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2章 戦争の第一歩

34話 謁見にこっそり

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「王様ってどんな人なのか楽しみね」


ペルーロたちとの楽しい買い物を終え、2日が経ちました。そしていよいよ国王様との謁見です、私は勿論メリーナの胸元で待機しています。


「ちょっとラリーファ、あまり動かないでほしいっす」


玉座の間で跪いて待機しているメリーナにごめんって謝ったわ、私はちょっとだけ胸元から顔を出したのよ、だって見てみたいでしょ。そしてやっと国王が入場したと騎士が宣言したわ、国王が玉座に座るまでまって、お決まりの面を上げよって言ってきたわ。


「ふむ、思ってたより若いわ、30代後半ってとこね」


胸元から鏡を出し動かないように見ています、顎に髭を生やしたイケメンです、でも髭がない方が良いかも、金髪も長くしててちょっと似合ってないわ、私がそんな事を思っていると話が進んでいて、あいつを引き渡して褒美に男爵の爵位を正式に貰っていました。


「有難き幸せです国王様」

「うむ、それで今後の話だが・・・そなたの領からは兵をどれくらい出せる?」


いきなり本題に入ったようです、でもこれは想定内よ、これで進言して私たちはそっちの防衛にあたるって計画なの。今そのことをメリーナが砦の事を隠して話し国王が唸ってるわ、ちなみに金髪髭国王の名前はラルクハイド・ローアスト・ワーグナーだそうです。


「確かに、タイミングが悪ければ王都は落とされるやもしれん、良かろう!メリーナ・バーストン、そなたには隣国のアーオニド国に属するエイジャルナ・アラバン子爵の妨害を任せる、砦を築き防衛するも良し、好きにするがいい」

「畏まりました!直ちに準備いたします」


メリーナがそう言って立ち上がり、スカートを少しつまんで礼をして部屋を出ました。そして私は国王が砦を築いてでも防衛を成功させろって聞こえたわ、だから言ったのよ。


「男爵になったばかりの貴族の戦力を欲しがるって、この国平気なの?」

「前に言ったっすよラリーファ、二つの国に攻められそうなんす、だから余裕がないっす」


私の嫌味にメリーナそう答えたわ、それにしてもだと私は思っているわ、もしかしたら交渉材料を持ってないのかもね。


「戦ってばかりだと余裕がないのは当たり前よ、メリーナこの国の強みはあるかしら?」


歩いているメリーナに聞きました、でも唸ってます。考えないとダメなほどないって事です、それじゃ交渉も出来ないわよね。


「中規模国っすからね、そう言ったモノを持ってるのは大規模な国っす、資源が凄く持ってるとかそこしか取れない鉱石を持ってるとかっす、一番いいのは優秀なダンジョンっすね」


前にペルーロと話した転移が出来るダンジョンですね、そう言った場所に街を作り利益を得ているそうです、それだけで人は集まり大国には勝てないって事ね。


「でも今回の相手は同じ中規模国よね、それなら何かないのかしら?」

「そうっすねぇ~・・・お金っすかね」


即答するのがお金で、私が「それだけ?」って聞いたら「それだけっす」って普通に返したわ、これでは駄目ですね。


「もういいわ」

「し、仕方ないんっすよ、それよりも志願兵の輸送をどうするっす、大事になるとばれるっすよ」

「ああそれね、光学迷彩の自動」

「ちょっとあなた!」


中庭の横を通っていると、私の声を誰かが遮ってきたわ、メリーナが周りを見回していて、通路の真ん中で止まったの、そして相手が見つかったわ。


「そうよあなたよ!ちょっとこっちに来てわたくしの相手をなさい」


メリーナが正面を向いたので私も見れたわ、相手は革の軽鎧を着て槍を持っているお嬢様ね、歳はメリーナよりも下かしら、腰まで伸びてる金髪の髪を後ろでまとめてるの、運動出来るような恰好ね。


「も、申し訳ございません、わたくしは剣技には自信がありません、他の方にお願いしてください」

「何よ!受けるだけなら出来るわ、そこの盾を持って構えなさい」


指を差した方に椅子があり、そこには大きな盾があったわ、それを持って槍を受けろって事よね。メリーナが諦めて盾を持ち出したの、まぁしょうがないわよね。


「メリーナ、もし危なかったら私がシールドを使うわ、適当に構えてなさい」

「わ、分かったっす」


私の援護があると聞き、メリーナが盾を構えたわ、そしてお嬢様が槍で突いて来たの、メリーナさんがすぐによろけたから、私は直ぐにウイングシールドを出して盾を支えたわ。


「あなた、なかなかやるじゃない、じゃあこれはどうっ!」


メリーナが上手く受けている様に見えるものだから、相手のお嬢様が上機嫌になり速度が上がったわ、さすがに受けきれなくなってきたので、私は更にシールドを出したわ、相手も盾が沢山出て来て驚いてるわよ。


