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1章 旅立ちの一歩

3話 1歳で就職

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「しっかり仕事をしてくるんだぞラリーファファ」


次の日の朝、早速わたしは仕事に行くために家の外に出ました、そして父様と母様が見送ってくれています。

昨日家に帰って来て直ぐに、スキルや魔法を使おうとしましたら、仕事場に着くまで待ちなさいって母様に叱られました、なんでも使い方の指導をしてくれるそうですよ。


「はい父様、母様行ってきます」


わたしは背中に力を入れて飛び立ちました、距離にして5メートルくらいでしょうか、自分が小さいので遠くに感じます、感覚的には500メートルって感じですね。


「すみません、昨日成人した者です」


兵舎の入り口に受付のようなところがあったので、そこに座っていた緑色の髪の男性に声を掛け聞いてみました、相手は分かってるみたいで笑顔ですね。


「ええ聞いてますよ・・・えっとラリーファファさん、職業は軍師でしたね、ではこの施設を真っすぐ進み、突き辺りを左に行ってください、そこからもう少し進むと左右に部屋がありますので、右の部屋が仕事部屋になります、そこで次の指示を貰ってください」

「分かりました」

「それにしても軍師ですか、私の上官になるのですね、頑張ってください」


男性がニコニコして言ってきましたね、確かに軍師なら上司なんでしょうけど、そこまで上下関係がはっきりしてるとは思えない対応ね。

まぁそこら辺、わたしもきつくしたくないわ、楽しくないものね。


「その時はよろしくお願いします」

「ええ、お手柔らかにお願いします」


男性に一礼してわたしは奥に進みました、男性に言われた通り、奥の突き辺りを右に曲がり、右手の部屋に着きました、扉は黄色い葉っぱですね。


「家の扉は緑だったけど、分厚いしどんな植物なのかな?ちょっと気になるわね」


部屋の中に入ると8畳くらいの部屋でした、そして机と椅子が置いてあるだけです、黒板も教科書も何もないんです。

ここでどんな勉強するのかな?すごく気になるわ。


「それに昨日の訓練を見る限り、それほど高度なことはしてなさそう、あれで虫たちに勝ててるのか、ちょっと心配になるわ」

「いるかしらぁ~」


わたしが独り言を言いながら部屋を見渡していると、わたしが入ってきた扉が開き、紫の髪の女性が軽い感じで入ってきました、わたしは教育係だと思いお辞儀をしましたよ。


「うんうんしっかりしてそうね、ちゃんと来てる」

「はいラリーファファと言います、よろしくおねがいします」


自分の名前を名乗って姿勢を良くしました、父様に教わったんですよ。

でも父様の名前はまだ分かってないわ、いい加減聞きたいのだけど、タイミングがないのよねぇ。


「そんなに畏まらなくていいのよぉ~なにせ、私も去年ここに入ったばかりなんだからねぇ~」

「へ!?」


フワフワした女性が笑顔でそう言ってきたわ、わたしは首をかしげてしまったわよ。

じゃあ誰が教えてくれるの?


「あたしはウイファファよ、よろしく」

「はい・・・あのウイファファさん、それでこれから」

「あたしの事はウイファで良いわよぉ、それに分かるわぁ~これから何をするのかでしょ?」


ウイファファさんが食い気味に言ってきました、ウンウン頷いているので、きっと見た目と違って、しっかりとしているんでしょうっと思ったのよ。

でもそれは直ぐに打ち砕かれましたよ。


「あたしも分からないのよぉ~まいっちゃうわよねぇスキルは範囲伝達って、訳の分からないのが1つじゃない?おまけに前任者がいなくて、去年なんか、何回か昆虫型モンスターと戦ったんだけどぉ、兵士の人たちの中に熟練者がいるからぁ、その人の指示をあたしたちが兵士たちに伝えて終わりなのぉ~もうこれで仕事って言えるのかってくらい楽なのよぉ」


フワフワとしたことを話してくれました、わたしもそれでいいのかと思いますが、きっとそれだけ兵士たちが有利なんでしょう、あの訓練を見てそうは思えませんけどね。


「そ、そうですか・・・それって、わたしたちいるんでしょうか?」

「うん、要らないと思うわぁ、神官様が言うにはねぇ、クリスタルが職業に選んだのだから、部署を作りましょうって感じらしいわよぉ~」


ウイファファさんの言うように要らないと言う事です、これではわたしはごく潰しですよ、部署を作る時も、フェアリアのみんなで考えたらしいけど、そもそも軍師って職業が何なのか分からなかったらしいわ、そして上位の人であるフェーリアって人に聞き、兵士の指揮をする人って答えが返ってきて、取り敢えず兵舎に部屋を作ったって感じらしいわ。

そして去年からだから、ほんとに何をすればいいのか分からない、1年が経ってもそのままって感じみたい、ほんとにそれでいいの?


