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2章 発展競争

46話 国の現状を理解して

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海の政策を見たワタクシは、夕食をジルベルト様たちと一緒に取り商業ギルドに戻ったのですが、そこには酔いつぶれたクルモーニュがいて頭を抱えました。これがジルベルト様の感じていた不安と怒りだったのかと、ほんとに申し訳ない気持ちです。
大臣の横には、同じく酔って寝ているギルド長がいて、一緒に視察をしたシャークスがワタクシと同じ顔をしていました。
こんなに困らせていた中にワタクシもいたのかと、後ろにいるジルベルト様に謝罪したのですが、謝る事じゃないとジルベルト様は諦めた感じで、ワタクシの時と違うのが疑問でした。


「そう言えば、あの時に大臣であるクルモーニュに言えば、ワタクシを指導するよりも早かったのではないですか?」

「フェシューラ、大人は歳を取るにしたがって聞き分けが悪くなるんだ。そこで寝てるふたりはその典型の奴らで、それこそ時間の無駄にしかならない」


ワタクシの10倍説得しても分かってもらえないと諦めた表情で、ワタクシもそれを聞いただけでグッタリしました。大人とはそんなに面倒なのかと頭が痛くなってきて、これから大変なのが良く分かったんです。
お母さまを説得し、お父様に進言するまでがワタクシのお仕事、その為にも明日も頑張るとジルベルト様に誓ったのです。


「ジルベルト様、必ずや成し遂げて見せますわ」

「それは心強いんだが・・・今は目の前の問題を解決してくれ」


ジルベルト様から、今日のおさらいを踏まえた試験が言い渡された瞬間です。仕事もしないで飲んだくれているふたりの処罰をどうするのか、普通に考えれば減給とか謹慎でしょう。
ですがそれは前のワタクシの答えで、まずは規則に厳しいアサーニュと、ギルド側のシャークスに意見を求めたのです。


「王族であるフェシューラ様が仕事をしていた間、彼は何もせずにいました。これは大臣から外し貴族の位も降格して良い案件ですね」

「それほどなのですね、シャークス殿はどうですか?」

「ギルド長の降板が妥当でしょうが、彼らは簡単には了承しません。恐らく接待をして話を詰めていたと言ってきます」


仕事にも色々あると言う事で、ジルベルト様が言っていた大人の言い訳の一つでした。それなら逃げられない所まで追い詰めるしかないと、ワタクシは泳がせることを提案します。
アサーニュとシャークスはそれに賛成し、ジルベルト様は正解とワタクシの頭を撫でてくれたんです。普通ならば子供扱いをされて怒るところですけど、ワタクシは認めて貰えて嬉しかったんです。


「じゃあ、明日は鉱山に行くからな、よろしくフェシューラ」

「はいジルベルト様、夕食ご馳走様でした」


ジルベルト様に別れの挨拶をしてワタクシは思ったのです。国の為に沢山の政策をしてくれていたジルベルト様たちは、とても期待してワタクシたちを待っていた。それなのに来て早々に期待は裏切られ、国の事さえ分かっていないと知ってしまった。
クルモーニュをしっかりと処罰し、必ずやジルベルト様の期待に応えて見せると、宿に向かう間にアサーニュと話し合ったのです。


「言い逃れの出来ない、決定的な何かが必要なのですアサーニュ」

「そうしますと、やはり仕事内容の把握でしょうね」


クルモーニュが情報を得る前に、ワタクシが全て調べてしまえばそれが可能になるのです。王族のワタクシよりも情報を持っていなければ、それは証明されて国王であるお父様に処罰してもらえる。
ワタクシの頑張り次第だと分かって、俄然やる気が出て来ました。後2日ですべてを理解して見せると、今日見た海の政策を二人で確認し合いましたわ。


「ねぇアサーニュ、こうやって話すの学園を思い出して楽しいわ」

「そうですかフェシューラ様?ワタシはお傍にいただけなので良く分かりません」

「友人とお話をしている感じなのです」


これからもこうして仲良く話したい、そう思って今後2人の時は呼び捨てを命じました。学園時代も友人はそうしていて、とても親しくしていました。
そう言えばみんなは今頃どうしているのでしょうっと、王都の方角を眺めます。きっと子供だったワタクシと同じで、ただわがままを言ってるんでしょう。
そうならない為にも頑張ろうっと、ワタクシとアサーニュは話を詰て行き、次の日もそのまた次の日も視察を頑張ったのです。そして最後の日に作戦は決行され、大臣とギルド長を問い詰めたんです。


