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2章 1年1学期前半
34話 新しい生活
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「ここが僕の部屋で、この扉を開けるとシャンティの部屋だよ」
私は白狼族のシャンティと言います。
色々あって、今はアレシャス様に雇われた孤児です。
「こんなきれいな服も頂けて部屋まで」
「メイド服は仕事着だから当然だよ、個室だって生活には必要でしょ?」
「それはそうかもしれませんけど」
今日から私は使用人として、貴族であるアレシャス様に仕える事になります。
私が使う部屋の扉が開かれると、ほんとに立派で私には勿体ないと感じました。
「こ、こんなに広くてきれいな部屋を私が使うんですか」
「うんそうだね、トイレとお風呂は向こうに見える扉を開けるとあるんだ。お風呂は毎日入るようにね」
アレシャス様が指差した部屋の奥に扉があり、その2つがトイレとお風呂になってるそうです。
そして、きれいな机にフカフカのベットとそれだけでもすごいのに、大きなタンスとクローゼットまでありました。
「私なんかに勿体ないですアレシャス様」
「そんな事ないってばシャンティ。それに他の2つも同じく作りだよ」
「ですけど」
私はここにくる前は小さな村で暮らしていました。
その村が盗賊に襲われ、お父さんとお母さんが私を逃がしてくれたんです。
私だけが助かりここにたどり着き、街を彷徨っている時、シャンティに助けて貰った。
「だから私は何も出来ないんです」
「そうだったんだね」
そんな何も出来ない私に、この部屋は眩しすぎます。
私の事情を話すと、アレシャス様は私の頭を撫でてくれて、笑顔でそんな事はないと言ってくれたんです。
「シャンティ、君はしっかりと仕事が出来るし、言葉遣いだってとても良いじゃないか、自分に自信を持ってよ」
「でも、私はお母さんたちを見捨てたんです」
「それは違うよシャンティ。ふたりの意志を受け継いだんだ、逃げたわけじゃない」
アレシャス様は励ましてくれますが、私の言葉遣いが良いのは、村での教育が良かったからなのと、お母さんのマネをしてるだけです。
私のお父さんは村の村長だったから、少しは教育を受けていました。
「だから、言葉遣いが良いわけではないし、他の事は何にもできない役立たずです」
いつも大変な畑仕事をティアがしている時だってそうです。
私は、小さな子供たちを見ているだけだった。
「良く聞いてシャンティ。今の君は雇われてここにいて、この部屋は仕事に必要な物だから用意されてる。それを使うのは君の権利だし、健康管理や生活の維持は僕の責任だ」
「で、でも」
「それとも、シャンティは仕事をしたくないのかな?」
「そ、そんなことはありません!?」
仕事が出来なくても、私はやる気だけなら誰にも負けない自信があります。
アレシャス様の為にもみんなの為にも、私は頑張らないといけないんです。
「だからこの部屋があるんだよシャンティ。それに、君は両親を亡くしたのを自分のせいにしてるけど、君のせいじゃない」
アレシャス様は撫でていた手を止め、私の頭を胸に引き寄せ抱きしめてくれます。
私は戸惑ったけど、とても暖かくて優しかった。
「ご両親は命をかけて君に託した。後悔よりも精進だよシャンティ」
「はい」
「うんうん、シャンティは良い子だからね、そう言ってくれると思ったよ」
アレシャス様は頭を撫でてくれて、その手は優しくてちょっとくすぐったかったです。
「辛い思いをしても君は1人じゃない。ティアたちがいるし僕もそばにいるよ。みんなで支えていこうね」
撫でながら励ましの言葉を貰い、私は泣きました。
しばらくして、私はとても恥ずかしく思ったんです。だって泣き疲れたのか、私はベッドにいつの間にか寝てて、アレシャス様は横で手を握っていてくれたんです。
「目が覚めた?」
「あ、アレシャス・・・私」
「まだ寝てなよシャンティ」
起きようとしてアレシャス様に止められ、布団を掛けて貰います。
横に座るアレシャス様は、とても落ち着いてますけど、私は状況が分からなくて混乱しました。
