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3章 1年2学期

79話 見せ場を作ったダンジョンたち

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「ど、どうしてですのよ!?」


僕とシャンティがエマルたちのダンジョンから帰還すると、そんな驚きの言葉をエマルから貰い、みんなは呆然としています。


「どうしてって、訓練していたからだよ?」
「「「「「そっちじゃない」」」」」


みんなは僕たちの強さを見て信じられないんだと思ったんだけど、どうやらそっちではないみたいです。
僕がダンジョンに入れる方が不思議らしく、どうして入れるんだと聞いて来たよ。


「どうしてって、入れるから入れるんだよ?」
「そ、そんな簡単に言わないでくださいよ」
「リリーナの言う通りですわよ!アレシャス様はダンジョンヒューマンなのですわよ」


そこからかぁ~っと、僕は説明する事にします。
簡単な話しで、要は覚悟が足りなかっただけなんだよね。


「じゅ、準備が出来てなかった?」
「そうだよリリーナ。研究してる人は、白衣のままで実験するでしょ?それと同じ事がダンジョンヒューマン側にもあったんだ」


ダンジョンに入るのに、戦う装備も持たずに入るなんて自殺行為だよね。
ダンジョンがそれを察知して入れなかった、そう説明するとみんな口をあんぐりです。


「そんなに驚く事?」
「それは驚くよアレシャス様、ボクたちはずっと言われてきたんだよ」
「まぁそうだけど、言われたからってやらないのはねぇ」


何でも試してしまう僕、みんなはそんな認識をし始めてくれて、まぁ仕方ないかと言った空気を感じました。
そして全員のダンジョンからモンスターを排除したので、ここからは本題のダンジョン改造です。


「良いかいみんな、直線通路は使っちゃダメだからね」


基本となる事を教え、ほとんど1からの作り直しをしてもらった。モンスターを排除したのは、勿体ないからだね。
そしてもう一つの理由は、彼女たちにダンジョンに入れると認識して欲しかったからなんだ。
僕だけがダンジョンに入れる、そんな不自然な事があるわけないと思ってて、いつかダンジョンヒューマンの仲間が出来たら試したいと思っていたんです。


「これで、ボーナスポイントとかもあれば、もしかしたら他にも色々出来るかもなんだよねぇ~」


独り言を呟き、みんなが作り終わるのを待ちます。
その間、シャンティがお茶を淹れてくれるけど、一緒に飲むのはいつもの事で、それも彼女たちは疑問に思わなくなってます。


「で、出来ましたけど、ほんとにこれでノーマルクラスがキングに?」
「不思議そうだねリリーナ」
「それはそうですよアレシャス様。だって直線通路を使わなかっただけですよ」


そうだよねっと、みんなが同じ気持ちな様ですが、それが大事なんだと前にケリーさんに話した内容を教えます。


「侵入者の妨害ですの?」
「そうだよエマル。モンスターはダンジョンを守ってるんだ、複雑にすれば戦いやすくなるんだよ」
「そうでしょうか?」


分かってない感じだけど、モンスターを設置してみると至る所でキングクラスまで成長しているのが見れた。
みんなは信じられないのか、画面に顔を近づけて見ていました。


「ど、どうしてですのよ!直線の通路を使わなかっただけですわよ」
「エマル、実はそれだけじゃないんだよ、分岐の先の曲がり角を設置した後はどうしてた?」
「それは、アレシャス様の言いつけ通り、部屋を設置しましたわ」
「そうそれも重要だったんだ。分岐や部屋にモンスターが滞在し易かったのはみんなも知ってると思うけど、それは待機しやすいからだったんだよ」


直線通路では、必ずモンスターは滞在しなかった、それは敵に発見されやすく負けるからなんだ。
それを教えられ、みんなは初めて理解した。なるほどっと思いながら成長した理由も教えます。


「ダンジョンの難易度が力を与えてるんですか?」
「僕はそう思ってるよリリーナ。複雑なダンジョンは難易度が高い、そこにモンスターが設置されると、エネルギーを貰い成長する。だから強いモンスターが生まれるんだ」


