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5章 2年1学期

124話 変わっていく授業

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「そそ、それでは授業を始めます」


わたしは今、やる気を出してダンジョンの授業聞いているのだけれど、担任であるマーベルって男爵家の女性は、新任だからか、とても緊張してて頼りない感じなのよ。


「きっと私がいるからだろうけど、もう少しがんばってほしいわね、そうは思わないエミリー」


わたしの後ろにひかえているエミリーに聞いたけど、当然の様に頷いているわ。
それもあって、アレシャスはわたしに言って来たのだと分かったの。


「教科書の通りにしか話してないものね、あれだったら、自分で読み進めて作り始めた方が早いわよ」


前の学園なら、すぐに制作を開始していたでしょうから、今はまだ遅れてしまう悪手とみられるでかもしれないわ。
でも、今は遅れているけれど、それが無くなれば、ダンジョンは飛躍的に発展するわ。


「騎士たちも、教師たちと話す時間を作っているし、わたしたちもこうやって時間を作っているもの」


今までと違い、みんなで協力し合う体制を作ったアレシャスは、ほんとにすごいと、2階にいるはずの彼の方向を見たわ。
でもね、授業はとても退屈で、早くアレシャスのクラブに行きたいと、衝動が押し寄せてきたわ。


「そ、それでは次のページ・・・あれ?」


マーベルって先生が教科書をめくり、次のページを見て疑問の声を出したわ。
わたしもそのページを見てるけど、事前に読んでて先生の疑問は分かっているわ。
通路の設置は、先を見えなくする事が重要って書いてあって、最初は良く分からないのは当然よ。


「先を見えなくするように作るけど、それをどうやって実行するのか、ここで生徒に聞け?出席番号でも席順でも良しって」


先生は、教科書と私たちを交互に見て来て、少し変だと首を傾げたの。
教科書にそんなことは書いてなくて、もしかしたら、教師に配られたのって違うのかもしれないわね。


「その後感想を言いなさい?・・・じゃじゃあ、出席番号1番のアーノルドさん、あなたなら通路をどうやって設置するかしら?」
「は、はいっ!」


一番前の席に座っていた生徒が立ち上がり、自身の考えた通路を説明しています。
彼はジグザクに作ろうとしているみたいで、それがどう優秀かを勝手に話し始めたのよ。


「なるほど、それなら先の先まで見えないわね」
「そうでしょ先生!他にも四角く通路を延ばし、何処かに正解の通路を作る予定です。複数の通路を作るから、どこに本当の通路があるか分からない、どうですかすごいでしょう」


アーノルドって生徒は、うれしそうに話し、担任もうれしそうに受けていて、何だか教室の中が和やかに感じました。
わたしは、この授業の本質を見た気がして、楽しい気持ちになったの、今まであれだけ緊張していた担任も、今は良い笑顔をしてて、これが協力するという事なんだと思ったわ。


「待ちなさいよアーノルド、それじゃ場所をとりすぎるわ、広く作ったらそれだけ騎士たちの移動範囲が広がって、余計な時間が掛かってしまうわよ」
「なんだよリンナ、じゃあ君ならどう作るんだよ」


アーノルドの隣に座っていた女子生徒は、手を挙げて担任の許可を待ちます。
担任が生徒を当てると、リンナって生徒が自分の考えを語り始め、その意見の出し合いがどんどんとクラスに広がり、みんなで楽しく授業が出来たんです。


「教科書を使ったのは最初だけだったわ」
「すごかったですねシャルティル様、私あんなに生き生きとした貴族様を見たの、マリア様たち以外初めてですよ」
「そうねエミリー・・・でも、それを普通にしたいのよね」


アレシャスはあれを当たり前にしたいんです。
だから教科書に細工をして、授業の時に指示が出来る様にしたのよ。
担任のマーベルに聞いたけど、他の担任の教科書にも、他の指示が書いてあったらしいわ。