「アレシャス様、私」
「シャンティは疲れてたんだ、身体も心もね。だから泣いて発散させてスッキリした明日から頑張ろうね」
「はい」
もう何も出来ないなんて言いません。私は変わったんです。
「じゃあ僕は自分の部屋に戻るね」
「あの、アレシャス様」
椅子から立ち上がるアレシャス様を引き止め、私はしばらく居て欲しいとお願いします。
目が覚めてしまった事もありますが、1人だと怖かったんです。
「じゃあ、何かお話しでもしようか?」
「すみませんお願いします」
「謝らないでよシャンティ、これはさっき約束した助け合いだよ」
感謝の言葉を伝えた私は、アレシャス様のお話しを聞かせてもらい、いつの間にか眠っていました。
気づいた時には朝になっていて、アレシャス様が横で起きていたのはビックリでしたよ。
「じゃあまず、メイドの仕事から教えるね」
朝食をアレシャス様の部屋で一緒に摂った後、テーブルを挟んでお仕事のお話しになりました。
でも、それは私の仕事じゃないんですかと、お茶を私に淹れてくれるアレシャス様にに質問です。
「まだ教えてないから僕の仕事だよシャンティ」
「教えてはいただけないのですか?」
「それはこの後ね」
今は説明の時間とアレシャス様は言ってきます。
朝食もアレシャス様が作ったそうですし、良いのでしょうかと私は疑問です。
「シャンティの主なお仕事は、部屋の掃除だね。そして孤児院に行って貰うんだけど、そうでない時は僕の後ろに立って待機してください」
私はその先があると思って聞く体勢でいました、ですがアレシャス様はお茶を飲んでいて、もう終わった感じを出しています。
まさかそれだけ?っと思い、私は聞いてみたんです。
「あのアレシャス様・・・それだけですか?」
「そうだね、それだけだね」
一言、驚きの肯定の言葉をもらって、私はすごく動揺しています。
お貴族様の使用人がそれだけのはずありません。さっき教えると言ったお茶も料理もなしですよ。
きっと、なにも知らない私に遠慮している、絶対にそうだと仕事を貰える様に聞き返します。
「アレシャス様、遠慮はいりません。身の回りのお世話とか、料理を作るとかありますよね?」
「あぁ~まぁそこら辺は僕が自分でやってるから、シャンティはしなくていいんだ。孤児院に行って貰うのが主な仕事だからね」
確かに孤児院との連絡係の為に私はここにいます。
でも雇われたのですから、アレシャス様のお世話もしなくてはいけないと私はまだ引きません。
着替えとかは恥ずかしいけど、いつかは出来る様になって見せます。
「私はアレシャス様に雇われた使用人です、仕事はしないとダメです」
「あ~うん、そうなんだけど・・・これはしっかりと説明しないとダメだね」
アレシャス様がダンジョンの玉をいくつもテーブルに出し、私はそれをただじっと見ています。
私は首を傾げてアレシャス様を見ます、ニコニコしたアレシャス様は、ダンジョンの玉を指差して説明を始めましたよ。
「右から、生活ダンジョン・訓練ダンジョン・スキル強化ダンジョンとバカンスダンジョンって分かれてる。僕の生活はほとんどこの中でしてるから、本来使用人はいらないんだよ」
「でも、一緒に行けばお世話を出来ますよね?」
「うんそれは出来るだろうね。でもねシャンティ、僕は自分でやりたいんだ、どうしてか分かるかな?」
アレシャス様の問いに私は頭を悩ませました。
本来貴族は使用人に身の回りの事をやって貰うのが当たり前で、それを自分で行うことにどんな意味があるのか何て分かるはずないです。
「うぅ~分からないです」
頭から湯気が出そうになるまで考えましたが、結局分からず涙目でアレシャスに答えを期待してしまいました。
アレシャス様の手が頭に添えられ、慰めて貰うしまつです。
「分からないみたいだね、じゃあ答えを言うけど、僕は平民出身だからだね」
アレシャス様が他の貴族たちとちょっと違う理由もそれで、私は納得したんです。
色々納得して話しの続きを聞き、アレシャス様の目指している夢のお話しを聞きました。
「夢ですか」
「貴族だと、夢とまで言える程の事なんだ。だから僕はそれを目指してる」
みんなで食卓を囲み楽しく話をして暮らす、そんな普通の生活を夢見ていると、凄い輝いた笑顔で話してくれて、アレシャス様も子供なんだと、この時初めて思ったんです。