「まぁ戦いが終わったらぁ、素材を回収する人たちと一緒に運んだりはするわぁ、他にはないけどねぇ」

「じゃあ、参考書は無いんですか?」


わたしの質問にウイファは首をかしげて『なにそれぇ?』って顔をしています、何だか年の離れた女子高生と話しているみたい、どうしたらいいのよこれ。


「まぁなんにしてもぉ、兵士の人たちと顔合わせして挨拶はしましょう、付いて来てねぇ」


ウイファを先頭に部屋を出て、外の訓練場ってとこに向かったわ、昨日わたしが見た場所です。あれは訓練場って場所じゃないって頭の中でツッコミを入れたわ。

あれはね、わたしの中では運動場っていうのよ。


「ねぇウイファ」

「なにかしらぁラリーファ」


顔だけをこちらに向けウイファが笑顔で返してくれたわ、その顔にかなりドキッとしたわよ、それに略称で呼んでくるとか反則よね。

それに胸も大きいし、ズルいわ。


「昨日少しだけ訓練を見たのだけど、あれっていつもの訓練なのかな?」


質問をしていると訓練場に着いてしまったわ、今見えているのは昨日と同じで、5mくらい先に立てられた的に目掛け石を上げてる人と、地面に絵をかいてる人たちです。


「そうよぉ、あたしたちの主な攻撃である石投げとぉ、それを有効に使う為の作戦説明でしょ?」

「石投げが主な武器ですか・・・それで他の武器が、あの棒になるんですね」


この訓練場にあるのは、拳サイズの石と身長くらいの長さの棒だけです、わたしの父様が持っていたナイフとか刃物が付いた槍ではなく、昆のような感じです。


「あの棒は最後の切り札よぉ、風魔法を唱えて先端に纏わるの、そうするとねぇ槍の様に先端が鋭利になるのよぉ、かなりの威力でカッコ良かったわぁ」


わたしはそれを聞いて少し安心しました、やっと主力のような攻撃を聞けたからです、でも石が主な攻撃と言っていたので、まだまだ油断はできません。


「魔法ですか・・・じゃあ、あの石も何か特別な方法で投げたりとかするのかな?」


ちょっと期待してウイファに聞いたんだけど、首をかしげて「何で?」って返って来たわ。

いやいや、魔法で棒を強化して攻撃出来るなら、他になにかあるでしょ。


「他には何もないんですか?」

「ないわねぇ」

「・・・」

「・・・」


しばらくの沈黙の後、わたしは先に進みました、次は相手の確認です。

相手が弱ければ、武器が貧弱でも平気よね。


「それで、モンスターは毎回倒せてるんですよね?」

「そうねぇ、ケガ人は出るけど倒せるわぁ」


倒せるんですねって返したんですが、ケガ人が出てると聞き、わたしはかなり動揺しました。

それなら、もっと効率の良い戦い方はしないとダメじゃない。


「怪我人が出るなら、作戦を考えなくちゃ」

「それは平気よぉ、相手は1匹でぇちゃんと倒してるものぉ」

「え!?1匹?毎回1匹なんですか?」

「そうよぉ」


ウイファの答えにかなり危機感を覚え、わたしは聞いたのよ、もっと数が増えたらどうするのか、そう言った考えはないのかと質問したの、そうしたらウイファはなんて言ったと思う。


「それはぁ、全滅するわねぇ」


っと笑顔で簡単に言ってきたの、わたしはその返事を聞いて、フェアリアって命の重さが軽いんじゃないかと思ってしまったわ、それとも、のんきなだけなのかもしれません。

そしてあのおじいさんを思い出し思ったの、平和って言ってたけど、それはここのフェアリアがそう思っているだけだってね。


「兵士さんの人数ってどれくらいいますか?」


このままではいけないと思い、わたしは直ぐに改善を考えたの、まずは戦力の確認ね。


「ここにいる6人で全員よぉ」

「そ!?そうですか6人だけですか」


6人と聞きかなり動揺しました、わたしはまだ相手である、昆虫型のモンスターを見ていません、でも6人掛かりで戦って怪我をする程度の相手なんでしょう。


「深刻そうだけどぉ平気よぉ、今までだって倒せてきたのだものぉ、気楽に行きましょぉ」

「そんな!?もっと強いモンスターが来たら村が全滅しますよ!何とかしましょうよウイファ」


わたしが大声を出したので、兵士の人もウイファも驚いてるわ、これじゃ平和なんて程遠いわ、ほんとにいつ襲われて死ぬか分かったモノじゃないわよ。


「ウイファ!わたしの紹介をお願い、これはかなり深刻よ」

「は、はひぃ~」


わたしの少し低い声にびっくりしてウイファが返事をしました、そして兵士の人に整列してもらい、紹介をしてもらったんです。
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