心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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1章 知名度アゲアゲ

19話 専属職員はワタシ

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ワタシたちは、休暇から戻られた副ギルドマスターである【ケーオン】様に会議室に集められ、どうしたのかとざわついていました。


「みんな、よく聞きなさい」


綺麗に響くケーオン様の声を聞き、ざわつきは収まったのだけど、どうして集められたのかを聞かされたらから、みんなのざわつきは復活してしまったわ。
あの、使えないギルドマスター【カゲーシ】が姿を消したそうで、誰もがいなくなったそいつの心配ではなく、やっといなくなったという喜びのざわつきだったのよ。


「それはそうよね、実質ケーオン様が管理していたモノね」
「今更よねブレイス」
「そうねメリッソ、あいつの名前すら知らない人がほとんどで、お仕事もしてなかったものね」
「そうよ、それなのに貴族だからって給金は人一倍で、憎たらしくて仕方なかったわ」


書類のサインもケーオン様がしていたし、あの男は貴族の集まりに行くだけだったわ。
それが、たまたま朝帰りして来た時、リューブさんたちの騒ぎを聞いて顔を出し、必要もない騒ぎを起こしてしまったから、そのまま逃げたとみんなが推測したのよ。


「この後何があるか分からないが、アタシたちの仕事は変わらない、みんな何かあればアタシに言ってくれ」


全員に周知する為に集めたようで、その後は解散になったんだけど、どうしてケーオン様は副ギルドマスターのままなのかが疑問だったわ。
ケーオン様は、あいつと一緒で子爵の爵位を持ってるし、職員からも冒険者にも慕われていたんです。


「もしかして、何処かから圧力が来てるのかしら?」
「ブレイスそれは分からないけど、この事リューブさんたちに知らせた方が良いんじゃないの?」
「それはどうかしら、あの騒ぎを考えると彼こそがその真相を知ってるかもしれないわよ」
「そう?あたしは上位の冒険者の誰かが手を下したと思ってるわよ」


その可能性は十分にあり、だから逃げたのかもしれないと二人で笑ってしまったわ。
あの時、上位の冒険者を全て敵に回したのは言うまでもないし、それを支える商会まで広がればこの国で生きていけず、他国に逃げて命を守るしか方法はなかったのよ。


「まぁ良いじゃないブレイス、これでいらない奴が消えたんだから、今度こそケーオン様がギルドマスターになるわ」
「そうだと良いけど、あいつの代わりが来るかもしれないし、ワタシは心配」
「新しい奴が来ても、ケーオン様が上に決まってるわ」


それはそうだと思ったのだけど、そうならなかったからあいつが上にいた訳であり、ワタシたち職員の意見なんて聞いてもらえません。
話していても何も答えは出ないけど、ギルドではそんなお話で持ち切りで、これ以上は無いとお仕事を始めたワタシたちは、その日更にそれを上回るお話が飛び込んできてビックリです。


「きょ、拠点ですか!」
「ああ、小さくても良いから、いくつか紹介してくれブレイス」


込み合ってない朝10時頃、ギルドにリューブさんたちが来てそんな提案をされたから、ワタシは横で聞いていた同僚の顔を見て「どうしよう」っと焦ってしまったわ。
ライジングランサーにいた時、あれほど拠点はいらないと言っていた人が提案していて、それはあの時とは違って本腰を入れる事を意味していたのよ。


「本気なんですねリューブさん」
「ああ、色々あったがそれが良いと決めたんだ」
「そうですか、それでしたら探しますが、専属はワタシで良いですよね?」


当然と思って聞いたのだけど、それに疑問の声を上げたのは、隣で聞いていたメリッソや他の職員だったわ。
いつもワタシが担当していたのだから、そのまま担当するに決まっているのに、どうしてか名乗りを上げる人たちが詰め寄ってきたのよ。


「ちょっと、どういう事よ」
「みんなリューブ師匠とお近づきになりたいんですね」
「ちょっとみんな、待ちなさい」


皆を止め、ワタシが担当するのは当然と言う事を知らしめる為、彼らの事を知ってるアドバンテージを有効に使い説得を始めました。
文句を返せる人はメリッソだけになり、仕方なくメリッソだけはワタシの交代要員として参加を受理したのよ。


「ゴリ押ししてくるわねメリッソ」
「だって、こんな高物件他にないじゃない」
「高物件って、そんな気持ちだと怒られるわよ」
「あらブレイス、そんな気持ちだと直ぐに行き遅れるわよ」


リューブさんをそんな風に見た事は無いし、16歳のワタシが行き遅れるなんてまだまだ先の話だったわ。
メリッソだって同い年で、人気もあるからそんな事は無いと直ぐに返してやったのよ。


