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1章 モフモフの為に

12話 交易開始

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「はぁ~やっと到着っすね」


2回目の交易に到着して、俺っちはひと段落っす。
それというのも、ナーガとの戦いが無ければ、何度も往復で来ていたはずなのに、色々あってやっとこれたっす。


「次っ!おお白狼族ではないか、待っていたぞ」
「どうもっす、遅れて申し訳ないっす」
「とんでもないよ、また沢山持ってきてくれたんだろうか?」


前回の交易で、1キロの肉を銀貨1枚と言う安値で売り、一気に俺っちたちの名が轟いたっす。
門番にも顔を覚えてもらい、俺っちの馬車は素通りっす。


「後で買いに行くからよ、残しておいてくれよな」
「今回は遅れた分、3倍持ってきたっすから、焦らなくても平気っすよ」
「おお、それは助かる、これでこの街も潤うよ」


感謝をされたのは前回と合わせて2回目で、交易がこんなに楽しいモノとは思わなかったんす。
俺っちの種族が助かる為、ただそれだけの交易だったっすが、楽しくて仕方ないっす。


「それにしても、ここは相変わらずっす」


食料が少ないせいか、住民は元気がないっす。
俺っちの顔を見て、急いで家に戻るモノもいて、商売繁盛の予感っす。


「では、いつもの様に、中央広場に馬車を置くっす」


準備をして行くうちに、既にお客が集まりだし、まだかまだかと期待してくれてるっす。
今回も銀貨1枚、量は600キロっすから、ほとんどの者に行きわたるっす。


「さぁ開始するっすから、並んでくれっす」


店の前に線を引き、順番に販売出来る様にして開始したっすが、それが無ければヤバいと思う程に人が集まってきたっす。
そしてそれは、全てを売り切る前に列が終わったっす。


「あんたで最後っすね」
「ほうほう、では残った量を全て貰いましょうか」
「残りと言うと、120キロになるっすよ」


それでも良いというその人種族は、この街【ポートス】の商会を管理する人で、名をササキと言うそうっす。
俺っちの名前も教えたっすが、その場で商談を持ち掛けられたっすよ。


「森に商会の馬車をっすか?」
「はい、今回の様に間隔があかない様にしたいのですよ、ハク殿」
「俺っちの一存では難しいっすね」


俺っちだけなら、直ぐにでも了承したっすが、ここで渋る様に言われていたっす。
あの小さなニャンコ族、あの子に即答せずに持ち帰る様に言われていたっす。


「そうですな、急ぎ過ぎましたな」
「すまないっす」
「いえいえ、では前向きに検討いただくと言う事で」
「そうっすね、よろしくお願いするっす」


握手をして約束が出来たっすが、次から品を増やす予定だった事を伝えたら、グゥガ君の言っていた通り、場所を変えようと言われたっす。
馬車の片付けまで部下を呼んで手伝ってくれて、ほんとに人種族っすか?っと思ったほど親切で、屋敷に招かれたっすよ。


「では座ってくれ」
「し、失礼するっす」


屋敷の応接室まで来た俺っちは、周りのキラキラに目が痛くなってきたっす。
何処を見てもすごい品ばかりで、俺っちがいても良いのか分からなかったっすけど、座るだけはしたんすよ。


「では聞かせてくれ、他にどんな品を用意してくれるのかな?」
「野菜に魚っす」
「ほう、それはとても助かるが、どうしてそんなに量があるのかな?」
「養殖と言うのに成功したんすよ」


グゥガ君に言われた範囲がここまでで、ササキは考え込んでいるだけっす。
野菜は畑を作ったからっすけど、養殖と言う言葉は知らないと分からないんすよ。


「つまり、森の中で自給自足が出来ていると」
「そうっす、余裕が出来たんで外に出し始めたっす」
「ほう・・・それで、金を集めてどうするのかな?」


ここの答えは、生活用具を買う為と言わなければならないっす。
本当は、グゥガ君が何かに使う事になってるっすが、俺っちも知らないし、そもそも俺っちたちはその為にここで商売を始めているっす。


「生活用具」
「そうっす、畑を耕すクワに採取の為のハサミ、要は鉄製品っすね」
「なるほど、森では手に入らない品だな」
「そうっす、新たな仲間の為にも必要なんす」


今までは、食料の不足のせいで繁殖は控えていたっすが、今年の終わりはみんなせいを出すはずっす。
その為にも、もっと広げなくてはならないっす。


「では、支払いは物々交換の方が良いのかな?」
「それでも良いっすけど、毎回同じ物が欲しいわけじゃないっすから、自分たちで買うっす」
「確かに、では代金は品物を見てからと言う事で良いかな?」


それで十分と答え、俺っちはやり切ったんす。
そして油断したんすよ、ナーガとの戦いに勝利したとか、書面が出来上がるまでの間、ササキとの雑談で言ってしまったんすよ。


「な、ナーガの大軍!」
「そうなんすよ、事前に分かったから良かったっすけど、まともに戦ったら負けていたっすね」
「それはそうだ、いったいどこから来たんだ」


そこまでは分かってないっすけど、食料が無くて移動をしていた事は教えたっす。
なので、他の種族も来るかもしれないと分かり、ササキも警戒するようだったっす。


「もし戦力が欲しければ、俺っちたちも協力するっすよ」
「それは助かるが、さすがに間に合わんだろう」
「そこは考え方っす」


グゥガ君は、戦いに向かないオースズメ族の輸送を考えてて、クウユと言うそうっす。
定期的に物資を運ぶ方法は、こちらでも検討していたとササキに伝え、空からの情報を得られる事を教えたっす。


「それはありがたいが、そうすると軍の方にも話を持ち掛ける必要があるな」
「それもあるっすが、オースズメ族が着地する場所も用意してほしいっす」
「しかし、お人が悪いですなハク殿、定期的に運ぶ用意をしていたのですな」


そこで初めて、俺っちは喋り過ぎた事を理解したっす。
でも、言ってしまったので、店を買ってからそうする予定だったと教えたんす。


「オースズメ族は、運べても10キロっすから、定期便には丁度良いんす」
「フム、それは良い案ですな」
「そうなんすよ、俺っちも聞いた時はビックリっす」
「ほう、ではこの案はハク殿が思いついたのではないのですな」


またやってしまったと、俺っちは尻尾をしょんぼりさせてしまったっす。
これ以上情報を話さないよう、俺っちは立ち上がったんすよ。


「あ、ありがとうございましたっす」
「いえいえ、こちらも沢山の情報を頂きました、今後ともよしなにおねがいします」
「そ、そうっすね」


いそいそと頭を下げて、俺っちは部屋を出て屋敷を後にしたっす。
沢山の情報を言ってしまい、俺っちはグゥガ君に叱られる未来が見えて、帰るのが怖くなったっすよ。


「でも、グゥガ君の事は話さなかった訳っすから、及第点っすよね」


門が閉まるギリギリで俺っちは街を出たんすけど、門番さんに手を振られて出たんす。
歓迎されるとはこういった事で、ここまで話がスムーズに進むんだと理解したっす。
ちなみに余談っすけど、グゥガ君に情報を話してしまった事を伝えたら、俺っちに話している内容は漏れても良い範囲が決められてて、十分予想されていたんす。
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