私たちを助けてくれた時、アレシャス様は落ち着いていて大人に見えたんですよ。
「貴族になると生活は決められた毎日を永遠と過ごし、貴族以外とは話してはいけない。そんな生活は僕はイヤなんだっ!だからそうならない為に僕は今進んでる。それを強く思えるのが自分の事をしている時なんだよ」
熱の籠ったアレシャス様の話はまだ続き、ダンジョンに入って洗濯をしていると楽しいとか、モンスターと戦っていると生きている実感が湧くと話してくれました。
本当に私たちと同じ子供だと、私も楽しく聞いてしまったです。
「分かる気がします」
「そうでしょ、自由がない生活なんて生きてるって言わないよ。だから僕は、ここで良い成績を出さず、普通に暮らす為、何処か小さな領地を貰うと決めてるんだよ」
小さな領地ならそれが可能とアレシャス様は拳を掲げました。
有名でなければだれも来訪せず、普通の生活が出来ると夢見ているアレシャス様、その表情はとても子供っぽくて可愛いと思いましたね。
私と2つしか違わないアレシャス様、当たり前の事なのに私はそれに気づかなかったと少し反省し、使用人として頑張ろうと決めたんです。
「分かりましたアレシャス様」
「ありがとシャンティ・・・でもこの事を話して分かってくれたのはシャンティが初めてだよ・・・ダリアさん。ここにくる前の施設にいたメイドさんたちは分かってくれなかったんだ」
ここにくる前の教育施設での事を少し話して貰い、こんな事があったんだと色々聞きました。
アレシャス様は貴族としての訓練で大変だったと笑っていますが、私はそれを聞き、辛いモノに聞こえましたよ。
「大変なのですね貴族も」
「そうなんだ、でもしばらくしてダリアたちは話すようになって楽しかった・・・もし、施設で誰も話をしてくれなかったら、今の僕じゃなかったかもだよ。この力だって、他の事に使ってたかもね」
そういって、ダンジョン玉を触ってコロコロと転がしているアレシャス様、何だか寂しそうにしています。
きっと施設の人を思い出し、寂しい気持ちになってるんです。
私が埋めなければいけない、そんな気持ちが溢れて来て、私のやる事が出来ました。
「シャンティはこれを見ても不思議に思ってないようだけど、普通はダンジョンの玉は1つしか持ってないんだよ」
突然違う話しに変わり、私は首を傾げて聞くだけで、それが場の空気を変える為の話しであったのは、知らされるまで分かりませんでしたよ。
「じゃあ、アレシャス様はどうしてそんなに持っているんですか?」
「それが僕の特別な力だからだよ、複数のダンジョンを作る事が出来るんだ」
アレシャス様は更に言いました「普通ダンジョン貴族はダンジョンには入れない」と、私たちと一緒にダンジョンに入ったのに何でと思いましたよ。
でもそこは特別な力ではなく、誰も知らないだけらしく、最後にアレシャス様はこう締めくくりました。
「それを公表すると僕の目標から遠くなる。だから普通の成績を取って普通に卒業するんだ」
「その為に自分のことは自分でしたい、そう言いたいんですね」
アレシャス様は頷き答え、その表情を見て私は思ったんです。
ティアたちに会う前の街をさまよっていた自分に似ているって、アレシャス様は孤独なんです。
だから私はアレシャス様の後ろでは無く、横を歩ける様になろうと決意しました。今は無理ですけど、いつかは立ってみせます。
「わかりました、アレシャス様の後ろに私は待機します」
「ありがとシャンティ、もしよかったらだけど、一緒に料理とかを作らない?その方が楽しいしさ」
笑顔でアレシャス様が私を誘ってくれて、私も笑顔でそれに頷いて賛成し、アレシャス様と一緒に部屋の掃除をしたんです。
アレシャス様は友達が欲しいんです。誰がそれを埋めて差し上げないといけない、気持ちの分かる私がなって見せる、そう心に刻みました。
「見てよあの平民上がり、獣人なんてメイドにして連れ歩いてるわよ」
部屋を出た私たちを見て、遠くの生徒がそんなヒソヒソ話しをしていました。
私は前を歩くアレシャス様をみたのですけど、ぜんぜん気にしてない感じです。