「そう言って残ってる人がいるでしょ」
「それって、もしかしてケーオン様の事を言ってるの?」
「そうよ、あの人現役の時かなりの人気だったのに、今では大変みたいよ」


かなり失礼な物言いで、ワタシは即座にメリッソの頭を叩いてやったんだけど、それを見てリューブさんが笑うのではなく、何やら悩んでいる感じを見せたから、ワタシはとても気になったわ。
どうしたのか聞こうとしたら、リューブさんはワタシの後ろに視線を向け、その顔は彼らしからぬ焦りを示し、拠点の件が終わってないのに離れていったんです。


「見つかりました~って、もう聞こえないわね」
「リューブさん、どうしたんだろうね」
「メリッソ、今リューブさん顔青かったわよね?」
「青かったね・・・後ろに誰か」


二人で後ろを確認すると、そこには他の職員と話すケーオン様がいたのよ。
ケーオン様と知り合いなのかとも思ったけど、そんなお話は聞いたことないし、それは無いと考え込んでるメリッソに同意を求めてしまったわ。



「な、なによメリッソ、なにか知ってるの?」
「ケーオン様って、お休みの時は遠出してるって話なんだけど、それは誰かを探しに行ってるって噂だったのよ」
「っと言う事は、ケーオン様の探し人がリューブさんって事?」
「そうなるけど、探しに行ってるのがねぇ」


長期休暇の時は遠くの国で、普通の休みは近くの街だったから、同じ街にいるのに変と言うのがメリッソの意見だったわ。
確かにそうだけど、必死で探しているのは確かだし、専属の件も伝えなくてはいけないので報告する事にしたのよ。


「あのケーオン様、ちょっとお話がありまして」
「なんだブレイス、今ちょっとダンジョンの件で忙しいのだが、そっちも急ぎか?」
「そうですね、今後を考えますと急いだほうが良いと思います」
「そうか、ではアタシの執務室に行くぞ」


サインをしないといけないのが分かったのか、ケーオン様はワタシとメリッソを連れて執務室に移動したわ。
そして、3つ星冒険者が率いる金の卵PTの専属になった事を報告したら、何事もなく了承を貰ったのよ。


「じゃあ、これから拠点を探すんだな」
「はい、その為に二人で商業ギルドに行きます」
「分かった許可しよう・・・ん?まだ何かあるのか」


要件がそれだけと思ったのか、書類をサラサラっと作って渡してくれたケーオン様は不思議そうにしていて、どちらかと言えばこっちが本命とメリッソと顔を見合ってしまったわ。
もしかしたらっと言う前置きをして、探している人がリューブさんではないかと聞いてみたんです。


「リューブ・・・確かにアタシの探している奴の名と似ているが、歳はいくつ位だ?」
「37歳です、ここら辺では珍しい黒い瞳と髪で、身長はケーオン様よりちょっと高いくらいですね」
「ふむ、瞳と髪の色は違うが背丈は同じか、ちょっと気になるな」
「でも、目の色が違うなら勘違いかも、そうよねブレイス」
「そうねメリッソ・・・ケーオン様の顔を見て顔を青くしていた様にも見えたのですけど、勘違いね」
「何っ?それは本当か」


それを聞き、ケーオン様は可能性の問題から何やら確信を得たようで、拠点を見せる時に同行する事を決めたわ。
でも、顔を見て逃げるくらいだから、もしかしたら逃げるかもしれないと不安になったのよ。


「そこは平気だ、もし奴だったなら、アタシを感知できなかった事になるから、きっと今日しかないんだ」
「そうなのですか?」
「ああ、アタシの知ってるあいつの探知は、50キロ先の小鳥すら見つける事が出来るんだ」
「「はいっ?」」


だから遠くを探していて、こんなに近くにいたのは盲点だったと、ケーオン様は笑っていたわ。
きっと、昨日の訓練で疲れていて探知が出来なかったのだろうとは思ったけど、ワタシは無理をさせていた事をここで知ったわ。


「でもケーオン様、そんなに探しているなら、リューブって名前で分からなかったんですか?」
「それがなメリッソ、アタシの探している奴の名がリュウと言うモノだからだ」
「そういう事ですか、1文字増えてるって事ですね」
「おまけに、瞳と髪が違うからな、一目では分からなかったんだろう」


今回も、ここまで言われなければ会う気にはならなかったらしく、青くした顔色ではっきりしたそうです。
青くするほどリューブさんと何かあったのかを聞きたかったけど、ケーオン様の笑みがとても怖かったのでやめたのよ。


「それでは、拠点の選定をしてきますね」
「ああ、アタシは準備をしてから合流する」


立ち上がったケーオン様は、上着を脱ぎ部屋に飾ってあった昔の装備を着け始め、これってまずいのでは?っと思ったわ。
元10つ星で、勇者PTにいた事もあるケーオン様が本気になってるようで、ワタシはとっても心配だったけど、お仕事だし、流石に血の雨は降らないと拠点の資料を持ってリューブさんの宿に向かう事にしました。
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