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勉学のファイブステップ

79歩目 午後は実技

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「それじゃ男子がアマンダで女子はイーシャが担当してください、僕はちょっと他の事をやっています、何かあったら呼んでくださいね」


っと言う事で、僕たちは午後も訓練場に来ています、男子は僕が作ったシナイで素振り、女子は太いロウソクを使って炎魔法の練習です。


「さぁお前らまずは素振りだ、上段から構え振り下ろす、止める位置は体の正面だ地面に付くまで下ろすなよ腕を痛めるぞ、さぁやってみろ!」


アマンダが素振りをして言っていた位置でピタッと止め指導しています、動きも洗礼されているのが分かる綺麗なモノでした、生徒たちはそれだけで静かに頷いて素振りを始めます、生徒たちは二人に任せて僕は『がんばれ』ってエールを心の中で送り、ポイントで交換していた台所を出します、これでみんなのおやつを作ろうと考えてるんだ。


「まずは水をジョッキに注いで、1リットルに対して食塩は大体3グラム、ここに砂糖とハチミツを加えて、香り付けにレモンを絞ってと」


皆さんお判りでしょうか?僕は今、みんなの為にスポーツドリンクを作っています、食堂の食事を見た限り、生徒たちは運動を考えていない献立です、激しい運動は体調を壊す可能性が高いと思うんです、最初に歩いた30分で既にクタクタになり顔色が悪い子もいました、それを踏まえハチミツを多めにして美味しく作ります、そして小腹も空くでしょうからオーブンを使ってシフォンケーキも焼きます。


「この魔道台所もここで売る為にドラルダで量産したのに、ここではそれすらもできなかったんだよね」


焼いている間の少しの時間、生徒たちの奮闘を見ながらちょっとだけ愚痴を言っています、魔道具の国と言う事で僕は色々用意してきました、でもワインを売った後、ロボットに尋ねても受け付けて貰えず納品すらできなかったんだよ。
その意気込みを生徒たちにぶつけている感じです、みんなも僕の品物と同じでここでは受け入れてもらっていません、せっかく良い物を持ってるのに可哀そうですよね、そう思いながらアマンダとイーシャの教育を眺め、頑張ってる生徒たちを見て笑顔になります。

ここからは、僕のスキルに乗らない特技でみんなの実況をしたいと思います。


「イーシャ先生、どうして土魔法ではなく炎の魔法を練習するのですか?」

「それはねサーラ、土魔法だと地面の土を使い過ぎてグラウンドがボコボコになるでしょ、そうならない為よ、このロウソクを使うのは火を媒体にしたいからね、使わなくても火を出せるようになれば合格よ」


サーラは頷いて納得しています、でも練習を始めて30分、誰の手にも火が付かず一向に成功しません、サーラたちは息を切らせ始めました。


「も、もう魔力が・・・おかしいわね、土魔法の時はこんなことなかったのに」

「それはそうよサーラ、土魔法の練習ではほとんどここにある土を使っていたの、これだけ沢山あれば使うのは簡単よ、でも今はこの小さなロウソクの火だけ、これを自分たちで増やし手の平に乗せて調節する、更に矢の炎を作らないといけないの、小さな火だからほとんど全部を魔力でするでしょ、それに燃やし続けて調節するのはすごい集中力と魔力を使うの、良い訓練になるのよ」


火の魔法はこうやって使っていると説明しています、そしてそれが出来たら次は風の魔法を始め、その次は光と難易度を上げて行く予定です。


「こ、こんなに大変だったなんて知りませんでしたよ・・・イーシャ先生、わたしたちに出来るようになるんでしょうか?」

「出来るわよ、最初から大きな火を想像しているからダメなの、まずはロウソクの火よりも小さな物を作りなさい、その後は小さな矢作ってみるのよ」


イーシャがロウソクの半分くらいの火を手の平に作り、次に爪楊枝の様な矢を作って見せました、サーラたちは集まってすごく近くで見ていますよ。


「そ、それなら最初から教えてくださいよイーシャ先生」

「意地悪してるわけじゃないわよサーラ、まずあなた達がどれだけ出来るのか見たかったの、向こうで悲鳴をあげてるのと同じにね」


イーシャがアマンダの方を見ると、生徒たちが仰向けになって倒れていました、みんな息を切らせています。


「なんだなんだ!もうダウンかお前たち、たかが素振り3000回だぞ、まだ半分も終わってないじゃないか」


アマンダが笑ってそんな事を言っています、生徒たちは息を切らせて返事が出来ません。
その中でアンドがやっとの事で体を起こし怒っています。


「ぜぇっぜぇった、たかがじゃ、ねぇぜぇっぜぇっ、ど、どれだけ、大変だと思って」

「シナイは軽いんだ、普通の剣での素振りよりは楽だったろ、これはただ回数をこなす訓練だぞ・・・仕方ねぇな、じゃあアユムのおやつが出来るまで休憩だな」


っと言う事で、僕の出番をみんなは休憩して待っています、僕はその視線を感じて急いでテーブルと椅子を用意しましたよ。


「出来たよ~」

「「待ってました!?」」


僕の声に反応したのはアマンダとイーシャです、すごい速さで僕の出した台所に向かいます、生徒たちは食事にあまり関心がなく、ふたりがどうしてそんなに嬉しそうなのかと、トボトボ歩いて僕の方に来て椅子に座ろうとしました、僕はみんなを止めます。