私もアレシャス様が気にしないのであれば、動揺してはいけないと静かに後ろを歩きます。
アレシャス様は自分の目標に向かって歩いてる、それなら私はアレシャス様の心の支えになって差し上げるんです。
私は白狼族のシャンティと言います。
色々あって、今はアレシャス様に雇われた孤児です。
「こんなきれいな服も頂けて部屋まで」
「メイド服は仕事着だから当然だよ、個室だって生活には必要でしょ?」
「それはそうかもしれませんけど」
今日から私は使用人として、貴族であるアレシャス様に仕える事になります。
私が使う部屋の扉が開かれると、ほんとに立派で私には勿体ないと感じました。
「こ、こんなに広くてきれいな部屋を私が使うんですか」
「うんそうだね、トイレとお風呂は向こうに見える扉を開けるとあるんだ。お風呂は毎日入るようにね」
アレシャス様が指差した部屋の奥に扉があり、その2つがトイレとお風呂になってるそうです。
そして、きれいな机にフカフカのベットとそれだけでもすごいのに、大きなタンスとクローゼットまでありました。
「私なんかに勿体ないですアレシャス様」
「そんな事ないってばシャンティ。それに他の2つも同じく作りだよ」
「ですけど」
私はここにくる前は小さな村で暮らしていました。
その村が盗賊に襲われ、お父さんとお母さんが私を逃がしてくれたんです。
私だけが助かりここにたどり着き、街を彷徨っている時、シャンティに助けて貰った。
「だから私は何も出来ないんです」
「そうだったんだね」
そんな何も出来ない私に、この部屋は眩しすぎます。
私の事情を話すと、アレシャス様は私の頭を撫でてくれて、笑顔でそんな事はないと言ってくれたんです。
「シャンティ、君はしっかりと仕事が出来るし、言葉遣いだってとても良いじゃないか、自分に自信を持ってよ」
「でも、私はお母さんたちを見捨てたんです」
「それは違うよシャンティ。ふたりの意志を受け継いだんだ、逃げたわけじゃない」
アレシャス様は励ましてくれますが、私の言葉遣いが良いのは、村での教育が良かったからなのと、お母さんのマネをしてるだけです。
私のお父さんは村の村長だったから、少しは教育を受けていました。
「だから、言葉遣いが良いわけではないし、他の事は何にもできない役立たずです」
いつも大変な畑仕事をティアがしている時だってそうです。
私は、小さな子供たちを見ているだけだった。
「良く聞いてシャンティ。今の君は雇われてここにいて、この部屋は仕事に必要な物だから用意されてる。それを使うのは君の権利だし、健康管理や生活の維持は僕の責任だ」
「で、でも」
「それとも、シャンティは仕事をしたくないのかな?」
「そ、そんなことはありません!?」
仕事が出来なくても、私はやる気だけなら誰にも負けない自信があります。
アレシャス様の為にもみんなの為にも、私は頑張らないといけないんです。
「だからこの部屋があるんだよシャンティ。それに、君は両親を亡くしたのを自分のせいにしてるけど、君のせいじゃない」
アレシャス様は撫でていた手を止め、私の頭を胸に引き寄せ抱きしめてくれます。
私は戸惑ったけど、とても暖かくて優しかった。
「ご両親は命をかけて君に託した。後悔よりも精進だよシャンティ」
「はい」
「うんうん、シャンティは良い子だからね、そう言ってくれると思ったよ」
アレシャス様は頭を撫でてくれて、その手は優しくてちょっとくすぐったかったです。
「辛い思いをしても君は1人じゃない。ティアたちがいるし僕もそばにいるよ。みんなで支えていこうね」
撫でながら励ましの言葉を貰い、私は泣きました。
しばらくして、私はとても恥ずかしく思ったんです。だって泣き疲れたのか、私はベッドにいつの間にか寝てて、アレシャス様は横で手を握っていてくれたんです。
「目が覚めた?」
「あ、アレシャス・・・私」
「まだ寝てなよシャンティ」
起きようとしてアレシャス様に止められ、布団を掛けて貰います。
横に座るアレシャス様は、とても落ち着いてますけど、私は状況が分からなくて混乱しました。
「アレシャス様、私」
「シャンティは疲れてたんだ、身体も心もね。だから泣いて発散させてスッキリした明日から頑張ろうね」
「はい」
もう何も出来ないなんて言いません。私は変わったんです。
