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2章 1年1学期前半

20話 学園

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「見えてきましたよアレシャス様、あれがダンジョン都市ジャステンです」


馬車に揺られて7日、僕はやっと目的地に着き、窓から顔を出し御者さんに返事をします。彼はタルトと言って、マルタの様に仲良くなってお話しをしてたんだ。


「あれが、僕の出発点」


タルトの指差す方角には、とても高い外壁が見ていて、あれがそうなのかと、少しワクワクです。


「ずいぶん大きい外壁だねタルト、ここからじゃ街が見えないよ」


馬車が平原を走っているからと言うのもあるんだけど、見る限り壁の端は見えない。高さは50mはあるかもっと、僕は高いねぇと子供の反応をします。


「それはそうですよアレシャス様、あれは第3外壁で、一番外側にある壁ですからね」
「はい?」


中にも壁があるの?っと、不思議でタルトに聞き返します。壁があるのは当然だと思っていたし、ダリアにはそこら辺は聞いてません。
この国の中心であるあの都市の事は、人口が40万人いると授業で習うだけで、それ以外はダンジョンと貴族としての教育に時間を使ってしまったんだ。


「ど、どう言う事かな?」


ちなみに僕の階級は、貴族の中で一番下の名誉騎士にあたります。学園を卒業したら、最低でも騎士爵が約束されているそうです。


「アレシャス様知らなかったんですか?3つある壁の最初が平民や冒険者がいる平民区。次が貴族区で、アレシャス様の通う学園もそこにあります。そしてその先の壁には王族区があって、大きくて立派なお城もあるらしいです。まぁあっしたちは行ったことがないので良く知りませんがね」


壁のせいで見ることも出来ないと、マルタが笑って教えてくれた。
確かに今見えている壁は、地平線まで続きとても広い事が予想出来る。そんな奥まで見るとなると、それは相当高い場所に行かないと見えない。


「本当に高くね、向こうの山からしか見えないかも」


右手に山があって、そこならと考えました。でもお城の方までは遠くて、ただ見えただけのモノになる。高くてすごいとか、お城が綺麗と言う感想はきっとでてこない。


「これじゃ中でも迷いそうだねタルト」
「何言ってるんですかアレシャス様、聞いてませんか?」


タルトに言われて僕は、思い出した事があって、そうだったと頷いたよ。ダンジョン国の住民は、血を調べてもらった際、手のひらに印が浮かび上がります。


「それは刻印と呼ばれるモノで、それのおかげで国の住民とひと目で分かりますぜ」
「そうだっねタルト、色々な機能があるらしいけど、そんなに必要かな?」


これがない者は外の国の人で入国時に腕輪を貰う事になり、それが入国証で無くすと奴隷落ちしたり、たいへんな扱いを受けるそうです。
そしてその腕輪は、時計や地図と言った印と同じ性能を持ち、身分証になってる。


「僕はタイマーでいつも時間を確認してたけど、たしか都市の中でマップって唱えるんでしょ?」
「そうですそうです、そうすると自分が都市の何処にいるのかが人目で分かるんですよ。いや~すごいですね」


僕の持っているタイマーは他国用だったとダリアの授業で知って、更には刻印の性能を知ったんだよ。でもね、僕にはもっと裏があるんじゃないかとも思ってる、まぁ考えすぎかもだけどね。


「そうだねタルト」
「ですねぇ~っと、そろそろお喋りは終わりです。楽しかったですよアレシャス様」


馬車の移動が終わり、門の前に来て入る為の順番を待ちます。
タルトとはもう話せないので、僕は窓から見てるだけになって、列に並ぶ人たちを眺めました。革の鎧を装備している人ばかりで、冒険者って分かる感じだったよ。


「獣耳の人やエルフさんも少しいるね」


前の冒険者と後ろの冒険者、それぞれどちらか1人がそうでした。人種がほとんどなのは、ここが人種の国だからで、やっぱり女性が多いんだ。


「普通の人でも男が生まれにくいのか」


男の子が生まれにくい原因があるんだろうねっと、僕は動き出した馬車に揺られます。街の中は村とは違った密集した建物が建っていたよ。


「木と石の建物はファンタジーってやつだね」


外国のシックな街って感じで、ちょっと僕の胸が高鳴ります。こんな所に住めば、きっと母さんたちも笑顔で暮らせると、遠くの方に視線を向けて気持ちが落ちたよ。


「ははは、涙が出そうだ」


それは平民だったらの話で、僕は直ぐに現実に戻ったんだ。だってね、次の壁が見えて来て、嫌でもそれを感じる存在感があった。赤い壁に門も少し豪華で強固に見えたんです。


「お貴族様を守る為か・・・更に考えちゃうね」


王都に敵が侵入して来ても、貴族や王族は守られるって事で、格差が出ていると嫌になります。それだけダンジョンヒューマンは大切なんだと再認識して、門番に通して貰うまで外側の街並みを見ていました。


