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2章 モフモフ同志の為に

22話 コネと思われてる入学

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「うわぁ~見られるねぇ」


僕が獣人だからか、それとも既に噂になってるのか、どちらにしてもかなり嫌そうな視線が僕に集まります。
生徒たちは勿論だけど、教師も良い顔をしていませんから、恐らく後者が理由で、ため息が漏れますね。


「とはいえ、これでフォーミは守れるし、購買にいる白狼族も守れるね」


悪目立ち成功で、僕は一般兵士が集まる兵士科に所属します。
本当は騎士科に行きたかったけど、先生たちが許しませんでした。


「予定通りだからいいけど、皆さんお話を聞こうよ」


校長先生の挨拶が終わり、最優秀の生徒のお話が始まるけど、誰も見ていません。
そんなに嫌なのかと思いながら、僕はその生徒を見て、嘘でしょっと思ったよ。


「ダメ王子じゃん」


実力主義と言うのが嘘なのが良く分かり、だからこそ学園の責任者が僕たちの交渉に乗ってきた訳です。
本来の最優秀は、ゲームの主人公であるミルティーと言う平民の子で、聖女になる少女です。


「それを知ってるから、フォーミは絶望してたんだね」


ゲームでは、それこそやり込まないと勝てない仕様で、僕たちの出番と言う事です。
獣人だからと睨んでくる兵士や騎士に、実力もないのに堂々と挨拶をする王子までいて、どれをとっても勝てるとは思えなかったね。


「じゃあ、まずは兵士の生存率を上げて行かないとね」


フォーミは指揮官育成科に入り、元から一緒にいるジサーナさんに以外に、伯爵家から来た専属のメイドが付いてて、僕は僕で頑張ろうとバラバラに入学式を迎え教室に向かいました。
僕は、そこでも睨んでくる生徒たちに注目されたけど、声を掛けて来る度胸もないレベルで、やれやれと言った感じです。


「さて、僕の席はっと」


扇状に段々になっている席の一番後ろと言う事で、教師はぎりぎり見えるけど黒板の文字はまず見えない環境で、教育の仕方を変えてほしいと言いたいです。
でも、全員が見やすいので良かったんだけど、そこでやっと僕にケンカを売る人が出て来たよ。


「おいお前、どんなコネを使いやがった」
「あなたは?」
「俺様を知らんのか」
「知りませんけど?」


何処かのお貴族様なの?っと、僕は周りに視線を動かしたけど、どうやらそれほど有名ではない様で、誰も名前を言いません。
それが分かったのか、文句を言って来た男子は真っ赤になって名乗って来たよ。


「デスフォードだ、バン・デスフォード」
「そうですか、僕はグゥガと言います」


家の爵位を付けないという事は、言える立場ではないと言う事で、だから騎士科ではなくこっちにいると分かりました。
でも、周りの生徒がボソッと言ったんだけど、どうやら男爵家の3男だそうです。


「それで、家を継げないバン様が僕にどのような用件ですか?」
「こ、このネコヤロー言わせておけば」
「おっと、それはいけないよ」


腰の剣に手を掛けて来たけど、僕は柄に手を乗せて止めたんだ。
先生がそろそろ入場して来て、このままだと闘技場で決闘とか言われのが見えてて、面倒だから嫌なんです。


「は、放せ獣風情が」
「放しても切りかからないと言うなら、喜んで放しますよ」
「分かった、分かったから放せ」


ギュウギュウと柄を押して、そのまま壁にまで押し付けたからか、真っ赤な顔をして嫌がっていたよ。
人種族にしてはそれなりの力を持っていたのは確認し、他にも使えそうな生徒に視線を向けたよ。


「紫髪のあの女子とその隣の白髪女子、後は赤髪の男子かな」


他は平均で誰でも同じ感じなので、教室に入って来た先生のお話を聞く事にしました。
でも、普通の教科以外は剣と魔法の訓練が言い渡され、ほとんどの時間が訓練に当てられるのが分かったよ。


「皆も知ってるだろうが、今年から戦場に行く、皆気を引き締める様に」
「「「「「はい」」」」」


生徒が返事をしたけど、半数以上がざわついてるから、平民には聞かされてなかった様です。
そして、僕の見込んだ生徒はざわついてる方で、喜んでもいたよ。


「さてお前たち、遊びに来たわけではないのだ、早速訓練に外に出るぞ」


肉体派なのか、男性教師が訓練場に移動を指示して来て、僕たちは教師の後について行きました。
まだ名前も聞いてないのにっと、僕はちょっと愚痴を思いながらついて行くと、かかしが並ぶ土の地面の訓練場に到着しました。


「俺が1人ずつ相手をする、他は二人一組で訓練の開始だ」


木剣を持って僕たちは訓練を始めたけど、先生と最初に手合わせしたのは僕に文句を言って来たバン君です。
そして、僕の相手は赤髪の男子です。


「オレはサズラだ、よろしく」
「グゥガだよ、こちらこそよろしく」


剣を構えて打ち合うと、格闘じゃなくて良いのかと聞いてきます。
獣人の得意分野を気にしている様で、余裕があるから僕はにっこりです。


「忠告ありがとう、でも平気だよ」
「そうなのか、じゃあもう少し早くするぜ」
「良いとも、僕の動きに付いてこれるかな」


打ち合いを早くして、上に下に剣が振りぬかれ、僕たちは激しい打ち合いをしていると、先生も生徒を交代させていました。
でも、他の生徒は僕たちの方に注目していて、新入生の動きじゃないとか言っていたよ。


「どうやら、お前はコネで入学したんじゃないようだな」
「それはそうだよサズラ、僕は戦争に勝つために入ったんだ」
「へぇ~・・・じゃあこれはどうする?」


サズラが剣を後ろに引き、横振りの斬撃を飛ばして来て、それが剣技の【ソニックブレード】である事が他の生徒の叫び声で分かったよ。
13歳になったばかりとは思えないけど、僕もやられるわけにはいかないので、剣を上に構え闘気を上げたよ。


「じゃあ僕も行くよ【パワースラッシュ】」


振り下ろした僕の剣は、飛んで来た斬撃を打ち消し、生徒たちが歓声を上げたよ。
サズラは、それを見て降参を宣言して来たけど、僕は彼の強さを称賛したんだ。


「なんだよ、敗者を蹴とばす気か?」
「そんなつもりはないよサズラ、素直にすごいと思ったんだ」
「良く言うぜ、軽く消し飛ばしただろ」
「僕は実戦経験があるからね、でも君は我流で実戦経験もない、そうでしょ?」


言い当てられ、サズラは恥ずかしそうだけど、我流でここまでなら相当な努力をして来た事が分かった。
その強さは誇れるモノで、貶す事はないと僕ははっきりと言いましたよ。


「だけど、負けたら意味がないんだよ」
「そうかもしれない、でも上には上がいて、君はまだまだ強くなるよ」


一緒に強くなろうと手を差し出すと、サズラはそれを受けてくれて、僕たちは友達になったんだ。


「次は負けないぜグゥガ」
「僕も強くなるから負けないよサズラ」
「望むところだ」
「ねぇ、次はアタシと戦ってくれるかしら?」


僕たちの戦いが終わろうとしていたら、次は紫髪の女子が僕の相手の様で、白髪の子はサズラが相手にする事になりました。
先生にはまだ呼ばれないので、断る理由がなく受けたけど、紫髪の女子は剣に火の魔法を纏わせてきたよ。
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