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2章 戦争の第一歩

45話 配達して

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「おおー慌ててる慌ててる~」


私は相手の砦の上空に来ました、下を見ると兵士たちが走り周っていたり、私たちのいる方を指差していたりとかなり慌ててるんですよ。


「さてさて、あそこの兵士に言っても時間の無駄だから、偉い人が居そうな場所を片っ端から覗いてみましょ」


砦の窓を慎重に覗き敵兵の偉い人を探します、最初の部屋は武器などが置かれた部屋で、次は誰もいない会議室の様な場所でした、そしてある程度探していると口論している部屋に差し掛かったんです。

そこが本命っとばかりに、私は顔をひょっこり出して覗きました。


「なんなのだ、一体あれは何なのだ!誰か説明しろ」

「落ち着いてください隊長、今兵士たちに防衛の手を緩めない様に言っています、もう直ぐ敵兵が来るでしょう」

「それは分かっておるわ!儂が言ってるのはどう対処するかだ、早く兵士の人選をしないか!」


そう言って青い鎧を着ている人に、ちょっと太目で椅子に座ってる男が指示を出してるわ、私はそれを見て砦の隊長に接触するのを止め青鎧の人に決めました。


「まさか、あれほど高い壁を作って来るとはな、どうしたものか」


通路を歩いて何か独り言を言ってる青鎧の人を上から眺めています、出来れば部屋も知りたいのでそのまま待ちます、そして扉を開けて部屋に入ったので私もするっと入りました、その部屋は一人部屋の寝室でしたね。


「はぁ~籠城を指示された時から覚悟はしていたが、外との連絡も絶たれた状態になってしまった、俺たちはもうおしまいだな」


青鎧を脱ぎ始め、凄く暗くなっています、兜を取って顔が見えましたが、おかっぱ頭の男性で金髪さんです。


「そう思うなら、投降しちゃいなさいよおかっぱさん」

「何者だ!?」


おかっぱさんが周りを警戒しています、でも私は上で見ているので「上だよぉ~」って言って、ちょっとは警戒心を下げてもらいましたよ。


「て、手乗り妖精?」

「む!私はフェアリアよ、それよりも壁を作った人たちからお手紙よ」


ちょっと怒って、収納から手紙を出しておかっぱさんに渡しました、差出人はメリーナね。


「なるほど、投降するなら命の保証はすると」

「そうそう、もう壁で包囲されてるし援軍も来ないでしょ?ここは素直に投降しましょ」


私が腕を組んでうんうん言いながら提案しました、そして相手は考え中です。


「私もそこの兵士だけど、みんな優しいわよ、捕虜だからって虐待なんてしないわ、食事も」

「そんな事は関係ない、俺たちは最後まで戦う」


おかっぱさんが真剣な目で私を見てきました、その目は国の為にとかそう言った感じです。


「あの隊長の下で?」

「そこは関係ない、あいつが無能だろうとそうでなかろうと、国の為に戦うのが騎士の生きる道だ」


生きる道とまで言ってきました、私は考えましたよ、かなり頑固そうですし、どうやって説得しましょうか。


「それはあなたの意見でしょ?下の兵士たちの命は大切じゃないの?あの隊長さんはモノの様に扱って来るわよ」

「そ、それは・・・そうなんだが、みなもそれは分かっているはずだ」

「分かってても言えないことはあるわ、あの隊長に言えなくても、あなたになら言ってるんじゃないの?」


下の兵士たちの事を判断材料にしたのは正解の様でかなり悩んでいます、このままグイグイ行きますよ。


「みんな国に大切な人はいるでしょ、その人たちに会えなくなるのよ、それでも良いの?」


そう説得したら、どうやら失敗です、燃えるような目をし始めたわ。


「だからこその籠城だ!私たちが折れない意思を見せれば、本国も分かってくれる、兵士たちの士気も揺るがなくなるんだ」


私は心の中であちゃーって思っています、国の大切な人の為に戦う、当然と言えばそうですがその為に命を捨てる覚悟を持っているんです。


「それが騎士の志ね、分かったわもう言わない」

「そうだ!私たちは最後まで諦めずに戦う、お前たちのリーダーにもそう言っておけ!」

「そのつもりよ、ただねこれだけは言わせてもらうわ、あなた達、国に見放されてるのは知ってる?もう援軍は来ないし、下手をしたら死んだことになってるわよ」


私の言葉を聞きかなり驚いているわ、更に近くの砦にいる兵士たちは撤退を始め、王都の手前の砦で総力戦に備えていることも話しました、それだけ彼の国は私たちを脅威だと思ったのでしょう。


「よく考えなさい、今ここで頑張っても国の人達には何も伝わらない、それなら投降して和平のための交渉に協力するの、どちらが国の為になるかじっくり考えると良いわ」


そう言って私は窓から飛んで外に出たわ、あのおかっぱさんが分かってくれることを願ってね。


「さて、他にも数名に話を持ち掛けて揺さぶりますか」


こうして私は他の兵士にも手紙を渡して見せました、メリーナが作った手紙は1通ですが、シールドコピー機で量産済みよ。


「そ、そんな!?本国は俺たちを見捨てたというのか」

「見捨てたというよりも、逃げ遅れたと思って諦めちゃったんだと思うわ、だからこの戦いは無用なの、投降しちゃいましょ」

「俺にそんな権限はない、一体どうしたら」


そこで隊長に提案しに行くとって頭はない時点で、あの隊長は使えないわ、おかっぱさんが有力だから頑張って説得してください。


「こちらはいつでも歓迎するから、良く話し合ってね、私はこれで帰るわ」

「うぐぐぅ~・・・一体どうしたら」


かなり悩む兵士もいれば「それは嘘だ」っと私を攻撃してくる兵士もいました、敵兵である私の言う事ですから分からないでもないです、でもこの情報は時間が立てばどんどん効いてきます、外との接触も絶ったので真実は分からないしね。


「さてと、物資があるうちは元気だろうから、こちらも応戦の準備ね」


こうして私の揺さぶり作戦は始まりました、相手は最初から崩れやすいのが見えたのでそれほどかからないでしょう。


「規模を見て食料は1月分、頑張っても2か月くらいかしら?」


兵士の数は砦にいたはずの数と撤退してきた数を合わせ、少ない気はしました、きっと意思の堅い人だけが残ったと予想できます、その人たちが交渉の為に動けばきっと和平は近いわ。


「これで次はきっと大国との戦い・・・そこでこちらの国が怖気づかなければ良いのだけど、きっと無理よね」


不安を抱えながら私はみんなの所に戻りました、数日したらまた揺さぶりをしないとね。


「その間に訓練もしたいわ、ここにいる兵は使えるもの、他種族砦にいる傭兵1000と復帰兵士1000、合わせて6000いるわ、これだけ集まれば作戦も立てやすい」


戦えば負傷する、そこを深く理解して私は頑張るわ。
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