上 下
25 / 66
2章 発展競争

25話 山の国フェリトス

しおりを挟む
1月かけて、俺たちは目的の国の国境に着いたが、切り立った山の間に門があり、兵士が守るだけの簡単な国境で、見張り台も駐屯地もなくて不安になっよ。
これで平気なのかと思って傭兵証を見せて通ったが、馬車に見えない車なのに、そいつらは中さえも見ないで素通り同然だった、ほんとに警戒心がないと心配になって来る。


「まあ、楽だからいいんだけど、もう少し何かあるだろう」

「良いじゃないジルベルト、楽なのは良い事だよ」


頭に乗ってるシャルーが、髪を引っ張り俺のマネをしてくる。運転席でハンドルを握っているからシャルーに止めさせることが出来ないで耐えていた。
ここに来るまでの国では、領地の所々で馬車の中を見せる必要があった。その為1階は見た目通りの大きさに調整され、上に続く階段を隠していたんだ。
どうせ見つからないのだからいいじゃんっとシャルーは言ってくるが、ここでの発展方法は他と違う、とても考える必要があると頭を抱えてしまった。


「いつものシャルーなら怒るところだろう、このままじゃ外に流出し放題だぞ」

「まあそうなるね、でもジルベルトだって準備してたじゃん」


それは当然だとシャルーに言い返した。その為に途中の国でも色々していて、食料の生産を増やす事が出来る様になっていて、世間では旅商人の様な変わった傭兵団として有名になったんだ。
襲ってくる良からぬ奴らは、こちらが馬車1台の少数と思っていたわけだが、本当は300人以上の傭兵隊で瞬殺してやった。
途中で雇った子供たちもいたが、それもあって変わった馬車が有名にもなった。そのせいだと思いたいが、それでも中は確認しないとダメだろうと、狭い山道を運転しながらダメ出しを口にしたよ。


「ちょっちょっとジルベルト、崖が!!」


通っている山道は車間ギリギリの崖もあり、頭の上のシャルーが怖がって髪を引っ張る。お前は飛べるだろうと突っ込みながらもゆっくりと前進させていく。
俺の腕に馬車の中にいるみんなの命が掛かっているが、戦争でもそうだとかなり重くのしかかって来るのを感じているよ。
断崖絶壁の山ばかりだと感想を口にしつつ進んで行くと、やっと開けた場所に出る、そこには都市が建設されていてとても綺麗だった、石を使った作りの建物がとても味を出していたよ。


「山に囲まれた場所なだけはあるな」

「海も近いのに、漁に力を注げないのは、それのせいね」


シャルーが言いたいのは森が無いから木材が足りないと言う事で、シャルーがそれならばと設計図を書きに飛んで行く。それと交代してミーシュが隣に来たが、モジモジとして落ち着かずにいた、さすがの俺も気付いているよ。
だが俺もどうすれば良いのか分からず重い空気が流れる、話掛ける事が出来ればいいんだが、シャルーと違い話題がない。その空気のままに俺は都市の横を通り過ぎる。


「ジルベルト、どうして王都に入らないの?」

「簡単だよミーシュ、あそこでやる事は俺たちには無い、俺たちの目的は海にあるんだ」


この国には木材が不足している、それは生活で使うくらいで精いっぱいなほどで、船を作ったり家を建てたり出来ないくらいだ。
王都を横切ると、その先に見えていた山に差し掛かり森が広がっていた。足りないと言ってもないわけではないとミーシュに説明した。しかし全部を切り倒したらお終いなのは言うまでもなく、ミーシュはそこに行き着いた。
だから俺は山を登らず、海岸沿いを進む道を選んだ、山のふもとには村や街が見え海岸沿いにはそれはない、まったく勿体ないと思ってしまう。


「でも、1つはあるのよね?」

「さすがミーシュだな、となりの国との交易都市が俺たちの目的地だ」


鳥の足が3本に別れる位置、そこに海上交易都市のミューランがある。色とりどりの石を使った建物が海と良い感じで合っていて、竜宮城とか言われても疑わないかもしれないと、よく分かってないミーシュに感想を伝えた。
都市の入り口で並びながら景色を楽しむが、海はとても澄んでいて太陽の光を反射してキラキラと輝き飽きる事はない。建物をとても綺麗で素晴らしいんだが船は見えず、海岸には誰もいない状態だ。


