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3章 1年1学期後半

68話 休みの予定

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大会も終わり、あれから1月が経とうとしていて、あの衝撃的な事実を知った僕は、そちらの方を早急に対策を始めています。


「まさか、ダンジョンの肝である中ボスやボスの部屋、あれを誰一人として使ってないとは思わなかったよ」


難易度を90に上げた僕の学園のダンジョンは、次に増設するとしたらそれしかないんです。僕はサイラスたちが強くなるのを待っていたけど、使う前に気づいて良かったと冷汗を流したよ。
難易度を100以上にするには、どうしても中ボスかボス部屋をダンジョンに作る事が必要です。


「僕が最初じゃダメだから、誰かほかの生徒を探さないといけないんだけど、難しいんだよね」


その生徒に目立ってもらう必要が出て来た訳で、それが先輩たちよりも面倒なんです。


「それじゃみんなは故郷に帰るんだね」


情報収集と噂を流し、1学期もあと少しで終わると言う時期で、ラーツたちは長期休暇で故郷に帰るそうです。
みんなあと少しなので楽しみなのか、授業中でもうれしそうに話して来ます。
僕も帰りたいけど許可は降りないし、僕の夢が叶ってからの事なので後のお楽しみだけど、羨ましいと感じるのは仕方ないと、自分を諫めたよ。


「全員に許可が下りたので、みんなで一緒に行くことにしたんです」
「そうなんだ、おみやげ期待してるよラーツ」


他種族の故郷は大体同じ方向にあるそうで、海を渡ったらそれぞれの国に別れると話してくれます。
ラーツたち獣人の国は平原の広がるアザームと言う国で、ザードたちエルフとドワーフ組は山と森があふれるウィーザに向かうんだ。


「任せてください、色々持って帰ってきます」
「お願いね、僕も行きたいけど、色々あるからね」


どうせ外に出る許可は降りません、平民上がりは何処で何をするか分からないからだそうで、休み中はシャンティたちと遊ぶ予定を組んでいますよ。


「何を呑気に言っているんだアレシャス、これは学園側の妨害だぞ。俺たちにこれ以上強くなってほしくないんだ」


僕と他種族みんなとの話を聞き、サイラスたちが話しに入って来て怒ってきたよ。
遠くにはバルサハル先生がいるけど、聞こえてないようです。
サイラスたちはあの騒動を知らないから、他種族のラーツたち全員に許可が降りたのが気に入らないんだ。


「それは知ってるよサイラス、普通は長期休暇を利用して自分たちのスキルアップに使うんでしょ」


僕の答えにサイラスが頷き、そこから更に熱弁し始めます。
ダンジョンに入る人もいるらしいけど、ダンジョン貴族の方が休暇で欠席の場合が多く、モンスターが補充されないから入らない人が多いんです。


「訓練場でスキルを覚えるのが普通だ。故郷に帰りたいのはわかる、だが今は少しでも実力を上げることが先決だろう」


サイラスの言葉には、他種族メンバーも分かっているからか何も言い返せず、ただ下を向いてしまうだけでした。ラーツたちは2年生だから、ただでさえ遅れてる現状を分かってるんですよ。


「今やっと追いついたんじゃないか、ここでまた離されたらどうするんだ」


サイラスは、だからこそ心配してくれていて、それだけラーツたちを仲間と思ってくれてるんだ。
でも、今回の公表会に出れなかったメンバーにも許可が下りたから、途中まで全員で行けるのは今回だけで、次はまず許可が下りない。
だからラーツたちはどうしても行きたくて、僕に視線を向けて来たよ。


「まぁ待ってよサイラス」
「アレシャス、お前は甘いぞ」
「でもねサイラス、みんなに必要なのは休むことだと僕は思うよ。みんなはここに来て、ずっとずっと頑張ってきたんだからさ」


笑顔でそう訴え、更に話をレベルの方に向けた、ダンジョンに入りレベルさえ上がれば、今のラーツたちは2年生のトップをねらえる実力だと告げたんだ。


「ダンジョンに入れてなかったからな」
「そうだよサイラス、僕のダンジョンでスキルは覚えられる、それなら長期休暇は休みに当てても良いじゃないか」


スキルは既にかなり拾得してるし、他の生徒よりも先に行ってる。
だからこそ、身体を休めて心が安らぐ場所で療養が大切だと僕は締めくくった。
サイラスもそこまで言われたら言い返せない様で、渋々了承したよ。


「しかしだアレシャス!俺たちは休まないぞ、それでいいんだな」
「サイラスたちがそれでいいなら、でも遊ぶのも必要だよ」


僕はサイラスたちをある場所に誘う事を思い付き、手招きをして耳打ちしました。
サイラスは、ギョッとして僕を見てきて、信じられない様でしたよ。
驚くのは分かるけど、そこは説明を省こうと指を立てて口に置き、秘密だよっと仕草で知らせます。