「わわ、ワシたちはしっかりと話し合いをしていた、そうであろうギルド長」

「そうですそうです、酒を飲み親睦を深めながら政策をしていました。ええそれはもう王都に帰っても説明できるほどです」


クルモーニュは何を言ってるんだ!?って驚いていますが、ギルド長の狙いは分かっています。どうせ時間を稼ぎ、帰るまでに資料でも作るつもりなんです。
そうはいくかと、ワタクシは作っていた資料を出したのです。既に用意しているんだと逃がさず、更には輸送の話も終わっていると言ってやったのです。


「でで、ですがフェシューラ様、ワシらは各街で出来る政策が無いかの検討に来ただけのはず、明らかに急ぎ過ぎですぞ、ここはもう少し時間を掛けて話し合うべきです」

「各地で出来る政策を考える?分かっていませんねクルモーニュ。それは既に出来上がっていたのですよ、それならば進めるのがワタクシたちの役目です」


それも分からず、ただ酒を飲んで話し合いをしていたあなたは要らないと切り捨てたのです。王都に帰ったら処罰は覚悟する様に伝え、ギルド長も同罪だと付け足しました。
クルモーニュはその場に倒れましたが、ギルド長は諦めずに罠に嵌められたと叫び出し、ジルベルト様を睨んだのです。そして政策は自分が考えたものだったと悔しそうな表情を浮かべ、取り戻すためにジルベルト様に決闘を申し込みましたわ。


「俺様は必至に案を出し、やっとの事で秘策を編み出したのだ。それなのに、いつの間にかこいつに乗っ捕らえた、俺様が勝ったら返しやがれっ!!」


何を言ってるんだと、ここにいる全員が思ったでしょう。ギルド長から出て来る政策の内容は、最初に聞いていた名称だけでそれ以上は知らないのです。
自分で編み出したのに、それ以上が分からないはずがない、勝負をしてどうするのかと呆れてしまいました。


「受けても良いけど、勝負の内容ってどうなるんだ?政策に関する問題でも出し合うか?」

「そそそ、そんな事では男らしくない!!男の勝負は昔から決まっている。どちらが強い男なのか街の者たちに決めてもらうのだ」


人気のある方が勝つのが男の戦い?ワタクシには良く分からない内容でしたが、どう考えてもジルベルト様の方が人気があると、その内容で賛成しました。
勝負は明日の昼にしようとギルド長は言ってきましたが、明らかに悪さをしそうな表情だったので、ジルベルト様によって却下されます。街の全員を集めるには準備が必要とギルド長は引き下がりませんが、そもそもこちらは準備万端なんですよ。


「だからそれは必要ない、既に外には全員が集まっているんだよ」

「なっ!?」

「街に出ないギルド長は知らないだろうが、今日はフェシューラ様が視察を終わらせた記念する日だ、明日から輸送が始まり国が変わる。その為の祭りを開くために準備がされていたし、丁度良い余興にもなるから賛成したが、まさか逃げないよな?」


ギルド長は逃げられないと分かり、クルモーニュと同じ様にその場に倒れたわ。これが逃げられないようにすると言う事なんだと、ワタクシはドヤ顔です。
その後は予定通り、ワタクシの為のお祝いが開かれ街がいつまでも輝き、楽しい声が消える事が無かったんです。
余談ですが、ギルド長とジルベルト様の決闘は実現しませんでした。意識の戻らないギルド長を出しても冷めるだけだと、予定していた人気投票が開かれました。1位は、やはりダントツでジルベルト様でしたが、2位が意外な方でララフォートという、ジルベルト様の仲間で医療関係の責任者をされている男性だったんです。
治療してくれる時の笑顔が素敵と、女性陣の投票数が凄かったようです・・・まぁ、それを越えて男女に可愛いと人気だったのがジルベルト様で、それはもう異常だと思いましたけどね。
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