心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

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1章 知名度アゲアゲ

7話 映像を見て

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ワタシは、リューブさんに言われたように、新しく投稿された映像を見て固まっていたわ。


「へぇ~凄いわね」
「ちょっとメリッソ、そんな言葉で終わらせないでよ」
「なによブレイス、凄いんだから良いじゃない」
「だって、ダンジョンの採取が何回も出来るとか、秘匿物の情報よ」


それはそうだと、同僚のメリッソは笑うだけで、ワタシは頭を抱えたわ。
ギルドの代わりという彼の言い分は正しかったけど、これを知ってるのは彼だけとは限らなかったんです。


「秘匿しているPTがいたら、リューブさんに文句を言いに行くわよ」
「そうかしら?投稿の人気を上げるには持って来いじゃない」
「そうだけど、なんでもしていい訳じゃないわ」
「でもさ、あれってダンジョン以外で採取する人が良くやってる事に似てるわよ」


薬草などの草は、すべて取るとその後はその場で取れなくなります。
だから残す事は採取をする人の暗黙のルールで、それに似ているとメリッソは納得していたわ。


「つまり、それをダンジョンで行っただけと言いたいのね」
「そういう事よブレイス、だから別に凄い訳じゃないわ」
「よく考えて動けと言う教訓ってわけなのね」


それなら分かるけど、騒動になるのは目に見えていて、これから大変と思いつつ映像の先を見ました。
これ以上何もありませんようにとは思ったのだけど、それは最初から映像に映っていたのよ。


「そう言えばさ、あの子たちの服可愛いわね」
「え・・・そう言えば、ギルドに来た時の服じゃないし、見た事無いわね」
「そうよね、あれって何処で買えるのかしら」


着てみたいとメリッソが映像に夢中になり、他の冒険者の女性も気になっていたわ。
でも、あの服は歩きにくそうだから、ダンジョンの探索には不向きと注意したのよ。


「そうかしら?あの子たちはそうでもなさそうよ」
「それにあの靴も変よ、音もかなり出てるわ」
「カランコロンって、綺麗な音じゃない?」
「ダンジョンで音を出すのは問題よ、モンスターに感知されるわ」


何もかも冒険者に合ってないと断言したけど、それはモンスターとの戦いが流れて打ち消されたわ。
なんと、音を出していた子は、アントソルジャーをわざと集めていて、他の子たちが短い棒を構え始めたのよ。


「なるほど、ワザと音をたてて向かって来る方向を断定するのね」
「確かに、あれなら音をたてた方が有利だし、迎え撃てるわね」
「凄いじゃない、ダンジョンで有利になれるなんてそうそうないわよ」


メリッソに頷き、ワタシは状況に応じて動く事が大切なのが良く分かったわ。
そして、アントソルジャーのかぎ爪を受けても、あの変わった服は破れる事無くはじき返していて、防御力も凄いと冒険者たちから声が上がったわ。


「これは、あの服流行るわね」
「服だけじゃないわよメリッソ、あの短い棒、広げて使う事も出来るみたい」
「本当だわ、変わった武器ね」


広げた棒は、硬いとされるアントソルジャーの外皮を切り裂き、簡単に倒していました。
そして、前衛の子たちだけでなく、後方に控えていたエルフの子たちも同じ棒を持っていて、なんと魔法を棒から発動させたんです。


「杖の代わりにもなるのね」
「それに見てよブレイス、あの子広げた棒を投げてアントソルジャーを倒したわ」
「ブーメランの様に戻っていったわね」


近中遠全てで使えるとか、どれだけ優れているんだと、2人して意見を揃えてしまいました。
冒険者からも、かっこいいと言う言葉が出て来て、絶対に流行ると思いました。


「本当に何処で売ってるのかしら?」
「宣伝として映像を流してるし、最後に教えてくれるわよ」
「そうよねブレイス、楽しみだわ」


二人で天井から下がっている大きな映像板を見ていたら、同じように見ていた冒険者たちから応援する声が上がり、まるで最下層の探索を見ている熱量と思ったわ。
子供たちそれぞれのアップ映像や、モンスターの攻撃を防御する場面もしっかりと見れて、迫力が凄いとワタシも手に力が入ったわ。


