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1章 旅立ちの一歩

20話 作戦の実行

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「なるほど、罠を張り待ち構えるのか」


私は詳しく話したわ、森の浅い場所に罠を張り、強めの傭兵が先行する、同時にゴブリンをおびき寄せて罠に嵌めましょうってね、森を出た所には堀を作ってその中で弓を準備、ここではクロスボウが主流なのでそっちね、それで隠れて応戦するの。


「ラリーファ、堀って普通は街とか砦の周りに作って敵を落として上から攻撃する物だよ?自分たちが入ってたら使えないよ?」

「ペルーロ君、そこは臨機応変に使うのよ、何もそれに使わないといけないわけじゃないわ」


この世界では堀は敵の動きを止める時間稼ぎに使うとペルーロが笑っています、でも私の言ってるのは自分たちの守りとして使う場合ね、今回は相手に弱い部分を見せない目的があるわ、こちらは民間人がほとんど、接近戦が出来るのは傭兵の50人いるかどうかです、見えてたらすかさずそこを叩かれお終いです。


「50人を並ばせてクロスボウを構えても、それほど広い範囲を守れないでしょ?森から出た場所は開けてるからなおさらね、だから堀に入って何処から攻撃してきているのか分からないようにするの」

「そ、そうなんだね・・・うん」


ペルーロが頭から湯気を出し始めたわ、ミサーラは既にダウンしています、でも私は更に説明しました、この街にある最強の武器は強い傭兵ではなくクロスボウです、それを有効に使って対処するんですよ、装填だけなら私の作った道具があるので子供でも出来る、だから子供たちにも参加してもらうのも良いわ、50人の傭兵はゴブリンが堀に入ってきた時に戦ってもらうけど、それ以外の大人も撃つのに参加してもらう、数は倍増して広い平原をカバーできるようになるのよ。


「人数がいるから敵の空からの攻撃は盾を持って守れるわ、そしてゴブリンたちは矢を避けて迂回しようとする、そこにも罠を張って最も主力の傭兵で待ち構えるの、もしも迂回しないで逃げようとしたら、のろしで知らせて主力が森前に回り込んで妨害、そしてこちらに残っていた傭兵が突撃して挟み撃ちよ・・・ねっ楽勝でしょ?」

「た、確かにそうだが・・・しかし危険がないわけじゃないぞ、何人が参加してくれるか」

「何よ!街があぶないって時に・・・まぁ良いわ、じゃあ私の持ってるお金でその人たちの報酬に当ててよ、参加するだけで銀貨1枚、無事終わったら角銀貨1枚よ、どうかしら?」


私の言った前金銀貨1枚(1000メリー)は普通の人の一月の給金です、そしてそれが無事終われば角銀貨1枚が貰え、合計1万1000メリーが手に入ります、それなら参加を考えてくれるでしょう。

私の持っているお金のほとんど全額になるかもです、でも私には大金はそれほど要らないからここで使うわ、出し惜しみはしないわよ。それにこの街の大人の数は大体800人、全員が参加してもお釣りが来ます。


「い、いいのか?そんな事をする必要は君には無いんだぞ」

「あら?街で暮らしているのよ、私たちだって他人事じゃないわ、それにお金は使う為にあるのよ、そうじゃないかしら?」


お金を貯めるのは必要よ、でもあり過ぎてもダメ、要はバランスなのよ。

私は指を立ててローグナスさんに言いました、ローグナスさんはそれを聞いて笑っていますよ。


「分かった!そうまで言われたんだ、俺たちも半分は出そう、カリーサ手続きをしておいてくれ、それと要請もだ、参加する者たちは女子供でも報酬を約束すると言ってやれ!」

「はいギルドマスター」


ローグナスさんがそう言うと、笑顔でカリーサさんが頭を下げ部屋を出て行きました、さすがギルドマスターになる人だね、この人はこの後信頼できる人になりそうって思いました。そして今日の報酬を貰い、ミサーラを私たちのPTに加入して宿に向かっています。


「ね、ねぇラリーファ、僕たちが先陣を切ることになったけど、平気かな?」


宿に着くまでにペルーロがすごく心配そうに言ってきたわ、ミサーラは同意してすごい勢いで頷いてますね、私たちが敵をおびき寄せる先発部隊になるのは想定済みで予定通りよ、別動隊で動きたいと言ったのはこちらなので当たり前ですよね、私の装備もあるので見せなくて済むんだからそうじゃないよ逆に困るわ。


「平気に決まってるでしょペルーロ、あなたこの街の傭兵の実力知らないの?」


そう言ったら二人が首を傾げたわ、しっかりしてよねってペルーロの耳をモフったわ、私よりもふたりの方が知ってるはずよね。


「今日行ったダンジョンをクリアできるPTが2PTいるかどうかよ、それ以下が10PTいるけど烏合の衆なの、しかも!私たちが今日行ったダンジョンを最初に言った2PTはクリアできるけど、2PTで一緒に行って連合でってのが条件、それくらいの実力しかないの、分かるかしら?」


ミミをモフりながらそう説明しました、ちなみにそれ以下の10PTは4人から5人のPTね、つまり私たちの様に少数では、クリアどころか逃げ帰るのが関の山、既にここのトップになっちゃったのよ私たち。


「そうか!?だからギルドマスターが星の足りない僕たちに面会して頼んできたんだね」


ペルーロがやっとそこにたどり着き、私はちょっとホッとしました、私はその通りって肩からペルーロの頭を撫でたの、ヨシヨシって感じね。そして丁度宿に着いたわ、宿のみんなはいつも通りで安心したけど、明日の事を話したら、メーリリさんが参加すると意気込んでくれました、他の宿泊者たちももちろん主力として参加で、ダーメル君とメルールちゃんもクロスボウの装填だけなら参加すると言い出し、その夜はお祭り騒ぎよ。そして楽しかった大騒ぎも終わって、私は今いつものお風呂に入っています。

