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2章 1年1学期前半

33話 再確認

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朝起きて、授業が始まる前に教師に外に行くと告げ、孤児院に向かい走ります。


「あの子たち、入ってくれるかな?くれるよね」


僕は、とてもニコニコして走ったんだ。
それだけ楽しみで心配でもあって、断られたらどうしようと不安なんだよ。


「まあ、ダメだったら支援だけして、冒険者に移れば良いんだけどね」


昨日学園に戻って来た時、バルサハル先生に帰って来たと報告したら、帰って来たの?って顔されました。
それを見て、僕はもう報告したくないとイラっとしたけど、そういうわけにもいかず報告だけしようと思ってる。


「進級の為だけの学園生活を過ごす事になりそうだね」


学園の基本行事だけには出ようと決め、テスト以外はスルーかなっと、笑って走ってしまったね。


「さてティア、答えを聞かせてくれるかな」


こうして僕は、孤児院に着いてみんなに聞いています。
みんなは朝食がまだだったらしいので、ラビット肉の入った卵スープを出したんだ。


「その前に、あんたベッドを勝手に直したでしょ」
「良いじゃないか、あれは了承を貰う為の賄賂みたいなものだよ」
「何がワイロよ」


ブツブツと何かを言ってくるティアだけど、シャンティから耳打ちを貰い感謝してる事を知りました。
ほんとに素直じゃないウサギさんだねっと、僕は話しを進めてもらったよ。


「一つ条件を出していいかしら?」
「僕が出来る事なら何でも良いよ」
「言ったわね」


ティアが立ち上がり、凄みを持ちながら傍まで来ると、どうしてか角銅貨を15枚テーブルに出してきたよ。
それを見て訳が分からずハテナマークを浮かべてしまったね。


「これね、昨日のドロップ品を売ったお金なの、半分受け取りなさい」
「え!?」


僕は驚き何も言えませんでしたよ。
ティアが朝の市場で売って来るだけでなく、それを僕と半分に分ける事を条件にするとは思いません。


「野菜はティアたちの物だから、お金は貰えないよ」
「分からないかしら?あんたの話しはこちらに良い話すぎるのよ。だからお金だけでも分けたいの」
「う~ん、その気持ちは分かるね・・・分かったよティア、それでかまわないよ、じゃあ決まりかな?」


きっとティアは、僕が見限った時の事を考えてる。
報酬を半分にしてるんだから、勝手に辞めないでとか言うつもりなんだと思います。


「そうね、あたいたちはダンジョンに入って野菜を取るわ」
「うんよろしく」


安全策はあった方が良いと思った僕は、ある考えが浮かびます。
僕の外出は監視されてるから、見張り役を巻く以外に補佐役が欲しくなったんだ。


「じゃあ、僕からもいいかな?」
「も、もちろんいいけど」


ティアはかなり警戒したけど、僕が賛成したからか断って来なかった。
みんなも不安なのか、空気がピリピリしてるのが分ったけど、ちょっと違うんだよね。


「誰か、僕の使用人になってくれないかな?」
「「「「「え!?」」」」」


僕の提案にみんなが首を捻ってしまった。
仕方ないので説明したけど、みんな僕は貴族だって知らなかったみたいで、急に畏まってきたから、止めてもらいました。


「えっと、つまりね。僕はここに来れない時も出て来ると思う、だから誰かが代わりにここに来る人材が欲しいんだ」
「ま、まぁあんたが貴族様なら分かるけど」
「それにさ、あまり何度も僕が接触をしていると、変な奴が来るかもでしょ?」
「それは困るわ」


悪い方の理由なんて、いくらでも思いつくので適当に言って納得してもらった。
正直ダンジョンの門はここに玉があれば、出したままにしておけますし、門は玉から2m以上離すと消えてしまう。
玉を置きっぱなしにするから、やはり報告してくれる人が欲しいとお願いしてみます。


