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1章 誕生

16話 歴史に名を残す存在

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わたくしは、今日を何とか戸惑わずに終える事が出来ました。


「まずは落ち着かなくては、深呼吸ですよダリア」


これで落ち着けた自分を褒めたいですよまったく。とても深いため息を付き後ろにある扉を睨みます。
それと言うのも、アレシャス様はとんでもない方で、とんでもない秘密を持っていたのです。


「レベル101とか、通りで普通じゃないはずです」


普通ならば、こんなに簡単に信じる数値ではなく、まずは疑い嘘つきだと顔に出す事でしょう。


「そして、彼を偏見の目で見るのが世間の常識。そんな世界に彼の様な子供を放り出したくありませんね」


わたくしはとても心配になりました。
彼は頭が良いはずなのに、そう言った事には無頓着で心配なのです。
これは皆にも話して、貴族の教育以外にも、しっかりと理解させないといけません。


「急な呼び出し、もしかしてあれのお話ですか?」
「察しが良くて助かるわリーナ、マーナスもリリシャも座って頂戴」


3人を自室に呼んだのは、101レベルの件ではなく、アレシャス様が皆に配った指輪の事です。


「知っての通り、みんなアレシャス様から頂きました。その事で言っておかなければならなくなったのです」


わたくしはその日、確かに皆の誕生月をお教えしました。


「それは朝食の後の話しだったのです」
「え?」
「ダリア様?それって今日の朝ですか?」
「そうですよリーナ」


夕食までの短い期間では加工する時間なんてありませんでした。
それなのに、アレシャス様は夕食の席で皆に配ったのです。


「信じられない」
「気持ちはわかりますよリーナ、ですがこれは事実でみんな貰ったでしょう」


それも、とても大きな宝石が添えられた指輪で、わたくしは内緒でアレシャス様から頂いた小箱を確認してしまっ程驚いたのです。


「す、すご過ぎますアレシャス様」
「やっぱり返した方が良いというお話ですよね?」
「それはそうだよリーナ、あんな大きな宝石アタシ見た事ないもん、そうですよねダリア様」


リーナとマーナスは、興奮して話を間違った方向に持って行きます。


「わわ、ワタシは・・・返したくない」


リリシャは違う様で、アレシャス様から貰った物だからと、今も小箱を大切に持っています。


「何言ってるのよリリシャ!こんな高価なモノ、買ったらいくらすると思ってるの!!返すのよ」
「まあ落ち着けリーナ、リリシャの気持ちも分かるだろう」
「そうだけど、マーナスだって返した方が良いと思うでしょ?」


それはそうだとマーナスは応えます。でも、アレシャス様に助けてもらったメイドは、皆リリシャと同じ気持ちで、大切にすると受け取る時に誓っていました。


「ち、誓いを破りたくない」
「それは分からない訳じゃないけど」

リーナも指輪を紐にぶら下げ大切に持っていました。ネックレスとして首に下げ肌身離さずと言った感じで、皆そうしているんです。


「3人とも落ち着きなさい。その指輪はアレシャス様のお気持ちです、ですから各々が大切にしなくてはいけません」


返すことはしなくていい、その答えを先に伝えその理由も話します。


「こここ、これって付与がされてるんですか!?」


3人ともに指輪を貰っと時と同じ感じでビックリした表情です。
1人1人専用の付与効果がされた指輪がわたくしたちが貰っ物。わたくしたち本人が持たなければ効果は無く、ただの指輪になる。


「そ、それって」
「そうですよリリシャ、これは勇者様の装備に付与されている安全装置が付与さらています」


それが付いていると付与は底上げされ、国宝級の品となるのです。
国宝級と分かった3人は、返すべきですと言い出します。あれだけ拒んでいたリリシャですら返そうと言うほどです。


「返してはいけません」
「どどど、どうしてそんなに落ち着いていられるのですかダリア様」
「リリシャの言う通りですよダリア様、国宝級ですよ国宝級!!」


まぁそうですねっと、わたくしも3人の気持ちのままに応え、伝えたのです。


「良いですか、アレシャス様は他にそれ以上の事を隠しています。だから受け取り強くならなければならないのです」


彼が屋敷でして来たことに関心が薄かった理由もそれだったのです。
3人にそこについて伝えると「あぁ~」っと即座に納得してしまう程、アレシャス様はそこら辺が無頓着でした。


