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1章 モフモフの為に

1話 ワーキャットは女性中心

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僕はその日、新たな転生をして産声をあげました。
でも、その鳴き声は「おぎゃぁ~」ではなく「みにゃ~」で、ちょっと大きめの猫になっていたんだ。


「あらあら、この子良く泣くわねぇ~」


僕の母親である女性が、僕を見てうれしそうだけど、僕の「みにゃ~」という産声は「よっしゃー!」という僕の喜びの声だったん。
そして、そんな待望の身体で暮らして、2週間で2足歩行をマスターし、2ヶ月後には喋る事が出来る様になったんだ。
そしてそして、僕は自分に身体をペロペロと洗って思っていたことがあります。


「僕は、獣人族のワーキャットなんだね」


オスと言う事は分かってて、僕には一緒に生まれた姉と妹が2人ずついます。
全員女性と言う事もあってか、僕に懐いてくれるけど、それ以上にこの集落には、オスが僕以外1人しかいないらしく、族長が保護しているんだ。


「女性中心社会なのは分かったけど、人口が42人とか集落にしても少ないよね」


150回も転生して待望の出来事なのに、僕はそれ以上にニャンコになったのが嬉しくて仕方ありません。
懐いて来る家族も、メインクーン並みの大型ネコでモフモフし放題だし、人型になってる母親が獣化でライオン並みのネコになる不思議も、今の僕には後回しでモフります。


「ごろにゃ~」
「よ~しよしよし」


三毛猫と白黒ニャンコの妹2人に、トラ柄とふわっとした長い茶色毛の姉2人をモフって、堪能してから自分も撫でる至福の毎日たんだ。
僕は大のネコ好きで、最初の1回目の願いで輪廻転生を授かり、ネコになるまで転生して150回目でやっとです。


「ああ~この毛の肌触り、肉キュウに響いてさいこ~う」


身体をクネクネさせてしまうけど、僕はもう死んでも良いと思ったよ。
でもね、堪能して分かったんだけど、毛の絡まってる部分があって、妹と姉は自分で舐めて整えていたよ。


「ねぇみんな、もしかしてクシとか無いのかな?」
「なんにゃ?」
「クシ?」
「良くわからないみゃ~」
「何それ」


皆の回答はそれで、これはもっと良いモフりを堪能したいと、僕は木の枝を母親に貰いに行きました。
母親はクウヤと言って、人型だから尻尾と耳くらいしかモフれず、獣化してとお願いしても変化してくれません。


「どうしたのグゥガちゃん」
「カカ様、木の枝を貰えませんか?なるべく太いヤツ」
「それ位良いけど、何に使うの?」


ちょっとねぇっと、僕は爪を立ててギコギコ切って行きます。
そして出来たのは、ちょっと長めのクシで、自分の尻尾を整え始めると、その気持ち良さにウットリです。


「はぁ~これは、ネコちゃんが喜ぶわけだねぇ」


猫になって初めて分かる事だったけど、肉キュウが邪魔でちょっと持ちにくかったよ。
そして、母親に人型になる方法を聞いたけど、成人でレベルを5以上にならないとダメだそうです。


「成人って、何歳ですか?」
「1歳ね」
「そ、そうですか・・・もしかして、僕って貴重ですか?」
「そうね、オスは生まれにくいから、成人と同時に護衛が付く身分よ」


家族がその護衛役になるそうだけど、最初の繁殖は家族が対象だそうです。
不自由はないらしいし、色々ツッコミたい事が出来たけど、兎に角今は皆の毛繕いをしたいから、口にクシをくわえて4足歩行で走ります。


