心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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2章 知名度広がる

26話 初めての指導

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「それでは、これから気功術の訓練に入ります」


私マリューナは、飛空艇の広場で前に出て説明を始めましたが、緊張していてうまく出来ているのかが心配でした。
前にギルドでリューブさんが行っていた事をそのまましているから、何も問題はないと思ったのだけど、そうもいかない事態が起きたんです。


「5人とも集中してるのに、どうしてダメなのかしら?」


始めて1時間経つので、そろそろ出来る人が出て来るはずなのに、一向に気が動く気配がありません。
何が違うのかをリューブさんに聞いたら、周囲に気が満ちていないと指摘されたわ。


「それって、どうやったら良いんですか?」
「それはマリューナたちには難易度が高い、だから焦らず日数を掛ける方が良いぞ」
「そういう事ですか、分かりました」


あの時の会議室は、確かに気が満ちていたことを思いだしたけど、あれはリューブさんだから出来た事で、それなら集中力が切れない様注意したわ。
目を閉じて集中している5人に声を掛け、1時間に1回休憩を挟むようにしたら、昼食の後に出来る人が出てきたわ。


「4時間、なかなか優秀じゃないか」
「そうなんですかリューブさん」
「気を満たしてない空間ではそうなんだが、俺の言ったのは生徒ではなくマリューナの方だ」
「わ、私ですか」


教え方が上手いと褒めてくれて、みんなの協力があったから私も色々出来たと伝えました。
お茶やお菓子を配ってくれたから、休憩の後に集中できたし、メメルちゃんたちも頑張ったから、全員を褒めて貰ったのよ。


「それじゃあ、今日はこれくらいになりますが、次はもっと大変ですからね」
「それなんだが、目を閉じていただけだったから身体を動かしたい、何か出来る事は無いか」
「そう言われましても、リューブさんどうしましょう」


次の指導も体を動かすモノではないし、私には分からないからお願いしたら、身体強化の訓練をする事になったわ。
でも、身体強化は訓練で得られるスキルではないから、光の剣のメンバーで覚えていたリーダーが指摘してきたわ。


「それに、俺は覚えてるんだぜ」
「それなら問題ない、覚えているのなら次の段階である【超身体強化】を覚えられるんだ」
「な、何だよそれ、聞いたことないぞ」


私も知らなかった事で、身体強化もレアなスキルだから驚きでした。
でも、もっと驚いたのは訓練方法で、歩くだけだったんです。


「なによそれ、そんなの誰でも出来るじゃない」
「君は思ったことをそのまま言うが、誰でも出来ないから覚えられないんだよ」
「どういう事?」
「実はな、気功術を使える者だけしか出来ない方法なんだ」


だから今回も撮影はしてなくて、そういう事も理由だったのが分かりました。
そして、私たちも今度は生徒になり、みんなで部屋の壁沿いを歩く事になったんです。


「それで、歩いてるけど何も起きないわよ」
「どうなっていますの?」
「リューブさんどうなんですか?」
「ああ、最初は感じないんだ、これから周回が増えるに従って負荷がかかるぞ」
「「「「「え!」」」」」


歩きながらみんなで疑問の声を揃え、リューブさんの説明を聞きました。
10周毎に身体が少し重くなるそうで、それまでは和やかにお話をして歩きました。


「へぇ~君はライジングランサーから移動したのか」
「はい、リューブさんたちに声を掛けて貰ったんです」
「そうなんだ・・・それで、あの人が好きなのかしら?」
「そ、それは・・・はい」


新人だった私を必要と言ってくれた人だし、優しくて色々気を使ってくれるのも好きでした。
女性3名がニヤニヤしてきますが、それだけの男性であるのは確実で、メメルちゃんたちも頷いていたわ。


「良いわねぇ」
「わたくしたちも、そんな男性に出会いたいですわ」
「そうねぇ」


光の剣の3名がうっとりとしていて、リーダーと格闘士の二人はダメなのかと思って視線を向けたわ。
でも、その理由を聞く前に10周が終わり、いきなり身体がズシリと重くなったんです。


「な、何だこれは」
「ちょっと重くなったわね」
「どうなってるのよこれ」


みんなが説明を求めてきたので、視線はリューブさんに集まり、重力を操作できる紙を作ったと知らされたわ。
そんな事も出来るのかっと、みんなで驚いたんだけど、光の剣のメンバーは知らないから分かってなかったわ。


「まだ1.1倍だからな、今日は2倍まで頑張ってもらうぞ」
「それで覚えられるのか?」
「そうだ、一気に2倍にしても覚える事は出来ないが、これで身体強化を覚える事が出来る」


それは楽しみっと、みんなで更に10周歩き、またまたズシリと重くなりました。
さっきまで楽と言っていた光の剣の男性たちも、段々口数が少なくなり、70週を超える頃には息を切らせてきたわ。


「距離はそんなでもないのに、どうしてこんなにきついんだ」
「俺の体重は60キロだから、今102キロくらいだぞ、荷物を持って旅をしている俺たちがどうしてこんなに辛いんだ」
「その計算は衣服が入ってないし、荷物を持って歩くのと違う所があるんだ」


リューブさんが言うには、身体の中で動いているゾウキと言う物も重くなっているから、身体の動きがとても悪くなっていて辛いそうです。
息をするのも辛いのはそのせいで、そんな中で運動をするから身体強化を覚えるのだと納得でした。


「でも、超身体強化を覚えるほどじゃなくないかしら?」
「良い所に気づいたなブラヌ、実は覚えているリーダーだけは負荷が倍なんだ」
「「「「「え!」」」」」
「それにな、リーダーは身体強化を使ってるんだぞ」


自分だけ楽をしていたのかと視線を浴びてしまった光の剣のリーダーだったけど、その分負荷が倍だったのでみんなはまぁ良いかと許していて、もし身体強化を使ってなかったらどうなっていたのかと私は気になりました。
リューブさんに内緒で聞いたら、真身体強化と言うモノを覚えるらしく、それは超の3倍くらい能力が高いそうです。


「ど、どうして教えないんですか?」
「人は近道をしてしまうモノでな、教えないのは楽な方に進んだ罰だ」
「なるほど、じゃあ私たちが楽をしたら、叱られたんですかね?」
「叱っただろうが、みんなはそんなことしない」


リューブさんに言われてないのだから、私たちが楽をする事は無いけど、そこまで信用して貰えてとても嬉しかったです。
100周歩き終わり、私たちは強くなる事が出来て訓練は終わりましたが、次の日からの訓練は3日間も倒れ続ける事態になってしまったのよ。


「リューブさん、これでは覚える事は出来そうもありません」
「それで良いじゃないかマリューナ、やり方は知ってるんだから、後は別れてから個人で進めれば良い」
「ですけど、教えた側として責任がありますよ」
「マリューナはまじめだな」


そこが良いんだとか言われて頭を撫でて貰ったけど、子供扱いされてちょっと私は不機嫌になったわ。
リューブさんは、そんな私を見て笑っていたけど、それで終わらないのがリューブさんで、対策を考えてくれたんです。


「やっぱり、リューブさんは優しいですね」
「弟子に甘いだけだよ、他の者ならそうはならない」
「そうかもしれませんけど、それでも嬉しいです」


リューブさんは、気の流れを良くするマッサージを光の剣のメンバーに行い始め、次に目覚めた時に訓練を再開したらすぐに出来る様になりました。
最初からそれをしない理由をリューブさんは口にしませんでしたが、それなりの理由があると理解して、私たちの指導が終わり光の剣のメンバーは応用前の状態まで気功術を習得しました。
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