上 下
55 / 66
3章 第1次世界大戦

55話 告白したのはそっち

しおりを挟む
アチシこと、ミンミントウ国の王女ピリピリカリス・マイ・ロロロスは、フェリトスの使者様と謁見するこの日を楽しみにしていたのです。アチシに贈り物をくれた初めての人で、他国から来る男性のジルベルト様と言う人なのです。
早く来てほしいのですっと、2階から窓を眺めていると、見知らぬ馬車がアチシの屋敷の前に止まったのです。どんなお方なのかも見ない内に、アチシは部屋を飛び出して玄関に急ぎ向かったのです。


「ひ、姫様!?廊下を走ってはいけません」


廊下の途中でアチシのメイドのメイリーラナとすれ違って注意をされたのですが、アチシは急いでいると返して走ったのです、早くしないとお父様との謁見に向かってしまうから会えないのです。
後ろではしたないと、メイリーラナの声が聞こえ追いかけて来るのが分かったのです、後ろで子供みたいと言われたです。どうせアチシは成人して1年経ったとは思えない容姿で、誰が見ても子供にしか見えないのですっと、プンプン怒りながら走ったのです。


「姫様、せめてスカートを上げて走ってください、危ないですよ」

「ドレスが大きいのがいけないのです、それよりもメイリーラナ急ぐです」


アチシに大きくなってほしくて、服はいつも大きめの物が用意されるのです、アチシにとっていつもの事なので、踏みつけて転ぶことはないのです。
ふっふっふっと、アチシはスカートを踏まない様に蹴って得意げに見せたのです、そして目的の場所に到着して階段に向かい下を見たのです。


「どなたがジルベルト様なのです?」


2階の階段の手すりから身を乗り出し下を見たのですが、そこには知らない方が数名いて分からず、更に身を乗り出したのですけど、その中にカッコイイ男性がいて、絶対その方だとジッと見たのです。
背の高いその方がジルベルト様だと嬉しくて、執事のササルトルが案内を始めたのを見て、アチシは更に身を乗り出し、そのまま落ちてしまったのです。
頭から落ちてしまったアチシは、直ぐに目を瞑って床に当たる瞬間が来るのを待ったのです、それはとても痛くて怖いのです、だからアチシはそこで死んでしまうんだと泣いたのです。


「おっとと!!」


そんな覚悟をしたアチシの身体がふわっとした瞬間、誰かの声が少し上から聞こえ、アチシは落ちる感覚が無くなったのです。恐る恐る目を開けると、そこには男性の顔があってビックリです。
ジルベルト様よりは子供っぽいし、顔もいまいちで背も低いけど、助けてもらったから悪くは言わず、アチシはお礼は伝えたのです。ジルベルト様だったらもっと良かったのにとか思ってないのですよ。


「姫様ご無事ですか!!」


階段を下りて来たメイリーラナは、彼の手からアチシを奪うように抱きしめてくれたのです。あまりにも声が大きかったせいで、ササルトルたちも振り返って戻って来てしまったのです。
そしてカッコイイあの人も戻って来て、アチシは注目されてとても恥ずかしくなってしまったです。そんな誰もがアチシの心配をしてくれる中で、ジルベルト様と数名の女性たちはアチシを助けてくれた人の方に集まったのです。


「さすがジルね、良くキャッチしたわ」

「それはそうですよ、ジルベルトさんに出来ない事はないです」

「それは言い過ぎだララフォート、俺が最後に歩いていたから気付いただけさ」


背の高いカッコイイ方は、ジルベルト様ではなくララフォート様と言う方だったのをその時に知り、アチシは凄くガッカリして小さい方の男性を見たのです。しかも助けた小さな男性の方がジルベルト様だったとか、もっとガッカリですよ。
正直、アチシの好みギリギリって感じですけど、命を助けて貰った時にアチシの肌にも触れたお方ですから、婚約者としてギリギリ合格なのです。
立ち上がったアチシは、ジルベルト様の前に来て手を差し出したのです、そして申し出は受けると宣言なのですよ。


