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5章 2年1学期

130話 精神修行の理由

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「すす、すっげぇープレッシャーだな」
「ここ、怖いです!!シャーリーは逃げたいです」


みんなで武器を構えるけど、誰一人として震えていない者はいません。
立っているのもつらいほどで、身体全体が震えてしまうんです。


「でも、それはあたし以外なんだよね」


これが精神修行の成果なんだと感じてて、頑張っていて良かったと、心底ホッとしていたよ。


「いいかお前たち、今から行うのは最終段階に行った者に行う試練で、そこにすらいけないお前たちでは、かなり無理がある。しかしっ!レベルが上がっても精神修行が進んでいないのなら、その余裕はない」


ノヴァ様は説明を始めたけど、その話を普通に聞けるのはあたしだけで、みんなは震えててそれどころじゃないよ。
本来なら、滝をみる訓練の次に行く予定だったらしく、エメローネ様までガッカリしていますよ。


「ちょっと待ってくださいまし!無茶ですわよそんなの」
「無茶は承知だ!だが1ヶ月使って、あそこに連れて行くことも出来ないんじゃ間に合わない。だから、今から強制的にあそこに行って貰い、一度精神を研ぎ澄まして貰うぞ」


ノヴァ様が言い終わるのと同時に、あの空間に入りました。
でも、さっき入った時と違うのは、入る為にノヴァ様が殺気を放った事だった。
みんなを見たら、気絶はしてないけど誰一人動けないよ。


「意識を飛ばさないだけマシだな、もし精神修行自体をしてなかったら、倒れていたぞ」
「ぐっ!ぐるじぃ~」
「自業自得だ、レベルアップをお願いしてきた、エメローネ様に申し訳ないと思わないのか」


かなりお怒りのノヴァ様は、これが本当の無我の境地だと、みんなに説明を始めたんだ。
あたしはもう知ってるし、空気が重くまとわりついているみんなと違い、普通にこの空間でも動けてるんだよ。


「わかったか?精神が安定していると、バーバラの様に平気で動ける、お前たちは未熟なんだよ」


みんなは、動けないなりに頑張っていますけど、動けないのは場外で倒れてるレンスロットと同じで、あれと同じとか言われてしまったんだよ。


「きつい言い方だが、本来なら一人一人指導していくつもりだった。接触しすぎると、あいつのような奴らが来てうるさいから、お前たちの頑張りに期待したんだ。期待外れでガッカリだよ」


レンスロットが担架で運ばれているのをノヴァ様はため息を付いて眺めてた。
これからの訓練は、あたしだけが行う事になると、凄く残念そうにノヴァ様は言いました。
みんなは、反論したそうな顔をしていたけど、口も動かせない程で何も言えませんよ。


「そろそろ戻るか、この後ほんとの訓練を始めるからな」


空間が元に戻ると、あたしは息が切れてしまったよ。
ノヴァ様の隣に立っていたエメローネ様は、額に汗を浮かべてて辛そうにしてた。
そして、ローナたちはその場に座り込んでしまったね。


「やっぱり無理がありましたね、ごめんなさい皆さん、そのまま休んでください」


急に優しい口調になったノヴァ様は、あたしを呼んで訓練を始めようと言い出します。
みんなは動けず、その場に寝転んで倒れてしまった。


「じゃあ始めようかバーバラ」
「ちょっ!ちょっと待ってくださいまし」


あたしの個人指導が始まろうとした時、何とか身体を起こしてローナが声を掛けて来た。
起き上がるのも精一杯の中、ローナは参加したいと言い出します。


「無理しなくていいよ、君たちは普通に滝でも見ててくれればいい」
「そ、そう言うわけにはいきませんわ!わたくしたちは十騎士ですのよ」
「でも動けないでしょ、それなら邪魔をしないで滝を見てるのが良い」


ノヴァ様はあたしの邪魔だと、ローナたちを抱き上げて運び始めました。
あたしは、エメローネ様の横に移動して良いのかと聞きます。


「仕方ないだろう、レベルは申し分ないにも関わらず、あの状態だ」
「ですけど、少し厳し過ぎます」
「それだけ、ワタシたちの立場は厳しいんだ。お前なら分かるだろう?」


エメローネ様は、魔弾ガンの事を言ってて、あたしには十分分かったのよ。
あれを乱射されたら、今のローナたちは命を落とす、それほどに無力なんです。


「ですけど、他の兵士だって」
「そこも白騎士は考えているんだ。他の兵士には、壁に使った素材の盾を準備している」
「正面からの攻撃を防ぐ為ですか?」
「ああ、しかしワタシたちは、守るだけでは駄目なのだ」


