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1章 旅立ちの一歩

2話 ステータス確認

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「どうも森田琥珀・・・改め、ラリーファファです、わたしは今自分の羽が作った繭の中にいます、それに分かると思いますが、しっかりと喋れるようになりました、1年間とても長かったです」


この1年とてもつまらないかったのよ、食事はずっと同じ物だし、お風呂は入らないでただ寝るだけ、ほんとにつまらない毎日だったわ。

話によるとこの繭から出ると、父親たちと同じ感じに成長した姿になるそうで、成人者って扱いらしいの、そこは楽しみではあるのよ、でも何が変わるのかとても不安です。


「まぁ・・・この繭の中はお風呂に入ってるみたいで、気持ちが良いんだけどね」


繭の中は液体で満たされていたの、液体がどんどん下から増えてきて驚いたわ、でも液体の中でも呼吸は出来るし、フワフワして気持ちが良かったわ、そして段々意識が薄れていって意識がはっきりした今では、もう液体も残り少ないわ、眠っていたから何日経ったかも分からないんです。


「父様と母様の話だと、液体が無くなると1月経ってるって話だけど、そろそろなんだよね、はぁ~このままここにいたいなぁ」


二人の話では液体が無くなり、意識がはっきりし始めると羽化の兆しだそうで繭が割れだすそうよ、暗いから自分の姿を確認できないけど、もう変わっているんでしょうね。


「暗くて自分が成長してるのか分からないんだよね、大きくなってるのかな?」


もちろん、わたしも顔や体を触ってみました、でも何となくしか分からないんです、そして女性として一番確かめたい部分は変わってなさそう、母親がスレンダーなので仕方ないとは思いますけど、成長が見られないと悲しいよね。


「って考えてたら、もう液体が無くなったわ、じゃあもしかして繭を触ったら割れるのかしら?」


好奇心に勝てなかったわたしは、繭を触ってみましたよ、そしたらあんなにフニャフニャだったのに、ぷすっと指が通っちゃったの、指を抜いたら外の光が見えました、そして段々繭が割れて行って久しぶりの外です。


「「ラリーファファ成人おめでとう」」


繭が壊れると、父親と母親が抱き合ってこっちを見ていました、もしかしてずっと待っててくれたの?


「ありがとう父様母様」


「これを着なさいラリーファファ」


母親がそう言って渡してくれたのは、青い花びらで編まれた洋服でした、父親と母親も同じ感じの物を着てるんです、確かに可愛いんですよ、でももう少し糸を編んで布にするとかあると思うんです、隙間もそれほど無いし確かに色鮮やかで可愛いんですけど、近くで見るとダンビラみたいなのよねぇ。


「ありがとう母様」


わたしはちょっと不満を心の中に残し着替えました、出来れば鏡が欲しいわ、この家には無いんです・・・というよりも化粧と言う物がありません、フェアリアって種族はそう言った事もしないんでしょう。


「うんうん、似合うぞラリーファファ、とても綺麗だ」


「ありがとう父様」


父様にお礼を言ってわたしは周りを見まわしました、父様と母親の目線がわたしと同じ高さになっています、わたしもそれなりに成長してるんでしょう・・・でも胸は、やはりないですけどね。

ついでに言いますと下着も着けてません、父様たちから貰った服はダンビラワンピースでスカートです、下から見たらきっと見えてしまいます、みんなは気にしないのでしょうけど、わたしはかなり気になります。


「それじゃ行くぞラリーファファ」


「はい父様」


事前に教えて貰っているので、わたしは元気よく返事をしたわ、成人したらこの村の中心にあるクリスタルに祈りを捧げ、自分の能力を見ます、そこで職業を決めて貰う儀式をするそうなの。父親は果物収集者で母親は花びらの加工職人です、他に村を守る兵士や薬の加工職人、そしてあの手摺りの茎を加工する建築士と様々で、そこで初めてスキルや魔法の使用が認められます。

わたしが密かに使おうとしたら、母様に直ぐに見つかり怒られました、成人前に能力を使うと制御できず、大変な事になるそうですよ、だからどんな能力を持っていて、どんな職業に就くのか、すこし楽しみです。


「ラリーファファ、成人したらまず飛ぶことから始まる、背中に力を入れ羽を広げるんだ」

「はい父様」


っと意気込んでみましたが、最初の難関です。父様は羽を広げパタパタとさせています、わたしはマネをして背中に意識を集めました、すると桃色の羽が横に広がりパタパタと動き体が浮きましたよ、こんなに簡単に飛べるんですね。


「さすが俺の娘だ、もう飛べるとはな」


父様が頷きながら言ってます、普通は1時間は羽をはばたかせる練習をしないとだめなんだと、ドヤ顔を見せています、でもわたしは別に特別なことはしてません、背中に何となく動いてるって感じを覚えるだけで、ほとんど意識してないんですよ。


