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2章 モフモフ同志の為に

32話 不可能だった作戦

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装備は普通の布の服、武器は短剣1本を持った僕たちは川に到着しました。


「この中を泳ぐのか」
「け、結構速いわね」
「は、ハクア怖くなってきた」


砦に向かい流れる川はソヨソヨとは呼べないし、ゴーゴーとも言えない速度は、夜のせいで余計怖さを持たせ、更に水位が1mはあるので、僕たちの身長では頭が出るくらいになり、滑れば完全に水に浸かります。
訓練で泳いだ学園内の川は腰までで、ファシミアとハクアはさすがに不安なようです。


「足元に気を付けるのですわ、滑って転べば立ち上がる事は出来ませんわよ」


フォーミが注意したけど、それだけほんとに危険であり、人が入る事を考えてない水路だから、人が1人通れるほどの狭さで、余計怖さが増してきます。
僕たちの目的は、第一に武器庫の爆破で次が食料庫、それが済んでから合図を送り、門を内側から開ける所までが僕たちの任務です。


「砦のリーダーは別動隊に任せますが、出来るだけワタクシたちが目立つように動きますわよ」
「危険は承知よフォーミ」
「ああ、どんとこいだ」
「良い覚悟ですわ、じゃあ先頭はグゥガに任せますわ」


サズラとファシミアは、不安ながらも気合を入れたけど、さすがに震えていました。
ハクアはかなり震えていて心配なので、僕は最初から背中を貸します。


「グゥガ、ありがとう」
「安心してハクア、泳ぐ必要が無いから大変じゃない、僕に身を任せるんだ」
「うん、ありがとう」


ハクアは、僕にしがみ付いて来たので、僕はそのまま先頭を進みます。
僕が先頭なのは力の強いワーキャット族だからで、みんなが流されても支えられるようにです。


「サズラ、ここに突起がある、手を切らない様に気を付けて」
「お、おうサンキューなグゥガ」
「うん、ゆっくりで良いからね、ファシミアも辛かったら僕に掴まって」
「あ、ありがとうグゥガ、そろそろきつかったのよ」


ハクアは僕に掴まってても辛そうで、それもそのはず段々と川の流れが上がって来ていて、僕でなかったら流されていたかもしれません。
結局、フォーミとサズラも僕に掴まる程の速度になり、下り坂になっているのが分かりました。


「これは、もしかしたらラッキーかも」
「どうしましたのグゥガ」
「フォーミ、地下からなら見つからないで進めるかもしれないんだよ」


それは良かったと返事を貰いその先を進むと、やっと開けた場所に出て砦の中に入れました。
人影や気配もなく、川から上がり短剣を抜きました。


「平気そうだな」
「ですが、思っていた場所ではないし、慎重に行きますわよ」
「「「「了解」」」」


ソロ~っと移動を開始して、最初の目標である武器庫を目指します。
このジェジェー砦は、僕たちの国のモノだったからこの作戦は決行されましたが、正直普通なら成功しませんでしたね。


「か、身体が重い」
「ハクア、疲れた」
「みんな頑張って、もう少しで目的の場所だよ」


回復はそこで行う事が決まっていたけど、ポーションは身体が光るので控えていました。
でもみんなの疲れが想像以上で、フォーミですら僕に先頭を任せる程で、巡回中の兵を視認しますが隠れてやり過ごしたんだ。


「い、行ったな」
「うん、その先が倉庫だ」


数回隠れる事で、兵士をやり過ごし倉庫に到着して、僕たちはちょっとだけ安心したよ。
爆破させるのは僕特製魔法石で、今回は氷ではなく火が入っています。


「更に、油も撒いておきますわよ」
「アイテムボックス持ちならではだな」
「ほんとね、それが無かったら侵入も出来なかったわ」
「グゥガは獣人で力持ち」


それほどでもないと言いたいですが、正直訓練をしていても今回の侵入は無理がありました。
疲れもそうだけど、あの流れの強さは普通は堪えられません。
僕が転生者でなかったら、そう思うとゾッとしますが、成功したので良しと考え、回復を済ませて次の食料庫に向かい同じ様に工作です。


