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3章 1年1学期後半

63話 ダンジョン大会

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「それでは、今期の優秀なダンジョンを作られました3人をご紹介しまーす、まず1年生の部」


ついにダンジョン大会が開かれる日になり、司会の人がみんなを紹介していて、僕は観客席から拍手と応援をしています。
ジャケン君たちは、それに答えて手を振っていますが、今日は1年生だけが舞台に上がっています。


「ダンジョンに挑戦するから、日数が掛かるのは分かるけど、5年生までの日程が組まれてるのは凄いね」


この為にみんな頑張っているんだろうけど、大掛かり過ぎて僕は嫌です。
他の学年は、観客席で見ていますが、その中でも6年生が見ているのが気になってますよ。


「6年生は卒業を控えているのに、なんでかな?」
「たしか、領地を貰う為のバトルをしているんでしたよな」


この以外で激しい戦いを繰り広げているそうで、見に来ている余裕はありません。


「見に来るのも珍しいって聞いたけど、6年生の席が結構埋まってるよね?何かお目当てのダンジョンでもあるのかな?」


1年生のダンジョンなので、一番見所がないと思うと、僕は不思議に思ったんだ。
だけどね、6年生の席だけで無く、他の学年も例年よりも埋まってたんだ。
一体どうして?っと、他人事の僕はシャンティからお茶を貰って嗜んでます。


「まぁ生徒一人の使えるスペースが広いから、ぎゅうぎゅうって感じではないけど、シャンティなにか情報聞いてない?」


ソワソワと横に座っているシャンティに聞いてみると、シャンティは隣のイスでちょっと落ち着きがありません。
きっと僕の隣に座っているからだろうけど、僕はそこには触れませんよ。


「あの、私は後ろに」
「それよりさシャンティ、情報は?」


普通使用人は立ちっぱなしで貴族の後ろに待機しますが、ここは個室になっていて他の人に見られませんから、僕の隣にイスを置いて座って貰いました。


「ムクロスの話では、サイラスさんたちの戦いをみたいと言う話ですよ。アレシャス様のダンジョンの装備に注目しているようです」


僕はなるほどっと頷き、少し流した情報に釣られたのが判明した。
ラーツたちに言って流して貰いましたが、それが良かったのかもです。


「これは、ジャケン君たちのダンジョンが目立たないかもね」
「そうなるかと思います・・・それと、あのアレシャス様、もう少し後ろに下がってもよろしいですか?」


シャンティがそう言ってイスを下げようとしたので、僕は笑顔で止めました。
後ろに下がったら戦いが見にくいし、なにより僕と話す事が出来ない、横で楽しくお話しをながら見ていたいんだよ。


「それとも、シャンティは僕と話すのは嫌かな?」
「そんな訳ありません。分かりました」


そんなやり取りをしていると、一際大きな歓声が会場に広がり、僕とシャンティはステージの方を見たんですが、どうやら騎士たちが登場したようです。


「サイラスたち、目立ってるね」


歓声を浴びているのは、サイラスたちのPTで銀色の鎧が目立っています。
剣もすごいけど、やはりあの鎧は別格で、魔法科の装備も目立ってない。


「キラキラはしてないけど、シェネルたちも学生の装備ではないけど、あっちが目立ち過ぎかな」


はははと、僕は笑ってみてましたが、シャンティは当然だと返してきます。


「この国の士官たちが装備している物ですからね、誰でも注目してしまいます」


観客からの歓声とどよめきもすごくて、誰が喋っていても分からないくらいで、司会の人も装備を見てかなり動揺しています。
やはりあのダンジョンで手に入れたのかと、司会の人は聞いてるんだろうけど、その前に次のラーツとミドルたちのPTも入場し、歓声よりもどよめきみが勝ち更なる盛り上がりを見せてます。