「ただなラリーファファ、旋回やスピードを出す時は気を付けるんだぞ、危ないからな」

「はい父様」

「うんうん・・・では行くぞラリーファファ」


父様が先を飛び、わたしはその後に続きました、あの時は高くて怖かったのに、今は全然そんな感じはしません、むしろ気持ちいいくらいです、もしかしたら自分で自在に飛んでるからかもしれませんね。


「あれがクリスタルですか父様」

「そうだぞラリーファファ、他の成人者はまだ来ていないな、やはり俺の娘は優秀だ」


みんな飛ぶ練習をしてからなのでわたしが一番のようです、まだみんな上手く飛べてないんでしょう、でも繭の解ける時間とか、個人差があるんじゃないのかな?と思うます、きっと親バカ的発言でしょう、まぁ良いけどね。


「あなたが最初ですか、お名前は」


クリスタルの前に降りると、神官みたいな恰好をした女性が立ってました、しっかりとした布だと思って見て見ると、それも細かく花びらを組んでいました、かなり細かくなっているので遠目からは分かりません、職業に着くとそう言ったちょっと複雑な服になるのだとわたしは思ったわ。

それと気になったのだけど、宗教っぽいからどんな神を祀ってるのかしら?


「ラリーファファと言います」

「そう、ラリーファファっね・・・じゃあ早速、あの円に入って跪き祈りを捧げなさい」


神官服の女性が少し横にずれ、クリスタルの方に手を向けたの、わたしは3段の階段を登り、円の書かれた場所で手を組んで目を瞑りました。

祈るってこんな感じで良いのかな?何も言われてないから分からないのだけど。


「良いですよラリーファファ、目を開けクリスタルを見なさい」


後ろでさっきの女性の声がして、わたしはクリスタルを見ました、クリスタルの真ん中辺りに四角い板のような物が見えます、よく見ると液晶画面のような物でした、そこには文字が書かれてます。


【ステータス】

〔名前〕ラリーファファ〔年齢〕1歳
〔種族〕小精霊(フェアリア)
〔職業〕軍師
〔レベル〕1
〔HP〕10〔MP〕10000
〔攻撃力〕物理1・魔法10000
〔防御力〕物理1・魔法10000
〔俊敏性〕10000
〔スキル〕索敵スキル・鑑定スキル・並列思考
〔魔法〕火・水・風・土・雷(各1レベル)
〔戦闘技術〕なし
〔製作スキル〕なし
〔特殊スキル〕
・無限収納
(どんな物も入れて置けるスキル)
・ナンデモ商品開発
(どんな物でも開発が出来るスキル)
【注意】
※材料が必要
・ナンデモ製作工場
(開発した物を自動で生産するスキル)
〔称号〕
・転生者
(神により新たな命を貰った者)
・精霊の加護
(精霊種が持ってる称号、魔法の威力などが上がる)
・神の加護
(!#$%&#”)


わたしはそれを見てドキッとしました、文字が分かるとか、日本語に見えるとかそんな事、気にしている場合ではありません、どう見ても普通とは違う物が入っているんです、それも後ろの人が言ってきたって事は見えてるって事です、凄くまずい気がします、特に一番最後。


「職業は軍師ですか・・・ラリーファファもういいですよ、あなたは今後、村の戦士たちの指揮を任されることになるでしょう、しっかり仕事に励みなさい」

「は、はい!ありがとうございます」


わたしは言われるがままクリスタルから離れました、画面は私が円から出ると消えましたよ、そして何か言われると思って神官さんをチラチラ見たんですけど、どうやらそこら辺の関心がないようで、職業以外は見てないみたいでした。


「ラリーファファは軍師か、これは将来が楽しみだ」

「父様、この村の兵士ってそんなに大変なんですか?」

「当たり前だろう、タラティクトやカマキラーを相手にしないといけない、俺の持ってる短剣もタラティクトの爪で出来てるんだぞ」


父様が胸を張って話してくれています、要約すると大きなクモやカマキリが相手の様です。そしてわたしたちの大きさを考えると、やっぱり他の虫も相手なのかもしれません。


「見えるかラリーファファ、あそこが兵舎だ、明日からおまえが通う事になる仕事場だぞ」


父様が仕事場まで案内してくれて、わたしは指差した方角を見ています、方角的には自分の家を背中にして中央の左手に位置しています、そして規模は家4件分でそれほど大きくなく、地上に作られていました。建物が草や茎で作られているのは同じですね。

遠目で見て、訓練をしてる人がいるから、きっとあの人たちをわたしが指揮する兵士ですね。


「どうだ?あれが兵士たちだ、なかなか屈強そうだろう」


父様が訓練をしている兵士を見て自信たっぷりです・・・でもわたしは、訓練を遠目から見てかなり心配になりましたよ。
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