「観光地にはうってつけじゃないか、勿体ないな」

「ジルベルト、このご時世では誰も観光なんてしませんよ」


なんて勿体ないんだと、ミーシュの目をジッと見て突っ込んでしまった。彼女は真っ赤になってしまうが俺はそれを考えず、どうしてなんだと肩を掴んで揺するほど興奮してしまった。ミーシュがフラフラになるまでそれは続き、門番の声が窓の外で聞こえて俺は我に返ったんだ、傭兵証を見せて通ったがしばらく視線が痛かったぞ。


「すまないミーシュ」

「いえ、自分はあなたと一緒で嬉しいです」


助手席からミーシュは俺の肩に頭を乗せて来る、恋人ならここでキスでもするんだろうが、俺にそんな度胸はない。数名からアピールを受けているが、いまだに誰ともそう言った関係にはなっていない、どうすれば良いのか分からないんだ。
誰か教えてくれと、ミーシュの頭をなでるだけにとどまっている俺は、目的の傭兵ギルドに馬車を止めた。降りるのは俺とミーシュだけで、他のメンバーは中で待機となる。


「何度も思いますけどジルベルト、どうして全員で出ないのですか?」

「手続きが面倒だし、大人数の傭兵が入ったと分かると、ろくでもない奴らが近づいて来るだろ」


戦争の準備をしているとか言われる可能性もあるし、ギルドの資金が不足してしまう可能性もある。それにここにいる傭兵たちの仕事を取ってしまう事にもなるんだ。
人数が多いと世間体も考えないといけなくなり、ギルドに入っても説明をしなくてはいけないが、俺は入り口で驚き止まってしまう。中は職員以外いなかったんだ、今は昼時で混んでない時間なのかと受付に向かう。
受付には露出の多い服を着た女性たちが座っていた、ミーシュが俺の腰を抓って来るが、別に見てはいないぞ。


「どうでしょうね、鼻の下が伸びてるみたいに見えましたよ」


そんな事はないと俺は反論だ、チャンミーに比べればそれほどでもないし、あいつは下着で俺にくっ付いて来る、それに負けじと他のメンバーも頑張ったりしてくる、だから受付の女性たち位なら普通に見えるぞ。
耐性が付き過ぎていると、ミーシュのそんなつぶやきをスルーして女性に仕事の要望を始めた。


「海の開拓ですか?」


何を言ってるんだと受付の女性たちに見られてしまうが説得にはいる。魚介を獲ったり船を作ったりと、全部をひっくるめた要望をすると、どうやら分かってもらえないらしい。
海系で何かないかと聞き直してみるが、職員さんは荷物運びの依頼を出してくる、定期便の船が来た時の仕事だ。
俺とミーシュはそっちじゃないと突っ込んでしまった。そもそもミンミントウとの交易で、何を運搬してるんだと疑問を持って聞いてしまったよ、海の物を取ってないとか信じられないぞ。


「山ばかりなので、主に鉱石を運んでいます、重いので人手は欲しいんですよ」

「それは分かりますけど、鉱石が取れる山よりも海の方が近いじゃないか」

「そう言われましても、木材はミンミントウ国でも高いですし、我が国では暖炉などの燃料でギリギリです」


山の木を伐りつくさないだけ考えられてはいるが、それ以上に研究を進めなさすぎだと言い返した、鉱石だって石炭も取れるだろう。
もしかしたらそっちも捨てているのかもしれないと不安要素が増えたぞ。これはほんとに勿体ないと違う作戦に出る事にする、ギルドを出て選手交代だ。


「頼んだぞキョーカ」

「サンセット様、よろしくお願いします」

「「ジィ~~」」


ふたりには、ギルドに海系の仕事を斡旋してもらう為に、馬車で交代してもらった。しかしふたりは俺とミーシュをジッと見て来る、何だと思って聞いてみると、随分仲が良いとか言って来たぞ。
確かに要請の内容を二人で考えてはいた、しかしそれだけで他は何もしていない、最近みんなが敏感過ぎると注意したぞ。


