上 下
1 / 63
1章 知名度アゲアゲ

1話 映像板の評判

しおりを挟む
俺の名はリューブ、37歳独身男性で冒険者もそろそろ引退時期ではあるが、仲間を支える為に頑張っている、普通の冒険者だ。


「この場面、リーダーのケンスダに近い映像の方が良いか?」


世界に流せる情報端末、魔法映像板に投稿する映像を編集してる俺は、冒険から戻って直ぐ夕飯も食わずに机に向かって唸っていた。
映像を普通の記録玉で記録すると、遠目の視点でダンジョンでの戦いが良く見えないが、俺の紙スキルで作った映像札を使えば色々な角度から記録できたんだ。


「紙スキルで作った映像札をもう少し増やすか・・・いや、秘匿してる事もあるし、ここはあえて遠目の映像にして、ケンスダの必殺の一撃が全体から見えるようにするか」


俺の参加しているPTは、10つ星まであるランクの7つ星まで来ていて、レベルがそれほど高くないのに順調にランクを上げ、今では10つ星に匹敵する視聴率を持っていた。
秘匿している内容は俺のスキルが関係していたし、7つ星PT【ライジングランサー】は、俺のスキルが育てたと自信を持っていて、この空に浮かぶ島【ダンジョン都市ベベールド】に来て3年、今が一番大切な時期だとも思っていた。


「後は、最後にみんなでガッツポーズの映像を入れてっと」


他の都市島で出会って8年になるが、編集に使っている編集魔法板も俺の紙スキルで作った特注品で、他ではマネの出来ない代物だから、出来栄えを見て笑顔が漏れてしまった。
茶を飲んで一息し、歳を取ってロートルな俺だが、誰にもマネの出来ない特技【気功術】を使っているから辛くはなく、PT仲間のケンスダたち若いメンバーにも引けを取らないから、まだまだ現役でみんなの最高の映像を投稿すると奮起していたんだ。


「よし、ダンジョンの探索映像の編集はこんなもんだろう、早速世界に投稿だ」


この世界は空に浮かぶ島々で構成されていて、移動は空飛ぶ馬車【飛空馬車】を使い、物資などは大型の飛空馬車や飛空艇を使っていた。
その為、遠く離れた島と島で迅速に情報を得られる方法として映像板と言う映像を映せる魔道具を使っていて、色々な番組を見る事が出来、その人気を得られるのは成功者の証だった。


「さて、今回はどれだけの視聴率が取れるかな」


俺の作った専用の魔法編集紙を映像板に繋げ、送信するボタンを押してまたお茶を飲んだ。
視聴者は、俺が休憩している間にどんどんと増えて行き、PTのスポンサーをしてくれている商人たちから伝言が映像板を通して届いたんだ。


「早速新装備の話か、これはまた皆が鍛錬に力を入れないな」


良い装備を使えるのも、このダンジョン都市のある空島で人気があるからで、それにばかり頼っているみんなにはちょっと困っていた。
そんなだから、紙スキルで装備までは作ってないのに困ったものだと思いつつ、みんなに報告に向かったよ。


「レベル上げでも良いんだが、みんなはもっと下の階に進みたいから、俺の意見は聞かないからなぁ」


ダンジョン探索でピンチにでもなれば良いのだが、映像で残るからリーダーのケンスダがそれを嫌がり、ボロボロになる事は他の女性メンバーも反対だった。
ダンジョンの探索なのだから失敗はすると4人に言っても聞かず、そこだけは俺の悩みの種だったんだが、そんな俺に新たな問題が浮上したよ。


「も、もう一度言ってくれるかケンスダ?」
「あなた、耳まで耄碌したの?」
「そう言ってやるなよミューン、リューブは40越えのジジィなんだからな」
「そうだよぉ~おじじは引退するべきなんだよぉ~」


語尾を伸ばして俺を貶して来たシャルガは、早く荷物を纏めて出て行けとか言って来て、俺はさすがにイラっとしたよ。
俺はまだ37だ!っと訂正したんだが、20代のケンスダたちには関係ないようで、どうでも良いから出て行けと言うだけだった。


