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2章 戦争の第一歩

43話 初戦

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「ねぇラリーファ、工作兵を使って直ぐに堀を作ったのはすごいわん、でもゴブリンが相手じゃないのに堀に入って戦うわん?これはまずくないかわん?」


私たちは次の日の昼から進軍を開始して、ちょっと先にあった平原に陣地を作ったの、堀は魔法兵500人がいたから直ぐに出来たわね、後は簡単なテントを後方に建てて陣地の完成よ。

もちろん負傷兵は砦に残しているわ、メリシアとキャミカルがリーダーになって治療をしてるの。


「ペルーロ君、普通の堀なら確かに不利かもしれないわ、でもこれは斜線陣地って言う、ちょっと特殊なモノなの」

「斜線陣地?」


ペルーロが頭を傾げています、難しいかしらね?教育をしているメリーナなら分かるんだけど、ちょっと説明しました。斜めに堀を作りそこからクロスボウで攻撃します、すると相手が直線で突っ込んできた場合、流れが傾きます、敵は誘導されているとも知らずに突っ込んでくる、そして敵を更に罠に嵌めるという作戦です。


「その先って・・・確か堀を作った魔法兵がいたわんね、泥の召喚獣を出せるように魔法陣を書いてるって聞いたわん?」


私はよく覚えてたわねって、ペルーロをヨシヨシと撫でました、そうです、敵が誘導された先には、重装歩兵と魔法兵が待ち構えています、重装歩兵で敵の前進を止め、泥の召喚獣を後方に呼び囲んで倒す、これが今回私が立てた作戦よ。


「なるほど・・・あれ?飛行部隊はどうしたわん」

「ああビクトールたちはねぇ、その次の作戦に行ってるわ」


戦いは補給が出来なければ続けられないわ、それにこの戦闘で敵の被害は3割か4割、そうなる前に頭が良い隊長がいれが撤退をする、そうなれば被害があまり出ないでこちらは困るわ、ビクトールたちにはそんな時の為に補給部隊の奇襲をしてもらっているのよ、この戦いが終わっても戦争はまだまだ先があるんだからね。


「そ、そうだったわん・・・僕はてっきり、遠くに作った別の堀で隠れてる突撃攻撃組にいるのかと思ってたわん」

「ペルーロ君、戦争は二手三手先を読むのは常識よ、ただ目の前の敵と戦っていればいいと言うモノじゃないの、被害を最小限にし補給を途絶えさせないようにする、これは大事よ!」


それが大変なのよってペルーロに言って納得してもらったわ、ここから私の腕の見せどころよ、その為にアーオニド国にライオネックを向かわせたの、運送を手伝ってもらうのよ。


「さぁ敵が来たわよペルーロ、しっかりと戦うわよ!」

「分かってるわんよラリーファ」


私はこの戦い用に作ったウイングシールドにクロスボウの付いた武器を構えています、しばらくは銃は封印です、ビクトールたちは宣伝の為に使ってもらうけど、私が目立っても仕方ないのよ。


「クロスボウ隊、撃ち方始め!装填者は急がずに装填に集中しなさい!」


敵が迫って来ているので、メリーナの掛け声で私たちはクロスボウで攻撃を開始したわ、そして敵兵が右翼に流れてるの。


「うんうん、予定通りね」


相手が騎馬兵と歩兵しかいないのも功を奏しています、堀まで来れる敵もいないし実に順調よ、遠くでは攻撃の音が響き始めたわ、あれで向こうもお終いです。


「なんか、僕はこういったのはあまり戦った気がしないわん」


カメラを見ながら右翼を確認していると、ペルーロがクロスボウを撃ちながらため息を付いてるわ、他の兵士は堀に入った時点で変に思っていたみたいよ、そしてクロスボウを撃ち出すとなるほどって顔してたわ。


「ペルーロは近接戦スタイルだものね、でもそれはもう少し待ってね」


テンションが下がったペルーロを撫でておきました、こうやって聞き分けが良いのがペルーロの可愛い所です、どうしても接近戦で戦いたいって言う人はいるんですよ、戦闘狂ってやつですね、次は戦えるようにしないときっとダメです。


