33 / 42
2章 モフモフ同志の為に
33話 二つ名
しおりを挟む
「うぅ~毛がパリパリする」
砦を勝ち取り、みんなは祝勝会を開いて楽しそうだけど、僕は今尻尾と髪をブラッシングするのに忙しいです。
それと言うのも、電気を流したせいなのか毛が立ちっぱなしなんだ。
「おう、白銀の閃光さん」
「サズラ、その呼び名定着しちゃったの?」
「良いじゃねぇか、カッコ良かったぜ」
お皿に食べ物を山に乗せて、会場の端で敷物の上に座る僕に声を掛けて来たのは、今日の功労者として褒美を貰ったサズラです。
ブラシでゴシゴシと忙しかった僕もその中に入る予定だったけど、今の状態では出られないのでフォーミに僕の分も貰ってもらいました。
「全然良くないよ、みんなに見せるつもりだったのに、これじゃカッコがつかない」
「そうか?オレたちは助かったぜ、その為の結果だろ」
「まぁね」
そこは否定しないし、みんなが無事でよかったわけだけど、ボサボサの状態を早く納めたいんだ。
サズラも手伝ってくれるけど、クシを通した後には直ぐに立ってしまうし、尻尾は怒った時の様で全然戻りません。
「電気はもうないんだよな、どうしてなんだ?」
「僕にも分からないけど、恐らく体毛が驚いちゃったんじゃないかな」
良く分からないっと、何度もクシとブラシを通しますが、直ぐにぼさっと立ってしまうんだ。
集落に帰ってお風呂に入れば収まると思うけど、祝勝会を抜け出すわけにもいきません。
「まだやってますの?」
「フォーミ、それにファシミアにハクアも」
「グゥガ、ちょっとハクアが言いたいことがあるんだってさ」
ファシミアの後ろに隠れるハクアは、なんだかモジモジと恥ずかしそうで、僕に魔法を放ったことがそんなに後ろめたかったのかと心配になりました。
ファシミアに押され僕の前に来ると、下を向き僕を見てくれません。
「ハクアどうしたの?」
「あのね・・・また獣化の姿を見せてほしいの」
「今?」
どうやら、雷を浴びた僕の姿がカッコ良かったらしく、もう一度見たいとお願いされました。
どうせ毛も戻らないし、今日はサービスと言う事で変身しました。
「おお~やっぱりすげぇな」
「そうかな」
エヘヘ~っと、僕は大きな猫の姿で頭をポリポリとかいたけど、ハクアは青白い光を纏った僕を見たいそうで、杖を構えて来たよ。
それはさすがにまずいんじゃないかと思ったけど、フォーミは頷いて了承して来て、ハクアが詠唱まで始めた。
「ちょっと待ってハクアさん、杖を持って詠唱までしたら、それこそあの時以上の威力が」
「平気、グゥガなら堪えられる【エクスサンダー】」
うわぁ~っと、空からの雷を僕は受け、身体が電気を纏いました。
会場にいた人達もびっくりして集まって来て、僕はもうどうしたら良いのか分からない状態だよ。
「綺麗」
「ほんとね、ちょっとグゥガ、何かやって見せてよ」
「そう言われても・・・じゃあ、綿あめでも作ってあげましょう」
両手を胸元でクルクルと回転させパチパチと電気の熱を使い、爪の先から砂糖を解かして糸にして丸めていき、お皿にサッカーボールほどの玉を作りました。
最初はハクアに渡し試食をしてもらったけど、その甘さに満面の笑顔を貰ったよ。
「さぁ電気が無くなるまで作るから、みんな食べてってねぇ」
戦うだけでない事を示したけど、ハクアは空を舞う僕を見たかったのか、ガックリしていました。
途中からハクアの為に空を飛び、空中で綿あめを何個も飛ばしたら、ハクアはほんとに嬉しそうだったんだ。
「それにしても・・・毛が更にボサボサになった」
「良いではありませんの、お風呂に入れば治りますのよね?」
「そうだけど、フォーミはこの状態でも可愛いとか思ってるでしょ」
当然と答えて来るフォーミだけど、実は僕もあまり言えないんだ。
その昔、下敷きでネコちゃんの毛を立たせて遊んだことがあり、その姿を可愛いと笑っていたからです。
「自分がネコになって、こんなに恥ずかしいとはね」
「ワタクシには分かりませんけど、白銀の閃光と綿あめネコ、どちらが良いのです?」
「なにそれ?」
「あなたの二つ名ですわ」
そんなの前者に決まってると、今まさに両方が均等に叫ばれる中、フォーミが前者を宣言して決定してしまいました。
そして、次の日から進軍が始り、僕たちの快進撃が始まるはずだったんだけどそうもいかない様で、1日目の野営時に問題が起きたんだ。
