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勉学のファイブステップ

78歩目 昼食時

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「ここが食堂ですよ先生」


午前の授業を済ませたので、僕たちは本館の1階をすべて使っている食堂に向かっています、その途中で生徒のみんなから学園の事を聞きましたよ、僕たちが今までいた訓練場が中心に広がり、南にここ本館が建ててあります、北にはイベントを行う為の講堂があって、男性領と女性領がサイド(西側・東側)に別れています、寮がここで一番大きな建物です、かなり豪華に作ってあるとサーラが話しています、僕たちもそこに宿泊することになるのでちょっと楽しみになりました。
話が終わったタイミングでサーラを先頭にみんなで食堂に入ったんだ、そこには他の学年の生徒たちも沢山いて、それでもまだ席に空きがあるくらい広かったです、僕はそれに驚いていますよ。


「広いねんだねサーラ、この学園で一番広いんじゃないの?」


マップで確認しても、この本館は広くて大きいです、5階まであって1階が食堂、2階が教師の空間です、そしてその上は学年ごとの階層になっています。


「広さだけならそうです、でも領の方が建物自体は高いですよ」


マップでもそれは分かります、10階くらいあって1部屋がとても広く作られています、サーラに頷くと手を引っ張ってくれるので僕たちは席に座りました、僕たちの食事も生徒たちが運んできてくれます、でも僕たちは貰ってガッカリです。


「白パンにサラダ、硬そうなサイコロステーキにポテト・・・みんな同じなんだね」

「そうですよ?その方が色々な物を用意しなくても良いですし、数も決まっているので無駄がないのですよ」


サーラが説明して僕の向かいで食べ始めています、僕たちも食べたんですけど、味があまりしません。


「薄味だなアユム」

「そうだねアマンダ、栄養的にはこれくらいでも良いけど、みんなは運動をしたんだから、ちょっと不足するかもしれないよ」


学園ではあまり運動はしません、移動もほとんど自動です、魔法や魔道具の作成が主で教室から出ないし、誰も変わった事をせず一定だったから食事もこれで済んでたんだ。
僕はフルーツをアイテム欄から出して切り分けました、アマンダとイーシャがフォークで刺して嬉しそうに食べ始めます、サーラたちも食べたそうだったので、みんなの分も出してあげましたよ。


「それにしても・・・みんなこっちを見てるね」


一息ついて僕は周りに目が行きました、周囲の生徒がこっちをチラチラ見ているんです、きっとフルーツが気になるんでしょう。


「そりゃーそうだぜアユム先生、俺たちがゴーレムを連れてるからだ、それも動物だぞ、みんな興味を引くさ」


アンドが肩に乗せてるリスを撫でながら言っています『違ったか』って僕はちょっと恥ずかしくなりました、でも僕の狙いは正しいみたいです。


「やっぱりみんな気になるよね、可愛いは正義だよ」


僕の肩に乗っている鳥を撫でておきます、部屋に行ったら名前を付けてあげないとです、そしてアマンダとイーシャが羨ましそうに見てきます、後でふたりにも作ってあげないといけませんかね。


「ほんとですよ、わたしこれを商品化したくてウズウズしていますよ・・・でも白コアを使うとなるとまず量産は無理ですよ」

「俺だってそうさ、でも白コアはなぁ~」


サーラとアンドがそう言ってため息を付いています、他の生徒も同じです、これを見るとこのクラスは職人の子供が多いんですね、ここに歩いてる時に聞きました、お金に困るから家を出たいって子がほとんどでしたよ。


「みんなは商人さんの親御さんから離れたいんじゃないの?」

「それは・・・その方がお金になるからですよ先生、情報処理員になれば普通の給金の倍ですからね」


サーラがまたお金の話をしています、その話をしている時の彼女はとても生き生きしています、まさに商人って感じです。


「お前たち諦めるのが早すぎだ、アユムみたいに試行錯誤をして作っちまえよ、このフルーツだってほんとのはそんなにうまくねぇんだ、それをアユムはコツコツと良くしていったんだぞ」

「「「「「え!?」」」」」


アマンダの言葉にサーラたちが驚きの一斉を発して僕を見てきました、ちょっとテレて僕はフルーツのリンゴを食べます、この世界のリンゴはちょっと甘みが足りませんでした、なので僕は馬車の中で改良したんですよ、今頃ロンゾ村では、リンゴの木に沢山生ってるだろうね、収穫して売りに行ってるかもしれないよ。