「なっ!?何よその盾!・・・いいじゃない」


お嬢様が驚いていると思ったら、逆に喜んでいるわ、更に速度を上げ打ち込んできたの、最初は支えるのに3つで防御に2つだったんだけど、速度が上がったので防御に4つまで出したわ、その時点でメリーナはもう付いてこれてないの、それに盾を持ってるのが限界みたい地面に盾を立てちゃったわ。私は支えるのに1つにして残りは全部防御に回したわ、それを見てお嬢様は更に喜んでいるわよ。


「すごいわその盾!わたくしの槍を全部受けてくれる、ねぇあなた武技を使うわよ!」


お嬢様が少し距離を取り、槍を構えて闘気を上げたの、私はシールドを集めて防御の体制を取ったわ。


「ふふふ~良いって事よね、じゃあ行くわよ『スラスト』」


すごく速い突きが繰り出されたわ、シールド6つを重ねて受け何とか防いだけどわよ、ほんとにメリーナよりも歳下なのかしらこのお嬢様。


「はぁっはぁっはぁっ・・・や、やるわねあなた、名前はなんていうのかしら?」

「わ、私ですか!?」


お嬢様が呼吸を整え、腰に手を当てて聞いてきたのでメリーナは名乗ったの、そしてお嬢様は笑顔で答えたわ。


「わたくしはビクトールよ、また相手してよねメリーナ」


お嬢様が元気よく庭を走って行きました、私はメリーナを見上げたんだけど、どうやらあの子は位の高い子みたいです、メリーナがすごくヤバいって顔してます。


「ねぇメリーナ、あの子ってどういった子なのかしら?」

「そ、それはっすね・・・国王の第4妃様の子供で、17位王位継承者っす」


王女様って事ですね、まぁ王宮にいるんだから、それなりの地位なのは分かってましたけど、まさか国王様の子供だとは思わなかったわ。


「良かったじゃない、王族とお近づきになれるなんて、そうそうある事じゃないわよ」

「それはそうっすけど、今のを自分がしていたと思われるのは、正直困るっす」


シールド操作は難しいんです、ミサーラが出来たのは素質があったからだったみたいです、私は並列思考やレベルが上がってるから大量に使えて、先回りして防御も出来るけど普通は出来ないわ。


「そろそろデータが揃うから、魔力さえあれば自動で守ってくれるのが作れるわ、それまではあなたの胸元で守ってあげるわよ」


ペルーロたちと外出しない限り一緒でも良いわ、メリーナには頑張ってもらわないといけないもの、他の貴族に鞍替えって手もあるけど、今の所メリーナよりもって人はいないわ。

調べたんだけど、悪いホコリがいっぱい出る奴らばかり、ちょっかいを掛けてきたら、それを使って返り討ちにする予定なのよ、ため息が出ちゃうわね。


「お願いするっす、正直今回の防衛で生き残れる自信がないっす」

「まぁ弓矢を1本でも食らったら、死んじゃいそうだもんねメリーナは」


盾を持っていた手がプルプルしています、襲撃の時もそうだけど、レベルが低すぎて逃げれないし反撃も出来ない、根性だけはあるから問題ないけどね。


「そうっす、貴族の学園で剣技の指導は受けてたっすけど、形だけっす」

「まぁ防御だけなら何とかなるわ、それよりもメリーナって成人してるのよね?」


王都の学園は15歳で卒業らしいわ、そしてメリーナは17歳、メリーナの胸元に入って聞いてるけど、ちょっと悲しいから頭に飛んで撫でてあげました。落ち込んでるメリーナを慰めて学園の話を聞いたんだけど、戦争が始まりそうだから今は休校中だそうよ、だからさっきの子は暇してるのね。


「これから大変だけど、頑張りましょ」

「そうっすね、頼りにしてるっすラリーファ」

「ええ任せなさい、私がいるうちはメリーナに指一本触れさせないわ」


胸元に戻り手を上げ私は宣言したわ、メリーナがくすぐったくて声を出していたけど、それは勘弁してもらうわ。
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