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2章 1年1学期前半
35話 私ちょっと変です
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「しゃにゃー!」
「いいよムクロス、そこで背後の敵に振り向かずにクナイを投げるんだ」
「了解にゃー!!」
私がアレシャス様のメイドになって2週間が経ちました。
今日は週に一度だけアレシャス様が孤児院に来れる日で、アレシャス様は黒い服を纏ったムクロスをスゴく楽しそうに応援しています。
「何があんなに楽しいのかしらね?」
私の隣でティアが不思議そうでけど私は知っています、あれは友達と遊んでいるんですよ。
とても楽しそうにしてるアレシャス様だけど、ティアは不満みたいで頬を膨らませて怒ってるわ。
「良いじゃないティア。ムクロスも楽しそうだし、なにより野菜が沢山取れるわ」
他の子供たちも野菜モンスターと戦っていますが、あの二人の勢いには勝てません。
たまにアレシャス様があの変わった武器である、クナイの使い方をムクロスに教えたり、変なポーズを取ったりしてて遊んでいるんです。
「楽しいのは分かるわよ。だけどあれは無いわよ」
学園にいる時と表情が違くて、私はこっちの方がホッとして見ていられます。
向こうでは、いつも無表情ですからね。
「あれじゃ子供じゃない!あたいたちの雇い主なんだから、もっとしっかりしてほしいわ」
ティアが石のハンマーを振りかぶり、モンスターを倒しながら愚痴って来ますが、私も負けてられません。
近くのモンスターを爪で倒し、野菜を拾いますが、疑問に思ったので聞いてみたの。
「ティアは誰にでも優しいのに、どうしてアレシャス様には強く当たるの?」
「え!?・・・あの、その・・・いいじゃないシャンティそんなこと、それよりもちょっと大きめのレタスとトウモロコシが来たわ、じゃんじゃん倒すわよ!」
話を逸らす感じでウサギのような形をしたレタスに向かって行き一撃で倒してました。
私はどうしてそこで話を逸らすのって思いながら、モロコシ騎士と戦ったの。
「はーい、みんなちゅうもーく」
ある程度モンスターを倒した私たちは、一度孤児院に戻ってきて昼食を摂っています。
そこでアレシャス様が今日の目的を話し始め、みんなの顔が輝いたんです。
「今日はみんなの戦闘スタイルから、連携を出来るようにするのが目的だよ。みんな失敗を恐れず行こうね」
「「「「「は~い」」」」」
アレシャス様は簡単に説明しますが、より戦いの精度を上げようとしているのは分かります。
子供たちは張り切りますけど、ティアは違いました。
「ちょっちょっと聞いてないわよ!」
「今言ったでしょティア、はいティアの新しい装備」
黒い金属で出来たとても大きなハンマーと、動きやすそうな青い布の服を受け取り、ティアは何だか嬉しそうです。
他の子たちも装備を貰う門の前に並び始めます。
「でも・・・みんなを見て嬉しいのに、私どうしてかな?」
子供たちと違い、ティアの嬉しそうな表情を見て、胸の奥が少しチクッとしました。
子供たちを見てもならないのに、どうしてティアを見てると痛いのか不思議でした。
「さぁみんな装備したね、じゃあ今度は同じ装備の子たちで集まって戦うんだ、まだ戦えない子たちはティアの班ね」
こうしてダンジョンに再度入り戦いが始まります。
でも、5人1組になって戦うのはいつもの事で、何が変わったのかとみんな不思議そうです。
「ふふ、みんな不思議そう。装備を無償で渡す為の口実だから当たり前ね」
ほんとはそれ以外の意味はなくて、みんなはそれだけ優秀だとアレシャス様は言っていました。
私は戸惑う子たちの背中を押して別れてもらい、私も自分の隊に参加です。
「でもシャンティ姐」
「私たちはいつも通りやればいいのよフォルフ、さぁあなたは私と前衛ですよ」
班のリーダーにも目線で指示して、それぞれレベルの高い私とティア、ムクロスにリミリルにダムダムが別れました。
この後は、PTとして1人ずつ班を分ける予定で、それが今回の目的です。
「じゃあ出発するよぉ」
「ちょっと待ってよ!種族で分けたのは分かるけど、いつもと変わらないじゃない、説明しなさいよね」
ティアが怒って前のアレシャス様に怒鳴ったけど、アレシャス様はまぁまぁとティアを宥めて背中を押しダンジョンを進みます。