「じゃあ僕は自分の部屋に戻るね」
「あの、アレシャス様」
椅子から立ち上がるアレシャス様を引き止め、私はしばらく居て欲しいとお願いします。
目が覚めてしまった事もありますが、1人だと怖かったんです。
「じゃあ、何かお話しでもしようか?」
「すみませんお願いします」
「謝らないでよシャンティ、これはさっき約束した助け合いだよ」
感謝の言葉を伝えた私は、アレシャス様のお話しを聞かせてもらい、いつの間にか眠っていました。
気づいた時には朝になっていて、アレシャス様が横で起きていたのはビックリでしたよ。
「じゃあまず、メイドの仕事から教えるね」
朝食をアレシャス様の部屋で一緒に摂った後、テーブルを挟んでお仕事のお話しになりました。
でも、それは私の仕事じゃないんですかと、お茶を私に淹れてくれるアレシャス様にに質問です。
「まだ教えてないから僕の仕事だよシャンティ」
「教えてはいただけないのですか?」
「それはこの後ね」
今は説明の時間とアレシャス様は言ってきます。
朝食もアレシャス様が作ったそうですし、良いのでしょうかと私は疑問です。
「シャンティの主なお仕事は、部屋の掃除だね。そして孤児院に行って貰うんだけど、そうでない時は僕の後ろに立って待機してください」
私はその先があると思って聞く体勢でいました、ですがアレシャス様はお茶を飲んでいて、もう終わった感じを出しています。
まさかそれだけ?っと思い、私は聞いてみたんです。
「あのアレシャス様・・・それだけですか?」
「そうだね、それだけだね」
一言、驚きの肯定の言葉をもらって、私はすごく動揺しています。
お貴族様の使用人がそれだけのはずありません。さっき教えると言ったお茶も料理もなしですよ。
きっと、なにも知らない私に遠慮している、絶対にそうだと仕事を貰える様に聞き返します。
「アレシャス様、遠慮はいりません。身の回りのお世話とか、料理を作るとかありますよね?」
「あぁ~まぁそこら辺は僕が自分でやってるから、シャンティはしなくていいんだ。孤児院に行って貰うのが主な仕事だからね」
確かに孤児院との連絡係の為に私はここにいます。
でも雇われたのですから、アレシャス様のお世話もしなくてはいけないと私はまだ引きません。
着替えとかは恥ずかしいけど、いつかは出来る様になって見せます。
「私はアレシャス様に雇われた使用人です、仕事はしないとダメです」
「あ~うん、そうなんだけど・・・これはしっかりと説明しないとダメだね」
アレシャス様がダンジョンの玉をいくつもテーブルに出し、私はそれをただじっと見ています。
私は首を傾げてアレシャス様を見ます、ニコニコしたアレシャス様は、ダンジョンの玉を指差して説明を始めましたよ。
「右から、生活ダンジョン・訓練ダンジョン・スキル強化ダンジョンとバカンスダンジョンって分かれてる。僕の生活はほとんどこの中でしてるから、本来使用人はいらないんだよ」
「でも、一緒に行けばお世話を出来ますよね?」
「うんそれは出来るだろうね。でもねシャンティ、僕は自分でやりたいんだ、どうしてか分かるかな?」
アレシャス様の問いに私は頭を悩ませました。
本来貴族は使用人に身の回りの事をやって貰うのが当たり前で、それを自分で行うことにどんな意味があるのか何て分かるはずないです。
「うぅ~分からないです」
頭から湯気が出そうになるまで考えましたが、結局分からず涙目でアレシャスに答えを期待してしまいました。
アレシャス様の手が頭に添えられ、慰めて貰うしまつです。
「分からないみたいだね、じゃあ答えを言うけど、僕は平民出身だからだね」
アレシャス様が他の貴族たちとちょっと違う理由もそれで、私は納得したんです。
色々納得して話しの続きを聞き、アレシャス様の目指している夢のお話しを聞きました。
「夢ですか」
「貴族だと、夢とまで言える程の事なんだ。だから僕はそれを目指してる」
みんなで食卓を囲み楽しく話をして暮らす、そんな普通の生活を夢見ていると、凄い輝いた笑顔で話してくれて、アレシャス様も子供なんだと、この時初めて思ったんです。
私たちを助けてくれた時、アレシャス様は落ち着いていて大人に見えたんですよ。
