心を掴むのは冒険者の心得!だから俺は引退前に指導する。

まったりー

文字の大きさ
上 下
2 / 63
1章 知名度アゲアゲ

2話 叔父さんは不人気

しおりを挟む
酒場のカウンターから顔を上げ、頭が痛いのを頭痛解消の札をその場で作り、おでこに貼って頭痛を治してから立ち上がった俺は、いやいやながらも朝を迎えた事を確認したよ。


「さて、行きたくはないが冒険者ギルドに足を運ぶかな」
「ちょっと~アタシもお願い~」
「そう言えばマリアナも飲み過ぎてたんだったな」


マリアナのおでこにもお札を貼って頭痛を治したが、その時お礼も一緒に伝えたんだ。
マリアナのおかげで俺の気持ちも落ち着いたし、これからの事も思いついて、少しは前向きに進める様になったんだ。


「リューブさん、ダメだったらいつでもここで働いて良いんだからね」
「こんなおじさんにありがとうなマリアナ」
「良いのよ、あなたには色々助けて貰ったし・・・正直、本当の親父より父親をしてもらったわ」


そのお返しと言ってくれるマリアナは、結婚しても良いとか冗談を言って来て、俺は機会があればと軽めに返したんだ。
俺の返事を聞いて、マリアナは笑顔で酒場の入り口を開け、どうしてか俺の背中を押して外に出して来て、何か悪い事を言ってしまったのかと心配になったよ。


「な、何だよマリアナ」
「良いから、早く行きなさいよ鈍感男」
「はいはい、分かったから押すなって」


父親と言った直後に結婚なんて冗談にしか聞こえないし、誰だってそんな反応だろうと思いながら、見送ってくれるマリアナに手を振って別れたんだ。
冒険者ギルドに到着して、俺がライジングランサーから脱退した事と、新たに一人でダンジョンの探索をする事を受付嬢に伝えたら、かなり驚いた顔をされたよ。


「お、お一人でですか?」
「ああ、深い階層には行く気はないからな」
「そうなのですか?」
「ああ、新人の為の探索映像を撮る為に行くんだ」


変わった事を考えていると思われた様で、苦笑いを浮かべて健闘をお祈りしているとか言われてしまった。
絶対上手く行かないと思われているが、新人は命を落とす危険が高く、無料で教えてくれるのなら見るだろうと確信していた。


「それが引退寸前の俺でも出来る事さ」
「そう言うモノですか?」
「まぁダメなら他にも方法はある」


分かりやすく丁寧に作っても人気が上がらなければ意味がなく、その原因は導きやすいと思っていた。
俺の冒険者ランクは7つ星ではなく、3つ星にまで落とされてしまったが、それでも問題は無いから文句は言わなかったよ。


「何も聞かないんですね、理不尽とは思わないんですか?」
「PTから脱退したんだ、年齢からしてもランクが下がるのは覚悟していた」
「そうですか、本当にお覚悟があるのですね、ご健闘をお祈りしていますリューブ様」


今度はしっかりと期待している顔をしてきて、俺は受付嬢に手を振りギルドを出てダンジョンに向かった。
入り口で見張りをしてる兵士に冒険者カードを見せて入ったんだが、ここで普通のダンジョン探索では行わない説明をする事にしたんだ。


「ダンジョン初心者に対しての映像を投稿する事にした、3つ星冒険者のリューブだ、今日は初心者が良くやるミスについて投稿したいと思うぞ」


ダンジョン1階なので他の冒険者たちも沢山いて、俺が何やら始めたから笑って来た。
しかし、俺は至って真剣であり、記録玉を普通に使っている事以外はいつも通りだった。


「冒険者ギルドで説明を聞いていれば最初に探す物で、ミスと言ったが別に探さなくても良いが、確実に損をするぞ」


10階のボスを倒して初めて知る事になる内容で、冒険者として新人から抜け出した証にもなっているが、ダンジョンに入って直ぐにそれが分かっていれば助かると説明した。
ダンジョンの壁の一部を触り、壁に文字が刻まれるのを記録玉でも見える様近づけた。


「俺の名前が刻まれているのが分かるか?これがダンジョンの転移登録で、10階置きにいるボスを倒した後に出現する転移陣を使う為に必要だ」


10階まで行かなければ意味がないし、ギルドもそう説明していた。
しかし、転移の魔法陣は10階置きにしかないわけではなく、隠し部屋が5階置きに存在している事をここで教えたんだ。