この編成は、今後強くなるモンスターに対抗する為なんだと、アレシャス様が説明してました。
「ほんとかしら?装備を渡しただけに見えるんだけど」
「そ、そんな事はないさぁ~」
はははっと笑うアレシャス様をティアはちょっと笑って見ています。
私はまた胸がチクっとして、どうしたんだろうと首を傾げたんです。
「この後ね、PTに分けるからその強さ調整なんだよ」
「何だか、とって付けな気がするわね」
「そんな事ないさティア、孤児院では勉強もしてるだろ?ここを卒業したらお店で働くことも出来るし、冒険者や騎士になりたいって子もいるよね?その為の編成なんだって」
そうかしら?っとティアは疑っていますが、アレシャス様が子供たちの未来の為を思っているのは本当です。
ティアもそこは分かっていて渋々納得して班に戻りました。
「まただわ、なんなのかな」
「シャンティ!」
胸のチクチクを気にしてたら、大きな声で私を呼ぶ声がして、私は咄嗟に前を見ます。目の前に大きなイノシシがいて、大きな頭が私にぶつかろうとしていたんです。
私はもうダメだと目をギュッとつぶりましたよ。
「あれ?」
しばらくしても衝撃が来ませんでした。
不思議に思った私は、そ~っと目を開けると、そこにいたモンスターは消えていたんです。
「あああ、アレシャス様!?」
私はアレシャス様に抱き抱えられ守られていたんです。
「大丈夫シャンティ?」
「はは、はいっ!」
私の返事を聞いて直ぐに放してくれましたけど、まだ私の胸はドキドキしています。
アレシャス様がまた助けてくれて、私はとても嬉しかった。
「大丈夫シャンティ!」
「う、うん、ごめんねティア」
胸を押さえ、私はドキドキが静まるのを待ちますが、アレシャス様を見てしまうと止まりません。
このままじゃ戦えないと、私は深呼吸をして何とか収まるのを待っていたら、ティアが心配して来てくれたわ。
「気をつけないとダメよシャンティ。ここは肉を手に入れる為の新しい階層なんだから、モンスターだって強くなってるんだからね」
「そ、そうだね、ごめんねティア」
ティアの言葉に返事をしたけど、それは適当な心の籠ってない返事で、今は何を聞かれてもしっかりと答えられません。
ここは野菜ダンジョンに作られた2階の肉エリアで、モンスターも少し強くなってるから、考え事をしてる余裕はないんです。
「それにしても、すごかったわねあいつ」
「そ、そうだねスゴかったね」
気持ちを切り替えようとしたのに、ティアがアレシャス様の話しを振ってきて、胸のドキドキを押さえて返事をしました。
私は見ていなかったけど、スゴイ早さでイノシシを倒したと褒めていました。その早さは、私たちの中で一番目の良い、25レベルまで上がったムクロスが気づかないほどだそうです。
「あぁ~あ、やっぱりシャンティが一番なのかなぁ・・・あたいじゃダメかなぁ」
子供たちに指示を出しているアレシャス様をやっと落ち着いて見れて、ぼーっとしていた私に、ティアがなにか言ってました。
私は聞いてなかったのでティアの方を向いたのだけど、アレシャス様を見てて私は聞き間違いかと思ったの。
「ティア?」
「ううん、何でもな~い・・・あたいは見てるだけで良いわ、これ以上傷つきたくないもの」
よく分からないことを言って歩いて言ってしまい、私はティアの背中に呟いたわ。
アレシャス様が私たちを傷つける事なんてありません。
「今みたいに助けてくれますよ」
そう信じてアレシャス様をみたのだけど、今度は胸の奥がきゅってなりました。
さっきのチクチクとはまた違った感じで、いったい私はどうしちゃったのでしょう。
「みんなお疲れ、今日は肉パーティーだよ」
「「「「「わぁーい!」」」」」
ダンジョンから帰ってきて、私たちは夕食に入りました。
そこで下の階に進んだことを祝ってお祝いしようと言うことになって、アレシャス様の手料理が振る舞われたんです。
「これリミリルが取った肉だよ」
「ありがとうリミリル」
「ボクのも食べてよアレシャス様」
「ありがとうダムダム」
みんなアレシャスの周りに集まりスゴく楽しそうで、焼きたての大きなお肉をみんなでかぶりついてました。
私も久しぶりのお肉に表情が緩みます。
「みんな嬉しそう」
私は少し離れてそれを見ていて、ここに来て初めてみんなの本当の笑顔を見た気がします。
手に持ったお皿のお肉を食べながら、もうお腹が空いて苦しい思いはしない。
