上 下
34 / 66
2章 発展競争

34話 森は任せて

しおりを挟む
ここもあそこも、全然なってない伐採の仕方をしてる、森の木が泣いているわね。
アタシに付いて来た傭兵仲間たちに指示を出し、見える範囲の木を一度全て伐採したアタシはため息です。そして間隔を開けた場所の切り株には、アタシの精霊魔法で若葉を生やしたの、これでしばらくすれば立派な木になってくれるわ。


「そこも切って」

「ネーシュ姉ちゃん、もう少し説明してくれよ、じゃないと分からない」


次に行くと言い換えてアタシはみんなに伝えたのだけど、子供たちとサンセットの部下だった大人が分からないと言ってくる。アタシは長い文を話さないから仕方ないけど、予定してた切り株に若葉が生えてるのだから分かると思ったの。
ジルなら分かるのだけど、彼は特別でアタシの少ない言葉を理解してくれる。だからとても魅力的で、誰もが彼との子供を欲しがってる。


「若葉終わり、次行く」

「え?・・・だって切り株が残ってるじゃんか、どうして終わりなんだよ姉ちゃん」


またまたわからないとみんなに言われた。やっぱりアタシにリーダーは出来ない、どうすれば良いのかと困っていたら、ジルが手を振って現れたの。みんなが助かったと集まって指示が分からないと言い始め、アタシはかなりショックを受けた。
魔法士隊のメンバーならこんな事にはならないの、みんな感覚で覚えているメンバーだから、アタシの短い言葉でも分かるの。だけど今は、キョーカの隊に入ってる剣士メンバーだから無理なの。


「そうか分からないか」

「そうなんだよジル兄ちゃん、だから変わって教えてよ」

「それはダメだぞウーラン、まずは皆でよく考えるんだ」


えー!!っと、みんなが反対しジルに指示を求めたの、アタシもその方が簡単なんだけど、ジルはもっと先の事まで考えてた。アタシの指示が分かるようにならないと、戦いになった時困ると注意してくれた。
えー!!っとみんなは反対したけど、ジルがいつも解説は出来ないと、みんなを説得したの。それはアタシもショックだったんだけど、その後のジルの説得を聞いて、顔がとても赤くなってしまったの。


「みんなはネーシュの言葉だけを聞いてるから分からないんだ、もっと状況をよく見てみろ。ネーシュの済ませた仕事を見たうえで表情や視線も注意する、そうすれば足りない言葉が浮かび上がってくる、その言葉を繋げれば分かる」


ジルは、アタシの事をそこまで見てくれていたと、それがとても嬉しくて仕方なかったの、だから抱き着いたのは仕方ないよね。
子供たちの数名も同じようにしたけど、ジルがそれをアタシの動作を見る訓練に使ったの、気持ちが同じなら分かるだろとか言われ、子供たちはう~んって悩み始めた。
アタシの気持ちがわかるのか心配だったけど、数名が分かった!!と叫んでみんなに教えたんだよ。
それからは、みんな分かるようになっていったの、こんなに簡単に理解できるとか、子供たちは凄いとジルは言うけど、アタシはジルの方が凄いと抱きしめをもっと強めたの。


「ちょっと苦しいぞネーシュ」

「だって、ジルが凄いんだもん」

「すごいのは皆だ、普通言われて直ぐに出来る事じゃない」


そんな事はないとアタシが言うだけで、ジルはその先を口にしてくる。それが分かるのだからすごいんだよっと、ジルの胸に顔をグリグリしてそれを知らせる、するとジルは次の仕事の為にここに来たと話を逸らしてきた。
カッコいいのにテレる仕草はもっと可愛い、だからそのお仕事の説明をしっかりと聞いたの。


「成長が早まるの?」

「そうなんだよネーシュ、このライトは【成長促進ライト】と言って、秘密道具の一種だ」


胸を張って誇らしいのはカッコいいんだけど、今のジルは可愛いに入る。小さな子が背伸びをしてるようにしか見えないの。
それでも彼はそれは背伸びじゃなく、本当にすごい事が起きる。一番近くにあった切り株の若葉に光を当てると、その若葉はみるみる成長して切る前の木になってしまった。


「ど、どうして!?」

「これがこのライトの力だ・・・まぁここまで成長させるにはこれだけじゃ無理だったぞ。基盤となっていた切り株があってこそだ、だからネーシュがいてこそだ」

「そんな事はない、ジルはすごい」


その一言しか出ないけどジルは凄い!!精霊の助けを貰って切り株に若葉を生み出したから、確かに成長はしやすくなったの。元の大木に10年掛かるところを5年に短縮してる、だから精霊は凄い。
だけどそれよりも早く成長させたジルはもっとすごい、これなら木を伐採したとは思わない。


「俺じゃなく道具が凄いんだ、森の奥で使うこれもそうだしな」

「何それ?」


針の付いた小さな瓶をジルは持ってて、チュウシャキと呼んでた。その中には変わった薬が入っていて、木に注入すると特殊な実がなるらしい。その実は半分に割れるんだけど、その中には料理が入っているとジルは言って来た。
とんでも植物になるとジルは言うけど、アタシじゃないんだからそんな一言では済まないよっと、ジルの後ろを付いて作業をしながらボソッと呟いたの。奥の木で試そうとしてる時点で、凄すぎて見せれないのは分かるけど、それを使おうとしてるジルはやっぱりすごい。


「ジル、見つかったらどうするの?」

「何を言ってるんだネーシュ?これは見つけてもらう為に作ってるんだぞ」


とんでも植物を作り始めたジルは、出来上がった実を子供たちに渡して運んでもらってる。その前にアタシの疑問に答えてほしい。
見つけてほしいのに、どうして森の奥に作るの?っとアタシはとても不思議なの。ジルは楽をして収穫していないと思われたいらしく、他にもクリエイトブロックの存在を隠すための作戦みたい。
色々考えていてるジルはやっぱりすごいと、アタシはぎゅっと抱き着いたの。


「やっぱりジルはすごい」

「保険を作ってるだけだ。クリエイトブロックは簡単すぎるから危険なんだ」


それは分かるとアタシの答えを聞いて、ジルは山の方の仕事に向かって行った。それを見てアタシは思うの、便利と分かっても製作魔法を使うかどうかは別で、誰も使おうとしないのが製作魔法とクリエイトブロックなの。
切り倒した木も、製作魔法を隠す為に使う予定で、木材は多すぎるくらい取れたし、今後製作魔法で作っても分からない、だからジルはすごくてカッコいい。
アタシに作業を任せる事を出来るようにもしてくれたし、アタシを必要だと言ってくれるとてもやさしい人。だからアタシは頑張るの、キョーカもチャンミーも傭兵のランクを気にしていた最初とは全然違う、ふたりとも凄く楽しそう。


「ふたりだけじゃないか、みんなとても楽しそう」


仕事をしてるのに、子供も大人もみんな楽しそう。仕事をこなせばそれだけ褒められるし、しっかりと評価してくれるから、みんなが頑張るんだね。
アタシも褒めてもらいたいから頑張る、みんなに負けない様にせっせと若葉を育てていったの。
しおりを挟む

処理中です...