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1章 モフモフの為に

17話 同志の理由

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「か、可愛い」


オースズメ族の空輸隊がグゥガの前に降り立ち、私は撫でたくて仕方ないわ。
私の知ってるスズメの大きさじゃないけど、グゥガよりは大きくて子供の私なら乗れそうで、それはとっても楽しいと想像してしまったのよ。


「そう言う訳で、彼女たちが戻ったら輸送を開始します」
「そうっぽ?」
「わかったっぽぽ」
「今後は輸送以外もするから、その時は今日の様に指示を出すからね」


それでは解散っと、グゥガが言ってしまったので、私の手はスズメに触れる前に空振りに終わったわ。
空を見上げて、撫でたかったと思ったけど、今はグゥガの妹のシークちゃんが膝に乗っているから動けません。


「痒い所はあるかしらシークちゃん?」
「もう少し右が良いみゃ~」
「はいは~い、ここかなぁ~」


モミモミしてあげると、とっても喜んでくれて、やっぱりモフモフは最高と改まって思いました。
この世界に来て、死にたくないから色々調べたけど、こんなに幸せなのは初めてで、前世の楽しかった事が蘇って来たわね。


「うみゃ~フォーミは兄ちゃんくらい上手いみゃ~」
「それは嬉しい褒め言葉ね」
「うんみゃ~」


顎を撫でてお返しをしたら、ゴロゴロと鳴いて喜んでくれたの。
スズメちゃんは、戻ってからでも撫でられるけど、シークちゃんたちワーキャット族はここに来ないと撫でれないから、今のうちに沢山撫でておきます。


「もっと撫でていたいわねぇ」
「お嬢様、ダメですからね」
「何よジサーナ、やりたいことが見つかったのよ、もっと応援するべきじゃない?」
「それはご本人が言う事ではございません」


今まで黙っていたのに、私の暴走を察知したのか、護衛騎士で幼馴染のジサーナが注意してきました。
この世界の事を調べてる時、ジサーナには迷惑を沢山掛けたから仕方ないけど、もう少し喜んでほしいのは事実よ。


「でも、可愛いでしょ」
「それは・・・まぁそうですけど」
「触っても良いのよジサーナ」


ほらほらっと、シークちゃんを抱っこして近づけると、ジサーナは手を出して撫でようとして止めたわ。
無理してもこの可愛さには勝てないのにっと、グイグイ押してあげたらやっと頭を撫で始めて、ジサーナの顔がとろけ始めたわ。


「普通の毛並みじゃないでしょ?」
「ほんとですね、とてもフワフワで、まるで雲でも触っているみたいです」
「そうね、いつまでも触っていたいわ」


ふにゃっとしてるジサーナに、モフモフを愛する私の味方になって欲しい事を伝えたけど、現実に戻ったジサーナはだめと言ってきます。
でも、屋敷に戻ってもやる事はないし、ここにいて連携した方が良いと説得したの。


「お嬢様に出来る事は無いでしょう」
「そうではないのですわジサーナ、ワタクシには秘密があるのですわよ」
「それなら、自分も付いて行きます」


その言葉を待っていた私は、味方が出来たのでグゥガにその事を伝え、今後の為にもずっとここに滞在する事を提案したわ。
グゥガは勿論了承してくれたけど、どうしてかネコじゃらしを渡して来たわ。


「これは?」
「僕はねフォーミ、猫と触れ合う以上に遊ぶのも好きなんだ、だけどじゃらそうとすると、ネコになった僕自身もウズウズして来て、止められないんだよ」
「ああ~そういう事ね」


甘噛みしてじゃれ合うのも良いけど、ネコじゃらしで遊んでみたいと言う事で、私がその相手に任命されたわ。
右へ左へとネコじゃらしを動かすと、シークちゃんはお尻をフリフリとして来て、見事にネコじゃらしに飛びついて来て、それを見てグゥガが嬉しそうでした。