「俺が抜けたら映像の投稿が出来ないぞ、それでも良いのか?」
「そんな事は外部に依頼すれば良いんだ、俺たちには沢山のパトロンがいるからな」
「分かってないなケンスダ、あの映像は俺だから作れるんだぞ」
「ちがう、魔法玉に記録してるだけ」


無口の魔法士、ルルシャントが否定して来て、俺がメインで持っている魔法玉が一つであることを指摘して来た。
確かに普通の記録用魔法玉は1つしか持ってないが、サポート用に俺が紙スキルで作って使っている映像札は20枚ほどあったんだ。


「そういう事だ、だからお前の様な年寄りは、戦闘でも邪魔だし映像の華やかさが無いからいらない」
「考え直せケンスダ、じゃないと大変な事になるぞ」
「そんな事にはならない、オレたちは今乗りに乗ってるからな」
「ケンスダの言う通りだしぃ~それにぃ~じじぃは口うるさいのよぉ~」


訓練をしようといつも言っていたことをシャルガに愚痴られ、他のメンバーも睨んで来た。
みんなの為に言っていたし、俺自身は鍛錬を怠らずモンスターに攻撃されても自分で何とか対処し、そんな中で映像を残すと言う仕事をこなして来た。


「それなのにお前らは・・・ああ分かった、もう勝手にしろ、俺はもうお前たちの面倒は見ないからな」
「元から面倒なんて見て貰ってない、さっさと出て行け」
「魔法とスキルと武技のスクロールを無償で渡し、お前たちはそれのおかげで強くなったはずなんだが、その事も忘れてしまったんだな・・・ああ分かったもういい」


より良い映像を残す為に支援して来たのに、どうなっても知らないぞっと、俺はケンスダの部屋から出て怒りながら自分の部屋に戻ったんだ。
荷物を紙スキルで作った収納紙に包んでポケットに入るサイズにし、10分も経たないうちに出て行く準備を済ませたよ。


「そう言えば、あいつらに収納紙も渡していたな・・・この借り家もいつまで借りられるのかな」


映像の人気は品質が命であり、それが落ちればあっという間に変わると言うのに、何も分かってないとそそくさと部屋を出たんだ。
家を出る時、2階の窓からケンスダたちが見えたが、外にいる俺には見向きもしなかったよ。


「あれだけ言われて怒りは収まらないが、29から一緒に頑張って来たのに・・・なんだか悲しいな」


またこうなるのかっと、悲しい気持ちを抱いて歩き出したが、こういった時は酒に流すに限ると思い、俺はその足で行きつけの酒場に向かった。
しかし、酒場に入り酒を注文して待つ間、店に設置されていた大型の映像板を見て、俺の投稿した内容が流れていたが、あれだけの熱意がすっかり冷めていて悲しくなったよ。


「客が騒いでいるあれも、1つの魔法玉では無理だし、あいつらはもう迫力ある投稿も出来ない・・・まったくどうしようもないな」


魔法玉は、掲げた正面10mくらいの映像が記憶できるが、モンスターの攻撃に迫力を持たせる為、俺はあえてモンスターに接近して攻撃を受け、投稿用の映像を作っていた。
気功術のおかげでダメージは無いが、ケンスダたちでは出来ない芸当で、さらに20枚の映像札であらゆる方向から記録した映像と合わせて編集しているから、同じモンスターと視聴者は錯覚して迫力ある映像に誰もが喜んで見てくれていた。


「ケンスダたちが鍛錬してしっかりと戦えれば、次からは映像札を改良した映像折り鶴を気の力で飛ばし、より迫力ある映像を撮る予定だったが、もうそんな必要もないな」


俺の努力も知らずあれだけ言ってもダメだったし、スポンサーが減っていく未来が見えたんだが、注文した酒を受け取り一気に飲み干してガッカリした。
お代わりとつまみを注文すると、顔見知りの店員に心配され、今日はどうしたのかと声を掛けて貰ったよ。


「ありがとうマリアナ、ちょっと嫌な事があってな」
「リューブさんにしては珍しいね、アタシで良ければ相談に乗るよ」
「ああ・・・実はライジングランサーをクビになってな」
「え?・・・嘘でしょ」


つまみを出しながら驚かれ、俺はつまみを掴んで口に放り込んで【モグモグ】と口を動かしながら頷いた。
本当の事と分かって酒を注ぐ手が止まっているマリアナは、俺の催促でやっと酒を注いでくれたが、まだ信じてない様子だった。


