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2章 発展競争

47話 国の選別

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ワタクシがジルベルト様たちとお祭りを楽しんでいる丁度その時、王都のお城ではため息をついて頭を悩ませているお父様が玉座に座っていました。


「ギンガリア様、そう悩まないでください、きっと残っている息子様たちが頑張ってくれます」

「そうだなハサール」


空返事にも聞こえる覇気のない返事をお父様は返し、頭を押さえて悩んでしまいます。ワタクシを含んだ王族の視察場所は全部で10ヵ所で、その内王都に近かった半数の所では、成果無しの結果が出てしまっていたんです。
何処も出る訳がないと思っていたけど、こうして現実に結果が出るとさすがに堪えると、大臣のハサールの言葉通りに残った場所に期待したのです。そして時が進み、一つまた一つと結果が出て失敗に終わり、本命の第一王子であるイグナシル兄様とワタクシが残り、お兄様が先に帰って来たのです。


「父上、ただいま戻りました」

「待っていたぞイグナシル、それで成果はどうだった」


お父様の質問に、イグナシル兄様は暗い表情になります。その空気を感じてもうダメだと、玉座の椅子にもたれ掛かり空を見上げてしまいました。
ワタクシの事は最初から数に入っているだけの事で、鉱石が枯渇している場所には期待していませんでしたの。


「何か策はないのかイグナシル」

「無いから主となる街に行ったのではないですか、父上も分かっているでしょう」

「それはそうなのだが、天才と言われたお前に期待していたのだ」


イグナシル兄様は、唯一の陸続きになっている隣国ケントスから、我が国を守った天才なんです。切り立った山を堀って要塞を作り、ケントス最強と言われた騎馬隊を撃退して、お父様の右腕として国を支えてきたのです。
そんな兄様が匙を投げてしまい、いよいよダメかとケントスを攻めようと案を出します。ですが兄様はそれに反対し、ケントスを攻めた時の例え話しを始めたのです。


「ケントスは中規模国のヘルーネイアと繋がっている?」

「そうですよ父上、騎馬隊を倒した後ケントスが無事なのがその証拠です」


確かにと父上は直ぐに納得します。しかしフェリトスが生き残るには、1番近いケントスを落とすしかないとお兄様は進言します、そしてその為の作戦を提示したんです。
お兄様の作戦は、翼大陸の国であるボーボルとの共同作戦です。ケントスを落とした後、両国で足並みを揃えヘルーネイアを攻めるのだとお父様に説明しました。


「ヘルーネイアと隣接してる国で戦うと言うのか」

「そうです父上、出来ればミンミントウ国も戦ってほしいのですが、あそこは今家よりもひどい食料難で、戦う力は存在しないでしょう」


小国2つで中規模国を攻めるのは、無謀にも近いかなり部の悪い賭けです。ですがそれしかないと、お兄様は自分の戦略をアピールして説得を始めます。
それしかないとお父様が指示をしようとしたその時、ワタクシが玉座の間の扉を開け入室したのです。誰もがびっくりして見てきましたが、ワタクシだと分かり話を戻そうとしてきました。


「ただいま戻りましたお父様」

「挨拶が済んだら下がって良いぞフェシューラ、儂は今イグナシルと大事な話の最中だ」

「そうでしたか。では邪魔にならない様に政策の方は、ワタクシが始めてもよろしいですね?」

「ああそうしてく・・・れ?」


分かりましたと、ワタクシは退席しようとスカートをつまんで礼をしました。ですがお父様は止めてきて、政策はあったのかと聞いて来たわ。
最初に鉱山が枯渇した場所だから作っていた。ワタクシはそう強調させ、ジルベルト様の言われた通りに幾つもの政策を話すとお父様は信じられないのか、黙って聞くことしか出来ていません。
そんな中、イグナシル兄様だけは理解して、ワタクシに質問をして来たのです、その質問はいつ稼働できるかというモノで、既に開始していると答える事が出来ましたわ。


「そ、それはどれほどの規模だフェシューラ、あそこは山に囲まれた道しかなく、何処も細くて危険だろう」

「お兄様ご心配には及びません。ワタクシの協力者はそれもお考えで、事前に山を堀り道を作っていたのです。更には海からの輸送も行っています」


既に海沿いの街や村には、大量の物資が届いていると報告をして、数日もあれば我が国に食料は溢れ、他の国に売るほどの量が出来ると伝えました。
流石にそれは信じられなかったのか、お父様は立ち上がりワタクシを睨んできます、そして同行した大臣を呼ぶように言ってきましたわ。


「申し訳ありませんお父様、彼は向こうで仕事を放棄しまして、大臣の任をワタクシが解きました」

「な、なんだと!!」

「ちなみに、向こうに滞在していた商業ギルドのギルド長も同罪ですわ。彼らは国の危機なのを理解せず、ただ時間だけを浪費し、直ぐに始められる政策が存在すると言うのに、予定通り報告だけで止めようとしたのです」


直ぐに打てる手を止めていた、それは国の意思に反する事でお父様も分かってくれたのです。よくやったとお褒めの言葉を貰い、ワタクシは責任者をする様にと、お父様から直々に言い渡されたのです。
成人したばかりのワタクシが、国の危機を救う政策の責任者です。それは隣にいるお兄様が警戒するほどの事で、お父様に反対だと意見をしましたわ。


「フェシューラには荷が重すぎます父上、ここはオレが変わります」

「イグナシルよ、そなたは次の戦いの為に準備をするのだ、フェシューラが満たした後は戦争になるぞ」


それが分からないお兄様ではないはずなのです。ですが今のお兄様は焦ってしまい、先の事を読むことが出来ず反対します。ですがお父様に何度も指摘され、渋々引くお兄様は、ワタクシに見違えたと言ってきましたわ。
ワタクシも変わったと思いますと素直に答え、お父様たちの話が手に取る様に分かる事が誇らしかった。前だったら分からないと聞く事すら諦めていました。


「まあ、変わったと言ってもまだまだだ、戦場はオレに任せておけ」

「その事ですがお兄様、準備期間を1年は考えてください、そうしないとまずい事になります」


ジルベルト様の指示をそのまま伝えると、良い気になるなと叱られてしまいました。前だったらそんな事も言われず、ただ通り過ぎるだけだったのです。
それだけワタクシが先読みをして分かっている対象だと理解してくれた、言うだけのワタクシはもういないのです。
早くお母さまに報告したいと、ワタクシはお父様にご挨拶をして玉座の間を出ました。久しぶりに再会したお母さまは、変わったワタクシを見て喜んでくれたのです。
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