「っと言う事で、2年生の部隊と4000の兵をダミシャールさんにお願いし、ミルティーさんには3年生と4000の兵士を任せますわ」
「「は、はい」」
「「「「「ちょっと待て」」」」」
フォーミの部隊編成に文句を言って来たのは、2年生と3年生を纏めていた人達で、どちらも公爵家の男子でしたよ。
それを見て、王子4人は自分が歩んできた道とミルティーさんの後ろで同情の視線を向けていたよ。
「なんですの?」
「なんですの?ではない」
「そうだ、どうして俺たちが1年の下に付かなければならない、それにどちらも平民ではないか」
分かってない上級生のふたりは、ジロリと睨んでくるけど、そもそもふたりは既に爵位を貰っています。
公爵家の長男であっても、それは跡取りと言うだけで継がないとその爵位は貰えません。
「何か勘違いがありますわね、爵位の有無は関係ありませんのよ、これは実力を考えた人選ですわ」
「な、なんだと」
「俺たちが、その平民たちに劣っているってのか」
「お前ら、いい加減に」
ガドル王子が前に出て来そうだったのでミルティーが止めて、フォーミの長い長いお説教が始まります。
そもそも僕たちは個人で爵位を貰っていて、既に先輩たちよりも偉くなっている事や、作戦も立てた事の無い先輩たちでは戦えないと事細かに説明してあげたんだ。
「お、俺たちは砦を守ったんだぞ」
「守ったのは戦った兵士たちですわ、あなた達は部屋に閉じこもっていただけではないですのよ」
「な、何で知ってるんだ」
情報が大切な事も知らず、戦況も分かってないこの人たちが今まで生き残れたのは、ただ単に前に出て戦ってないだけで、そんな人に任せられないとフォーミは引きません。
相手も引かない為、どちらが上か決める事になるわけだけど、それを決めるのは王子たちが嫌がるあれで、負けたらきついお仕置きが待っています。
「さて、目標はあの崖の上に見える木です、それにタッチして戻って来てください」
「崖の木って、あそこにどうやって登るんだ?」
「そんなこと、崖を登るに決まっていますわ」
はい?っと男子ふたりが首を傾げて来るけど、フォーミは逆に出来ない理由を聞いてきます。
そんな事戦いには必要ないとか言って来るので、体力こそ戦場で必要と言い切ったよ。
「それに1年生なら誰でもできますし、ワタクシは40キロの荷物を担いでも行けますわ」
「「40キロ!!」」
「あらあら、そんな事も出来ませんの?」
そう言われ、男子ふたりは信じられないのか、了承はしてきません。
体力もないのが分かり、次は作戦を立てられるかと聞いたんだけど、次の戦場になりそうな場所の地図を見せたら、男子たちは首を傾げて来たね。
「さぁどうしますの?」
「どうって、俺達は何処にいるんだ?」
公爵男子1人がそんな間抜けな事を聞いて来て、僕たちは即不合格にしました。
残りの1人も考えていたけど分かるわけもなく、仕方ないのでミルティーに解説してもらいます。
「私たちの位置はここで、東の平原が一番近いですが、相手は北の小山を陣取りますから、正直不利です」
「そ、そうなのか?」
「はい先輩、ですので誘い込むのが良いと思います」
「ですけど、平原から出るとなると、準備も出来ませんよ」
そう、こういった話し合いと提案の出し合いがしたかったわけで、ここでハテナマークが頭に浮かびまくりな連中は、リーダーとしてやっていけません。
っと言う事で、黙っている男子二人をのけ者にして僕たちは作戦を考え、平原に砦を作って相手を誘う事にしました。
「と、砦を一晩で作るのか?」
「ええ、氷の柱を立てて守れば可能ですわ」
余裕でフォーミが応えて、ミルティーたちは反論すらありませんでした。
そして、反論があるならば作戦の提示を求めたけど、男子ふたりは何も言いません。
「さて、まだ何か言いたい事はありますかしら?」
「「すみません」」
「よろしい、では小山に残られる可能性も考え、回り道をする部隊をミルティーさんの隊にお願いしますわ」
作戦が決まり、僕たちは返事をしてその日は終了しました。
そして、7日を掛けて目的地に着いたんですが、先輩たちと一般兵たちは進軍の速度に付いて来るのに精いっぱいでしたね。
砦を勝ち取り、みんなは祝勝会を開いて楽しそうだけど、僕は今尻尾と髪をブラッシングするのに忙しいです。
