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1章 旅立ちの一歩

7話 失敗からの

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「皆構えて、まだ撃っちゃダメよー」


わたしは今、手を挙げて準備をしています、わたしたちの正面にモンスターが突っ込んでくる予定なんです、クロスボウを撃つ体勢で、兵士4人がクロスボウを構えて待っています、そしてしばらくしてタラティクトと言う大きな黒いクモがシャカシャカと走ってきました、ある程度近づいてきたので手を降ろし一斉に打ちました、わたしの作ったクロスボウはあれから更に改造され連射が出来ます、更には矢もシルフィートスのドリル矢じりになっています。

本来は回転も加えたいのだけど、みんなの魔力が足りません。


「さすがラリーファファの作った武器だな、あのタラティクトをこんなに簡単に倒せるとは信じらんないよ」

「言い過ぎよタタファ、みんなの射撃の腕が上がったからじゃない、頼りにしているわ」


同僚のタタファの肩を叩いて褒めたわ、タタファはちょっと顔を赤くして喜んでたの、ちょっと可愛いって思ったわ。最初に作ったクロスボウでは、普通の矢を撃ち出していた為、小さなカマキラーを何とか倒せるくらいでした、そしてそれから改造を施し、引き金を引くとシルフィートスが連続発射する仕様にしたの、それからは余裕になり2週間が経った今では、一斉射をすれば1回すれば倒せるくらいになりました。そして、わたしはこの村の発明王とか言われるようになったの、食事も良くしたし、薬の作り方も改善してみたわ、薬を作るのにみんなは全部手作業だったの、絞る機械とか色々方法を提案してみんなで作って楽しかったわ。


「俺たちも強くなってるのか・・・それなら良かったぜ、なぁラリー」


タタファが何か考え事をしてるみたいでした、彼はもう少し自信を持ってほしいわね、最初はシルフィートス矢を5発撃ったら倒れてたのに、今では20発撃てるようになってるのよ、わたしが小規模シルフィートスの魔法を作ったおかげでもあるけど、訓練を頑張ってるのはみんななんだからね。


「じゃあ、わたしは次の研究に移るわね」

「お、おう!頑張ってなぁ」


タタファがわたしを呼んだように聞こえたけど、わたしが飛ぼうとしたので止めて応援してくれたわ、わたしは手を振りながら兵舎に飛んだの、わたしが有名になって研究部屋を兵舎に作ってもらったの、そこではかなり色々な物が並んでいるのよ、本来その部屋は兵士たちの待機部屋だったんだけど、そもそも使ってない空き部屋だったの、わたしとウイファの軍師の部屋が向かいにあるわ。


「さて、いよいよ火薬を使った武器の実験ね・・・って言っても、普通に作って量産すれば良いのよね」


そう言って開発と量産をして行きます、ナンデモ製作工場は使っていると勝手にレベルが上がり、今では5レベルです、生産数は1つから5つに増え、時間は半分まで減っています。そして開発ですが、わたしの武器は今シルフィートスを応用した物が主流です、具現持続型シルフィートスを弾丸に見立て薬莢にはめ込んで生産しました、これは使う人の魔力を使わずに使用可能です、シルフィートス本来の速度と火薬の威力で飛ばす仕組みになっていて、マガジンに装填してハンドガンで打ち出すんです、かなりの威力になると予想しています。


「よしよし完成ね、これで魔力枯渇の心配は無いわ、次はマガジンをセットで量産を出来るように開発してっと・・・後は試射もしなくちゃだわ」


そう言いながら部屋を見回したの、この部屋には物が色々置いてあるのよ、もちろんダミーの品々ね、こうやって色々な物を作ってますよって周りに思わせているの、機織り機とか圧縮機が置いてあって、全然違う物だって知ってる人なら分かるわ、でもここでは誰も気付かないのよ。

くすくすと笑いながら試作銃をしまい、今日はもう一つの開発が待っています、今日は火を使った料理をしようと思っているんです、ここでは誰も火を使いません、フルーツとかが主食ですからね。


「あの白い芋も、実は豆だったのよね、あれを焼いたらきっとおいしいと思うの、味はお芋みたいだから、うんきっと美味しいはずよ」


わたしは少しテンションが高いです、ついに生の食べ物以外を食せると嬉しくなっちゃうのよ、今村では塩以外も胡椒やマヨネーズと色々使い始めているわ、なかなか美味しいって好評なのよ、でも全部冷たい物だからわたしは少し不満だったの、やっと暖かい物が作れるってテンションが高いんです。


「って事で、コンロを作ってみました、燃料は魔力でも良いし魔石でも良いのよ」


魔石はモンスターから取れます、わたしたちの身長の半分くらいの大きさがカマキラーたちから取れて、それを割って使っています。


「さて、これで焼いてみてっと」


コンロに火をつけ、串に刺した白い豆を焼いてみました、そしてホカホカの湯気を出している白い豆に塩を振り、早速実食です。


「お、美味しい!?やっぱり焼き芋みたいだわ、これにバターをのせてっと」


わたしはもう夢中で食べました、そして全部食べ終わったところで、扉がノックもされないで開かれたの、数名の兵士と神官様が飛び込んできたんです。


「ラリーファファ!お前何をしている!」

「デント隊長?それに神官様も・・どうしてそんなに興奮してるの?」


隊長たちがすごく怒ってるわ、どうしてかしら?


