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3章 1年1学期後半

61話 ご対面

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「やっと冒険者とご対面だね」


僕は今、シャンティと一緒に孤児院に走っていて、とても楽しみでワクワクしてスキップしたい気分です。
ラーツたちがダンジョンに入るようになって5日が経ち、やっと落ち着いたので外出を出来るようになったんだ。


「そんなに良いものではないですよアレシャス様」
「ラーツたちも順調だし、嬉しくて仕方ないんだよシャンティ」


最初はほんとに大変で、買い取り額がこんなに高くて良いのかと質問が殺到したんだ。
僕の所持金は、ギルドで素材を売ってかなり膨らんでいて、正直な話をすると割り増しでも全然かまわないって思っているんだ。


「でも、ラーツたちが止めるからここまで掛かったんだよ」
「どうしてか、ティアがまだ早いと言って先延ばしにしていて良かったですよ」


シャンティがなんとかしてくれたらしいけど、ティアがどうしてか嫌がったそうで、ラーツたちの訓練も重なってたから結局は行けなかったけど、何とか説得したらしいです。
その問題のラーツたちは、サイラスたちにダンジョンで会えないことが不思議だったらしく、隠し要素の近道通路を使っていると教えると、驚いて更に質問が増えてしまった。


「ダンジョンは、階層をクリアするとその隠し通路が見えるようになるけど、それも知られてないんだね」


入り口のすぐとなりの部屋にその通路は存在していて、そこを進むと直線通路が通っています。
最短通路を通ると次の階に降りる階段のある部屋に着き、すぐに降りられる仕組みで戻る時も楽々です。


「ラーツたちがいたから良かったけど、そうでなかったらどうなってたのかな?」
「それはもっと早かったはずです、連絡をしないで行っていたでしょうね」


そこまでなの?っとラーツたちナイスっと思ってしまいました。
今度何かプレゼントでも用意しようと考え、通路の宝箱に入れようと画策します。


「なにがあったのかな?」
「それはご本人にお願いします。きっと理由はありますよ」
「そうだろうね。それで、問題の冒険者はどんな人たちかな?」
「ティアの話では、なかなか素直で良い冒険者の様ですよ、アレシャス様と面会が済んだら、あのモンスターと戦わせて、レベルをあげても良いかもしれないと言っていましたよ」


シャンティの言葉を聞いて僕は驚きました。ティアが渋っているからまだまだ掛かると思っていたのに、もうワタガシを使えるところまで来てるとか信じられなかった。
それなのに、どうして会えなかったのか分からず、シャンティに聞いても分からないの一言です。


「何か問題があるんじゃないの?」
「皆さん相当良い人たちの様ですから、良く分かっていません」


シャンティは少し機嫌を悪くしたのか、ちょっと口調が強めになりました。
もしかしたらティアと喧嘩でもしているのかもっと、着いたら仲介をしようと考えます。


「なにかお土産とかいるかな?」
「要らないので急ぎましょう」


貴族区画の門を通り、孤児院に直行すると、いつもの外見だけがボロボロの孤児院に着きます。
広い庭では良く知ってる子供たちと、初めて見る大人4人が遊んでいて、彼女たちは鎧を着けずに布の普段着だった。


「あの人たちが冒険者なんだねシャンティ」


シャンティが頷いて名前を教えてくれます。
茶色い髪の女性がリーダーでシーラさん、大剣を振り回しているだけあって筋肉がすごそうなスタイルの良い女性です。

「スラッとしている赤髪の女性はロジーナさんと言って、シーフの職業に就いてるPTの耳と目の人です」
「なるほど、後の2人は魔法士なんだね」
「そうです」


回復重視の補助魔法士のアーロさんと、精霊魔法と攻撃魔法を使うネムさんで、子供たちと随分仲が良さそうに遊んでいます。


「みんな女性で美人さんだね・・・じゃあ行こうかシャンティ」
「うぅ~はい・・・では、こちらです」


シャンティの返事が変でしたが、僕はあまり気にしないで孤児院に入ります。
後ろに付いているシャンティがなんだか暗い感じで、急にどうしたんだろうと心配しながら応接室に到着です。


「お待たせティア」


中にはティアが待っていたけど、いつもの様にプンプンしている感じで、僕は困るどころかいつも通りでホッとしたよ。


「遅いじゃないアレシャス!」


第一声もこれだったので、いつも通りだねっと謝りながらニコニコしてしまいます。
プリプリ怒っているティアも、そこには突っ込んで来ないのでソファーに座って話を進める事にしたんだ。


「なにニヤニヤしてんのよ」
「何でもないよティア、それより報告をお願い」


いつもシャンティから聞いている孤児院の報告をティアに聞き、僕達がお茶をしていると扉がノックされました。
シャンティが扉を開けると、冒険者の4人が待っていて待望のご対面です。


「おおお、お初にお目に掛かります!わわ、わたくしはこのPTの、りりリーダーを勤めておりますシーラです」


冒険者全員がすごく緊張していて、僕の事は説明していないのかなっと、待機しているティアを見たけど、あちゃーって顔しています。
話をしていても、いざ対面すると緊張してしまった様で、仕方ないねっとを噛みまくっている自己紹介を聞きました。


