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2章 1年1学期前半

39話 バトルに向けて

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「あの・・・アレシャス樣」


食堂でのんびりと食事を取っていた僕に、孤児院から返って来たシャンティが後ろから声を掛けて来ました。
振り向くとちょっと困っている感じで、シャンティも今の空気を感じてるんだ。


「立派になったねシャンティ、僕は嬉しいよ」
「誤魔化しないで下さいアレシャスさま。いったいなにをしたんですか」


その理由は、さっきのテストだと、僕は素直に白状します。
周りが僕の方を持てヒソヒソと話していて、どう見ても変なんです。


「内容はここでは言えないよシャンティ」


僕は後でと返事をして食事を進めます。
シャンティも素直に引いてくれたけど、周りを気にしているのは変わらず、僕は急いで食事を済ませ部屋に向かったんだ。


「さて、じゃあ話すけど、落ち着いて聞いてねシャンティ」


部屋のテーブルで向かい合って座った僕たちは、紅茶とお菓子を挟んでテストで起きた事を話したんだ。
良い点を取りすぎてみんなに疎まれちゃって、僕はテヘって感じに言いましたよ。


「はぁ~何やってるんですかアレシャス様」


ため息までつかれてしまったけど、ちょっと違う彼女を見た気がしました。
シャンティは段々とそう言った感じになっていて、僕としては距離感が近くなって良いと思っています。


「アレシャス樣、あれほど目立ちたくないと言っていたのに・・・どうするのですか?」
「どうするって言われても、しばらくはこのままだよ」


僕からは何もしません、ジャケン君たちに頑張ってもらわないといけない事です。
ダンジョンに入る選手だって僕は知らないんだ。ダンジョンを弱くしたら怪しまれるし、僕はダンジョンを変える気はありません。


「このままって・・・良いんですか?」
「うん、ここの基準はテストで分かったからね、次は平均を目指すから、今回だけだよ」


なにもしないと疑われるけど、そもそも僕が頑張る必要はなくて、ジャケン君たちが勝てばいいんだ。
失敗したと思わせられる秘策を見つけないといけないけど、そこは学園側を知らないといけない。


「ダンジョンの事は分かってるから、そこを突く予定でいるよ」
「アレシャス様がそう言うのでしたら、私は何も言いませんけど、本当に平気ですか?」


問題は、冒険者と違って騎士たちは弱いんだよねっと、ため息が出ます。


「勝てないモンスターを出すと言う手もあるけど、その場合点数が上がりそうで怖いんだよね」
「確かに心配ですね」


学園で僕の味方なのはシャンティだけなので、こうして相談できるのはとても頼もしいです。
食堂のおばちゃんたちも笑顔はしてくれるけど、公では応援は出来ない。


「僕の為に無理はしてほしくない」
「そこは考え過ぎですよ、あの人たちはそこまで考えでません」
「まぁそうだね、問題はジャケン君たちの実力だよ」


どうしたものかと思っていたら、部屋の扉がノックされシャンティが出ると、手紙を持って帰ってきました。
騎士たちがもう決まったのかと内容を読んで、やっぱり問題だねっとため息です。


「メンバーは5人か、騎士2人に魔法士3人・・・良くある選定だね」


ゲームでも良くあるバランス型のメンバーと予測出来るんだけど、結局騎士の職種が書いてないから分からない。


「おまけに魔法士も支援タイプか全員攻撃タイプかも分からない」
「そうですね」


ここにきて妨害的な問題が出て来て、ちょっとイラっとしてきます。
僕は負けたいのに、これでは対策が取れないじゃないかと、手紙を握りしめてしまったね。


「アレシャス樣、どう見ても嫌がらせですよね?」
「そうだねシャンティ。きっと学園側も僕が勝ってはまずいと判断してるんだ、だから詳細を書かずに有利なモンスターとかを配置させないようにしてる。元から期待してないけど、ちょっと困ったね」


