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奇跡のサードステップ

44歩目 別れと約束

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僕の出した弓を見て、イーシャたちは直ぐに分かったのか驚いています。


「分かったみたいですね、これは皆さんを逃がすために戦ったエルフさんたちの物です」

「き、きさま!それを何処で手に入れた」


オベーリオが指を差して聞いてきます、僕は森を歩き回って見つけたと告げます、オベーリオたちはかなり動揺していますね。


「亡骸はありません、きっとモンスターに食べられてしまったんでしょう、これを譲りますからここを出ることを許してくれませんか?」

「そうか・・・それをこちらに貰おう、それでどこにでも行ってしまえ」


オベーリオがそう言ってきたので、僕はイーシャに弓を渡してオベーリオに手渡し貰いました、壊れた弓をジッと見た後、オベーリオたちは去っていきましたよ。


「アユム、それにアマンダすまない、余に力が無かったからこんなことになってしまった、ほんとにすまない」


ただ一人残ったイーシャが泣きそうな顔をして僕たちに頭を下げてくれました、僕は気にしてないと言って顔を上げてもらいましたよ。


「イーシャも大変だったでしょ?1ヶ月もこっちに来れなくてさ」


涙を服で拭きながらイーシャは頷いています、僕とアマンダは顔を見合ってちょっとホッとしています、僕たちと仲良くしていたから謹慎とか罰を受けてるんじゃないかって心配していたんです。


「行ってしまうのかふたりとも」

「そうだな、早く王都に行って状況を調べたい、あいつはアタシの仇だからな」


アマンダが凄く張り切っています、村を壊滅寸前にした奴ですから気持ちは分かると、僕も頷いています、イーシャはそれを聞いて納得が言った感じです。


「そうか・・・急な事を言ってすまないが、余も一緒に付いて行くのはダメだろうか?」

「「え!?」」


僕とアマンダは同時にイーシャを見ます、真剣な顔で言っているので本気みたいだよ、アマンダと僕は見合ってどうしようかと無言で語ります、イーシャはその空気を感じ取り、心配そうに体をモジモジさせ答えを待っています。


「村は良いのイーシャ?急にいなくなったらお兄さんとかが心配すると思うんだけど」


最初に質問したのは僕です、アマンダも頷いています、オベーリオはイーシャの説得には弱かったです、きっと今だって付いてこないのを心配しているはずです、でもイーシャはそれを聞いて怒り出しました。


「125歳にもなって兄に心配されてるんじゃダメなのよ!ワタシをいつまでも子供扱いするんだから、これで少しは認めてくれるわ、アユムたちみたいにワタシも強くなりたいのよ」


口調を変えたイーシャの心の底から出た気持ちを聞き僕たちは賛成しました、イーシャは喜び飛び跳ねています、僕は子供っぽいって思いました、きっと横で呆れているアマンダも同じ気持ちです、握手をしてイーシャは僕たちの仲間になりました、でもその日の夜、予想通りの事が目の前で起きています、僕とアマンダは頭が痛くなっていますよ。


「イーシャ!どうして帰ってこない、心配するだろうが!」

「ふーんだっ!兄さんには関係ありません~ワタシはもう大人ですぅ何処に行こうとワタシの勝手ですぅ」


子供の様に頬を膨らませてイーシャがお兄さんと口喧嘩をしています、僕とアマンダはかなり困っています、だってこれはどう見ても兄弟げんかです、他のエルフさんたちもいるんだけど、僕たちと同じ様に困っていますよ。


「あの、すみませんアユム殿」


僕たち全員が二人の言い争いを遠くで見ていると、湖でも良く一緒に食事をした女性のエルフさん(アイヤ)が頭を下げて近づいてきました、後ろには女性エルフ以外の男性エルフたちが数名います、家臣のおかっぱさんは二人の仲裁に入っています。


「仕方ないよアイヤ、急に付いて行くって言いだしたのはイーシャだもん、心配するのは当り前だよ、それよりも長くなりそうだから食事でもどうかな?」


僕の提案を聞いて、エルフさんたちは賛成してくれました、しばらく一緒に食事を楽しみます、最後に男性エルフさんたちと少しでも和解出来て良かったと、兄弟げんかに感謝です。


「みんなのお墓は村に作ったんだねアイヤ」

「はい、みんなアユム殿にすごく感謝していました・・・それで、アユム殿たちを村にお招き出来ないかと相談している最中にオベーリオ様が「イーシャが帰ってこない!」って怒りだしてしまい中断されてしまいました、一人で探しに出てしまったので私たちは追いかけて来たんです」


僕たちは困ったねって笑い合いました、そしてまだケンカをしている二人を見たんです、おかっぱさんがトボトボと歩いくるタイミングだったので、目が合ったおかっぱさんが頭を左右に振っています。


「ダメだ、あれはもう自分の手に余る、お前たちも来い!」


エルフさんたちが和んでいるのを見て、ちょっとイラっとしたのか、ちょっと怒っています、アイヤたちはやれやれって感じでイーシャたちの仲裁に向かいました、そして少ししてイーシャがオベーリオに抱き着いています。