「ずいぶん緊張していますねみなさん・・・ねぇティア、僕ってそんなに怖いかな?」
「へ!?」


僕は空気を変えるために、ティアを使って見ようと考えます。
親しくしているティアの態度を見れば、僕がどんな人物か分かると思ったんです。


「そんな事は、むしろ」


ティアは、なんだかモジモジしだしたよ、そして何かごにょごにょ言っています。
それじゃ困るよティアっとツッコミたい気持ちを抑え、もっといつものようにツンツンしてと視線で伝えます。
でもそれは伝わらなかったのか、目が合うと顔を赤くしていくだけでしたよ。


「シャンティ、どうしてティアはいつもの様に言ってくれないのかな?」
「それは当然ですよアレシャス様、いつものあれは無理をしているだけなのです、これがティアの普通なんですよ」


そうだったのかと、僕もあちゃーって顔しました。
でも、それが良かったのか冒険者さんたちが笑顔になりました。
結果オーライとはこの事だと僕はホッとしたけど、何時までも立っているシャンティを隣に座る様に勧めました。


「い、行けませんよアレシャス様、私は使用人で」
「それは学園の中だけでしょ、ここでは友達感覚で頼むよ」
「うぅ~分かりました」


渋々座ってくれたけど、ちょっと離れているのか今後の課題だとため息です。
そして本題の話をする為に冒険者さんたちに視線を向けると、ちょっとニヤケていましたよ。


「どうやら、ほんとに良い貴族さんなのね、ティアが悪く言わないはずだわ」


シーラさんがそう言って来たので、ティアに何を言われているのか凄く気になった僕ですが、それを教えてもらえるはずもなく、ティアは話しを逸らそうと頑張ってきます。


「それは良かったです、ティアはいつも怒っているので、僕は嫌われてるかと思ってましたよ」


はははっと笑って見せて話を進めようと持ち掛けると、シーラさんたちが緊張し始めたよ。
話の内容は、他の孤児院でも冒険者を雇うかどうかと、シーラたちの冒険者ランクを上げてほしい事です。


「まずは皆さんのランクを上げることが重要ですが、どうでしょうか誰か雇えそうな人はいますか?」


口が堅くて、子供たちに優しい人はそういないと思っていて、シーラさんたちを見つけるのも大変だったとムクロスから聞いてるんだ。
まして孤児院にいるのは他種族ばかりですから、ヒューマンの子供が集まる西地区に最初に付けようと考えているんです。


「人族の子たちなら、なんとか雇えるかもしれませんけど、それにはまずは報酬を変えましょう」
「そこは当然ですね、信用出来るまでは高額にはしませんけどね」


徐々に増やしたいことを伝えると、シーラさんたちが悩み始めます。
僕たちも大変だったので気持ちは分かると、同じような顔をしてしまったね。


「正直、それでも難しいと思うわ、ねぇみんな」
「そうだね、子供を大切にしようだなんて、普通は思わないよ」


ロジーナさんの答えにアーロさんとネムさんが頷いて肯定してきます。
やっぱり最初から作る方が早いかもっと、僕はそんな結論を出したんだ。


「その為に皆さんがいます、シーラさんたちのランクを上げ指揮をとって下さい」

そう言う話かと、全貌が分かりシーラさんたちは納得です。


「クランを立ち上げる訳ね」
「はい、上位の冒険者が子供たちを守っていると思われれば、風向きが変わるでしょ?」


報酬もシーラさんたち経由にすれば、こちらで何とでも出来る。


「なかなかの仕組みね」
「それも皆さんが来てくれたから出来るんです。期待してますよ」


悪い冒険者を近づけないとか、学園のスパイを遠ざけるとか色々問題はあるけど、でもまずは強い仲間を増やさないといけません。
彼女たちは自分の身を守るだけで精一杯の存在で、彼女たちを強くしてからの話と言う事が一番の難問となってます。


「それと平行して信頼できる強い仲間を作り、さらに強固な地盤を固めるようと考えています」
「まぁ出来ればそうしたいけど、私たちって弱いのよ」
「そうそう、だからあたしたちこの依頼を受けたんだからね」


シーラさんとロジーナさんが微妙な笑顔を見せてきますが、それが分かっているだけでも十分です。
他の二人も同じ様なものでその気持ちがあればいくらでも強化できると、シーラさんたちは頼りになると感じたね。


「こんなに良い人たちなのに、どうしてては渋ったのかな?」


僕は不思議でならなくてティアに視線を向けます。
ティアはどうしてか僕ではなく、隣のシャンティをジッと見ていました。


「まぁいいか。ここからは、僕だけしか使えない反則技を使い皆さんのレベルを上げます。そして、今後はギルドの依頼もじゃんじゃん受けて貰いますから、がんばってください」


僕の参加はそう言う事で、かなり怖がった顔をしているシーラたちだったけど、僕はその時興奮していました。
だって、今の僕は確実に目標に向かってると感じるんだ、これが全て成功して実れば、夢が叶うと確信が持てたんですよ。
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