「分かったわ、じゃああたいが」
「悪いけど、ティアはダメ」
「なっ!?」


ティアは「何でよ!」って怒って来たけど、その理由は沢山あって困るくらいだよ。


「ティアは相手を威嚇し過ぎてる。僕は学園でハブられてるから、君は我慢出来ないでしょ」
「うっまあそうかも」


僕の使用人になると言う事は、学園でも一緒にイジメに合う。
更に僕との主従関係を保てるのか聞くと、ティアは黙ってしまいます。


「それにねティア、貴族には悪い事をしてくる奴がいるんだよ、そいつらが何かしてきたら我慢できるの?」


ティアは、ぐぅの根も出ず下を向き始めた。
そして僕はシャンティを指名したんだ。


「わ、私ですか!?」
「うん」


シャンティなら言葉使いもしっかりしているし、僕と一緒で我慢も出来る。
もし僕がいない時に虐めにあったら、そいつは容赦しませんよ。


「私で良いのでしょうか?」
「シャンティしかいないよ、報酬はこれでどうかな?」


僕は、さっき貰った角銅貨8枚を渡して見せます。


「何よりそれ」
「分かるでしょティア」


つまり、ダンジョンで僕が貰うはずのお金は、全てシャンティが貰う事を今します。
これは、みんなが頑張ればそれだけシャンティのお給金になると示したんだ。


「もちろん、これはダンジョンの管理としてだからね」


結局みんなが全部貰う事になり、更にはダンジョンも手に入った事になるんだ。
ティアがなるほどって顔したけど、僕をジトって見て来たね。


「あたいの作戦なんて、要らなかったって訳ね。分かったわ、あんたを信じる」
「そう言ってくれると助かるよティア。じゃあ、早速昨日の続きをしようか」


こうして、その日から本格的に野菜ダンジョンに入る事になり、総勢30人でのダンジョン探索が決まったんだ。
ボロボロの服を着替え、みんなには白い運動着を着てもらい、2列で並んでもらった。


「いいかいみんな、2列のままで乱さずに門を走って通るんだよ。前の子の肩から手は離さない様にね」


みんなは言いつけ通り、しっかりと2列になって前の子の肩に手を置いてくれます。
素直に返事をして走るみんなを撫でたい気分だね。


「うん成功だね、しっかり1PTだ」


僕が一番後ろで万が一の体勢だったけど、問題がなくてホッとしました。
最悪僕だけが3PT目になる事を覚悟してたけど、1発で成功しました。


「ね、ねぇ・・・なんだか昨日よりも道が広いんだけど、それに雰囲気が違うというか、変な感じがするわよ?」


ダンジョン画面で敵を見ていると、ティアが震えて言ってきた。
他の子達はキョロキョロしてるけど、昨日のメンバーはちょっと気にしてる。


「流石に勘が良いねティア」


それもそのはず、ここは強化した野菜ダンジョンで、広さが3キロになっています。
ティアにドヤ顔を決めると、眉毛をピクピクさせてますよ。


「あ、あんたねぇ~」
「みんなが了承してくれると思ったから、少し広くしてみたんだ。これでモンスターは多く出て倒せるよ」


ティアの怒りが限界を超えたのか「なんてことするのよ!!」っと怒鳴って来た。
でも、強さは弱いままで変わらないし、野菜は多く手に入れる事が出来ると説得です。


「だからってモンスターを増やすなんてあぶないでしょ!」
「その為のワタガシモンスターなんだよティア。レベルが上がればそれだけ余裕も生まれるし、ワタガシを倒しやすいように道幅も5mにしたんだ」


僕一人ならこんな改造は勿論いらなかった。
子供たちが安全に戦い、ワタガシを囲う為には必要な改造で、良いことずくめでしょっとティアをさらに説得しました。


「わ、分かったわよ!それでどっちに行くのよ」
「まずは野菜モンスターを倒そう。途中ワタガシに会ったら倒すけど、お金になる方優先だね」


昨日ワタガシからドロップした砂糖の方がお金になります。
むしろそっちの方が大金になるけど、今のこの子たちがそんな物を売りに行ったら、悪い奴らに捕まっちゃうのは確実で、高い物はみんなが強くなってから渡す予定なんだ。