「これだよ、これこそ猫との生活だよね」
「あなたも遊んでも良いのですわよ?」
「僕も?」


グゥガが転生者で前は人間だったとしても、今はネコになっている訳で、ジサーナにネコじゃらしを渡して遊んでもらったわ。
本能には逆らえないのか、グゥガがじゃれてくれてジサーナも嬉しそうだったけど、一度は戻らないといけないのがとても名残惜しいです。


「もう一度ここに来るには、お父様を説得する必要があるけど、秘密を話すわけにはいかないし、難問ね」


シークちゃんをじゃらしながら考えたけど、特使として滞在する事しか思いつかなかったわ。
次期領主として、グゥガの力を理解する為にもそれが良いと、お父様は思ってくれると信じて、私はグゥガに伝えて集落を出ました。


「料理も美味しかったし、良い集落だったわ」
「ええ、獣人は生肉を好んで食べると思っていましたが、自分が街で食したどの料理よりも美味しかったです」
「そうね、料理人に覚えさせても良いかもしれないわ」


色々と夢が膨らんで来て、ほんとに楽しくて仕方なかったわ。
絶望に心を囚われていた事なんて嘘みたいで、もう怖い事が無くなったの。


「学園には行けないけど、勝利は確実ね」
「お嬢様?」
「ジサーナ、あなたには言っておくわ、二ヶ月後に帝国が宣戦布告して来るの」


ジサーナは、それを聞いて顔を青くしたけど、話しはそれでは終わらず、3ヶ月で軍の半数が戦えない痛手を受けるわ。
国はそれを受け、学園に指揮官育成科を作り、学生の兵士や騎士たちを前線に送って戦わせるの。


「そんな、ひよこにもなってない子供たちを戦わせても勝てませんよ」
「ええ、それは上層部も分かってるわ、それは時間稼ぎなのよ」
「どうしてそんな事を」


簡単な話で、疲弊した軍を纏める時間を稼ぐためで、その中で英雄が生まれ、それがゲームの主人公でした。
そこは話さないし、騎士の中に王子たちがいるけど、普通に戦っても勝てません。


「だからこそ、グゥガの空輸は絶対必要な力になる、そのサポートをワタクシたちがするのですわ」
「だからあんなに必死に・・・撫でたいだけじゃなかったのですね」
「うふふ、それが一番かもしれないけど、負ければそれも出来ませんわ」


帝国が勝てば、そこにいた人たちは奴隷となり、それまでの生活は送れません。
そうならない為にも、この戦いは負けるわけにはいかず、勝つには奇跡が必要とジサーナに言います、そしてそれが見つかった事を伝えたの。


「それがクウユですか」
「ええ、他の領地にある獣人の集落に接触し、空輸の出来る種族を増やすの」
「大変な事ですね」
「ええそうね、だけど戦いに勝つためにはそれしかないわ」


人種族は、獣人やドワーフなどの他種族を下に見ていましたから、最初は反対されるかもしれません。
だけど、グゥガが助けてくれればきっと協力が得られる、そう信じて私は街に戻り、お父様にお願いしましたわ。


「特使か」
「ええ、彼の考えは領地を越えますの、上位の貴族を味方に付けるチャンスですわお父様」
「確かにそうだが、王都に店を出すとなると、それなりの覚悟がいるぞ」


上級貴族が嗅ぎつけちょっかいを掛けて来ると、お父様はかなり嫌がって来ます。
でも、それを恐れていてはいつまでも下級貴族のままですし、戦争には勝てません。


「お父様、グゥガの力は上級貴族でも納得するほどの力ですわ、今から準備すれば来年には間に合うのですわ」
「分かった、友人を当たって見よう」
「お願いしますお父様、ワタクシは急ぎ戻ってグゥガと協力しますわ」


まずは家の領地を安定させることが優先されますが、猶予は2ヶ月なので急いで動きました。
とても忙しい日々だったけど、グゥガの集落で生活をしていたからか、とても苦ではなかったの。
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