「だけどなぁ~」

「そうですよジルベルト、あなたは皆の愛しの方なのです、そこを自覚してください」


ギルドに入って行くサンセットにそこまで言われてしまう。しかし俺だって気付いていないわけじゃない、どうすれば良いのか分からないんだ。
女性陣に聞いたのなら、分かりきった答えが待っているし、唯一の男性仲間のキョーカに聞いた事はあったが、答えは同じだった。
ここに来るまでにも、雇っている傭兵は増えたが、全員が女性で頭が痛くなってしまったぞ。男がろくでもない奴らすぎて声すら掛けられなかったのも痛い。


「あぁ~誰か良い男はいないのかよ」

「ジルベルト、その発言は危ないですよ」


知らない人が聞いたら男好きだと思われると指摘され、それはかなりあぶない人だと注意された。そんなに困ってるのなら自分をとか言ってくるミーシュの手を引っ張り、要請が受理されるまでの間に街の散策に向かう。
デートだとミーシュは嬉しそうだが、これも調査の為で、ミーシュを特別扱いしているわけではない。きっと帰ったらみんなに言われるだろうが、そのせいで誰にも手を出せないんだ。
しおりを挟む
感想 46

あなたにおすすめの小説

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

チートも何も貰えなかったので、知力と努力だけで生き抜きたいと思います

あーる
ファンタジー
何の準備も無しに突然異世界に送り込まれてしまった山西シュウ。 チートスキルを貰えないどころか、異世界の言語さえも分からないところからのスタート。 さらに、次々と強大な敵が彼に襲い掛かる! 仕方ない、自前の知力の高さ一つで成り上がってやろうじゃないか!

地獄の手違いで殺されてしまったが、閻魔大王が愛猫と一緒にネット環境付きで異世界転生させてくれました。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作、面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 高橋翔は地獄の官吏のミスで寿命でもないのに殺されてしまった。だが流石に地獄の十王達だった。配下の失敗にいち早く気付き、本来なら地獄の泰広王(不動明王)だけが初七日に審理する場に、十王全員が勢揃いして善後策を協議する事になった。だが、流石の十王達でも、配下の失敗に気がつくのに六日掛かっていた、高橋翔の身体は既に焼かれて灰となっていた。高橋翔は閻魔大王たちを相手に交渉した。現世で残されていた寿命を異世界で全うさせてくれる事。どのような異世界であろうと、異世界間ネットスーパーを利用して元の生活水準を保証してくれる事。死ぬまでに得ていた貯金と家屋敷、死亡保険金を保証して異世界で使えるようにする事。更には異世界に行く前に地獄で鍛錬させてもらう事まで要求し、権利を勝ち取った。そのお陰で異世界では楽々に生きる事ができた。

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

婚約破棄された検品令嬢ですが、冷酷辺境伯の子を身籠りました。 でも本当はお優しい方で毎日幸せです

青空あかな
恋愛
旧題:「荷物検査など誰でもできる」と婚約破棄された検品令嬢ですが、極悪非道な辺境伯の子を身籠りました。でも本当はお優しい方で毎日心が癒されています チェック男爵家長女のキュリティは、貴重な闇魔法の解呪師として王宮で荷物検査の仕事をしていた。 しかし、ある日突然婚約破棄されてしまう。 婚約者である伯爵家嫡男から、キュリティの義妹が好きになったと言われたのだ。 さらには、婚約者の権力によって検査係の仕事まで義妹に奪われる。 失意の中、キュリティは辺境へ向かうと、極悪非道と噂される辺境伯が魔法実験を行っていた。 目立たず通り過ぎようとしたが、魔法事故が起きて辺境伯の子を身ごもってしまう。 二人は形式上の夫婦となるが、辺境伯は存外優しい人でキュリティは温かい日々に心を癒されていく。 一方、義妹は仕事でミスばかり。 闇魔法を解呪することはおろか見破ることさえできない。 挙句の果てには、闇魔法に呪われた荷物を王宮内に入れてしまう――。 ※おかげさまでHOTランキング1位になりました! ありがとうございます! ※ノベマ!様で短編版を掲載中でございます。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

処理中です...