「信じられない、本当なの?」
「ああ・・・だからかなりショックでな」
「それはそうでしょう、あの人たちバカじゃないの」
「俺もそう思うが、俺といるのが嫌とか、なかなかひどい文句を言われてな」


はははっと笑いながらも、俺の目からは涙が零れて来てしまい、マリアナに心配されるからグラスを勢いよく上げ、酒を一気に飲んで誤魔化したよ。
だが、マリアナは分かっていたのかさらに心配してくれて、奢りと言って新たに酒を注いでくれた。


「ありがとうマリアナ」
「アタシにはこれくらいしか出来ないから・・・それで、これからリューブさんはどうするの?」
「そうだなぁ・・・仲間を新たに作るのも難しいからなぁ」


歳を取っているから勧誘は来ないし、俺個人の知名度は無いに等しいから、俺一人が誘っても断られるのは分かっていた。
それに、ケンスダたちの様に嫌われるのも嫌なので、仲間を作らずに出来る仕事を探すとマリアナに伝えたよ。


「それなら、ここで働いてみる?アタシは大歓迎よ」
「酒場のバーテンか・・・マリアナのお誘いは嬉しいが、俺にはちょっとな」
「そう言うと思ったわ・・・だったら、一人で出来る何かをするしかないのね」
「そうなんだが、冒険者しかやった事がないからな」


それ以外何も出来ないと酒を飲んで考えたが、マリアナが映像の編集も出来ると提案してくれた。
編集が出来ても、一人でダンジョンの奥深くは難しいと返したんだが、マリアナは違う考えを持っていて俺はそれしかないと思ったよ。


「新人用の訓練映像か」
「そうよリューブさん、それならあいつらもリューブが正しかったことが分かるし、人気が上がれば見返す事も出来るわ」
「そうだな、ちょっとやってみるよマリアナ」


お礼を言ってマリアナに酒を奢り、その日は朝まで飲んで酒場で目を覚ましたよ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺だけステータスが見える件~ゴミスキル【開く】持ちの俺はダンジョンに捨てられたが、【開く】はステータスオープンできるチートスキルでした~

平山和人
ファンタジー
平凡な高校生の新城直人はクラスメイトたちと異世界へ召喚されてしまう。 異世界より召喚された者は神からスキルを授かるが、直人のスキルは『物を開け閉めする』だけのゴミスキルだと判明し、ダンジョンに廃棄されることになった。 途方にくれる直人は偶然、このゴミスキルの真の力に気づく。それは自分や他者のステータスを数値化して表示できるというものだった。 しかもそれだけでなくステータスを再分配することで無限に強くなることが可能で、更にはスキルまで再分配できる能力だと判明する。 その力を使い、ダンジョンから脱出した直人は、自分をバカにした連中を徹底的に蹂躙していくのであった。

王宮で汚職を告発したら逆に指名手配されて殺されかけたけど、たまたま出会ったメイドロボに転生者の技術力を借りて反撃します

有賀冬馬
ファンタジー
王国貴族ヘンリー・レンは大臣と宰相の汚職を告発したが、逆に濡れ衣を着せられてしまい、追われる身になってしまう。 妻は宰相側に寝返り、ヘンリーは女性不信になってしまう。 さらに差し向けられた追手によって左腕切断、毒、呪い状態という満身創痍で、命からがら雪山に逃げ込む。 そこで力尽き、倒れたヘンリーを助けたのは、奇妙なメイド型アンドロイドだった。 そのアンドロイドは、かつて大賢者と呼ばれた転生者の技術で作られたメイドロボだったのだ。 現代知識チートと魔法の融合技術で作られた義手を与えられたヘンリーが、独立勢力となって王国の悪を蹴散らしていく!