「隠し部屋と言っても、10階のボスを倒した事のある冒険者は皆知っているぞ」


下の階に降りる階段がある部屋を調べる必要はあるが、ボスを倒した際知らされる事で、初心者が予め知っていれば5階でそれを使え、帰る為の時間をロスしなくて良いと説明した。
最後に次回の投稿内容【採取の仕方】を宣言し、みんな登録をしようと締めくくり、記録玉の起動を切ったんだ。


「最初だからこんなモノだろうが、戦闘を投稿するのとは違って正面から映るから、なんだか恥ずかしいな」


記録玉に視線を向けなくてはならず、いつもの探索とは全然違うと深呼吸したんだ。
しかし、新しい映像は人気が出るまでが大変で、毎日の投稿は必須だった。


「人気が上がれば、過去ログも見て貰えるんだが、周りの感じからそれも難しいかな」


地下1階の広場でヒソヒソと俺の撮影に文句を言っていて、おじさんの映像なんて見たくないとか言われていた。
見てもらうには何か他の売りが必要と考えさせられ、次の投稿が採取でもあるし、俺以外の誰かが必要と思ったんだ。


「しかし、新人でも冒険者は付いてこないし、説得も依頼金も面倒だな」


明日までに人材が欲しいのだから、手段は1つしかなかったんだ。
ダンジョンから出て、記録した映像を適当に借りた宿屋の魔法板で投稿し、直ぐに奴隷商の集まる南地区に向かったんだ。


「相変わらず、ガラの悪いのが多いな」


裏路地の細い道の為、こちらがスキを見せたら襲ってきそうな視線を向けて来ていて、面倒ではあったから速足で進んだよ。
そして、目的の建物まで来て扉をノックしたら、ムキムキの男が扉を開けてきたよ。


「何用だ」
「奴隷商に用なんて、奴隷を買う以外ないだろう」
「初めての様だが、分かっているのか?」
「ああ、これだろう?」


金貨を1枚男に見せてから、その金貨を男に渡したんだ。
金貨は入場料ではなく、俺の客としての価値を表し、男が一気に態度を変えたよ。


「良く来てくれました、さぁこちらにどうぞ」
「ありがとう、期待しているぞ」
「お任せください、我が主の館ならば、きっとあなた様の欲しい奴隷が見つかります」


銀貨1000枚と同価値で、銅貨なら10万枚もする金貨を出して正解だった。
銀貨10枚ほど出せばそれなりの奴隷が買える対応をしてくれるんだが、今日は少し無理をさせるので金貨を渡したんだ。


「それでは、しばしお待ちください」
「ゆっくりで良いぞ、俺も茶を楽しむからな」


男が淹れてくれた茶をソファーに座って飲んだが、なかなかの味で俺も満足だったよ。
しばらく待っていたら、ムキムキの男が主っぽい男を連れて来て、頭を深々と下げてきたよ。


「ドラドンと申します、今後もお見知りおきくだされ」
「俺はリューブだ、実は急ぎで奴隷が必要になってな」
「それは・・・もしや映像用ですかな?」


驚いた俺は、どうして知っているのかと普通に聞いたんだが、7つ星のライジングランサーの事を知らないのはモグリとか言って来たんだ。
そして、奴隷が欲しいと言う事から、俺が脱退した事を告げて来て、更に今日の投稿内容まで把握していたんだ。


「さすがと言うべきなのか?」
「これくらいの情報収集は当然ですよリューブ様」


ドラドンは、投稿の人気も全然であることを言って来て、確認してなかった俺はやはり見て貰えないのかっと、とてもガッカリしてドラドンに聞いてしまった。
そこでドラドンは、俺の欲しい奴隷の種類を言い当てて来て、話が早くてとても助かったよ。


「とても可愛い少女、いったいいくらだ?」
「そうですな・・・衣服一式と初心者装備も入れますので、銀貨500枚でどうでしょうか?」
「銀貨500枚っ!・・・普通の奴隷の10倍かよ」
「良くご存じですなリューブ様、さすがでございます」


噂は勝手に入ってきて、それだけ長く冒険者をしているだけだし、一人にその値段は高いと直ぐに言い返したよ。
値切りの始まりなんだが、ドラドンは一人ではなく4人に追加してきたよ。


「おいおい、値段をそのままにする為とは言え、4人も条件に合うのがいるのか?」
「もちろうでございますリューブ様、最良の奴隷を先行投資させて欲しいのですよ」
「なるほど、4人一度なら銀貨500はするな、それに俺の事を分かっていると言う事だな」
「その通りでございます」