「こっちは嫌な感じがする、同じ都市なのにこんなに違うんだね」


あっちの方に住みたい、休みの日は散歩でもしたいなっと、門番さんに刻印を見せます。貴族の門は僕の刻印が必要で、窓から手を見せると通して貰えましたね。


「あの眼鏡が魔道具なんだよね、ほんとにそっちは発展してるよ」


建物や食事はそうでもないのに、ダンジョンで使えるモノは発展していて、依存していると感じました。ダリアの授業でもそうでしたけど、溢れる所にだけなのがいけない、宝の持ち腐れです。


「収納鞄もあるのに、上の人がダンジョンにしか興味がないのがいけないね」


もっと広めやすくしたいと馬車の中で頭を悩ませ、東西南北にある冒険者ギルドに要請したり、ダンジョンを貸すのも良いかもしれないっと、考えがまとまる前に馬車が止まったんだ。


「さて、外の前に学園だよね、どんなところなのかな」


馬車を降りると、そこには学校の門が目の前にありました。そこから先は校舎しか見えなくて、貴族の学園なんだから、もっと優雅な道や花壇や噴水と綺麗な場所があると、僕の中では想像をしていました。


「もしかして、本当にダンジョンにしか興味がないの?」


でも、その考えは間違っていて、その想像していた場所が正門に存在していて、今いる場所は裏玄関で、僕はいきなり差別と言う名のいじめを受けていたんだよ。


「おかしいな?ダンジョンを作る人以外もいるはすなんだけど」


そんな事は知らずに、馬車を降りて迎えに来ていた先生に挨拶をします。その先生も加担していて、挨拶も説明もなく付いて来るように言って来た。それを知るのはもう少し後だけど、先生の雰囲気から何となく歓迎されてないのは伝わってきましたよ。


「随分急いでるね、ありがとタルト」


タルトに手振りだけで別れを告げ、僕は急いで眼鏡の女先生を追いかけます。手振りでも答えないタルトだったけど、表情を見て返事は貰えたと思ってる。


「ありがとうタルト」


暖かい笑顔をタルトから貰い、僕は元気よく先生の後を歩き説明を聞きます。学園の作りはダリアの授業で聞いていて大体は分かっているんだ。現物を見て怒っている風の説明を聞いてフムフムと覚えていきます。


「知ってると思いますが、この学園は大きな四角い建物が5つ並んでいて、手前からダンジョン科・騎士科・魔法科と科目で使う建物が決まっています。後の2つ、魔法科校舎の後ろに建てられているのが大講堂で次が訓練施設、7日後の入学式は大講堂で行われます」


前を歩く先生は簡単に説明されますが、最後の建物が騎士科と魔法科の重要な建物で、どんな攻撃でも堪えられる魔法陣を刻んだ訓練施設になっているそうです。


「ダリアから聞いたけど、限度はあると思うんだよね、ラノベだと大抵壊すしさ」


試して見たいけど、それよりも先生の名前を教えてほしいなぁっと思ってる僕です。
ダンジョン科の校舎を1階だけ見ると、次は外に出て正門の位置を知らされました。


「なんだよ、やっぱりあるじゃん」


僕はそこでムスッとして、先生の態度に納得した。平民出とかではなく、女子寮には近づくなと最初に見せたかったんだ。


「5つの校舎を男子寮と女子寮が挟む感じで存在し、物理的に離す事で変な事を考える生徒を監視しています。あなたはそんな事をする生徒ではないと信じていますよ」


くれぐれもするなと先生が眼鏡を釣り上げてギラ付かせ、僕は頷くだけでなく返事もしっかりと返したんだ。その時ダリアに教わった礼を綺麗に決めたんだ。先生はそれを見て「形だけの貴族」っと、平民出の僕に悪口を飛ばしてきた。


「これが差別ってやつか、まぁ僕には丁度良いかも」


僕は気にしないけど、普通の子供はここで怖がったりするのかもしれない。そこから男性寮に向かい食堂と大浴場を案内してもらって、最後に僕の部屋に案内してもらいました。
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