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3章 平和への第一歩

63話 陣形バトル

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「広い平原ねぇ~」


私は空を飛んで広い平原を眺めています、そしてピクニックをしたいわねって思っています。

でもそんなこと出来ないのよねぇ。


「サエツグは、広く分厚い列を作ってる・・・あれは守りの陣ね」


空から見ているのは相手の動きを見たいからです、本来はシールドカメラを飛ばすんですが、小型はそれほど遠くを映す様には出来てませんし、普通のはベサーファファに見つかる可能性があります。


「数は今の所10万だからこちらと同じ、隠れる場所がないから伏兵もない・・・となると私は」


通信でこちらの陣形を突撃用の槍型陣形に変更しました、するとそれを見てサエツグが指示を出したのでしょう、中央にいた兵士たちが横に移動し、両サイドを強化してきたんです。


「これは、突撃したら囲まれてお終いだわ、そっちがそれならこちらは扇形よ」


私はまた指示を出して、前方に兵士を広げる陣形にしたんです、これでじっくり前進して目の前の敵を倒します。


「って!?今度は2万ずつに分かれて来たわ!・・・ぐぬぬぅ~さすがねサエツグ」


こちらが陣形を変えると、それに対応した陣形に変えてきます、そしてそれを数回繰り返していると、ビクトールから通信が入って来たの。


「ラリーファ!いい加減にしてくださいまし、いつになったら戦いは始まるのですか!」


ビクトールに『今は見えない戦いをしているのよ』って言いたいですが、それを言っても分かってくれません、そして私は決断したんですよ。


「仕方ないわね『分かったわビクトール、そのまま三又陣形で突撃、後方の重装歩兵はゆっくり前進するように伝えて』」


私の指示にビクトールが返事をして、兵士たちが突撃したわ、サエツグは◇陣形で中央を固めています、あれで私の陣形は中央から二つに割かれるわ、その後半分ずつ攻撃をされて倒すのがサエツグの作戦ね。


「私も降りて戦った方が良いわね、空から行ければいいのに・・・まったく!」


こうして不利な状況で戦いが始まりました、サエツグたちは銃兵たちが先頭なのでこちらは負傷者が出ています、その中で弾を弾いて進む中央の部隊が見えました。


「ビクトールたちね、あのままだと孤立しちゃうわ『ゴーレム召喚』」


私は陣形の真ん中まで来て、細くなってしまった隊列にゴーレムを召喚しました、そして孤立しないようにしたんです。


「みんな今のうちに負傷兵を後退させなさい!重装歩兵は外側に展開、銃兵を後方につけて撃ちまくりなさい」


横長になった状態で、外側を強化して敵に対抗しました、でもこれでは勝てません、なので私はビクトールたちに前進を命じました、これはビクトールたちを信じての指示です。


「こちらが持ちこたえられなければ私の負け、でもビクトールたちがサエツグたちのいる後方に着ければこちらの勝ちよ」


そう思ってゴーレムを前進させたんですが、そこで横から大量の水が流れてきて、ゴーレムたちがそれをまともに受けて崩れて行ったの、ビクトールたちは前進していて直撃はしてませんが、腰まで水に浸かりあまり進んでません。


「ど、どうしてこんなところで!?音もしなかったし、のろしだって・・・もしかして私はめられた?前回の戦いは布石だったのね」


私はやられたと思いながら頭の中で解説中です、遠くに通信する道具は持っていたんです、それを使い今回遠くに連絡をした、今流れているタイダルウェーブの水は普通の物よりも強力です、そんな量を出せる魔法使いがいるわけがないんです、つまりここで戦う事を準備していた、姿が見えないから遠くから警戒も出来ないって訳ね。


「私は迫撃砲か戦車くらいは使って来ると思ってサエツグの後方を調べていたけど、まさか平原で使えない水攻めをしてくるとはね、やるじゃないサエツグ・・・私のホーミングシルフィートスは、使うわけには行かないわ」


一度使った方法なら情報として渡しても良いのですが、あれは強力過ぎます、私なら治療が出来るけど、サエツグたちでは間に合わないわ。


「仕方ない、ここは力技よ!『ロックブロック』」


私は土魔法を使い、銃兵たちの足元から壁を築いたわ、そして重装歩兵が前進して戦いを有利にしたの、前方のビクトールたちの方には大きな橋を作り、敵陣に突撃してもらったの。