「ありがとうございますアレシャス様」
感謝の気持ちが溢れてきて、自然と視線がアレシャス様に向きました。
そんな視線に気づいたのか、あの人が私に近づいてきて、私は顔を逸らしてドキドキです。
「シャンティ食べてる?今日は危なかったね」
「は、はいアレシャス様!さきほどはすみませんでした」
謝る私にアレシャス様は、笑顔で頭を撫でてくれました。
いつもの優しい手で、暖かな気持ちが伝わってきます。
傍にずっといたいと私は気持ちが溢れてきて、このまま撫でられたいって思ったんです。
「謝る事じゃないよシャンティ、君が怪我をしたらティアもみんなも心配する」
「みんなですか・・・アレシャス様は入ってないんですか?」
私は小声でそんなことを呟いていました。
アレシャス様が「はい?」って聞き返してたのですが、私も不思議で頭を傾けたんです。
「シャンティ?」
「い、いえ!ごめんなさい。私、今日変なんです」
どうしてそんな言葉が出たのか、自分でも分からず戸惑っていると、アレシャス様の答えが小さく聞こえて来たんです。
「僕も、シャンティが心配だよ」
アレシャス様の恥ずかしそうな顔と一緒にそんな言葉を貰えました。
私はとても嬉しかったけど、アレシャス様の笑顔を見て、身体が熱くなってきました。
「そうか、私」
ここで私は自分の気持ちに気づいたんです。
私たちを救ってくれただけでなく、ダンジョンと言う力を使わせてくれたアレシャス様が好きなんです。
「料理を作ったり掃除をしたり、いつも一緒にいるシャンティの事を妹みたいに思ってる。そんなシャンティを心配しないわけ無いよ」
自分の気持ちが分かった今、アレシャス様の最後の言葉はとてもショックでした。
今の私は、隣を歩くには足りないんだと強くなろうと決めたんです。
「アレシャス様!」
「はい?」
「私もっと頑張ります!」
アレシャス様に宣言して、私はお皿のお肉を勢いよく食べました。
アレシャス様は良く分かってなかったみたいですけど、もっと強く大人に成長して見せます。もう妹みたいなんて言わせませんよ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
どうもマッタリーです
明日からファンタジー小説大賞が始まるので、9月の間は2話の投稿にさせていただきます。
「いいよムクロス、そこで背後の敵に振り向かずにクナイを投げるんだ」
「了解にゃー!!」
私がアレシャス様のメイドになって2週間が経ちました。
今日は週に一度だけアレシャス様が孤児院に来れる日で、アレシャス様は黒い服を纏ったムクロスをスゴく楽しそうに応援しています。
「何があんなに楽しいのかしらね?」
私の隣でティアが不思議そうでけど私は知っています、あれは友達と遊んでいるんですよ。
とても楽しそうにしてるアレシャス様だけど、ティアは不満みたいで頬を膨らませて怒ってるわ。
「良いじゃないティア。ムクロスも楽しそうだし、なにより野菜が沢山取れるわ」
他の子供たちも野菜モンスターと戦っていますが、あの二人の勢いには勝てません。
たまにアレシャス様があの変わった武器である、クナイの使い方をムクロスに教えたり、変なポーズを取ったりしてて遊んでいるんです。
「楽しいのは分かるわよ。だけどあれは無いわよ」
学園にいる時と表情が違くて、私はこっちの方がホッとして見ていられます。
向こうでは、いつも無表情ですからね。
「あれじゃ子供じゃない!あたいたちの雇い主なんだから、もっとしっかりしてほしいわ」
ティアが石のハンマーを振りかぶり、モンスターを倒しながら愚痴って来ますが、私も負けてられません。
近くのモンスターを爪で倒し、野菜を拾いますが、疑問に思ったので聞いてみたの。
「ティアは誰にでも優しいのに、どうしてアレシャス様には強く当たるの?」
「え!?・・・あの、その・・・いいじゃないシャンティそんなこと、それよりもちょっと大きめのレタスとトウモロコシが来たわ、じゃんじゃん倒すわよ!」
話を逸らす感じでウサギのような形をしたレタスに向かって行き一撃で倒してました。
私はどうしてそこで話を逸らすのって思いながら、モロコシ騎士と戦ったの。
「はーい、みんなちゅうもーく」
ある程度モンスターを倒した私たちは、一度孤児院に戻ってきて昼食を摂っています。
そこでアレシャス様が今日の目的を話し始め、みんなの顔が輝いたんです。