「そ、それで済ますなアレシャス!普通ダンジョンは」
「まぁまぁサイラス、ここは誘いに乗るだけにしてよ、日時は事前に知らせるから楽しみにしててね」


ウインクも付け加え、僕は強引にダンジョンにみんなを押し込み、1学期の授業最後のダンジョン攻略が始まりました。
ラーツたちは1PTだけで2階層を攻略し、サイラスたちは3階層の中盤まで到達出来る実力を身につけた。


「おそらく、3階層を攻略できないからサイラスたちは焦ってるんだ。コボルトキングに勝てないでいるから仕方ないのにね」


何度も負けてるから焦るが出てる、それを排除してあげるのが僕の仕事でサイラスたちに必要な物だ。


「まぁあそこを越えるとコボルトメイジキングナーが出始めるから、更に苦戦するんだけど、そこでリフレッシュに誘うべきだろうね」


僕がサイラスに耳打ちしたのは、リゾートダンジョンがあるから遊ぼうと言ったお誘いです。


「海か山どちらにしようか、やっぱり定番の海からかな」


色々な場所を作っていて、季節も階層ごとに変えています。
冬階層に行けば山でスキーとかも出来て、秋階層に行けば山で山菜やキノコ等の幸が取れて、もちろんそいつらはモンスターだけど、とても弱いから取り放題です。


「夏エリアの海も同様で、海の幸が食べ放題だから楽しみなんだけど、まぁ倒さないとダメなのは仕方ないとして、遊び気分で楽しめるから良いんだよね」
「アレシャス君、ちょっと良いかしら?」


僕が休みの楽しみを考えていると、後ろからそんな声が聞こえ、振り向くとバルサハル先生でしたよ。
本当は楽しい計画を思っていたから、かなり嫌な表情をしてしまうでしょうが、僕はニコリとして応えます。


「どうしました先生?」
「あなたのダンジョンに入りたいと言ってる生徒がいるのだけど、休暇中だけでも入れないかしら?」


バルサハル先生が困った顔をしていて、その要望は約束の範疇でない事が一目で分かりました。
どうやら1年の他種族の生徒からの要望で、お金になるダンジョンに入りたいそうです。


「数に余裕はあるので構いませんよバルサハル先生。僕のダンジョンは広いですし、7PTまでなら歓迎します」


1つ貸しですよっとは言わずに了承したからか、バルサハル先生はホッとして離れて行きました。
僕にポイントを与えない作戦が出来無くなったからか、バルサハル先生の足取りは重く、離れて行く感じはトボトボと元気がありませんでした。


「僕の計画外だから、まだまだ先はあるのに、ご苦労様だね」


学園側と言っても、学生たちが望んでしまえば検討するしかなくなり、指導に熱心じゃなかったダンジョン科の教師たちは苦労する。
身から出たサビだと、笑ってしまいそうです。


「ってことで休暇に突入だよシャンティ。明日から孤児院に頻繁に行くから、ティアに言っておいてね」


午前中の授業が終わり、シャンティに予定を伝えます。リゾートダンジョンは1つしかありませんから、山と海で別けても良かったと、ここで考えが浮かびます。
新たに作っても良いかもっと、妄想を膨らませるけど、それはまた今度にしてシャンティの答えを待ちます。


「分かりました、きっとみんな喜びます」
「うん、僕も大勢で遊んだり食事をするのが凄く楽しみだよ」


シャンティが部屋を出ていき、明日からワイワイ騒いだ食事を楽しみにして、僕も最後の授業に向かいました。
サイラスたちは張り切ってダンジョンに入って行き。ラーツたちは外出が楽しみな様で、ちょっと集中してませんでしたよ。


「僕も人の事言えないから、気を紛らわせる為に他の生徒を見ようかな」


他の場所に目を向けると、みんなのダンジョンでは死に戻りを繰り返してしました。
数回の挑戦をへて、何とかモンスターを倒している状態で、良い気分がどこかに飛んでしまったよ。


「何度も死ぬってイヤだと思うんだけど、麻痺しちゃってるのかな」


そんな中、ケリーさんの取り巻きの一人である、イサベラのダンジョンに目が行きました。
彼女は蜘蛛系を使っていて、こちらの武器を糸でグルグル巻きにしてたんだ。
僕はそれを見て、新たな甘味を思いつき、魔道具の製作を考えます。


「よしっ!綿飴の機械を作ろう。この世界の甘味は少ないし、きっとみんなも気にいるよね」


他にも、リンゴアメやミカンアメもいいかもっと、夏らしくなってウキウキしてきます。
僕は向こうの夏祭りを思い出し、さすがに金魚はいないけど、盆踊りをダンスに変えたりして楽しみたいと、結局集中してませんでした。
焼きそばにたこ焼き、ミニカステラも良いよねっと、気を紛らわせるどころか食べたい物が増えて行きました。
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