「申し出?」

「未婚の女性の肌に男性が触れるのは、アチシたちの国では婚約の申し出なのです。プレゼントも事前に貰っていますから、断る必要はないのです」


アチシの解説を聞いても、ジルベルト様はアチシの手を取らなかったのです。どうしてなのです?っと頭を傾けると、ジルベルト様も同時に頭を傾けたのです。
婚約してくれるのでしょうっと聞いてみると、ジルベルト様は申し込みはしてないと返してきて、アチシはびっくりして手を引っ込められずに固まってしまったのです。どうしてこうなってしまったのか、アチシは説明を求めたのですよ。


「そう言われてもな、俺は友好国の王族に品物を送っていただけで、婚約とか考えてない」

「で、でも個人にあんなに多くは送らないのです。それに・・・肌にも触れたのですよ」

「あれは不可抗力だろう、命を助ける為に仕方なかったし、贈り物が多かったのはそれだけ新しい品物が多かっただけだ」

「そ、そんな・・・じゃあ」


アチシはどうすれば良いのか分からなくなり、力が抜けてその場に【ペタン】と座って、涙を流して泣いてしまったのです。
肌を触れられたアチシは、もう誰も婚約を申し込んで来ないのです。ジルベルト様と会える楽しい日のはずが、アチシの最悪の日になってしまったと涙が止まらないのです。
贈り物を送って来て申し込みをして来たのはそっちなのにと、アチシはワ~ンっと泣いて抗議したのです。そんなアチシをメイリーラナが頭を撫でてくれたのです。


「他国の人には分かりません、もう行きましょう姫様」

「うぅ~・・・はいです」


泣き止んだアチシは、しょんぼりと立ち上がり階段の方に向かったのです。アチシに残った道は、愛のない政略結婚だけになってしまったのです、もう恋は出来ないとまた涙がでてきたのです。
落ち込んで部屋に戻っても、アチシはベッドに顔を埋めて泣くばかりで、もう諦めてしまったのです。


「姫様」

「メイリーラナ、あなたも自分の部屋に戻って良いのです。今日アチシは寝るだけなのです」

「まだ昼にもなってないのにですか?」


昼食にはジルベルト様たちを歓迎する食事会が開かれる予定です。でも国の行事なのでアチシが行かなくても良いのですと、不貞腐れた返事を返してふて寝です。
それでもメイリーラナは部屋を出なかったのです、お茶を淹れてくれて飲みましょうと誘って来たのです。アチシは嫌だと返事を返したのです、お茶はジルベルト様が贈ってくれた品で、先ほどの事を思い出してしまうのです。


「それを言ったらベッドもですよ姫様」


痛い所をメイリーラナは突いて来るから、アチシは嫌な顔をしてメイリーラナを睨んだです。テーブルにはお茶以外にもお菓子が沢山用意されていたのですが、アチシの部屋には、ジルベルト様から貰った品が沢山あって、何処を見ても目に映るのです。それだけ沢山の品を貰っていたのだと、アチシは改めて思い、そして勘違いしても仕方ないと、口に出して文句を言ったのです。


「好意の証として相手に品物を贈るのは当然ですからね」

「そうなのですよメイリーラナっ!!王族であるアチシを狙うのなら、それなりの品が必要です。だから勘違いをしても仕方ないのです」


品の数も質もすごいのがいけないと、アチシはベッドから起き上がり、そのまま上に立ったのです。そしてメイリーラナの用意してくれたお茶を飲み、アチシは元気を取り戻し、仕返しを思い付いてニヤリとしたのです。メイリーラナはそれを見て嫌そうですけど、アチシは絶対に引かないのです。


「仕返しなんてダメですよ姫様」

「乙女心を弄んだ罰なのです。今の段階で婚約は勘違いでも、それを決めるのはまだ早いのです」


ほんとにしてしまえば良いのだと、アチシは食事会に参加を決めたのです。国王であるお父様も、継承権の低いアチシが他国のジルベルト様に嫁ぐのは良い話だと、きっと了承してくれるのです。
そうと決まれば早速お父様に報告です、今頃食事会の準備をしているですから、そこで言ってしまうのです。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

何度も転生して、やっと得た待望の転生先はケモパラダイス

まったりー
ファンタジー
150回生涯を終え転生した先、それは主人公の求めてやまないネコ獣人への転生でした。 そこでは自然の中で獣人たちが暮らしていて、主人公の求めていたモフモフではなく、最高のモフモフを求めて主人公は奮闘します。

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います

あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。 チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。 さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる! 仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

処理中です...