それと言うのも、電気を流したせいなのか毛が立ちっぱなしなんだ。
「おう、白銀の閃光さん」
「サズラ、その呼び名定着しちゃったの?」
「良いじゃねぇか、カッコ良かったぜ」
お皿に食べ物を山に乗せて、会場の端で敷物の上に座る僕に声を掛けて来たのは、今日の功労者として褒美を貰ったサズラです。
ブラシでゴシゴシと忙しかった僕もその中に入る予定だったけど、今の状態では出られないのでフォーミに僕の分も貰ってもらいました。
「全然良くないよ、みんなに見せるつもりだったのに、これじゃカッコがつかない」
「そうか?オレたちは助かったぜ、その為の結果だろ」
「まぁね」
そこは否定しないし、みんなが無事でよかったわけだけど、ボサボサの状態を早く納めたいんだ。
サズラも手伝ってくれるけど、クシを通した後には直ぐに立ってしまうし、尻尾は怒った時の様で全然戻りません。
「電気はもうないんだよな、どうしてなんだ?」
「僕にも分からないけど、恐らく体毛が驚いちゃったんじゃないかな」
良く分からないっと、何度もクシとブラシを通しますが、直ぐにぼさっと立ってしまうんだ。
集落に帰ってお風呂に入れば収まると思うけど、祝勝会を抜け出すわけにもいきません。
「まだやってますの?」
「フォーミ、それにファシミアにハクアも」
「グゥガ、ちょっとハクアが言いたいことがあるんだってさ」
ファシミアの後ろに隠れるハクアは、なんだかモジモジと恥ずかしそうで、僕に魔法を放ったことがそんなに後ろめたかったのかと心配になりました。
ファシミアに押され僕の前に来ると、下を向き僕を見てくれません。
「ハクアどうしたの?」
「あのね・・・また獣化の姿を見せてほしいの」
「今?」
どうやら、雷を浴びた僕の姿がカッコ良かったらしく、もう一度見たいとお願いされました。
どうせ毛も戻らないし、今日はサービスと言う事で変身しました。
「おお~やっぱりすげぇな」
「そうかな」
エヘヘ~っと、僕は大きな猫の姿で頭をポリポリとかいたけど、ハクアは青白い光を纏った僕を見たいそうで、杖を構えて来たよ。
それはさすがにまずいんじゃないかと思ったけど、フォーミは頷いて了承して来て、ハクアが詠唱まで始めた。
「ちょっと待ってハクアさん、杖を持って詠唱までしたら、それこそあの時以上の威力が」
「平気、グゥガなら堪えられる【エクスサンダー】」
うわぁ~っと、空からの雷を僕は受け、身体が電気を纏いました。
会場にいた人達もびっくりして集まって来て、僕はもうどうしたら良いのか分からない状態だよ。
「綺麗」
「ほんとね、ちょっとグゥガ、何かやって見せてよ」
「そう言われても・・・じゃあ、綿あめでも作ってあげましょう」
両手を胸元でクルクルと回転させパチパチと電気の熱を使い、爪の先から砂糖を解かして糸にして丸めていき、お皿にサッカーボールほどの玉を作りました。
最初はハクアに渡し試食をしてもらったけど、その甘さに満面の笑顔を貰ったよ。
「さぁ電気が無くなるまで作るから、みんな食べてってねぇ」
戦うだけでない事を示したけど、ハクアは空を舞う僕を見たかったのか、ガックリしていました。
途中からハクアの為に空を飛び、空中で綿あめを何個も飛ばしたら、ハクアはほんとに嬉しそうだったんだ。
「それにしても・・・毛が更にボサボサになった」
「良いではありませんの、お風呂に入れば治りますのよね?」
「そうだけど、フォーミはこの状態でも可愛いとか思ってるでしょ」
当然と答えて来るフォーミだけど、実は僕もあまり言えないんだ。
その昔、下敷きでネコちゃんの毛を立たせて遊んだことがあり、その姿を可愛いと笑っていたからです。
「自分がネコになって、こんなに恥ずかしいとはね」
「ワタクシには分かりませんけど、白銀の閃光と綿あめネコ、どちらが良いのです?」
「なにそれ?」
「あなたの二つ名ですわ」
そんなの前者に決まってると、今まさに両方が均等に叫ばれる中、フォーミが前者を宣言して決定してしまいました。
そして、次の日から進軍が始り、僕たちの快進撃が始まるはずだったんだけどそうもいかない様で、1日目の野営時に問題が起きたんだ。
「っと言う事で、2年生の部隊と4000の兵をダミシャールさんにお願いし、ミルティーさんには3年生と4000の兵士を任せますわ」