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する

カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、 23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。 急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。 完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。 そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。 最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。 すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。 どうやら本当にレベルアップしている模様。 「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」 最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。 他サイトにも掲載しています。

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

異世界の約束:追放者の再興〜外れギフト【光】を授り侯爵家を追い出されたけど本当はチート持ちなので幸せに生きて見返してやります!〜

KeyBow
ファンタジー
 主人公の井野口 孝志は交通事故により死亡し、異世界へ転生した。  そこは剣と魔法の王道的なファンタジー世界。  転生した先は侯爵家の子息。  妾の子として家督相続とは無縁のはずだったが、兄の全てが事故により死亡し嫡男に。  女神により魔王討伐を受ける者は記憶を持ったまま転生させる事が出来ると言われ、主人公はゲームで遊んだ世界に転生した。  ゲームと言ってもその世界を模したゲームで、手を打たなければこうなる【if】の世界だった。  理不尽な死を迎えるモブ以下のヒロインを救いたく、転生した先で14歳の時にギフトを得られる信託の儀の後に追放されるが、その時に備えストーリーを変えてしまう。  メイヤと言うゲームでは犯され、絶望から自殺した少女をそのルートから外す事を幼少期より決めていた。  しかしそう簡単な話ではない。  女神の意図とは違う生き様と、ゲームで救えなかった少女を救う。  2人で逃げて何処かで畑でも耕しながら生きようとしていたが、計画が狂い何故か闘技場でハッスルする未来が待ち受けているとは物語がスタートした時はまだ知らない・・・  多くの者と出会い、誤解されたり頼られたり、理不尽な目に遭ったりと、平穏な生活を求める主人公の思いとは裏腹に波乱万丈な未来が待ち受けている。  しかし、主人公補正からかメインストリートから逃げられない予感。  信託の儀の後に侯爵家から追放されるところから物語はスタートする。  いつしか追放した侯爵家にザマアをし、経済的にも見返し謝罪させる事を当面の目標とする事へと、物語の早々に変化していく。  孤児達と出会い自活と脱却を手伝ったりお人好しだ。  また、貴族ではあるが、多くの貴族が好んでするが自分は奴隷を性的に抱かないとのポリシーが行動に規制を掛ける。  果たして幸せを掴む事が出来るのか?魔王討伐から逃げられるのか?・・・

エラーから始まる異世界生活

KeyBow
ファンタジー
45歳リーマンの志郎は本来異世界転移されないはずだったが、何が原因か高校生の異世界勇者召喚に巻き込まれる。 本来の人数より1名増の影響か転移処理でエラーが発生する。 高校生は正常?に転移されたようだが、志郎はエラー召喚されてしまった。 冤罪で多くの魔物うようよするような所に放逐がされ、死にそうになりながら一人の少女と出会う。 その後冒険者として生きて行かざるを得ず奴隷を買い成り上がっていく物語。 某刑事のように”あの女(王女)絶対いずれしょんべんぶっ掛けてやる”事を当面の目標の一つとして。 実は所有するギフトはかなりレアなぶっ飛びな内容で、召喚された中では最強だったはずである。 勇者として活躍するのかしないのか? 能力を鍛え、復讐と色々エラーがあり屈折してしまった心を、召還時のエラーで壊れた記憶を抱えてもがきながら奴隷の少女達に救われるて変わっていく第二の人生を歩む志郎の物語が始まる。 多分チーレムになったり残酷表現があります。苦手な方はお気をつけ下さい。 初めての作品にお付き合い下さい。

S級スキル【竜化】持ちの俺、トカゲと間違われて実家を追放されるが、覚醒し竜王に見初められる。今さら戻れと言われてももう遅い

猪木洋平@【コミカライズ連載中】
ファンタジー
 主人公ライルはブリケード王国の第一王子である。  しかし、ある日―― 「ライル。お前を我がブリケード王家から追放する!」  父であるバリオス・ブリケード国王から、そう宣言されてしまう。 「お、俺のスキルが真の力を発揮すれば、きっとこの国の役に立てます」  ライルは必死にそうすがりつく。 「はっ! ライルが本当に授かったスキルは、【トカゲ化】か何かだろ? いくら隠したいからって、【竜化】だなんて嘘をつくなんてよ」  弟である第二王子のガルドから、そう突き放されてしまう。  失意のまま辺境に逃げたライルは、かつて親しくしていた少女ルーシーに匿われる。 「苦労したんだな。とりあえずは、この村でゆっくりしてくれよ」  ライルの辺境での慎ましくも幸せな生活が始まる。  だが、それを脅かす者たちが近づきつつあった……。

処理中です...