「お願いするわん、これじゃ身体がなまるわんよ」

「ふふふ、他の兵士もウズウズしてるものね、でも今回はこちらが待ち構えてたからよ、次は行けるわ」


敵の勢いがなくなってきたところで、ペルーロに約束をしました、敵の撤退方向にもよりますがきっと戦うことになります。


「ということで今日はご苦労様です、ここでこのまま野営にしま~す」


敵が撤退を開始したので、私たちは前進の準備をして野営を始めました、兵士の人達はあっさり勝ちすぎって、今の状況にかなり驚いているんですよ。


「気持ちは分かるけどね、それにテントは普通だけど、私たちが乗ってきたバスが変形して、簡易お風呂場になってるし、食事はインスタントラーメンと缶詰めだもんね」


他種族メンバーが気にせずに食べているので、参加した兵たちもしばらくして食べ始めたわ、そしてお代わりとかしてるのよ、お風呂とかもきっと驚くわね。


「大成功でしたわラリーファ!相手の補給路はガタガタですわよ」


バスの1つを会議室に使って、敵の補給路から帰って来たビクトールたちと話しています、相手は大損害だと言っていますね。


「じゃあ次は敵が待つ側ウサね」

「楽しみだわん」


ペルーロがそれを聞きかなりやる気ね、私は既に敵の待ってる位置は把握してるけど、どういった作戦にしようかしらね。


「わたくしも戦いたいですわラリーファ!まだ一度も相手とやり合ってませんのよ、したいのですわ!」


ビクトールも接近戦タイプだから、空での戦いばかりでつまらなそう、ここは総力戦をしたいとこだけど、さすがにまだ早いのよね。


「ラリーファ!どうなんですの、わたくしも戦えるのですか」

「分かったわ、考えとくわねビクトール」

「ほんとですのね、絶対ですのよ!」


私はうんうん頷いてビクトールにも約束をしてしまったわ、相手が撤退している陣は森を抜けた先です、陣との間には川が流れてるから待ち構えるのに最適なの、あそこで私たちが力任せに突撃すると足を取られ遅くなった所に矢を受けてかなりの被害が出る、しっかりと考えないとまずいのよ。


「となると、やっぱり横から攻めるのが良いわよね」


作戦を決め私はメリーナと同じテントで休んだわ、ペルーロは最近ミサーラと一緒なんです。


「相手が分散するとか、正面から迎え撃つだけって相手が考えてるから決めた作戦だけど・・・単純すぎるわ」


私はちょっと物足りなさを感じています、相手は突撃しか知らない者たち、こちらが撤退をしたら何も考えないで前進してくるから、横から攻めれば混乱して倒せるほど薄っぺらくて弱いの、私にはベリーイージーの戦略ゲームです。


「さて、進軍するっすけど・・・どうして3つに分かれてるっすか?」


メリーナがバスの配置を見て聞いてきたわ、今バスは8台ずつに分かれてるの、そしてビクトール隊とペルーロ隊、それとメリーナ隊に分かれたわ。


「私たちの武器は移動力よメリーナ、3方向から同時に攻めるの、正面はペルーロ隊で他の隊は、ちょっと離れた場所から森を抜け、敵部隊を両端から挟み撃ちしてもらうわ」

「そ、そうっすか・・・ラリーファの作戦は毎回色々あるっすね」


メリーナが変な顔をしてバスに乗り込んだわ、私はペルーロ隊と一緒だからカメラで他の隊を見るのよ。敵の数は少し減っても後ろからの援軍が来たわ、疲れてはいるみたいだけど結局1万、対してこちらは3000よ、まだまだこちらは不利なのよね。


「本来なら、空から砲撃し続けるのが一番のセオリーなんだけど、みんな直に戦いたいって事だから仕方ないわよね」


ペルーロの肩で胡坐を組んで私は考えています、こう言った時に使える兵士も欲しいところです。


「シールドで爆撃を、いやいやそれだけじゃみんなが突撃を止めないわ」

「楽しみウサねペルーロ」

「そうわんねミサーラ、お茶どうぞ」


私はブツブツ言いながら作戦を考えます、ふたりのイチャイチャにちょっかいを掛けれないほどにね、次は恐らく平原での一戦、周りには何もない普通に突撃の戦いです、数で勝ってる相手に分があるの、ここで不満を晴らしておかないと、次の作戦では必ず爆発する、そうならないようにしなくちゃね。


「そして・・・その次は砦戦、数を減らせても砦にいた兵士が加われば、また元に戻っちゃう、もう少しこちらも数が欲しいわ」


攻城兵器はあるし、航空部隊もいるから本来は余裕で勝てます、でもみんな近接戦で戦いたい人達ばかりなの、だからそっちの方で困っています。

そう思いながら私は頭を悩ませ、次の戦場に向かいました。
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