「そんなに驚くことかな?僕のダンジョンに何度も入ってるんだから、手に入れるに決まってるよね」


シャンティの方を見て聞くと、シャンティも同意見で考えなしと首を捻っています。
そして観客の疑問に司会の人が答えたのか、マイクをサイラスに向け始めましたよ。
サイラスがこっちを見たような気がして、僕はまずい空気を感じましたが、それはもう舞台の上の事でどうしようもない事でした。


「あのぉ~その装備はどこで手に入れたのでしょうか?とても高価な物ですよね」
「これは買ったものではないぞ、剣は前のバトルで見ているだろうが、全てアレシャス殿のダンジョンで手に入れた」


サイラスがそう言ったからか、会場の全員の視線が僕のいる部屋に集まります。シャンティは急いで隠れたから良かったけど、隣に座っているところを見られたら大変でした。
止めてよサイラスっと、僕は視線をサイラスに向けたけど、言ってやったぞって顔しています。


「そんな意味じゃないよサイラス!しかもまだ何か言うつもりでしょ」


司会の人からマイクを借りて、僕の不安が的中する様な言葉が飛びます。


「あのダンジョンは鬼畜と言われているが、俺たちを鍛えるために作られている・・・いや、導いていると言ってもいいな。だから俺たちは進んであのダンジョンに入るんだ、そして強くなった」


サイラスが胸を張ってそう言ってしまい、みんなからのどよめきが僕に向けられているのが分かったよ。
これは今後大変かもって思っていると、サイラスが更に付け加えたんだ。
もう止めてよっと、僕は部屋の手すりに乗り出して言いたくなったけど、視線が痛くてシャンティと一緒に隠れました。


「俺たちは、アレシャス殿のダンジョンに入れた事に感謝している、ありがとうアレシャス殿」


サイラスが僕の方を向いて跪き、他のメンバーも同じ様にしてしまったんだ。
それは専属契約を求めている様に見えたのか、他の生徒たちが僕を見る目が変わったように思えた。


「見てもいないのに、会場の空気が伝わってくる」


これはいよいよまずいかもっと、しゃがんで悩んでしまいます。


「大変な事になったよ、サイラス~僕を上げるのは止めてよ~」


恐らく、サイラスは装備のお披露目だと思ってタガを外す意味で言ってるんだ、それを勘違いして、今までのお礼と一緒にそんな事をしてしまったんだ。
立ち上がったサイラスたちは、どことなく誇らしげだし、僕の予想は正しいと思える視線が集まって来た。
どうしたものかと悩むけど、もう後戻りはできませんし、ダンジョンを弱くするなんてこともしません。


「いいじゃないですかアレシャス様、サイラスさんたちの感謝の言葉ですよ」


隠れているので声しか聞こえないけど、シャンティはそう思っているようです。
きっと、今頃尻尾を振って嬉しそうにしているんだろうねっと、僕は隠れている方を向きました。


「でもねシャンティ、今の事態はそんな生易しい事じゃないんだよ」


今こっちに注目している生徒たちは、明らかに学園の教育方針に疑問を感じているんだ。
これでサイラスたちがジャケン君たちのダンジョンを余裕で制覇したら、それこそ僕の指導が正しかったと思われてしまう。


「それは現実に起きるのは確実で、サイラスたちはそれだけの強さを持っているんだよ」


今から言いに行けるわけもなく、僕はかなり焦っています。


「これは参ったね、さすがにこれ以上参加者を増やすとポイントの誤差で疑問をもたれちゃう。サイラスたちに言って、ローテーションを組まないといけないかもだよ」


本当のポイントはまだまだありますが、これ以上のレベルアップはさすがに消費ポイントが多くて聞かれてしまう。
誤魔化しても良いけど、ダンジョン科の教師が学園に指名された時の取得ポイントを考えると、言わない方が良いのは明白です。


「注目されてる今はもっと危険だし、どうしよう」


そわそわしてサイラスたちの戦いの応援を始めますが、注目が僕に集まっていてダンジョンを誰も見てなかった。
でもその視線は、サイラスたちの激しい戦いに向いてくれたんですよ。
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