「これは私の奥の手・・・使いたくなかったわ、さすがサエツグね」


そう思いながら戦闘をしていると、遠くで勝どきが上がったの、ビクトールたちが敵の後方部隊を倒したのね、通信でサエツグたちが逃げて行ったと聞きました。


「何とか勝てたわね・・・さすがサエツグ、ほんとにすごいわね」


奥の手として私の力技が存在します、でもそれを何度も使うと私の弱点が浮き彫りになるんです。


「私はみんながとても大切、もしそれを知られたらそこを一気に攻めてくるわ、それだけは絶対にさせちゃいけないわ」


防衛はしっかりとしていますが、相手は最強種と言われているフェーリアです、間に合わないかもしれないんです。


「サエツグたちもかなりの損害を受けて、こちらはそこそこ・・・次はこちらが被害を受けた様に見せかけないといけないわね」


そう作戦を立てながら、私は野営の準備を始めました。


《そして丁度そのころ、ある森で》


「いいですよぉ~そのまま待ってくださ~い」


あるフェアリアが右手を上げて準備をしていた、そして目の前の道から大きなモンスターが姿を見せた。


「おいおいウイファファ!またタラティクトが3体かよ」

「落ち着いてぇタタファ~道から離れたら、罠が丁度あるから問題ないわぁ~じゃあ、撃って良いわよ~」


フェアリアが手を降ろし、他のフェアリアたちがクロスボウの引き金を引いた、敵であるタラティクト2体がその矢を無数に受け倒れ、残った1体は避けて木によじ登った、しかしそこに大きな木の杭が降って来てタラティクトは押しつぶされ地面に激突した。


「おおーさすがだなウイファファ」

「デント隊長~お疲れ様ですぅ~」


ふたりがそんな会話をしている間に、他のフェアリアたちは倒したタラティクトを運び始め、皆がひと段落していた。


「それにしても、最近モンスターが多いな、結界が弱まったわけではないんだが、どうしてだ?」

「どうしてでしょうねぇ~でもラリーファの残してくれた武器のおかげで撃退出来ていますからぁ~まぁ問題は無いですねぇ~」


そう言って木の上で作動した罠を点検して、兵士に頼んでまた設置していった、それを見て隊長フェアリアが感心していた。


「その罠があるから助かっているぞウイファファ、今回は掛からなかったが、前回は4体とも倒したからな」

「それほどでもないですよぉ~」


ウイファファは謙遜していて少し恥ずかしそうにしていた、そして設置されている罠を見てある事を思っている。


「ラリーファは元気かしら?」

「まぁ平気だろう、あいつはそう簡単にやられる奴じゃない・・・ほらウイファファ、帰って武器の点検をするぞ」


隊長が話を逸らして村に飛んで戻った、だがいつもと違いクリスタルがある中央広場にとても大きな人物が立っていた。


「こ、これはフェーリア様!?どうして我々の村に?」

「あなたはここの兵士の隊長ですね、村長を呼んできなさい、他の者は村の全員をここに呼びなさい、ちょっとお話があります」


空を飛んだままで跪いていると、相手がそんな指示をしてきた、全員で村中を飛び中央に集まると、フェーリアが全員を見て話を進めた。


「あなた達の中にラリーファファという者を知ってる方いますか?いたら前に出なさい」


そう言われ、全員が前に出た、それを見てフェーリアは少し笑い始めた。


「そうですか、やはりここでしたね・・・では、ラリーファファを育てた者は私と来なさい、恐れ多くもフェーリアの長を務めるベサーファファ様がお会いになります」


そんな事を言ってきたので、フェアリアが2人フェーリアに付いて行き、クリスタルの転移で姿を消した。


「あのぉ~あの方たちは何の用だったんですかねぇ?」

「俺に聞くなよウイファファ、それよりも武器の点検だ・・・なぁウイファ、それが終わったら一緒に食事でもどうだ?」


隊長がウイファを誘い、了承を貰っていた。
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