「今日はみんなの戦闘スタイルから、連携を出来るようにするのが目的だよ。みんな失敗を恐れず行こうね」
「「「「「は~い」」」」」
アレシャス様は簡単に説明しますが、より戦いの精度を上げようとしているのは分かります。
子供たちは張り切りますけど、ティアは違いました。
「ちょっちょっと聞いてないわよ!」
「今言ったでしょティア、はいティアの新しい装備」
黒い金属で出来たとても大きなハンマーと、動きやすそうな青い布の服を受け取り、ティアは何だか嬉しそうです。
他の子たちも装備を貰う門の前に並び始めます。
「でも・・・みんなを見て嬉しいのに、私どうしてかな?」
子供たちと違い、ティアの嬉しそうな表情を見て、胸の奥が少しチクッとしました。
子供たちを見てもならないのに、どうしてティアを見てると痛いのか不思議でした。
「さぁみんな装備したね、じゃあ今度は同じ装備の子たちで集まって戦うんだ、まだ戦えない子たちはティアの班ね」
こうしてダンジョンに再度入り戦いが始まります。
でも、5人1組になって戦うのはいつもの事で、何が変わったのかとみんな不思議そうです。
「ふふ、みんな不思議そう。装備を無償で渡す為の口実だから当たり前ね」
ほんとはそれ以外の意味はなくて、みんなはそれだけ優秀だとアレシャス様は言っていました。
私は戸惑う子たちの背中を押して別れてもらい、私も自分の隊に参加です。
「でもシャンティ姐」
「私たちはいつも通りやればいいのよフォルフ、さぁあなたは私と前衛ですよ」
班のリーダーにも目線で指示して、それぞれレベルの高い私とティア、ムクロスにリミリルにダムダムが別れました。
この後は、PTとして1人ずつ班を分ける予定で、それが今回の目的です。
「じゃあ出発するよぉ」
「ちょっと待ってよ!種族で分けたのは分かるけど、いつもと変わらないじゃない、説明しなさいよね」
ティアが怒って前のアレシャス様に怒鳴ったけど、アレシャス様はまぁまぁとティアを宥めて背中を押しダンジョンを進みます。
この編成は、今後強くなるモンスターに対抗する為なんだと、アレシャス様が説明してました。
「ほんとかしら?装備を渡しただけに見えるんだけど」
「そ、そんな事はないさぁ~」
はははっと笑うアレシャス様をティアはちょっと笑って見ています。
私はまた胸がチクっとして、どうしたんだろうと首を傾げたんです。
「この後ね、PTに分けるからその強さ調整なんだよ」
「何だか、とって付けな気がするわね」
「そんな事ないさティア、孤児院では勉強もしてるだろ?ここを卒業したらお店で働くことも出来るし、冒険者や騎士になりたいって子もいるよね?その為の編成なんだって」
そうかしら?っとティアは疑っていますが、アレシャス様が子供たちの未来の為を思っているのは本当です。
ティアもそこは分かっていて渋々納得して班に戻りました。
「まただわ、なんなのかな」
「シャンティ!」
胸のチクチクを気にしてたら、大きな声で私を呼ぶ声がして、私は咄嗟に前を見ます。目の前に大きなイノシシがいて、大きな頭が私にぶつかろうとしていたんです。
私はもうダメだと目をギュッとつぶりましたよ。
「あれ?」
しばらくしても衝撃が来ませんでした。
不思議に思った私は、そ~っと目を開けると、そこにいたモンスターは消えていたんです。
「あああ、アレシャス様!?」
私はアレシャス様に抱き抱えられ守られていたんです。
「大丈夫シャンティ?」
「はは、はいっ!」
私の返事を聞いて直ぐに放してくれましたけど、まだ私の胸はドキドキしています。
アレシャス様がまた助けてくれて、私はとても嬉しかった。
「大丈夫シャンティ!」
「う、うん、ごめんねティア」
胸を押さえ、私はドキドキが静まるのを待ちますが、アレシャス様を見てしまうと止まりません。
このままじゃ戦えないと、私は深呼吸をして何とか収まるのを待っていたら、ティアが心配して来てくれたわ。
「気をつけないとダメよシャンティ。ここは肉を手に入れる為の新しい階層なんだから、モンスターだって強くなってるんだからね」
「そ、そうだね、ごめんねティア」
ティアの言葉に返事をしたけど、それは適当な心の籠ってない返事で、今は何を聞かれてもしっかりと答えられません。
ここは野菜ダンジョンに作られた2階の肉エリアで、モンスターも少し強くなってるから、考え事をしてる余裕はないんです。
「それにしても、すごかったわねあいつ」
「そ、そうだねスゴかったね」