「貴族になると生活は決められた毎日を永遠と過ごし、貴族以外とは話してはいけない。そんな生活は僕はイヤなんだっ!だからそうならない為に僕は今進んでる。それを強く思えるのが自分の事をしている時なんだよ」
熱の籠ったアレシャス様の話はまだ続き、ダンジョンに入って洗濯をしていると楽しいとか、モンスターと戦っていると生きている実感が湧くと話してくれました。
本当に私たちと同じ子供だと、私も楽しく聞いてしまったです。
「分かる気がします」
「そうでしょ、自由がない生活なんて生きてるって言わないよ。だから僕は、ここで良い成績を出さず、普通に暮らす為、何処か小さな領地を貰うと決めてるんだよ」
小さな領地ならそれが可能とアレシャス様は拳を掲げました。
有名でなければだれも来訪せず、普通の生活が出来ると夢見ているアレシャス様、その表情はとても子供っぽくて可愛いと思いましたね。
私と2つしか違わないアレシャス様、当たり前の事なのに私はそれに気づかなかったと少し反省し、使用人として頑張ろうと決めたんです。
「分かりましたアレシャス様」
「ありがとシャンティ・・・でもこの事を話して分かってくれたのはシャンティが初めてだよ・・・ダリアさん。ここにくる前の施設にいたメイドさんたちは分かってくれなかったんだ」
ここにくる前の教育施設での事を少し話して貰い、こんな事があったんだと色々聞きました。
アレシャス様は貴族としての訓練で大変だったと笑っていますが、私はそれを聞き、辛いモノに聞こえましたよ。
「大変なのですね貴族も」
「そうなんだ、でもしばらくしてダリアたちは話すようになって楽しかった・・・もし、施設で誰も話をしてくれなかったら、今の僕じゃなかったかもだよ。この力だって、他の事に使ってたかもね」
そういって、ダンジョン玉を触ってコロコロと転がしているアレシャス様、何だか寂しそうにしています。
きっと施設の人を思い出し、寂しい気持ちになってるんです。
私が埋めなければいけない、そんな気持ちが溢れて来て、私のやる事が出来ました。
「シャンティはこれを見ても不思議に思ってないようだけど、普通はダンジョンの玉は1つしか持ってないんだよ」
突然違う話しに変わり、私は首を傾げて聞くだけで、それが場の空気を変える為の話しであったのは、知らされるまで分かりませんでしたよ。
「じゃあ、アレシャス様はどうしてそんなに持っているんですか?」
「それが僕の特別な力だからだよ、複数のダンジョンを作る事が出来るんだ」
アレシャス様は更に言いました「普通ダンジョン貴族はダンジョンには入れない」と、私たちと一緒にダンジョンに入ったのに何でと思いましたよ。
でもそこは特別な力ではなく、誰も知らないだけらしく、最後にアレシャス様はこう締めくくりました。
「それを公表すると僕の目標から遠くなる。だから普通の成績を取って普通に卒業するんだ」
「その為に自分のことは自分でしたい、そう言いたいんですね」
アレシャス様は頷き答え、その表情を見て私は思ったんです。
ティアたちに会う前の街をさまよっていた自分に似ているって、アレシャス様は孤独なんです。
だから私はアレシャス様の後ろでは無く、横を歩ける様になろうと決意しました。今は無理ですけど、いつかは立ってみせます。
「わかりました、アレシャス様の後ろに私は待機します」
「ありがとシャンティ、もしよかったらだけど、一緒に料理とかを作らない?その方が楽しいしさ」
笑顔でアレシャス様が私を誘ってくれて、私も笑顔でそれに頷いて賛成し、アレシャス様と一緒に部屋の掃除をしたんです。
アレシャス様は友達が欲しいんです。誰がそれを埋めて差し上げないといけない、気持ちの分かる私がなって見せる、そう心に刻みました。
「見てよあの平民上がり、獣人なんてメイドにして連れ歩いてるわよ」
部屋を出た私たちを見て、遠くの生徒がそんなヒソヒソ話しをしていました。
私は前を歩くアレシャス様をみたのですけど、ぜんぜん気にしてない感じです。
私もアレシャス様が気にしないのであれば、動揺してはいけないと静かに後ろを歩きます。
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