あたしたちは、兵士たちの見本にならなければいけないと、エメローネ様は真剣な表情でかなり辛そうです。


「で、出来るでしょうか?」
「なんだバーバラ不安そうだな、強敵と戦えるんだからもっと嬉しそうにしろ。攻めて来たあいつらを蹴散らし、次はブルー殿に勝つ、そして次は白騎士に挑むんだ」


エメローネ様は、昔見せた少女の様な顔をしていました。
目標が見つかりうれしいんですね。


「でも、ほんとにあそこに行っただけで強くなったんですか?あたしは変わらないような気がしますけど」


力が強くなったわけでも、早くなった訳でもありません。
それなのに、5人で戦って負けてるワイバーンに勝てるのでしょうか。
レベルは上がってるので、きっと勝てるのかもしれないけど、とても信じられなかった。


「そうか、バーバラはそんなに試したいか。ちょうど良い相手がそこにいるぞ、武器を使わずに倒してしまえ」


エメローネ様が親指を立てた先には、担架で運ばれたはずのレンスロットがいた。
レンスロットはあろうことか、みんなを運んでいるノヴァ様の不意を突こうと、槍を向けてたんだよ。
槍を構え走っているところを見て、エメローネ様が領域を展開させ、時間をあたしにくれた。


「く~ら~い~な~さ~い~」
「おそ!?」
「なんとも間抜けだよな、やってしまえよバーバラ」
「はい!」


走ってきているはずのレンスロットは、スローな喋りと動きに見えて、あたしはその間に入って構えた。
レンスロットは、それにも気づいてない感じで、先ほどのノヴァ様の様に槍の軌道を変えて見た。


「出来た」
「見事じゃないか、白騎士も見てるぞ」


エメローネ様の視線の先には、こちらを見てるノヴァ様がいました。
仮面で表情は見えないけど、喜んでくれてる気がして、あたしはとても嬉しかった。


「でも、エメローネ様の様に自在には入れません」
「それはそうだろう、これからは白騎士の指導の元で精進するんだな」
「えっ!?」


エメローネ様の言葉は、どうやらあたしがノヴァ様の弟子になった事を意味しているらしく、頑張れと激励されました。


「い、良いのでしょうか?」
「何を言ってるんだバーバラ、お前は皆に反対されても頑張ったのだぞ、もっと誇っていい」


そうなのかな?っと、あたしは嬉しさが来ないままで戸惑います。
あれだけノヴァ様の弟子になりたかったのに、あたしはどうしてこんな気持ちなのか分からなかった。


「なんだ、あまり嬉しそうじゃないな」
「エメローネ様、あたしは皆と一緒に強くなりたいです。だから、弟子になるのならみんなも」
「そうかそうか、それならお前から白騎士にお願いして来い、きっと許してくれるぞ」


ノヴァ様が優しい方なのは知っていたから、エメローネ様の言う様に許可は出ると、嬉しくなって走ります。
運ばれて床に倒れてるみんなに、説教をしてるノヴァ様にお願いしました。


「バーバラはそれで良いのかい?せっかく習得したのに、この子たちに合わせたら遅れるよ?」
「それでも、あたしは皆と一緒が良いんです、お願いします」
「分かったよバーバラ」


みんなでノヴァ様の弟子になり、精神修行にも力が入る事になると、あたしは嬉しかった。
ですけどね、エメローネ様も同行して、ある場所に着いたら不思議と落ち着けの。
そこはバラ園の中で、訓練には似合わないと感じたよ。


「あのノヴァ様、ここで訓練をしますの?」
「そうだねローナ、ここに隠してあるダンジョンで、精神修行をしてもらう」


そこのダンジョンでは、時間が圧縮されてるらしく、遅れた時間を取り戻せると、にこやかに教えてくれたのよ。


「そ、そんなところがあるのなら、最初から」
「ローナ、君はまだ分かってないみたいだね。これはあくまでも最後の手段で、乱用はしてはいけないんだ」
「ですけど・・・すみませんでしたわ」
「分かれば良いよ。ちなみにこのダンジョンの中では、精神も凝縮されるからね」


常時領域に中にいるような状態だと知り、そんなすごい所なのかと、みんなでビックリしました。
エメローネ様まで一緒に入ったその中の訓練で、あたしたちは最強と思える強さを身に付ける事が出来たんです。
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