「お前知らんのか!?火を使うのは禁忌なんだぞ!」

「え!?」


怒っている隊長が説明してくれました、なんでも火を使うとモンスターが寄って来てしまい、フェーリア様たちの結界がモンスターを退けなくなるそうです。


「すみません、わたし知らなかったんです」

「知らなかったで済む事ではない!」

「まぁまぁ兵士長さん少し落ち着きましょう、知らなかったのは仕方のない事です、今回は外ではないですし、小規模ですから問題ないでしょう、ですが次は無いですからねラリーファファさん、気を付けてください」


デントさんを抑えて神官様が厳重注意としてくれました、わたしはかなりしょんぼりして返事をしました、まさか火を使うのが禁忌なんて思いもしませんでしたよ。

そして私はその失敗を引きずり、訓練中にとんでもないミスをしてしまうんです。


「今回の武器は銃と言います、魔力の消費はない優れものですが、とても危険なので扱いには十分注意してくださいね」


兵士のみんなに取り扱いの説明をして、新しい武器の試射をしてもらっています、みんなすごい音に驚いていますが威力は言うまでもなく強力です、木の的を軽く貫通し、後ろの土で出来た山の半分までめり込んでいます。そして何度かの試射の後、薬莢を詰まらせた人がいたの。


「あれタマが出なかった?おかしいな」

「ダメ!?」


タタファが弾が飛ばなかったのを気にして、銃口を覗いてしまったんです、わたしは直ぐに銃を取り上げたんですが、タタファが引き金を引いてしまい、肩を打ち抜いてしまったの。

「い、いでぇー!」

「は、早く治療を!誰か薬を持ってきて」


わたしの声で他の兵士が薬を持ってきてくれました、タタファも直ぐに怪我は治ったんですが、そこで私は隊長に呼ばれたんです。


「ラリーファファ、あの武器は火を使っているな」

「火と言いますか、火薬と言って爆発の威力を利用してます、シルフィートスを凝縮した弾を撃ち出すんです」


わたしが渡した資料を見ながらデント隊長が怒っています、火と言えばそうなんだけど、炎が出るわけではありません、わたしはモンスターが寄って来るのは、あくまで炎が燃え上がるからだと勘違いしていました。

明かりに虫が寄って来たりとかしますからね。


「火の力を使っていることに変わりはない、今回は庇いきれんぞ」

「そ、そんなにまずいんですか!?・・・わたしはどうなるんでしょうか?」


わたしは唾を飲みました、もしかして禁忌を2度も犯したって事で追放でしょうか?父様や母様になんて言ったらいいのよ。


「村を出て貰うことになるだろう、お前のやったことは村だけの問題ではない、この森全体に関わる事だ、だから森から出てもらうことになるかもしれん」


そう言われ、わたしはかなり動揺しています、森を出ないといけないってそんなにまずい事だったの。


「何で火がいけないのか分かりませんが、もう使わないと誓います、何とか処罰を下げることはできませんか」

「お前は我々に色々な物を作ってくれた、しかし1度ならず2度となるともう無理だ、明日神官様と村長と一緒にお前の家に行く、その時までに旅の準備をしておけ」


すごく突然すぎる追放に、わたしはどうしたらいいのか分からなくなったわ、どうなっちゃうのわたし。


「ただいま」


家に帰ってきて、わたしは母様と父様に説明しました、そして抱きしめて貰ったんです。


「ごめんなさい母様父様、わたし禁忌をまた犯しちゃったみたいなんです」

「いいのよラリーファファ、あなたは良い子だもの、ただちょっと失敗しただけ」

「そうだぞラリーファファ、お前は仕事熱心で頑張り屋だ、反省していると言えばきっと取り消してくれるさ、いまから俺が行ってくるよ」


父様がそう言って家を出て行きました、そしてしばらくして父様が帰ってきて、わたしを抱きしめてきたの、その力の弱さにわたしはダメだったんだと思ったわ。


「すまんラリーファファ、父さんを許してくれ」

「良いんですよ父様、わたしが悪いんです」


わたしはこれからどうなってしまうんだろうと、とても不安になりながらその日は眠れない夜を過ごしたわ、もうわたしの追放は確定なんです、こうなったら何とか生き抜くしかないですよ。


「母様父様さようなら、どうかお元気で」


朝になり、わたしは母様父様にお別れの挨拶をしています。2人に抱きしめてもらいみんなで泣きました、でも神官様と村長が待っています、飛んで待機しているデントさんはわたしを怖い顔で見てるんですよ。


「それで、どうして村の中心に?」


別れを済ませたわたしは、どうしてか村の出入口ではなく水晶のある中心に来ました、いま村長が神官様と話しをしています。


「デント隊長、どうしてここに来たんですか?」

「言い伝えではな、森の追放者は水晶で森の外に移動させるそうだ、俺も見るのは初めてだが、そう言う事だろう」


なるほど、つまり森の外まで強制的に出されるんですね、そして一人で生きて行けと。


「そうですか・・・デント隊長、短い間でしたがお世話になりました」

「すまんなラリーファ、俺がもっと注意して見てやれば、こんなことにはならなかったのに」


デント隊長と握手をしてわたしは村長に呼ばれました、そして円の中に入り光に包まれたんです。

ウイファにお別れをしたかったけど、会えなかったわ。
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