「良しですわ、後は時間が立てば爆発して騒ぎに」
「何者だっ!!」


準備が終わったタイミングで兵士に見つかり、僕とファシミアが短剣を投げて兵士2人を倒しましたが、声が響いてしまい至る所から【敵襲】の声が上がって来ました。
まだ任務があるけど動きがかなり制限され、これはまずいとフォーミが僕を見てきます。


「やってくれますわねグゥガ」
「勿論だよフォーミ、ニャンコの力を見せてあげるよ」


獣化を行い、僕はトラくらいの大きなネコに変身し、先頭を走ります。
兵士が見えると通路の壁を蹴り、縦横無尽に飛んで爪を付き立て敵を倒していったんだ。


「ひぇ~すげぇな」
「サズラ、喋ると疲れるわよ、黙って走る!」


僕の速度に付いて来る4人は全速力であり、喋ってる余裕のない遅れる事の許されないモノで、みんな必死で着いてきましたね。
今の僕たちにはそれだけの速攻攻撃が必要で、僕たちは通路を駆け抜け、門を開ける装置のある広場に来ました。


「なっ」
「させないよっ!」


兵士が喋る前に僕が倒し、サズラとファシミアとフォーミが門を開け始めます。
そして、ハクアが空に魔法を放ち合図の花火を上がったので、僕たちの作戦はここで成功です。


「でも、これは参ったね」


門の手前は広場になっているので、既に広場は兵士で一杯で、僕たちが通って来た通路だけでなく、他の場所からもどんどん兵士が集まって来ます。
門が開き切るまではここを死守する必要もあり、目立つ様にする作戦も成功ではあるけど、流石3万と言う数の兵士が集まって来て、みんなの焦る顔に汗が流れていたね。


「囲まれたね」
「グゥガ、さっきみたいに攻撃出来ねぇのか」
「無理だよサズラ、駆け登る壁がない」


獣化のままで教えると、サズラはほんとにこれはまずいと、武器庫から手に入れたショートソードを抜いて構えたよ。
でも、まともに戦って勝てるわけもなく、僕は奥の手を使う事にしたんだ。


「ハクア、僕に雷魔法を放って」
「「「「え」」」」
「良いから、最大でだからね」
「で、でも」


味方に魔法を放つなんてと、ハクアもみんなも青くなるけど、僕の体毛に電気を纏わせる為で、その説明は出来ないから信じる様に伝えます。
覚悟を決めたハクアは僕に魔法を放ち、敵兵士は何が起きたのかと少し後退したんだ。


「ぐっ!さすがに効くね」
「グゥガ!」


ハクアが心配そうに僕を呼んだけど、その瞬間には僕はその場から移動していて、一瞬で門まで駆け抜けたんだ。
その場にいた兵士は弾け飛び、吹っ飛ぶ兵士は壁に激突したよ。


「す、すげぇ」
「まるで閃光ね」
「うん、白銀の閃光」


皆のそんな言葉は、広場を駆け抜けて敵を倒す僕には聞こえず、敵は減って行きます。
それは数回行われ、やっと敵兵士も対応を始めたんだ。


「でも、もう遅いよ」
「ば、バケモノだっ!!」
「に、逃げろぉ~」


兵士たちが逃げ始めるけど、立ち向かってくる者もいて、雷を纏った僕に触れる事すらできず黒焦げになったよ。
雷の力が無くなって来ると、青白く光っていた体は元に戻り、ピリピリしていたのも無くなりました。


「ふぅ~さすがに疲れた、みんな無事だね」


ゆっくりとみんなに近づくと、ぼ~っとしていて焦点があってない感じでした。
この状態でよく無事だったと思ったけど、敵兵士もこんな感じだったんだ。


「どうやら、部隊長の暗殺も済んだみたいだよ」
「そ、そうね・・・じゃあ撤退しましょ」


獣化を解き、ボサボサのままの僕を先頭に門を通って仮の陣地に戻りました。
援軍の部隊は、指揮官を無くした敵に快勝し、砦を勝ち取る事が出来たんだ。
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