「「は、はい」」
「「「「「ちょっと待て」」」」」
フォーミの部隊編成に文句を言って来たのは、2年生と3年生を纏めていた人達で、どちらも公爵家の男子でしたよ。
それを見て、王子4人は自分が歩んできた道とミルティーさんの後ろで同情の視線を向けていたよ。
「なんですの?」
「なんですの?ではない」
「そうだ、どうして俺たちが1年の下に付かなければならない、それにどちらも平民ではないか」
分かってない上級生のふたりは、ジロリと睨んでくるけど、そもそもふたりは既に爵位を貰っています。
公爵家の長男であっても、それは跡取りと言うだけで継がないとその爵位は貰えません。
「何か勘違いがありますわね、爵位の有無は関係ありませんのよ、これは実力を考えた人選ですわ」
「な、なんだと」
「俺たちが、その平民たちに劣っているってのか」
「お前ら、いい加減に」
ガドル王子が前に出て来そうだったのでミルティーが止めて、フォーミの長い長いお説教が始まります。
そもそも僕たちは個人で爵位を貰っていて、既に先輩たちよりも偉くなっている事や、作戦も立てた事の無い先輩たちでは戦えないと事細かに説明してあげたんだ。
「お、俺たちは砦を守ったんだぞ」
「守ったのは戦った兵士たちですわ、あなた達は部屋に閉じこもっていただけではないですのよ」
「な、何で知ってるんだ」
情報が大切な事も知らず、戦況も分かってないこの人たちが今まで生き残れたのは、ただ単に前に出て戦ってないだけで、そんな人に任せられないとフォーミは引きません。
相手も引かない為、どちらが上か決める事になるわけだけど、それを決めるのは王子たちが嫌がるあれで、負けたらきついお仕置きが待っています。
「さて、目標はあの崖の上に見える木です、それにタッチして戻って来てください」
「崖の木って、あそこにどうやって登るんだ?」
「そんなこと、崖を登るに決まっていますわ」
はい?っと男子ふたりが首を傾げて来るけど、フォーミは逆に出来ない理由を聞いてきます。
そんな事戦いには必要ないとか言って来るので、体力こそ戦場で必要と言い切ったよ。
「それに1年生なら誰でもできますし、ワタクシは40キロの荷物を担いでも行けますわ」
「「40キロ!!」」
「あらあら、そんな事も出来ませんの?」
そう言われ、男子ふたりは信じられないのか、了承はしてきません。
体力もないのが分かり、次は作戦を立てられるかと聞いたんだけど、次の戦場になりそうな場所の地図を見せたら、男子たちは首を傾げて来たね。
「さぁどうしますの?」
「どうって、俺達は何処にいるんだ?」
公爵男子1人がそんな間抜けな事を聞いて来て、僕たちは即不合格にしました。
残りの1人も考えていたけど分かるわけもなく、仕方ないのでミルティーに解説してもらいます。
「私たちの位置はここで、東の平原が一番近いですが、相手は北の小山を陣取りますから、正直不利です」
「そ、そうなのか?」
「はい先輩、ですので誘い込むのが良いと思います」
「ですけど、平原から出るとなると、準備も出来ませんよ」
そう、こういった話し合いと提案の出し合いがしたかったわけで、ここでハテナマークが頭に浮かびまくりな連中は、リーダーとしてやっていけません。
っと言う事で、黙っている男子二人をのけ者にして僕たちは作戦を考え、平原に砦を作って相手を誘う事にしました。
「と、砦を一晩で作るのか?」
「ええ、氷の柱を立てて守れば可能ですわ」
余裕でフォーミが応えて、ミルティーたちは反論すらありませんでした。
そして、反論があるならば作戦の提示を求めたけど、男子ふたりは何も言いません。
「さて、まだ何か言いたい事はありますかしら?」
「「すみません」」
「よろしい、では小山に残られる可能性も考え、回り道をする部隊をミルティーさんの隊にお願いしますわ」
作戦が決まり、僕たちは返事をしてその日は終了しました。
そして、7日を掛けて目的地に着いたんですが、先輩たちと一般兵たちは進軍の速度に付いて来るのに精いっぱいでしたね。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
69
1 / 4
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる