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1章 誕生

13話 欲張りすぎるとダメ

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1階とは違い、ラビットの強い奴らは通路の最初の分岐から出現していました。ラージスライムよりも大きな2m位の巨大なウサギで、モコモコしていて撫でたくなります。


「何だよあの目つき」


折角のモコモコウサギなのに、目つきは今まで通りでとてもギラツいてた、攻撃もそのモフモフな毛を逆立て針の様にさせ、丸くなって突撃してきたんだ。
通路の幅を6mにしていなかったら、そう思い壁とウサギの隙間に身を屈めてやり過ごした。小さい体は役に立つねと、方向を変えている巨大ラビットを切り付け倒した。


「反転している時に動きを止めるのはお決まりだけど、ジャンプして回転を止めないとか、やりようはいくらでもあるのにね」


ドロップ品の毛皮を拾い、さぁ次に行こうと進みます。分岐にも巨大ラビットがいて回転する前に倒して行き、途中に見つけたワタガシを倒して、僕はふと気づいた事があって立ち止まった。


「僕、レベルやスキルを上げる事しか考えてなかった」


スライム騎士との戦いでアイテムも必要だと思ったよ。ダンジョンで薬草や装備も取得できる様にした方が良いと考えます。


「その為には、まずはダンジョンボーナスポイントかな。あれを使って何が変わるのか、楽しみだよ」


ダンジョンボーナスポイントを使いたくてウズウズしていた事もあるけど、レベルが上がるにしたがって増えていく項目に、僕は強くなる兆しを感じていたんだ。最初は1レベル1つずつ増えいた項目は、5レベルになってからは10レベルに1つとなり、今はこんな感じになってる。


〈ダンジョンボーナスポイント〉76
・所持ダンジョン数1
・モンスター出現率2
・モンスター覚醒率2
・ドロップ率2
・宝箱出現率1
・アイテム交換録1
・モンスター使役1
・???
・通路強化1
・部屋強化1
・移動設備強化1
・階層強化1
・???
・???
etc


「途中のハテナが見えないのは気になるけど、そろそろ使って試すべきなんだよね」


帰ったら早速試そうとダンジョンを進み、スライムと同じく人型のラビットに小部屋で遭遇したんだ。そいつはこの世界にいる獣人さんよりも獣っぽくて、動物が二足歩行して服を着ている感じだった。


「あの武器、欲しいかも」


装備が手に入るかもと、攻撃パターンを確認しないで速攻で倒し、ドロップした毛皮を見て少しがっかりして拾ったんだ。宝箱じゃないと装備は出にくいと、ポイントの割り振りが決まっていくよ。


「でも、強さはそうでもないんだよね、2階なのに」


どうしてだろうと、進みながら考えます。ダンジョンの難易度が全体だから、下に進めばそれだけ強くなると思っていた、だけどそうでもないのかもしれません。


「同じような作りだとダメなのか、小部屋だけだからなのか」


まだまだ分からない事が多いと、色違いのラビットを倒します。そいつらは、どうやら状態異常を与えて来る様で、少しピリっとして来た。


「強くても毒や麻痺は危険だね」


そっちも対策しないとダメかもと2階の最後の部屋に差し掛かり、1階と同じ中部屋に着きました。状態異常に気付いた僕は、ここは慎重にとドキドキしてきましたよ。


「ここまで、スライム騎士より強いラビットはいなかった。それを考えるとこの中には」


恐らくと予想して扉を開けると、ダリアから教えてもらっているラビット種のキングクラスがそこにいました。アイアンソルジャーラビットを見てやっぱりと思いつつ部屋に入ると、そいつはこちらを見て来たよ。
そいつは、僕よりも少し身長の低いラビットで、二足歩行で立っていた。でも通路で見た獣種の様な奴とは装備が違い、鉄装備を着こんでいていかにもって感じです。


「ラビラビ」
「キングクラスと思った方が良いだろうけど、どれくらい強いのかな」


剣を抜き相手の出方を盾を前に構えて見定めた。移動はピョンピョンと飛んで来て、これは着地時を狙えば簡単かもとタイミングを取っていると、そいつは空中でもジャンプをし方向を変え始めた。


「空中を蹴るなんて、何処の格闘マンガだよ」


そんなのありなの?っと見ていたら、急降下して来て蹴りを入れて来たんだ。盾で受けると、体勢が不安定なのに持っていた剣を振って来た、僕も自分の剣で応戦したんだけど、そこでショートソードが折れちゃったんだ。


「ずっと使ってたからなぁ~」
「ラ~ビラビラビ、ラービラビラビ」


剣の寿命が来てしまったと、折れた剣を収納にしまいます。アイアンラビットソルジャーは笑って来たけど、剣が無くても僕は強いんだと拳を構えた。


「笑ってられるのも今の内だ、見てろよもじゃもじゃ」


それでも相手は笑ってくる、僕が小さいから油断しているんだろうけど、それは命取りだよね。僕はダッシュして距離を詰め、勢いそのままで拳を繰り出した。


「ラビ~」
「さすがに避けたか、でもね予想通りなんだよ」


拳は避けられたけど、本命はダリアから貰った盾でのアタックだったんだ。避けた方向に盾を向け、そのままタックルをかましたんだよ。


「ラ、ラビ~」


消滅していくアイアンラビットソルジャーは、どうしてって言ってる様だった。あいつは空中でも方向を変えられる奴だったけど、それは高い上空に行ってからで、低い位置では変えていなかったんだ。だからワザと避けれる拳を繰り出し、方向を変えた所に盾でアタックした。


「スライム騎士と同じに宝箱」


さぁ何が出るのかな?っと、僕は今度こそ期待した。そしてすごいタイミングだねっと、箱から取り出して掲げたんだ。


「アイアンラビットソルジャーが持ってた、レッドソードだ」


丁度剣が無くなったタイミング、まるでマンガのご都合主義だったけど、有難く使わせてもらおうと腰に収めたんだ。ダンジョンを出ると、装備を外して手入れの時間です。
ダリアたちから貰った装備は、部屋に飾って他のモノはアイテム欄にしまっておく、見つかると大変な事になるからだね。


「ふぅ~今日はかなり成果があったね」


手入れも一息ついて、僕は体を拭いて着替えを始めます。ダンジョンの改良はゆったりとしたベッドの上で行うけど、出来ればお茶とかが欲しい所です。
ダリアたちに言えないから我慢して、ダンジョンステータスを出すと、顔がニヤケてしまったね。


「さてさて、待望のポイント使用だ。何に使うのが良いのかなぁ~」


大体は決めていて、誰も聞いてないのに僕は一人で呟いていました。それだけダンジョンボーナスポイントを使うのは楽しみだったとウズウズしています。
名称が表示されなんとなく結果も予想できることから、僕は強くなった実感が沸くまでそのままにしていた。そして部屋を増設して、出現するモンスターのクラスが上がった事で自信もついた今こそ使う時です。


「さて、まずは振り込まなくても分かる、アイテム交換碌を見て見よう。どんなアイテムが交換できるのかな」


そう言って僕はアイテム交換録を念じて選択しました。すると画面に本の絵が出てきて、それがぱらぱらっと開いていったんです。その本が真ん中で止まると絵が浮き上がってきて、それが何なのか分かってしまったよ。


「これって結婚式とか、お祝い事の時に送るカタログ?・・・いや違うっ!?これって広告だ!」


僕が見ていたのはデパートの広告みたいな物でした。1階と書かれているその本は、食品の数々が写真で載っていて、いかにも特売品と言った感じです。


「普通はデパートの品が記載されてると思うんだけど、ラビットの肉が書かれてる」


写真の商品は、ラビットの肉やボアの肉とこちらの物で、少し違和感が生まれた。でもそれも半分までの内容で、ペラペラとめくっていくと日本の食品が載っていた。


「やったね、これなら日本の品も手に入る」


ダリアたちに内緒で食料が手に入る。ダンジョンポイントを消費して交換出来るようになったんだよ。


「まぁ20万消費したばかりだから、ちょっと使うのは躊躇うね。でも今後が楽しみだよ」


ダリアたちに内緒で食べ物が手に入るのは嬉しいんだ。早速紅茶を探して10Pでペットボトルの品を交換し、ゴクゴクと飲みました。


「うん美味いね。1ポイントだと1階の食品売場までしか表示されないって事かもしれない、更に振るか迷うよぉ~」


この美味しさはクセになる、もっと欲しいとボーナスポイントを使用したくなります。今のポイントは76あるので、もっと振っても問題はありません。


「だけど、どんな品が追加されるか分からないし、商品を交換するにはダンジョンポイントも掛かるんだよね」


商品が見れても交換出来なければ意味がないと、僕はとても躊躇ったんだ。


「と、取り敢えず他の食品の価格を見てみよう、安ければ他の商品も同じかもだしね」


僕は言い訳を探す様に、他の商品を閲覧しました。ニンジンが50本で50Pとかタマネギ40個で50Pと、かなりの安値だったんです。
袋は有料で2Pから5Pの大小大きさまで選べるようで、更に説明で肥料にもなると書かれています。


「ペットボトルもそうだったけど、捨てても土に返って肥料になるとか、領地経営に役立ちそうだね」


これならもしかして?っと僕はある事が頭に浮かび、くっくっくっと笑いながら躊躇わずにポイントを振りました。


「うん、予想通り出たよおもちゃコーナー」


思惑通りのオモチャコーナーが7ポイント目に出てガッツポーズです。早速5000Pを使って家庭用ゲーム機を交換し、4ポイント目に出ていた電化製品コーナーで、7万Pの150インチ大型テレビを交換しました。


「ゲームが出来る!ゲームが出来る~っと」


電源コードの先を持ちルンルン気分で部屋の壁に向かったけど、膝を付いて後悔しています。


「で、電気が無いから使えなかった」


ここは日本じゃなく異世界ですから電源プラグなんてあるわけなかった。


「うぅ~せっかくゲームが出来ると思ったのに・・・もう無駄遣いは止めよ」


電化製品コーナーが出た時、後少しと思ってポイントをつぎ込んだ結果、僕の野望は潰えてしまった。
しかも、説明文には電気がないと使えませんと書いてあったんですよ。


「うぅ~ゲーム~」


かなり反省した僕は、フラフラとベッドに倒れ、枕を涙で濡らしました。
あれだけ泣かないと決めたのに、僕は泣いてしまった。これは体が泣きたいのではなく、僕個人が泣きたかった、これは必要な涙だったんだよ。
ちなみに、ポイントで出たフロアはこんな感じで、ダンジョン攻略を頑張ろうと反省しました。

・1階食品コーナー
・2階日用品コーナー
・3階レストランコーナー
・4階電化製品コーナー
・5階洋服コーナー
・6階書店コーナー
・7階オモチャコーナー
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