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3章

49話 ロボットが現れた

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ウサギクイーンのダンジョン周辺に作った僕の村は、やっと形になった所に思わぬ訪問客が現れました。
このままではまずい、そう思った僕は、村の門に立ってどうしようとドキドキです。
相手は王都の商人で、勇者の支援の為に移動している最中だと言ってきました。村の食料を分けろと言ってきているんです。


「どど、どうするんだ」

「落ち着いてよダダ兄」


隣で戸惑っているダダ兄を見て、僕は少し落ち着きを取り戻し、頭を使って考える事が出来た。相手は僕たちに敵意を向けてきているわけではなく、その時点であの村の件ではないのが分かったんだ。それなら素直に従った方が良い。
ダダ兄ありがとう。小さく呟いた僕が前に踏み出すと、商人の周りにいた兵士が剣に手を添え警戒します。僕は出来るだけ敵意が無い事を知らせる為、手を挙げて見ました。


「僕は村長のロランです、攻撃の意思はありません」

「随分若い村長ですね」


商人の一言を聞き、僕は用意していた設定を話します。大人が病気で全滅して子供たちだけで暮らしている、そんな説明を聞き、商人は残念そうに見てきます。でも僕たちに同情してるわけじゃないんだ、食料が手に入らないと思っているんだよ。
食料は用意すると僕は約束すると、商人はとても驚いていました。勇者様の為だと強調させると、納得した感じを見せました。商人には待つように伝え、僕は村に戻り準備を始めます。


「水に小麦に干し肉、これくらいかな?」


食料庫の前に並べてフサーバスさんに意見を求めた僕は、正直救援用の提供なんて知りません。フサーバスさんでも分からない様子で、どうしましょうと言って来たくらいだよ。
そこで、村の偉い人の娘様だった、エミリーに視線が集まります。
フサーバスさんの薬のおかげで元気になったエミリーさん。彼女は村の経済面を支える役職を任せてる、ダダ兄は警備隊で休みの時はいつも一緒なんだよ。


「勇者様が使うのでしたら、もう少し多めか品質の良い物があった方が良いです、それと変わった品ですかね」

「なるほどなるほど、それでしたらチーズも出しましょう」


チーズは高級品で、やっと生産出来た品なんだ。その時僕たちはパンに乗せて食べて大喜びしたんですよ。
あの時は宴会になって楽しかった、みんなでホンワカと思い出し、チーズを加えた荷物を荷馬車に乗せます。
大型ネズミのカピーパラに引かせて商人の元に着くと、向こうは驚きを隠せないでいます。子供だけの村から、2台の荷馬車いっぱいの食料が出て来て、驚かない訳ないけど、何となく違和感がありました。それでも僕は、ニコニコしながら勇者様によろしくと見送ります。


「ロラン、これで好意的に見えたよな」

「ダダ兄・・・きっと無理だよ」


商人たちが進む道の先にはあの村の跡地があり、彼らは不自然だと見るでしょう。そうなれば、こちらが嘘を言っていたと思い込み戻ってくる。
でも僕たちは楽しく平和に暮らしているし、商人が事情を察知してくれるかが問題です。
あの商人は無理、それが分かっているから食料を沢山渡した。あの村の奴らは違う場所にいるから、事情を聞く事は出来ないけど、このタイミングでここに来た商人は怪しいんだ。


「すまないなロラン」

「謝らないでよダダ兄、僕はエミリーさんの為にしてるんだ、ダダ兄も心配でしょ」


僕たちの前ではニコニコしているエミリーさん。仕事もしっかりとしているけど、何処か元気がなくなっているんだ、病気が治ったのに段々痩せて行く。あいつらの為に苦しい思いはさせたくありません。
大切な仲間のエミリーさんの為、商人たちも勇者様の元に向かうのが目的ならば放置です。
何も無ければ、このままのはずだと、僕は遠くに視線を移したんだ。
領主様には、僕たちの村は認知されてる。だから国から来た商人で、身元はしっかりしてる。でも早すぎるから引っかかるんだよ。
予期しない出費だったけど、僕はそれを有効に使えた。


