼女たちは鉄扇とか言う変わった武器だろう」
「そうなんだけど、斧にも応用できるんだ」


それに気づかせてくれたのは、映像にちょっと出ていたリューブさんの一言で、手首の使い方を変えると言うモノだった。
斧を握る時は固定していたらしいが、柔らかい動きが出来る様になると喜んでいた。


「ワタクシも驚きですわ」
「イルファもか」
「魔法を使う時、ワタクシは杖に魔力を流していましたが、これを見る限り杖に流さなくても良いのですわよ」
「そうなのか?魔法って杖が無いと使えないんだよな」


それこそが間違った思い込みで、杖は増幅器の様なものと説明された。
鉄扇を使っているのを見てそう思ったんだが、エルフ二人が複数の魔法を使っている映像が決め手だったんだ。


「初級なら杖を通してワタクシでも出来ましたけど、中級となると出来ませんでしたのよ」
「それなのに、この映像では中級を複数使っている訳だな」
「そうなのですわケンシュ、だからワタクシは分かったのですわよ」


鉄扇から大きな炎がいくつも飛ぶだけなので、剣士のオレには分からなかったが、それは初級魔法から増幅させて中級にしているとイルファが教えてくれた。
あらかじめ鉄扇に魔力を纏わせ、魔法をそこに通すと増幅されると解説してくれて、魔力の節約になるから自分も鉄扇が欲しいとお願いまでされてしまった。


「今度リューブさんにお願いしてみるか」
「それが良いですわ、普通の杖では出来ませんわよ」
「そうなのか、オレには良く分からない」
「あの紙の部分1枚1枚で魔法が使えますのよ、それも事前に魔力を溜めているから、街で準備出来ますの」


戦闘中は初級並みの魔力しか消費しないから、あれは絶対に欲しいと言われてしまった。
そして、リーフも着物が欲しいと言って来て、リューブさんに会うのは決定事項になったんだが、次の日ギルドで待っていたのにリューブさんたちは来なくて、二人はとてもガッカリしていた。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

望んでいないのに転生してしまいました。

ナギサ コウガ
ファンタジー
長年病院に入院していた僕が気づいたら転生していました。 折角寝たきりから健康な体を貰ったんだから新しい人生を楽しみたい。 ・・と、思っていたんだけど。 そう上手くはいかないもんだね。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

父が再婚しました

Ruhuna
ファンタジー
母が亡くなって1ヶ月後に 父が再婚しました

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた

りゅう
ファンタジー
 異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。  いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。  その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。

欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します

ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!! カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

処理中です...