「どうやら仲直り出来たようだなアユム」

「そうだねアマンダ、兄妹なんだから仲良くしないとね、これで心おきなく旅が出来るよ」


イーシャは一緒には来ないでよね、でもそれでいいんだ、兄妹は仲良くしなくちゃいけませんよ。
お茶を飲んでホッとしていると、アマンダは言ったんだ「それはどうだろうな」ってね、僕は「どういうこと?」って答えを待ったんだけど、イーシャの言葉で分かってしまいました。


「アユムごめんなさい、変なモノを見せてしまって・・・それでね、兄がちょっと話があるって言うの」


僕は嫌な予感がしました、そしてそれは妹思いのお兄さんによくあるやつで、遠くにいるお兄さんが準備運動をしています。


「剣を取れアユム!俺と勝負だ!」


こうして僕は、木の剣を持ってオベーリオと対面しています、凄くげっそりですよ。


「良いなアユム!全力で掛かってこい、手加減なんてしたら承知しないぞ!」


オベーリオがそう言って剣を構えています、でもその姿勢は確実に素人です、それはそうですよね、エルフたちは弓と短剣を使っていました、それなのに片手剣の長さの木の剣を構えているんです、僕はどうしようかってイーシャたちを見ました、イーシャは何だかすごく熱い視線を僕に向けていますよ。


「困ったね、アマンダは既に興味を無くして食事を食べてるし、本気なんて出したら死んじゃうよ」


僕のステータスは既に超越しています、それは装備を外しても変わらないのですごく困ります。


「それでは、始めてください」


凄くやる気のないおかっぱさんが手を振り下ろし、オベーリオが剣を上段に構えて叫びながら突撃してきました、僕はそれを剣で受けオベーリオの顔が間近にあります、全然押し勝ってないのにオベーリオはすごく良い笑顔ですよ。


「くくく、やるではないかアユム、さすが俺から妹を奪おうとするやつだ、だがっ!」


オベーリオが勘違いをして距離を取ります、その後上段からの剣撃を繰り出して来ました、僕はそれを反動で倒さないように受けます、慎重になっているので僕は嫌な汗をかいていますよ。

アマンダの視線も背中にチクチクと当たります、殺気をすごく感じているんですよ。


「どうしてそんなに怒ってるのかなアマンダは、怒ってないで何とかしてよね」


愚痴をこぼしながら僕は剣撃を全て受けています、オベーリオが段々息を切らせてきました、僕はそこで提案したんです。


「僕の実力が分かったでしょオベーリオさん、もうやめましょうよ」

「はぁっはぁっはぁっ・・・な、何を言っている、はぁっはぁっまだまだこれからだ、妹を嫁にはやらんぞ!」


ぜぇぜぇ言っているのに頑張っています、隙だらけで剣を振りかぶって来るので僕はどうしようって思っています、『嫁になんてしないよ!』っと、心ではツッコミを入れています、その反動かオベーリオの胴に剣が触れてしまいました、それは普通だったら触れただけですけどオベーリオを倒すには十分だったようです、お腹を押さえてヨロヨロと下がっていきます。


「ぐっぐぬぬぅ~・・・ま、まだ、ま、だ・・・だ」


オベーリオがこちらを向いて唸りながら倒れました、僕は手加減できたよってホッとしています、おかっぱさんが勝負の終わりを告げましたよ。


「アユム!ワタシの為にありがとうー!」


イーシャの言葉に僕はげんなりです、イーシャが僕に抱き着いてきたけど『嫁になんてしません』って心でツッコミを入れています。


「これで一緒に旅をするんだよねイーシャ」

「うん、これからよろしくねアユム」


こうしてイーシャがホントに仲間になりました、僕はヨシヨシって頭を撫でています、アマンダの視線はまだまだ痛いままですよ。


「ではアユム殿、姫様を頼みます」


オベーリオを背負って男性エルフたちが退散すると、アイヤが僕に頭を下げて言ってきました、僕は姫という単語に驚きイーシャを見ます、イーシャは『言ってなかったっけ?』って顔してますよ、オベーリオがあれだけ抵抗したのは、王族だったからだと分かり納得です。


「まぁ仲間に歓迎したんだから、姫様でも変わらないけど・・・さっきの決闘って結婚の条件とか言わないよねイーシャ」


よくありそうなので僕はそれがとても心配です、そしてアイヤたちも僕から視線を逸らしたんだ、僕は言いましたよ「結婚は考えてません」ってね、もうほんと強く言いました。


「まぁ良いじゃないアユム、これからよこれから」


イーシャの軽い答えに、僕はちょっと心配になりながらアイヤたちに手を振って出発しました、森は3日で出ることが出来ましたが、その間ずっとイーシャが僕にベッタリでアマンダが機嫌を悪くしていましたよ。
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