はぁ~さっぱり~って感じね。


「さて・・・子供たちの安全も考えて盾も作って、私たちは何とか集団での戦いに参加しなくて済んだけど、私は空から全体を見たいわ、となると知性のあるモンスターに2人だけで対処になる・・・経験が足りないから危険が大きいわね、ミサーラのレベルもダンジョンで12になったそうだけど、もう少しでも上げておける時間が欲しかったわね」


ミルク風呂のお湯を肩にパシャパシャ掛けながら、私は作戦を考えています。ゴブリンでは経験値はあまり貰えません、レベルアップは期待出来ないのよ、となると敵をおびき寄せる前に敵主力をなんとかしなくてはいけません。


「これは、あのスーツが大活躍しそうな予感ね」


今回、私たちが着ているスーツのある機能が役立ちます。それは迷彩機能です、気配や熱源は分かってしまう、まだ未完成品ではありますが、今回の敵には問題ないでしょう。


「こういった時って消音機能が着いた銃って優秀ね、強い敵が奥にいれば二人のレベルは上がるわ、それに期待しましょ・・・後は小声で話せる無線機が必要かな、それはもう開発してあるから生産すれば良いけど、ミサーラの武器はどうしようかしら?」


ミサーラはあまり力が強くないわ、ハンドガンは持ってもらうとしても、レベルはまだまだよね、となるとペルーロとの連携を考えて守る方重視かしら。

私はそう考え、丸い形の片手で持てる盾を開発してみました、もちろん普通の盾ではないです、これは装備者の意思で自在に宙を舞い攻撃を防ぎます、どこかのゲームであったのを参考にしました、ある程度はオートで守ってくれるけど、装備者が指示を出さないとダメだから練習は必要です。慣れれば味方も守れるし、乗って移動だって出来るわ、想像するとカッコいいわよ。


「って、それはミサーラには難易度が高すぎるか、私のも作って置いて色々試してみようかしらね」


ちょっと楽しそうと思いながらお風呂での準備(開発・生産)が終わったので、私は肩までお湯に浸かりゆったりしたわ。


「良いなぁ~ラリーファ、正直羨ましいよ」


お風呂から上がり髪を拭いていると、私の匂いを遠くでクンクン嗅いでワンコ君がすごく羨ましそう。でも私は髪を乾かしながら言ったのよ。


「女性の匂いを嗅ぐなんてマナー違反よペルーロ、そんな事じゃミサーラに嫌われるわ」


そうチクッと言っておきました、ちなみに別室のミサーラも既に綺麗になってモフモフです、それをペルーロは分かってないみたいなの、ミサーラはちょっとしょんぼりしていたわ。

まだまだ子供なのよね、だから夜の酒場に誘えないのよ、今も頬を膨らませて怒ってるけど可愛いんだもの。


「まあいいわ、私はお風呂の設置をメーリリさんに許可を貰って、外に出掛けて来るから明日に備えて寝なさいね」


子供は寝る時間よって私は心の中で言って、ペルーロにお休みの挨拶をしました、そしていつもの様に情報収集です。


「す、すごいです!?」

「こ、こんなにいるの?」


次の日の朝、私たちは門の前に来ています、ペルーロとミサーラが門の前にいる人の数を見て驚いていますよ、私は昨日の情報収集で知ってたわ。


「そうよふたりとも驚いたでしょ、総勢1850人いるわ」


ペルーロの肩に乗って私はふたりに教えたわ、6歳以上の子供や女性たちが全員参加したのでその数になりました、戦い以外も仕事はありますからね、安全な所で作業をしてもらいます。


「こ、この街のほとんど全員じゃないですか!そんな事って」

「あるのよミサーラ、さぁ私たちは先行しないといけないんだから、行きましょ」


私たちは街のみんなに見送られ、敬礼する門番に挨拶をして門を通り走り出しました、量産した道具は出る前にローグナスに渡し使い方を教えました、凄く驚いていて生産したいとか言っていたけど、それは戦いが終わってからと言っておきましたよ、そして私は森までの道でミサーラに装備の説明を始めたの。


「う、ウチに使えますかね?」

「平気よミサーラ、仲間を守るイメージをするだけだもの、慣れるまでは自分だけを守るようにイメージしてね、イメージは魔法士の得意分野でしょ?」


魔法はイメージが大事なので、魔法士なら盾を扱えると思ったんです、そして予想通り、走りながらなのに盾を飛ばし始め、4つの盾を自在に扱い始めたの、これはもしかしたら逸材だったかもって程よ。

ちなみに私は夜に練習をしています、今出来上がっている300個全てを扱えますよ。


「すごいですねこの盾」

「そうでしょ、名前はウィングシールドね、それにこれにはもう一つ使い道があるのよ、ちょっとやってみてよミサーラ」


私はシールドに乗ることもミサーラに教え、2つのシールドに器用に乗って、宙を飛び始めたわ、最初はバランスを崩していたけど、練習を始めて数分で会得しました、そこからは宙に浮いたミサーラがペルーロの本気の速度に付いてこれるようになったのよ、これで更に作戦の成功率が上がったと私は嬉しくなったわ。


「さぁみんなが準備を完了するまで、私たちは後ろからガンガン攻めるわよ」


私の声に二人が頷いて森に入りました、さてさて強いモンスターがいるかしらね。
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