「あ、あれは確かにすごかった」
「そうだな」


ダンジョンを持たない村を救ってくれた。それは世に出せば英雄と言われる行い。


「それなのに、アレシャス様ってばねぇ~」
「広めてくれると嬉しい、どんどん広めてよ。だもんな」
「アレシャス様のそんな所が素敵」


3人は納得していたけど、そこで現実に戻って来て全員で指輪を見ました。


「じゃ、じゃあこれも、それくらいの感覚で作ったの?」
「おおお、落ち着けリーナ、そこまではさすがに」


リーナが首から紐を引っ張り、その先端にぶら下がっていた指輪に2人が注目します。ゴクリと音がしたと思ったら、マーナスが曖昧な答えを出しましたけど、それは当然なのです。
わたくしは皆に、アレシャス様が重要視している事を伝えました。彼はわたくしたちの為に動いていて、それ以外はどうでも良かったのです。


「そんなにリリシャたちの事を・・・やっぱり、アレシャス様は他の男と違う・・・大好き」
「待ちなさいよリリシャ、事はそんな単純じゃないわ!そうですよねダリア様」
「そうですねリーナ、本来なら国に報告をしなくてはなりません。アレシャス様の保護を要請する事態ですよ」


そんなにっ!?っと3人は驚き、この施設創設から数えても、初めての事だとわたくしは補足を入れ、それだけの力をアレシャス様は秘めていると、とても大変な事態を意識させたのです。


「では、今直ぐにでも保護を」
「ま、待って下さい!」

マーナスはすぐに意見してきましたが、リリシャがそれを止めます。彼女にしては大きな声で、ここにいる全員が驚きました。


「何で止めるのさリリシャ」
「あ、アレシャス様は言ってたよ、屋敷に籠って生活はしたくないって、だから国に報告したら、お城から出れなくなっちゃう・・・それはアレシャス様が可哀そう」


リリシャの答えは、わたくしが迷っている事そのままでした。それはアレシャス様の事を知っているリーナとマーナスも同じです。


「それは分かってるけど、そうしないと危険だわ」
「そうだぞリリシャ、命が無くなるよりは良い」
「で、でも、それは生きてる事にならないよ、アレシャス様言ってたよ」

どちらもアレシャス様を心配する言い争いが始まり、だからこそわたくしも悩んでいた。


「3人とも落ち着くのです。集めた最大の理由はそれで、今から対策を考えますよ」


アレシャス様の要望を叶えつつ命を守り、国にも貢献できる方法があれば良い。
そんな突拍子のない条件に合う方法は、考えるまでもなくありはしません。
ですが3人とも凄く真剣に悩み始め、アレシャス様の為ならばと言う空気を感じます。


「くそっ!どうすれば良い」
「わ、分からないよぉ~」
「ダリア様~」


考えが出る訳もなく、3人がわたくしを涙目で見てきました。


「やはり出ませんね。そこで3人に頼みたいのです、アレシャス様に世間の怖さを教えて差し上げてください」


わたくしたちの知識をアレシャス様に注げば、彼に怖い物が無くなり無敵になる。

「向かって来る奴らを倒せる力をわたくしたちが授けるのです」
「「「なるほど~」」」


3人は納得してやる気を出し始め、早速明日から自分の体験談をお話する事が決まりました。
ここに居られる期間に出来るだけ世間の厳しさを教え、悪い奴らを逆に利用できるお方になってもらう。そして次に再会した時、立派な領主様になっているアレシャス様に会えるのです。


「その時は、小さな彼はいなくなっているでしょうけど、それは仕方のない事、その時はわたくしも卒業するのでしょう」


小さな子から大人の男性に変わるその時がとても楽しみと、体験談は何を話そうか考えます。利用されたお貴族様か金に汚い商人、それとも恋人を取られた冒険者でしょうかね。
沢山話すことが浮かび、これがアレシャス様の言っていた会話の楽しさだと知るのは、わたくしの体験談を話す時でした。貴族様はそれを無くし、ただ子供を作るだけのつまらない存在になっている。アレシャス様が正しかったと、彼の偉業を確信しましたね。
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