「そう思っていた時期が僕にもあった」


考えが甘かった。僕は風魔法で壁を作り反省してますよ。
商人がもしも戻ってくるとしても、明日以降だと思ってた。でもその日の夕方に来たんだよ、
村全体を守る風の壁を見て、商人たちは動きをとめた。防御魔法【バリアハリケーン】は上級魔法なので当然ですね。
僕たちは子供だけど、レベルはとても高いんだ。ダンジョンで沢山訓練したおかげでね。
これで帰ってくれることを願ったけど、無理なのはダダ兄のエリアサーチで分かります。


「どうしてこんなに早く、村まで半日は掛かるのに」

「ロラン、魔法が切れるのを待ってるぞ」

「仕方ないね、解除して戦おう、ダダ兄準備して」


いきなり矢を放ってきたのは向こうです。普通は宣戦布告をしてからなのに突然でした。僕たちがダンジョンでレベルを上げていなかったら、それに当たり死傷者が出ていましたよ。
僕は冷静に見えても怒っています。ダダ兄もエミリーさんに矢が当たりそうになり怒ってる。
走りながら原因を考え、ある最悪な答えが浮かびました。このタイミングでの襲撃は、向こうの村とか関係なく、僕たちを襲う予定だった可能性が高いんです。
商人が貢物に目がくらみ、独断で仕掛けて来た線もあるけど、勇者を助けに行く商人だから人望も確かで可能性は薄い。
冒険者以外にも兵士が一緒な事から、これは国からの指示で既に交渉の余地はないって事で、最悪の事態です。
商人にそんな指示を出した国の奴らが敵となり、攻めてきたんだ。領主様も危険だし、事態が一気に悪い方に傾いたよ。


「それでも、僕たちはここを守らないといけない。戦うよダダ兄」

「おうっ!」


剣を構え、僕たちは商人を守る兵士に突っ込みます。相手は大人数だから余裕を見せてるけど、僕たちは強いんだ、このまま戦っても勝てるのは分かってた。
でもね、崖の上から「待った」の声が掛かり、僕たちは急停止して視線が動きました。
そこには5つの巨大なゴーレムが立っています。でも僕は、ゴーレムとは思っていませんでした。ダダ兄や商人たちがそう呼んだからそう思っただけで、僕は一目で分かった。


「あれはロボットだ」


子供の頃、親にねだって買ってもらった戦隊モノのロボ。それが腕を組んで立っていて、こんな時だけどちょっとワクワクして来ましたよ。
商人はモンスターだと叫び、僕たちが魔族と共闘していたと勘違いして来ます。
更に姫様の予想通り裏切っていたと兵士に叫び、自分たちに正義があると訳の分からない事を言い出したんだ。


「正義はそちらには無いでしゅ、お前たちは襲撃をしたでしゅ、それは盗賊と同じでしゅよ」


だから倒すと、赤いロボットが商人を指差します。その宣言が終わると、崖の上で戦隊モノのポーズをとりました。
ボクだけは「おお~」っと感動してしまったよ。5人がポーズを取った後、色の付いた爆発まで起きたのも感動です。


「直ちに立ち去れ、さもないと天罰を与えるでしゅ」

「なな、何を偉そうにっ!!ワタシたちは王命で」

「問答無用でしゅ!!」


商人の叫びを遮り、ロボットたちは崖からジャンプします。ボクたちの間に降り立ったロボは、商人の方を向き構えます。この時点で、ボクたちの味方をしてくれているのは、誰が見ても明らかです。
でもどうして?っと、僕の頭は疑問で一杯だよ。こんな知り合いはいませんし、異世界にはロボットもいるの?っと、村から見ていたフサーバスさんに視線を向けます。フサフサの親指を立てていましたよ。


「間に合ったとか言いたいのかな?」


ヒーローはタイミングが大切で、完璧な登場だと言いたいのかもです。商人たちは戦う意思を無くし逃げて行きます。
これでボクたちは、完全に魔族側になってしまいました。どちらでもボクたちの暮らしは変わりませんけど、戦いを仕掛けて来たのは確実です。
それに領主様が心配になってきます。村が安定してこれから動く手はずだったけど、また問題だよっと、僕は頭が痛くなりおさえましたよ。



「危なかったでしゅね少年」

「ふぇっ!?」


頭を悩ませ今後の事を考えていると、赤いロボットから小さなモンスターが降りてきました。それは僕の好きなゲームのキャラでビックリしたんだ。
そのモンスターの話を聞き、僕たちの運命が動き出した音が聞こえた様に感じました。これから忙しくなると気合が入りましたよ。
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