「みんな、ちょっとお手入れしよう」
「お手入れって」
「いつもしているにゃ~」
「そうじゃないんだよミーケ」


こっちにおいでと、妹を手招きして身体の毛にクシを通します。
ミーケは、凄く気持ちよさそうにゴロゴロと喉を鳴らし始め、僕は感無量です。


「つ、次シークみゃ」
「あっ!ズルいわよ、じゃあアタシが次ね」
「キキあなたこそズルいわよ、ここは長女のウチが」


皆が争い始めたので、順番に仲良くと言って、出来なければやらないと注意すると、ちゃんと並んで待ってくれます。
みんなとても聞き分けが良くて良い子だねっと、ネコちゃん扱いして毛繕いを全員に施し、長女のシャム姉さんの毛繕いをしてて思ったんだ。


「ここまで整えると、次はやっぱり質を良くしたいよね」
「な~にグゥガ、まだ何かあるの?」
「うん、ここの食事いつも野ネズミじゃないか、だからね」


もっと栄養のあるモノを食べさせたいし、自分も食べたいんだ。
ここは森の中で、家も草木で出来てるから、かなり文明が低いんだ。


「味も何もない、野ネズミをそのままかじってるでしょ」
「それが普通よ」
「グゥガ、何を言ってるの?」
「いやいや姉さんたち、もっとおいしい物食べたいでしょ」


美味しい物と言うのが分かってなくて、取り敢えず野ネズミを血抜きして皮を剥いで、臓物とかを切り分けたんだ。
それぞれを食べさせると、臭みが無くなって食べやすいと言ってくれた。


「それが美味しいって事だよ」
「そうなのね」
「これ良いわね」
「そうでしょ、だからもっと色々やってみたいんだ」


その為にも、集落の外に出て採取をしたいんだけど、姉さんたちだけでなく、妹二人にまでダメと言われます。
それはどうしてなのか、答えは簡単で僕がオスだからです。


「オスが外に出るなんてダメよ」
「そうにゃ、兄ちゃんは大事なのにゃ~」
「そこを何とか、ちょっと出るだけだからさ」
「「「「ダメっ!!」」」」


全員にすごい勢いで言われ、僕は言い返せなくて諦め、違う方法の為にみんなとちょっと離れたんだ。
食事を良くする事は諦めないし、外に出ないと始まらないから、150回も転生した知識とスキルを使う事を決めたよ。


「ステータス画面は出せないけど、スキルが使えるのは分かる」


でも、使えないスキルもある様で、使えるスキルだけを地面に爪で書いてみたんだ。
【絶対回避・限界突破・一撃必殺・一発必中・自動回復・自動防衛結界・経験値100倍・詠唱省略・アイテムボックスetc】


「戦闘系が多くて、そっちは全部使えそうだけど・・・使えないのは、今ほしい生産系のユニークスキルの方だね」


ユニークスキルは、対価にMPやお金が必要だから、レベルが上がればなんとかなるモノもあります。
でも、その為には外で戦わないといけなくて、結局今の少ないMPでやりくりするしかない様です。


「欲しいのは、アイテム交換タブレットと業務スーパー大全集・・・後、この手で扱いにくいクレーンゲームと景品パズルゲームかぁ~」


前者は商品の値段によって消費が違い、後者は決まった消費で幾つも手に入る可能性がある。
確実に手に入るけど消費の高いスキルか、手に入らないかもしれないけど消費の低いスキル、どっちを取るのか迷ってしまいます。


「でも、今使えるのはステータス10倍で上がった100MPだから、後者しかないけど・・・いや待てよ、限界突破を使えばMPが一時的に上がるか」


限界突破なら更に10倍になるので、1000の品が交換できる。
今日はどうしても欲しいので、ここは無理をしてでも限界突破を使い、調味料とお肉を交換したんだ。


「でも・・・ちょっと、むりを」


限界突破の反動で、身体が痛みで動かずに倒れたよ。
アイテムボックスにはしまったから、ダメになる事はないけど、自動回復で動ける様になるまでは何も出来なくなった。


「でも、これで外に、出、れ、る」


僕はやりきった顔のままで気を失ったけど、本番は起きてから行う調理でこれからなんだ。
1時間して、僕は目を覚ますんだけど、倒れる僕を発見した姉さんたちに叱られ、永遠2時間続いたんだよ。
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