ダンジョンの仕組みはこんな感じだと、僕は解説します。
みんなは何となく分かったのか、それ以降は質問も無く改造は終わり、いよいよ騎士たちを入れる本番です。
授業が始まると、真っ先に僕の方に来たのはサイラスたちで、無事だったのかとエマルたちを睨んでしまったね。


「僕は無事だよサイラス、事情は後で説明するからさ、今はダンジョンに入ってよ」
「アレシャスがそう言うなら、俺たちは訓練に行くだけだが」
「そうですわよ、ほんとに平気ですの」
「心配してくれてありがとシェネル、でも平気平気」


ラーツたちも心配そうでしたが、昼食を取る時に説明する約束をして、みんなはダンジョンに入って行きました。
そしてしばらくして、エマルたちのダンジョンに入っていた騎士たちが戻って来ると、血相を変えて騒ぎ出したんです。


「お、おい!あれはどういう事だ」


僕の近くだったのはリリーナで、騎士たちが詰め寄って来ました。
どうしたのかと、回りの生徒も気にしてて、シメシメと僕はニヤ付いていました。


「どうと言われましても、皆さんが戦ったとおりですよ?ボクは皆さんの要望通り、強いモンスターを設置しただけです」


死に戻りしてきた騎士たちにリリーナが軽い口調で返します。
その後、エマル派と言われる生徒のダンジョンに入っていた騎士たちも戻って来て、同じ感じに騒ぎ出したんだ。


「向こうもかよ・・・リリーナ殿、だからと言って、すべてのモンスターをキングクラスにする必要はないだろう。これでは午前中掛けても倒せるか分からんぞ」
「それでかまいませんわ皆様、がんばってくださいましな」


ここで話に入って来て、注目を集めたのはエマルです。
みんなに聞こえる様にわざわざ大きめに声を出し宣言したんだ。


「わたくしたちは費用を惜しみませんわ、それくらいでないと入ってくださる騎士様たちに申し訳ないですわよ」


エマルの宣言は僕の予定通りのモノで、勿論騎士たちは最初こそ戸惑っていたけど、手強いダンジョンに挑戦出来て嬉しそうにしていた。
最後まで行けなかったのに、午後も頑張ると笑顔で昼食に向かったんだ。


「なるほど、そう言う事だったのか」


昼食をサイラスたちと取り、今までの事情を説明すると、みんなが納得してくれて、ようやく張り合いが出て来たと嬉しそうです。


「そう言う訳だから、みんなも仲良くしてあげてね」
「それは良いんだが、エマル派の騎士たちはなぁ~」
「そうですわね、あいつらちょっといい気になり過ぎですわよ」


前の自分たちを見てる様で嫌だ、そう言って食事を進めるサイラスたち。ラーツたちはそうでもないみたいで、種族で嫌われない様に僕は注意する事を約束した。
そして午後は、騎士たちのやる気の上がった挑戦が始まり、その中でエマルのダンジョンに入っていたPTが戻って来たんだ。


「すごいですなエマル殿」


喜んでもらえた様で、キングクラスの猛襲を受け、緊張感のある戦いが出来て嬉しいと感想を貰ったんだ。
それは何より、そう返したエマルだったけど、ここで僕の予定通りの宣言をします。


「ちなみに、わたくしたちのダンジョンに、みんな同じような作りになっていますわ。だからキングクラスよりも下は出ません。十分気を付けてくださいましね」


そんなバカなっと、聞いていた生徒たち全員の動きが止まってしまったね。
全員のダンジョンが同じような難易度なんて、今まで無かった事だから当然ではあります。


「どうしましたみなさん?」
「いや、どうしましたって・・・エマル殿、本気なのか?」
「ええそうですわよ。わたくしたちは、仲間で情報を共有していますの、沢山倒していただければ、それだけポイントも増えます。がんばってくださいましね」


エマル率いる全員が笑顔で騎士たちに頭を下げた。それは、騎士たちの気持ちを変えるきっかけになり、すごいやる気を湧き上がらせダンジョンに入って行く。
恐らく騎士たちは、多大な期待をしてくれていると嬉しくなったんでしょう。それからは、他の騎士たちもがんばってダンジョンに入っていきました。
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