気持ちを切り替えようとしたのに、ティアがアレシャス様の話しを振ってきて、胸のドキドキを押さえて返事をしました。
私は見ていなかったけど、スゴイ早さでイノシシを倒したと褒めていました。その早さは、私たちの中で一番目の良い、25レベルまで上がったムクロスが気づかないほどだそうです。
「あぁ~あ、やっぱりシャンティが一番なのかなぁ・・・あたいじゃダメかなぁ」
子供たちに指示を出しているアレシャス様をやっと落ち着いて見れて、ぼーっとしていた私に、ティアがなにか言ってました。
私は聞いてなかったのでティアの方を向いたのだけど、アレシャス様を見てて私は聞き間違いかと思ったの。
「ティア?」
「ううん、何でもな~い・・・あたいは見てるだけで良いわ、これ以上傷つきたくないもの」
よく分からないことを言って歩いて言ってしまい、私はティアの背中に呟いたわ。
アレシャス様が私たちを傷つける事なんてありません。
「今みたいに助けてくれますよ」
そう信じてアレシャス様をみたのだけど、今度は胸の奥がきゅってなりました。
さっきのチクチクとはまた違った感じで、いったい私はどうしちゃったのでしょう。
「みんなお疲れ、今日は肉パーティーだよ」
「「「「「わぁーい!」」」」」
ダンジョンから帰ってきて、私たちは夕食に入りました。
そこで下の階に進んだことを祝ってお祝いしようと言うことになって、アレシャス様の手料理が振る舞われたんです。
「これリミリルが取った肉だよ」
「ありがとうリミリル」
「ボクのも食べてよアレシャス様」
「ありがとうダムダム」
みんなアレシャスの周りに集まりスゴく楽しそうで、焼きたての大きなお肉をみんなでかぶりついてました。
私も久しぶりのお肉に表情が緩みます。
「みんな嬉しそう」
私は少し離れてそれを見ていて、ここに来て初めてみんなの本当の笑顔を見た気がします。
手に持ったお皿のお肉を食べながら、もうお腹が空いて苦しい思いはしない。
「ありがとうございますアレシャス様」
感謝の気持ちが溢れてきて、自然と視線がアレシャス様に向きました。
そんな視線に気づいたのか、あの人が私に近づいてきて、私は顔を逸らしてドキドキです。
「シャンティ食べてる?今日は危なかったね」
「は、はいアレシャス様!さきほどはすみませんでした」
謝る私にアレシャス様は、笑顔で頭を撫でてくれました。
いつもの優しい手で、暖かな気持ちが伝わってきます。
傍にずっといたいと私は気持ちが溢れてきて、このまま撫でられたいって思ったんです。
「謝る事じゃないよシャンティ、君が怪我をしたらティアもみんなも心配する」
「みんなですか・・・アレシャス様は入ってないんですか?」
私は小声でそんなことを呟いていました。
アレシャス様が「はい?」って聞き返してたのですが、私も不思議で頭を傾けたんです。
「シャンティ?」
「い、いえ!ごめんなさい。私、今日変なんです」
どうしてそんな言葉が出たのか、自分でも分からず戸惑っていると、アレシャス様の答えが小さく聞こえて来たんです。
「僕も、シャンティが心配だよ」
アレシャス様の恥ずかしそうな顔と一緒にそんな言葉を貰えました。
私はとても嬉しかったけど、アレシャス様の笑顔を見て、身体が熱くなってきました。
「そうか、私」
ここで私は自分の気持ちに気づいたんです。
私たちを救ってくれただけでなく、ダンジョンと言う力を使わせてくれたアレシャス様が好きなんです。
「料理を作ったり掃除をしたり、いつも一緒にいるシャンティの事を妹みたいに思ってる。そんなシャンティを心配しないわけ無いよ」
自分の気持ちが分かった今、アレシャス様の最後の言葉はとてもショックでした。
今の私は、隣を歩くには足りないんだと強くなろうと決めたんです。
「アレシャス様!」
「はい?」
「私もっと頑張ります!」
アレシャス様に宣言して、私はお皿のお肉を勢いよく食べました。
アレシャス様は良く分かってなかったみたいですけど、もっと強く大人に成長して見せます。もう妹みたいなんて言わせませんよ。
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どうもマッタリーです
明日からファンタジー小説大賞が始まるので、9月の間は2話の投稿にさせていただきます。
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