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2章 戦争の第一歩

54話 捕虜引き渡し

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「これが敵国わん?」

「大きいウサ」


ふたりがまたおでこに手を当てて見上げてます、この国は山に様に聳え立つクリスタルを加工して城が建てられています、それはすごく綺麗で、さすが大国の技術って感じです、私は知っていたので簡単に返事をしました、それ以外は脅威の広さだと思ってるわ、こちらの王都の3倍はあるんじゃないかしら?全部を見て回るのは5日は掛かりそうよ。


「さぁ入るわよみんな、気合を入れて」


ペルーロとミサーラは頷いてくれたけど、残りの二人、メリーナとビクトールは緊張でそれどころではないです、特にメリーナはこれから先頭で話し合いをするから顔色真っ青ね。

私が胸元にいるんだからそこまで心配いらないのに、まだまだ修羅場が足りないわね。


「こ、これが捕虜解放の条件です」


メリーナが緊張しながら、フェンドール大国の代表に提示額の書かれた紙を渡しました、そして私はまずいと思ってスキルを使ったの。


「これはこれは、普通の一般兵の解放にこの額ですか、中規模国は余裕がおありですねぇ」


座っていた、ちょび髭の男がニヤニヤと笑っています、見るからに何かを企んでる、私はそう思ったの。


「怪我も治療していますし、待遇も良くしていますから一人金貨10枚は妥当ですわ、それともあの大国フェンドールが払えないと?」

「いえいえそんな事はありませんよ・・・ただね、ここに5人で入ってきて素直に返すと思っているのかと、笑いそうで、ふへへ」


本音を漏らして相手が言ってきたわ、最初に自己紹介をしてこなかったのがそもそもおかしかったの、こちらは相手が名乗ったらすぐ返す予定だったのに、メリーナたちもおかしいと思っていたみたいよ、だから密かに通信で知らせたわ、作戦Dってね。


「では、交渉に応じる気はないと、そう言いたいのですね?」

「それは勿論ですねぇ、それにあなた達はそちらの主力、大層な金額を取れそうで嬉しいですよ、ふへへ」


髭の男が右手を上げると扉から兵士がなだれ込んできたわ、みんなは私の合図を待っているから、まだ椅子に座っているわよ。


「おやおや、もしかして怖くて立ち上がれませんかな?ご安心を丁重に扱ってあげますよ」

「本当によろしいのですね、これをしてしまったら、もうわたくしたちは交渉をしませんわよ」

「ふへへ~そんな物は初めからしていないのですよ、さぁ拘束されなさい」


相手の言葉を聞いて私はメリーナの胸元から飛び立ち、髭の男の顎を蹴り飛ばしたわ。そのタイミングでペルーロとミサーラ、それとビクトールも一緒になって他の兵士たちを瞬殺よ、スーツのおかげもあるけどみんな強くなったわね、残ったのは髭の男の後ろにいた短髪の男、そいつは私と同じでここの軍師なのよ。


「さて、軍師のビクトーリアムさん、これから本当の戦いが始まるのだけど、本当に国がさっきの決定をしたのかしら?」


短髪の男ビクトーリアムが名前を言われて驚いてるわ、下調べもしないで来るわけないのにね。


「驚いてないで答えるのですわ!」

「は、はひ!?」


ビクトールが怒ってテーブルをたたき割ったわ、そして答えたけど、どうやら髭の男の独断みたい、メリーナを自分の物にしたかったとか言っているわ、メリーナはそれを聞いて鳥肌を立てたわ。


「じゃあ3か月待ってあげます、捕虜も返してあげるから急いで国王に話を付けなさい、もしそれでだめだったら、もう容赦しないわ」


顔の前にいる私の言葉に恐怖しながら頷き、床に座り込んだわ、私たちはそのままそいつを放置して部屋を出たの、走ってくる兵士が通り過ぎたけど気にせずにね。


「これでまた戦いが進みますわねラリーファ」

「ビクトールは呑気ね、どうして私が3か月の猶予を与えたか分からないの?」


ビクトールは頭を傾げています、本来猶予を与えず攻め込まないと大国相手には不利です、もともと手数が違うのですからね、今残っている兵士をかき集め、周りの中小国の兵も終結させ参戦したら終わりです。


「そ、そんな!?どうして時間を与えたのですラリーファ!」

「私はね、その後の事を考えてるのよビクトール、中小国が裏切るくらいの援軍と話をする為にね、その為の3か月よ」


準備は前からしていたのだけど、時期が悪かったんです、相手はきっとこの後の戦いを見てから交渉をしたいと思っていたはず、少し前倒しになったけど、果たして援軍を出してくれるかしらね。


「そ、そうでしたの・・・それで勝算はありますのよね?」

「それは相手次第ね、正直そこが参加してくれれば戦争は終わり、でもそうでなかったら他の中小国を占領しまくって戦争は更に拡大ね」


手は何通りもあります、その中で穏便に済む方に進めてるけど、話の分かる人が相手にいないとどうしようもないわ、だからこの国は戦争を仕掛けてきたんだもの。


「前みたいに王都を襲撃はしないわん?」

「ペルーロ、それは大国が先陣を切ってきた場合ね、きっと中小国を先に戦わせるわ、やられた兵を集めるとか、勝ったら領土を渡すとか、うまみを言いふらしてね」


私はもうかなり先まで見えてるわ、この大国は既に詰んでるの、だからそれを有効に使って他の大国と接触したいのよ、それが一番の早道だしね。


「なるほどウサ、じゃあしばらくは待機ウサね」

「ペルーロとミサーラは私と大国に行くけど、ビクトールとメリーナは後方の砦で待機ね、しっかりと他の隊を訓練していて頂戴」


ここに来る前に私の訓練を受け、かなり兵士たちも鍛えられました、これなら補給が絶えない限り十分戦える、周りが敵だらけになったら私の最終手段を使うけど、その時は地獄を見ることになるわ。


「な、なんかすごい怖いっす」

「ほんとですわ、ラリーファあなたほんとにフェアリーですの?」


メリーナとビクトールが私の顔を見て言ってきたわ、失礼ねって怒ったけど、その笑みを出来るようになったのは皆のおかげよ。

最後の手段を使うのは本当は怖いわ、やり過ぎで故郷の様に追い出されちゃうかもしれない、でもみんなならきっと着いて来てくれるわ、それがある限り私は手を緩めることはしないのよ。


「さぁ忙しいのだから、みんな急ぐわよ」


みんなに発破をかけ、私は仮設砦を解体し出発しました、まずは私の商会が商いをしているアルスハイツ大国です。
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