「そうよみんな、ゴーレムを作ったのは一瞬だったけど、これだってまだまだ改良は出来る、そうでしょアユム」


イーシャが付け足して僕に聞いてきました、僕は生徒たちにこういった向上心を持ってほしかったんです、二人が言ってくれて良かったよ。


「そうだね、僕はデータ取りの為に一番大きな白コアを使ったんだ、でもそこまでのコアは必要じゃないかもしれない、今後研究して変える事だって可能かもよ」


既に色々思いついている僕ですが、それをするのはここで暮らす生徒たちの役目です、人の様に右脳と左脳に分け2つのコアを使うとか、処理魔法の無駄を減らすとか、生徒たちが自分たちで思いつくように導きます。


「そ、そうですね、まずは試してみますよ」

「だな、俺たちだって緑のコアを作れたんだ、きっとこれだって」

「おいおい!何をさわいでいやがる二流ども」


サーラたちが楽しそうに、こうした方が良い、ああしてみたいと話していると、僕たちの席に他の生徒たちが来ました、先頭の男子は偉そうな態度です。


「君はどなたかな?僕たちは楽しく食事をしていたんだけど」

「何だよお前、俺様を知らないのか?俺様は1年のファイブスター組のマジャル・ドルイドだぞ」


ふんぞり返って自己紹介をしてくれた彼は1年生でトップの生徒です、後ろに控えていた生徒たちが歓声を上げています、僕とアマンダとイーシャはだから何?って顔をしています、サーラたちは嫌そうな顔ですね。


「わかったか?俺様はファイブスターだ、俺様は一流なんだよ!お前たちの様にお情けで星を一つ貰っている二流とは違う、そんな奴らが騒いでいやがったから、この俺様は不愉快で食事が出来なかった、どうしてくれるんだ」


マジャルって生徒が腕を組んで怒っています、でもここでは他にも騒いでいる生徒はいます、ここだけに注意するのはおかしいです。


「ここは食堂ですよマジャル君、楽しく食事をしているのに謝罪もなにもないです、他の生徒だって騒いでいるじゃないですか」

「き、きさま!?新任教師だな!俺様が謝れと言ってるんだ、このザコどもにさっさと謝らせろ!」


彼の顔色を伺い僕は何となく分かりました、僕たちが楽しく話していたのが感に触ったんだ、ただそれだけなんだよ。


「だから、その必要が見当たりません、先生の僕がそう言ってるんです、ここはお引き取り願えますか?」

「新任のクセに良い度胸だな、最下位クラスの担任ごときが」


担任以前に、後ろの生徒たちが人種族のクセにとか言っているのが聞こえます、僕は他種族を嫌っていた人種族を思い出し、凄く嫌な気分ですよ。


「お前いいかげんにしろよ、お前がどれだけすごいのか知らんが、こいつらとそう変わらんだろう、そんな奴がアユムを侮辱するんじゃねぇ・・・締めんぞコラ」

「ひっ!?」


アマンダがとうとう我慢が出来なくて、テーブルを真っ二つにして怒っています、イーシャがフルーツを落ちないように風魔法でお皿ごと浮かせ、やれやれといった顔しています、マジャル君たちは怖すぎて悲鳴をあげて一目散に逃げて行きましたよ。


「憎たらしい捨て台詞も言わせないなんて、さすがねアマンダ」

「ったく!スタートは同じでドングリの背比べのくせにあんな態度を取るからだ、優秀なんて言葉はな!もっと別の奴にこそ相応しいんだ、おいっお前ら!これからビシバシ行くからな、覚悟しろよ」

「「「「「は、はいっアマンダ先生!」」」」」


僕の時よりもすごく良い返事をしてサーラたちが敬礼をしています、僕も彼女たちの立場だったら敬礼して「あねさん!」とか言っていたかもしれない、それほどの凄みを感じました。
ほんと、いつもの顔が怖いとこういった時って更に怖く見えるよね、僕はそれがかっこいいとか思ってるけど、これじゃ彼氏が出来ないよアマンダ。


「よしよし、良い返事だぞお前ら、なに心配するな無理はさせない」


僕はアマンダがサーラたちの頭を笑顔で撫で激励しているのを見て『出たよ、アマンダの殺し文句』って思いました、あれがあるからドラルダでもアマンダは人気だったんだよ。


「じゃあみんな、午後も訓練場で授業だからしっかりと食べないとね、そうしないとアマンダ先生ががっかりしちゃうよ」


僕もアマンダを見習って笑顔で言いました、サーラたちはそれを聞いて頷いてくれます。


「出たわ、アユムの祝福の笑顔」

「ん?なにか言ったイーシャ」


イーシャが隣でぼそっと何か言ったので僕はどうしたの?って聞いてみました、でも横を向いて「何でもないわ」って言われたんだ、僕は気になりましたけど、アマンダが壊したテーブルを水魔法で接着し、土魔法を応用してテーブル面を成形するのに忙しかったんで聞き返しませんでした、生徒たちが直してるのを見てびっくりしていた事にも気付きませんでしたよ。
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