「さて皆さん、午後はいよいよダンジョン製作です。午前中に考えたそれぞれのダンジョンに適した、それに似合うモンスターを配置していきましょう」


マーベル先生が指輪を配りながら、生徒一人一人にどんなモンスターを設置するのか聞いています。
みんなは、それぞれ違うモンスターを選んでいますよ。


「ウルフにコボルト、スパイダーにタラティクト、すごいのはボアまでいるわ、これって普通ない事よね」


わたしはフルーツモンスターであるフラワー種を選びました。
そのモンスターは2つ星で、使用するポイントも高いんですよ。
学園から支給された指輪のポイントは、普通だと5000だったけど、今回は2万が入っていて、白騎士であるアレシャスから貰ったものです。


「みなさん、モンスターを設置しましたね。それではダンジョンを設置しに行きましょう」


わたしたちは、いよいよダンジョンに騎士たちを入れます。
場所を移して、とても広い部屋に入ったわたしは驚いていますよ。


「ど、どうしてこんなに人数がいるのよ」


お母様の話では、優秀なPTだけが最初に入ると聞いていました。
ダンジョンヒューマン一人につき、1PTだろうって話だったんですけど、今ここにいる人数はどう見ても多いです。


「今回は、最初から複数のPTに入って貰います。モンスターの強弱があるので、負けて戻って来る事になるでしょうが、その時は他のPTが入り数をこなせしてもらうのです」


マーベル先生がそう言うと、一人の生徒が手を挙げ、人数を増やすポイントが残ってないと言いました。
わたしも全部使ってしまい、残っている生徒はいません、するとマーベル先生は、更に指輪を配りそれには5500ポイント入っていたんです。


「これで3PTを入れられます、もちろんこのポイントは回収いたしません」


マーベル先生にそう言われ、わたしは体がブルッと震えました。
今までと本当に違う教育の仕方だと思っただけでなく、アレシャスの凄さを感じたからです。


「今年の1年生に、相当な期待をしているという事でしょうね」
「そうですねシャルティル様・・・でも、これだけ差を作ると、上級生たちは不満を言うのではないですか?」


エミリーが当然の疑問を口にして来て、わたしも気になりました。
白騎士の対策なので、きっと何か起きるとエミリーは言って来たけど、それの対策は既に出来ているのよ。


「エミリーあのね、上級生たちにはもっとポイントを渡しているのよ、捕まえた貴族が溜めていた物を使って、一人100万ポイントが配られてるわ」


エミリーがすごく驚き、わたしの時もそうだったと笑いそうです。
まぁ当然だけれど、それだけでもなくて、騎士たちには、お金を分配したと更に教えます。


「それってワイロって奴では?」
「見もふたもないこと言わないのエミリー・・・それを使って君たちもがんばろうねって意味なのよ」
「はぁ~」


エミリーが変な返事を返してきたけど、そう思うのも分かるし、聞いた時わたしもそう思っていたの。
上級生たちが不利なのは確実で、これからを考えると、対処はしないといけないのは当然なのよ。


「わたしたちが卒業したら、もっと差が出てくるわ」
「まぁアレシャス様がいますからね」
「そうよ、クラブ活動はそれだけの力があるわ」


今までは、身内だけでダンジョンを経営していたけど、もうそんな事はなく情報は共有される。
本来ダンジョンに入るのが難しい他種族の騎士たちも使い、どんどん数をこなして行くの。


「今まで他種族たちは、休みの時にダンジョンを使わせて貰って生活をしていたわ。でも今は違う、どんどん参加が出来て、良い装備も学園が支給してくれるから、勢いが止まることはないわ」
「元からステータスが高く、成績も認められると分かれば、誰でもがんばりますよ。私だって、シャルティル様が認めてくださいましたし」


エミリーが嬉しそうにもじもじしているけど、わたしはそれが普通だと思っているのよ。
貴族社会では違ったようだけど、頑張ってる人を褒めないでどうするのよって思うわ。


「さぁわたしのダンジョンに入るPTが来たわ、これからがんばらないとね」
「そうですねシャルティル様、がんばりましょう」


エミリーと笑顔で騎士たちを迎え、わたしは握手を交わしたの。
3つのPTはそれぞれ違う派閥で、混血派と純血派と他国のPTです。
それは、どこのダンジョンも同じで、純血派がいない場合は、他種族のPTが入っていた。
こうして始まったわたしの学園生活は、驚きと喜びの連続で、退屈とは程遠い物でした。
でも、ほんとに楽しみなのは放課後で、早くアレシャスとお話がしたくて仕方なかったわ。
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