「ムクロス行ったの」
「ん、みんな行く」


しばらく戦闘を観戦して、子供たちにある変化が見えてきました。
5人で1組に分かれて戦いだし、連携して戦う様になっていたんだ。


「昨日ダンジョンに先行した子達がリーダーになったからだけど、より効率を良くを無意識にやってる感じだね」


これが才能と言うモノなんだと、僕には無かったモノを見て羨ましいと思ったよ。


「でも、みんな楽しそうだ」


自然に子供たちが頑張っているのを喜ばしく感じて、僕はそれを伸ばして行こうと考えます。
職業が決める事が出来そうで、後で装備を渡そうと笑顔が絶えないよ。


「ムクロス班は隠密系で、リミリル班は魔法かな。ダムダム班は大盾の戦士って感じだね」


みんなを見て動きがそんな感じに流れていました。
そしてティアの班は、周りを注意して見えてる感じでシーフと言ったところです。


「シャンティの班は、自分たちの爪を使って戦う格闘士か、やっぱり獣人って強いんだね」


子供たちはモンスターに苦戦する事も無く、レベルアップ酔い前にお昼の食事タイムになります。
今日は参加してくれたお祝いと言う事で、豪華な料理をみんなに振る舞ったよ。


「お、お肉の塊だ!?」


自分たちよりも大きな肉の塊を見て、子供たちは飛び上がって喜んでくれた。
刀で肉を斬りみんなに分けてあげると、みんなは嬉しそうに食べてくれたんだ。


「みんな元気だね」


レベルアップ酔い前にして正解だったと、みんなの笑顔を見てホッコリです。
この後ダンジョンには入らず、お昼寝タイムを決めます。


「い、良いの?」
「良く動き食べて寝る、これが良いんだよリミリル」


子供はそうして育った方が良い、僕の持論だけど楽しいは正義です。
ティアは呆れた顔していたけど、レベルアップ酔いまでする必要はないです。


「ねぇあんた、正気なの?」


お昼寝の準備をしようと、僕は布団を用意し始めます。それを見て、ティアは一言がひどいかったけど、僕はいたって正気だよ。


「なんだよティア、布団は昨日置いて行ったけどさ、幾つあっても良いでしょ」
「そうだけど・・・これって凄く上等な布団よね?」
「寝やすくて良いでしょ」


ドヤ顔を決めて、僕は布団を敷き始めます。
そして、隙間風が吹く部屋も修繕して行き、壁や天井の穴は塞いでいきました。


「あ、あんたほんとに只者じゃないわね」
「僕はただのダンジョン貴族だよ」


魔力を混合させた壁に変更したので、部屋は普通よりも丈夫になりました。
この魔法外壁は、街の外壁で使われているのと同じで、こちらは少し工夫もしてるんだ。


「外からは壊れた壁に見える様にしたし、これで孤児院が綺麗になったとか言われないね」
「だから、どうしてそんな事が出来るのよ」


普通じゃないとティアからツッコミを貰ったけど、魔道具に使ってる魔法陣に同じのがあるから出来るだけです。
あとは生活魔法で部屋を綺麗にして出来上がると胸を張りましたね。


「ほんとにあんたは」
「まだまだこれからだよティア。子供たちの寝ている間に他の部屋も直しちゃおう、お風呂場に勉強部屋も作って、机やタンスとかも用意しなくちゃだよ」
「はいはい」


やる事はまだまだたくさんあるっと、僕は部屋を転々と移動して直して行きました。
ティアにはずっと呆れられたけど、孤児院が綺麗になるのは嬉しいのか、耳がピョコピョコ動いていたよ。
そして夕方には、シャンティと一緒に学園に帰ることになったんだ。
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