「みんな、まずはアマンダたちの方に行って手を良く洗ってきなさい、うがいも忘れずにね」


僕の使っている台所には、備え付けのブラシと石鹸があります、前にアマンダが体調を壊した時はこれが原因でした、川の水で手を洗いそのまま食事をしたからだったんだ、僕が作った薬だからあれで済みましたけど、普通なら命を落としています。


「アユム先生、手なんて洗わなくても平気ですよ、それにシフォンケーキを食べるくらいで大袈裟ですよ?」


サーラの言葉に後ろのみんなも頷いています、これだからアマンダは体調を崩したんだ、僕も水で流してるんだから平気だと思っていたんだよ、ここは言っておかないとね。


「今君たちの手にはね、すごく沢山の敵が付いちゃってるんだ、それは細菌って言ってあのアマンダ先生がやられそうになった相手なんだよ、下手をしたら命を落としていたかもしれない、それでも手を洗わない?」


僕はニッコリ笑顔で話しました、きっとサーラたちは黒い笑顔に見えたでしょう、一目散に台所に行ってアマンダたちに洗い方を教わっていました。


「ただの風邪と僕も侮ってたんだよね、それがお腹から来て全然治らなかった、予防は大切だよ」


みんながアマンダに話を聞きながら手を洗っています、アマンダはほんとに辛かったと話しているみたいで、生徒たちは顔を青くし一生懸命手を洗い出してます。


「じゃあみんなはまずこっちを飲んでね」


手を洗い終わった生徒たちには、まず水分の補給です、みんなは普通の水だと思っているようで、飲むと甘くて驚いています、アンドが急いで飲もうとしているので、僕はちょっと忠告です。


「ゆっくり飲みなさいアンド、これは体に水分を吸収する為に用意したモノなんだ、あまり一気に飲んでも外に出ちゃうんだよ」


小さなコップにして正解でした、イーシャの時は普通のコップにしてしまい、お腹がタプタプになってしまったんです、その後の訓練が出来なくなってしまったと後悔したモノですよ。


「そうだぞアンド、それにもっとうまい物がここにある、食べれなくなるのは損だろ」


アマンダが涎を垂らしそうな顔をしてます、アンドたちがシフォンケーキを見てそんなに?って疑問みたいだよ、見た目は普通なので分からないのは当たり前だね、そしてみんなで「いただきます」をして一口食べると、生徒たちの大きな「美味い!」の言葉をいただきました。


「アンドこっちのも美味いぞ、アタシはこれが好きだ」


アンドにアマンダが渡したのは、干しブドウが入ったシフォンケーキです、アンドが食べて美味いと喜んでいます、生徒の数名も同じ感じでどうやら気に入ってもらえたみたいですよ。


「ワタシはこっちが好きかな、このトロッとした甘いチョコがなんとも言えないのよ」


イーシャがトロトロのチョコが中に入ったシフォンケーキを持ってウットリしています、森には無かったといつも言っているんですよ。


「食べ物なんて、お腹に入ってしまえば同じだと思っていました、こんなに違ったんですね」


サーラがフォークに刺した一口サイズのシフォンケーキを見て感心しています、この街の人達は基準を作ってしまい、それ以上を求めない傾向があると話しました。


「一定で作れればそれ以下にはならないもんな、先生たちは違うんだな」

「そうだよアンド、これはみんなが今頑張っていい成績を納めたいのと同じさ、どんな事も向上心は無くしちゃダメなんだよ」


向上心も頑張り過ぎるとプレッシャーになってしまい、悩みやストレスを抱えて倒れちゃったりするけど、それだけ真剣に打ち込めるモノがあるって良い事です、平均に同じ物をずっと作るのは悪いわけじゃないけど、僕はつまらないと感じるね。


「わたし、もっと色々知りたいです、教えてくださいアユム先生」


何かを決心したサーラが椅子から勢いよく立ち上がり僕に頭を下げてきました、その姿を見て生徒たちが同じようにしてきたんです、僕たちは顔を見合って笑ってしまいましたよ。


「何言ってんだお前たち、アタシたちはその為に来たんだぞ、お前たちの道はゴーレム作りだけじゃねぇ、それを考えて好きな事を見つけろな」


隣に立っていたアンドを撫でて、アマンダが最後に締めました、アンドは良い返事をしていましたよ。
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