俺の投稿は、新人冒険者を一人前にする事であり、それは新人を使って証明するのが一番だったんだ。
基本の職業をすべて見せる為に4人は必要で、それはその先もある事を意味していた。


「代金はそのまま銀貨500枚か?もう上げて来ないだろうな」
「勿論ですよリューブ様、ですが追加投資の際は割増しを交渉次第で承諾してくださいね」
「そういう事か、分かったよ」


4人でも足りないだろうと言うのが分かっているドラドンは、本当に抜け目がない奴だった。
奴隷紋を右手に刻み、4人と契約を交わしたが、見るからに嫌そうだが、彼女たちに拒否権はなく、ドラドンは準備を進めたよ。


「これでこの4人はあなた様の物です」
「ああ、今後も頼むよドラドン」
「はい、いつでもいらして下さい」


投稿する映像が人気になる事が優先だから、見栄えの良い少女を4人買えて何よりだが、ムスッとした表情は問題なので、何とかしなくてはいけない。
宿に向かいながら、他にも問題がないか見ていて、対策を考えるのが大変だったよ。
しおりを挟む
感想 16

あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

凡人がおまけ召喚されてしまった件

根鳥 泰造
ファンタジー
 勇者召喚に巻き込まれて、異世界にきてしまった祐介。最初は勇者の様に大切に扱われていたが、ごく普通の才能しかないので、冷遇されるようになり、ついには王宮から追い出される。  仕方なく冒険者登録することにしたが、この世界では希少なヒーラー適正を持っていた。一年掛けて治癒魔法を習得し、治癒剣士となると、引く手あまたに。しかも、彼は『強欲』という大罪スキルを持っていて、倒した敵のスキルを自分のものにできるのだ。  それらのお蔭で、才能は凡人でも、数多のスキルで能力を補い、熟練度は飛びぬけ、高難度クエストも熟せる有名冒険者となる。そして、裏では気配消去や不可視化スキルを活かして、暗殺という裏の仕事も始めた。  異世界に来て八年後、その暗殺依頼で、召喚勇者の暗殺を受けたのだが、それは祐介を捕まえるための罠だった。祐介が暗殺者になっていると知った勇者が、改心させよう企てたもので、その後は勇者一行に加わり、魔王討伐の旅に同行することに。  最初は脅され渋々同行していた祐介も、勇者や仲間の思いをしり、どんどん勇者が好きになり、勇者から告白までされる。  だが、魔王を討伐を成し遂げるも、魔王戦で勇者は祐介を庇い、障害者になる。  祐介は、勇者の嘘で、病院を作り、医師の道を歩みだすのだった。

Sランクパーティを引退したおっさんは故郷でスローライフがしたい。~王都に残した仲間が事あるごとに呼び出してくる~

味のないお茶
ファンタジー
Sランクパーティのリーダーだったベルフォードは、冒険者歴二十年のベテランだった。 しかし、加齢による衰えを感じていた彼は後人に愛弟子のエリックを指名し一年間見守っていた。 彼のリーダー能力に安心したベルフォードは、冒険者家業の引退を決意する。 故郷に帰ってゆっくりと日々を過しながら、剣術道場を開いて結婚相手を探そう。 そう考えていたベルフォードだったが、周りは彼をほっておいてはくれなかった。 これはスローライフがしたい凄腕のおっさんと、彼を慕う人達が織り成す物語。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

序盤でざまぁされる人望ゼロの無能リーダーに転生したので隠れチート主人公を追放せず可愛がったら、なぜか俺の方が英雄扱いされるようになっていた

砂礫レキ
ファンタジー
35歳独身社会人の灰村タクミ。 彼は実家の母から学生時代夢中で書いていた小説をゴミとして燃やしたと電話で告げられる。 そして落ち込んでいる所を通り魔に襲われ死亡した。 死の間際思い出したタクミの夢、それは「自分の書いた物語の主人公になる」ことだった。 その願いが叶ったのか目覚めたタクミは見覚えのあるファンタジー世界の中にいた。 しかし望んでいた主人公「クロノ・ナイトレイ」の姿ではなく、 主人公を追放し序盤で惨めに死ぬ冒険者パーティーの無能リーダー「アルヴァ・グレイブラッド」として。 自尊心が地の底まで落ちているタクミがチート主人公であるクロノに嫉妬する筈もなく、 寧ろ無能と見下されているクロノの実力を周囲に伝え先輩冒険者として支え始める。 結果、アルヴァを粗野で無能なリーダーだと見下していたパーティーメンバーや、 自警団、街の住民たちの視線が変わり始めて……? 更新は昼頃になります。

処理中です...