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1章 旅立ちの一歩

4話 一難去って

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【兵士長】
・デントイファ

【兵士】
・エイトトファ
・イイオファファ
・メンネンファ
・タタファ
・サーファファ


名前が似たような感じなんですが、そう言うふうに名付けをするそうなので、わたしはスルーします。

っと言うか、それどころではないですよ、まったく。


「では、棒に使う魔法はシルフィートスというんですねデントさん」


兵士長に使っている魔法の事を聞き、性能を確かめています、兵士長のデントイファさんは頷き、棒の先端にシルフィートスを覆わせたわ、青い風がドリルの様にくっ付いています、残念なのは回転していない所でしょうか?デントさんは他には使えないと言っています。

話によると、魔力が足りないと言う事らしいわ、レベルが上がったり、上位のフェーリアたちなら使えるんだそうよ。


「我々の魔力ではそれ位が限界だ、だが今までもこれで何とかなっている、怪我は薬で治るからな」

「じゃあデントさんの魔力量ってどれくらいですか?風魔法シルフィートスの消費は幾つですか?」


魔力量は人それぞれなのは分かっています、なので個人で使える回数を確認するために細かく聞いたのだけど、またしても首をかしげられました。


「まさか知らないんですか?」

「あ、ああ、それを知らなくても戦闘で戦えるからな」

「な!?」


わたしはビックリですよ、自分たちの最大の武器もロクに知らないで、それで今まで戦ってたから平気だと思っているだなんて、ほんと呑気とか言うレベルではないわ。

でも、ここで怒っても仕方ないわ、知らない物は知らないのだからね。


「使えなくなった時はありますよねデントさん、何回目くらいとか覚えてませんか?」

「そうだなぁ~昔はあったが・・・今は10回使っても平気だな」


新人の時によくある事らしいです、つまりレベルが低いと、魔法を多く使えないと言う事です、そして戦闘を繰り返すうちに魔力量が上がり、何度も使えるようになる。


「ふむふむ、魔法を使い過ぎると魔力枯渇で倒れるんですね」

「そうだな、俺は最近はないが新人の時は良くなるんだ、まぁみんな通る道だ、ははは!」


デントさんの笑いをわたしも笑って返したわ、頭の中ではかなり怒っています、それでも今の戦力で頑張るしかないと、わたしは頭をフル回転です。

まとめると、一番使えそうな武器は使用制限があり、それ以外は石投げが主な攻撃。切り札のシルフィートスは魔法で、ドリルのように尖った風の塊を生み出す、風のドリルは回転していないけど、鋭利になっているので威力は推奨、シルフィートスでの槍突き攻撃以外は、近づいて攻撃をしない・・・って話です。

相手がそれだけ接近戦に特化していると予測が出来るわね。


「ほんと良く今まで平気でしたねこの村、まぁそれだけ平和って事なのかもしれないけど・・・では最後に、自分たちのステータスを確認しに行きましょうか」

「「「「「ステータス?」」」」」


みんなが首を傾げてるわ、ステータスも知らないみたいです、成人した時に見たあれは何?とか思わないのね。わたしはクリスタルを使用した時の事を説明し、みんなでそこに向かいました、そして驚愕しています。


「ダメです!成人の儀式以外で使う事は許されません」


ステータスが見れるクリスタルの前で、女性の神官さんが通せんぼして使う事を許してくれないんです。


「お願いします神官様!ケガ人を増やさないためにも数値の確認は必要なんです、少しだけ、せめて新人と兵士長ひとりずつだけ、数値の違いをどうしても見たいんです」

「ダメです!このクリスタルの力は成人したばかりの者たちの為にあります、今までだって成人を終えた者にもう一度使わせた事なんてありません、許可を出すわけにはいきません」


どうしてもダメなようです、前例ってそんなに大事なのかとわたしは説明しお願いしました、でもやはりだめでした。


「どうしたら使わせてくれますか神官様、これは必要なことなんです」

「そうですねぇ・・・村長が許せばあるいは」


そう言われたので、わたしだけで村長の所に行くことにしました、ウイファも兵士長たちも、わたしがこれだけ必死なのに必要と思ってない感じなんです、神官の人と困った顔をしていました。


「ふむ、クリスタルをもう一度使いたいのじゃな」


村長さんは女性でした、それも母親と同じ位に見えます・・・というか、今考えるとみんな若いです、歳をとらないのかもしれません。


「どうかお願いします村長様、それが分かればケガ人を出さず、戦いを有利に出来るかもしれないんです」

「ふむ・・・じゃがのう、怪我をすれば薬で治せばよかろう、どうしてそこまでの必要があるんじゃ?」


村長からそんな質問がされ頭をかしげられました、傾げたいのはこっちよ!って顔には出さずわたしは思い、説得を続けます。


「怪我をしたら痛いじゃないですか、それは誰もが嫌でしょ?」

「モンスターと戦っとるんじゃ、多少の怪我はするじゃろう、それに治せるんじゃぞ?」


治る治るとそこしか注目をしていません、大怪我をして助からない事だってあるかもなんです、もしかしたら今までそこまでになってないのかもと、わたしはそこに突破口を見出しました。


「もし怪我をした人が助からなかったら、手遅れになったらどうするんですか村長、その人がいなくなってしまうんですよ」

「何を言っとるんじゃ?その時は大地に帰るだけじゃろう、そして新たな生として花から生まれ変わる、その繰り返しじゃろう、なんも悲しむ事ではないのう」


村長からの言葉を聞き、わたしは力が抜けてしまったわ。命を無くしたらその人は新たな生命に生まれ変わる、その人が前のままで蘇るわけではありません、わたしたちはそうやって生まれるそうです、夫婦になったふたりが生の花というお花の前で祈りを捧げると、つぼみが開き赤ちゃんがいるそうです。

考え方が違い過ぎる、そう感じたわたしはすごく怖いですが、確かめないといけないことを聞きました。


「じゃ、じゃあモンスターが、もし倒せない量来たらどうなるんですか」

「それはないんじゃよラリーファ、ここにはフェーリア様たちの結界があるからのう、たまに入ってきたモンスターを倒すだけなんじゃ」


森の木の上を見ると、少し薄い光が見えます、それが結界だそうで守られているみたいでした、だからこんなにギリギリなのに焦ってないのかと思いました、そして命は回ると教えられればなおさらです。

なるほど、ここの常識が分かってきたわ。


「それでも、もし大量に襲われたら」

「そうじゃのう・・・ワシたちが大地に帰り、違う場所の村にある花から生まれ変わる事になるのう」


わたしの予想した答えが返ってきたわ、他にも村があるのは驚きですが、そうやって命は回って行くんですね。

正直、わたしはいやよ、父様も母様も一人だもの、代わりなんていないわ、この体になって1年間とても幸せでしたよ、これからもこの生活を続けたいわ。


「分かりました、すみませんでした村長様」

「うむ、分かってくれれば良いんじゃよ、また何かあれば聞きに来なさい」


そう言われましたが、もう二度と来ることはないと思ってお辞儀をして村長家を出ました、そして兵舎に戻りウイファたちにそのことを話したんです。


「まぁ仕方ないさ、知らなくても戦える」

「そうよぉラリーファ、気を落とさないでぇ」


そう言ってくれるんだけど、わたしは他の事で頭がいっぱいです。ここはあのおじいさんの言っていたような場所じゃない、だって永遠に安全なんてありえないもの、ここはわたしが何とかしないと、ほんとに取り返しがつかない事態になるかもしれません、スキルも教われないしやることは自分で考えなくちゃです。

今のうちに対策を立てようと強く思い、みんなに心配しないように言いました。
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