「相手はアントソルジャーだし、戦ってる子は1つ星でもない、試験の素材を集めてる子たちなのにね」
「本当よね、でも分かるわ」


そこだっ!とか、ナイス反撃と言った言葉がギルドで飛び交い、みんなの気持ちが1つになっているのを実感しましたよ。
これが見せたかったのかとワタシは納得し、ワタシたちに足りないモノが見えて来ました。


「職業関係なく、気持ちを1つにすると言うのは大切よね」


ワタシは、今までギルドの説明を伝えるだけで済ませてきました。
それが普通だし、相手の冒険者が聞いてなくても、それは自己責任と思って放置していたんです。


「でも、誰かが傷つけば悲しいわよね」


説明は面倒なモノだけど、大切な事を伝えてくれるのだから、しっかりと覚えてもらわなければいけません。
そして、ワタシはそれを伝えるギルドの職員なのだから、しっかりしなくてはいけないと痛感したわ。


「でも、説明なんて誰も聞いてくれないし、どうしたら良いのかしら?」
「ブレイス、それなら簡単じゃない、映像板の小さいやつを使って見て貰えば良いのよ」
「なるほど、その後こちらで質問して理解しているかをチェックするのね」
「そうよブレイス、アタシたちのお仕事も省略できるし、チェックだけになるなんて最高じゃない」


メリッソは、期待した目を向けて映像を見始めていて、映像には映らないけどあの男性のファンになってしまった様でした。
影で頑張っているあの男性は、ライジングランサーをクビになる様なダメな男性ではなかったんです。


「どうしてクビにしたのかな?」


そんな疑問を持ってしまったワタシは、あのPTのリーダーの顔を思い浮かべ、もしかして嫉妬したのかもしれないと思いました。
自分より優れている者を虐げるのは良くあるし、必然と呆れてしまったわ。


「まぁ分からないでもないわね」


映像から伝わって来るあの子たちの視線は、明らかにそれを撮っているリューブさんに向けられていて、見ているワタシたちが魅了されるほどにキラキラしていたんです。
実力のある男性に惹かれるのは当然で、ワタシもファンになってしまったわ。


「映像が流れてるって事は、明日には試験の素材を持ってくるわよね」


今夜は映像を楽しもうと、メリッソと一緒にあの子たちの戦いを応援していたのだけど、映像が終盤になっても装備の宣伝の言葉が出てきませんでした。
そして、映像は次回の題材を伝えて終わってしまい、ギルド内で「ええぇーー」っと言う声が広がったわ。


「どうしてよ、何でお店を教えてくれないのよ」
「お、落ち着きなさいよメリッソ、きっと事情があるのよ」
「売り込まないなんてどんな理由よ、絶対おかしいわ」
「明日になればあのPTはここに来るし、その時聞きましょうよ」


それが一番早いと思っての提案だったのだけど、それを聞いていたのはメリッソだけではなく、映像を見ていた女性冒険者たちも同じだったのよ。
明日絶対に知りたいと、燃える様な目をしてギルドを出て行ったので、明日ギルドは戦場になると予想したわ。


「血は出ないけど、大変そうね」
「その真っ只中にあなたはいるのよブレイス、ちゃんとお店聞いておいてよね」
「そう言えば、メリッソは明日非番だったのよね」
「そうよ、だからここに来て買いに行きたいのよ」


メリッソの目も燃えていて、聞き出せなかったらワタシは殺されると感じました。
それだけの熱意が伝わってきて、他の人達にもそんな視線を受けていたんです。


「だからね、絶対に教えてよねブレイス」
「分かったわ、絶対に聞いておくわね」
「それとね、お金が足りなかったら貸してね」
「それは嫌よ、借金して買いなさいよ」


お金のやり取りはしない主義で、給金の前借りを提案しました。
その手があったかと、メリッソは副ギルドマスターの所に走って行き、ワタシはやれやれと思いながらギルドを閉めて帰る支度を始めたのよ。


「明日、ワタシ生きて帰れるかしら?」


とても不安になったけど、聞くだけなら出来るでしょうし、何とかなると楽観的に思っていました。
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