ここに来て何もしてくれないのはいつもの事だけど、今回は更に妨害を受けてしまった。
それは逆の意味で対策できず問題だと、シャンティと悩んで対策を考えたんだ。


「これは授業に参加して騎士たちの傾向を確認するしかないかな」
「そう思います。流石に情報がなさ過ぎますよ」
「でも嫌なんだよね」


僕とシャンティは困った顔をして答えを合わせます。
元から授業には出てる予定だし、孤児院はシャンティに任せてるから問題はない。


「でもねシャンティ、僕の担当がいないんだよ。行っても見てるだけだから、意味がないと思ったんだ」
「それなら、どうして孤児院には週一何ですか?」


そこに気付くとは、シャンティも出来るようになったと褒めたけど、誤魔化す事には失敗です。
仕方ないので教えましたけど、何をしているんですかって怒られてしまったね。


「僕はね、冒険がしたいんだよシャンティ」
「だ、たからって今まで1人でだに入ってたなんて」


僕が授業をさぼってしていたのは、ダンジョン探索です。
使役したモンスターと共に強敵と戦い強くなっていたんだよ。


「やり過ぎです!何ですかエンシェントクラスって、聞いた事ないですよ」
「まぁ僕たちの強さだと、それ位じゃないと歯ごたえが無いんだよ」


そこは仕方ないとダンジョン探索は後にして、授業に参加が決定しました。
シャンティが僕の心配をしてくれますが、命大事にを心掛けているので問題ないんだよ。


「そんなにお強いのですか?」
「まあね、危険がない訳じゃないけど、それくらいじゃないと楽しくない」


あれからエンシェントにも、余裕で勝てる様になりほんとは強敵とは言えない、それほどの強さを僕たちは手に入れていて、正直最近面白くない。



「アレシャス様がそれで良いのでしたら、私からはなにも言いませんけど、本当に平気なんですか?」
「心配しすぎだよシャンティ、それよりも孤児院でしょ、他の区に話は付けてくれた?」


この街には、冒険者ギルドと同じで孤児院も東西南北に1つずつあります。
シャンティ達は南だったけど、他の子達もかなり悲惨な生活をしてるそうなんだ。


「寄付は順調ですよ」
「それはよかった」


ティアたちに寄付する様伝えてあったんだけど、そろそろ次の段階に行こうと、専用のダンジョンを作っていたんだよ。
仕事の出来るシャンティだから心配はしてない、僕が聞いたのは最終確認で、笑顔のシャンティが待ってましたと答えてきました。


「じゃあ明日の昼に設置しに行こう」
「アレシャス様?」


僕の言葉を聞いてシャンティがクビを傾げます。
明日の朝からじゃないのって聞きたそうなので僕は説明したよ。


「今日の事があったから、きっと明日は授業に出ろと向こうから言われる。僕のダンジョンに生徒を用意して調査したいはずなんだ」
「なるほど、それを拒まず敵情視察をさせると言うことですね」
「そうそう、同時にこちらも調べる事が出来るんだ。だから午前はそれでつぶれて、午後は予定通りって訳だね」


バルサハル先生側も午後は情報整理したいだろうと、シャンティに説明して僕は所詮1年生だと宣言です。
先生に驚かれても、それほど複雑なダンジョンじゃない。


「なるほど、調査はそれほど掛からないと言う事ですね」
「うん、だから午前中だけで済むと見てる」


シャンティとのやり取りをしつつ、僕は孤児院用ダンジョンを3つ、ちゃちゃっと作っていきました。


「畑ダンジョンの出来上がりっと」
「最初の私たちと同じですね、では今後は肉も穫れるようになるのですか?」


シャンティの質問には肯定したけど、みんなとは少し対応が変わる。
正体は見せないし、ワタガシも出現させない作りにする。


「アレシャス様、それはなんでですか?」
「分かるでしょシャンティ」
「なるほど、裏切りを警戒しているのですね」
「まあそうだね、嫌々でも権力には逆らえない時もあるし、知らない方が良いって事もあるんだよ」


頷いてくるシャンティを見て、君たちも危ない事を伝えました。
でも、シャンティは僕の事情を死んでも話さないと言った顔をして来た。


「それは嬉しいけどさシャンティ、そこまでしなくて良いんだよ」


僕よりも自分を大切にして欲しい。
僕の秘密なんてその程度の事なんだ、知られたってどうとでもなる。


「ダメですよアレシャス様、私たちはあなたに命を救われましたから、その命はアレシャス様の為に使わせて下さい」


重いなぁ~っと、頭では考えつつ僕は頼りにしてるっと返事をします。
シャンティはとても良い笑顔を見せてきますが、そんな時が来たら僕は、その時出せる全力を持って立ち向かう。
その前に色々しますけどねっと、僕も笑顔を作ったんだ。きっとその笑顔は黒くて怖いモノだったかもしれないね。
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