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最終章 平和に向かって

75話 親睦会

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「どこかの集落の宴会を想像していたんだけど、ファンタジー感がない・・・これは親父の影響だよな」

「ま、まぁそうだな烈男・・・なんかすまん」


施設を見渡しながら俺は親父に聞いてみた、親父は謝っていたよ。

俺たちは今、異世界に来ている、それだけでも胸がドキドキだ、島はリゾート観光地のような場所で、あまり異世界と言う感じはしなかった。だがな!住人が普通と違うんだ、獣人やマーメイドたちが働いている、それを見てワクワクしてしまった、しかしパーティーを開く場所に来てまた冷めちまったよ、異世界って感じがまったくないバイキング会場のような場所で、俺たちの知ってる結婚パーティーが始まってしまったからだ、もう少しなんかないのかよって一気に冷めた。


「いいじゃない兄さん、こっちでも結婚式が出来たんだからさ」

「乙葉はそうかもだが、俺はもっとファンタジー感を出してほしいんだ、何かないのかな」


テーブルで飲み物を飲み乙葉にそう言った、辺りを見回すんだが、参加者だけが変わっている以外は普通だ、料理まで俺たちの知っている物が出ているんだぞ、ドラゴンの姿焼きとか何かないのかよって思うだろ。


「に、兄さん!?あれあれ!」


俺が唸って料理を見ていると乙葉が俺の肩をたたいて呼んだ、コモエも桃花ちゃんもどうやら驚いているようで、俺はみんなが向いている方向を見た。なんと!?巨大なマグロの姿焼きが運ばれてきたんだ、そしてマーメイドたちが興奮したと思ったら、尻尾の部分に水が出現し始め、マグロの周りを飛び回りだした。これだよ!こういったファンタジー感が欲しかった。


「さて、準備が出来たから始めるか、4人とも結婚おめでとう」


俺たちが空を舞っているマーメイドたちを見て感動していると、魚の横から親父が亜生奈を抱っこしてひょっこり登場してきた、あれを用意したのは親父だったんだ、普通の式と見せかけてサプライズを仕掛けて来たって訳だな。


「親父、あの魚ってどうやって釣ったんだ?」


式が始まると席移動が頻繁に行われた、俺たちも二人一組になって移動している、なんだか会社の新人みたいだ、酒を持って全部の席を回るあれだな。

俺は最初に親父がいるテーブルに行って聞いてみた、親父は酒を飲んだ後に笑顔で俺を見たよ。


「俺の専用の竿で釣ったんだ、今度見せてやろう、何なら2人もやってみるか?」


そう言われ、俺とコモエは「いやいや無理でしょ」って声を揃えた、そしてそれを見て親父は笑っていた、こんな無垢そうな笑顔を始めて見たよ。そして俺は言ったんだ。


「あんなの普通の竿では釣れないだろ、質量とかどうなってるんだよ」


俺が質問したら、どうやら親父のスイッチを入れてしまったようで、何だか魔力がどうのと言い始めた、これは長くなりそうだ。


「こりゃこりゃ、わらわたちにも話をさせるのじゃケンゴ」


俺がいやな顔をしていると、助け船を出してくれた人がいた、彼女はマーメイドだ、小さいけどな。


「む!?クイーンか、そう言えば烈男とコモエは最初にこのテーブルに来たんだったな、じゃあ明日はその釣りを見せてやる、楽しみにしているようにな」


そう言って親父は上機嫌に笑っている、あんなに大声で笑っているところを見たのは始めたかもしれない。そう思いながら空に浮いている小さいマーメイドの後に俺たちは続いた、この子は親父を船団長と呼んでいない、もしかしたら親しくしているのかもな。


「ほりゃほりゃお主たちも飲むのじゃ」


小さいマーメイドが自分のテーブルに着くと俺たちに酒を注いでくれた、そして俺たちにも自分の杯に酒を注がせたんだ。どう見ても君は成人してないよねってコモエの心の声が聞こえる。だが酒を一気に飲む姿を見て、歳を聞く衝動は収まったようだ、きっと有名なあれだからな。


「それでロリバ、じゃなかった・・・マーメイドさんは、親父とどういった関係なんだ?」

「むむ!?いきなり本題を聞いてくるんじゃのうケンゴの息子よ、ならば言うてやろうぞ!わらわはケンゴの第一婦人じゃ」


小さいマーメイドの答えを聞いて、俺は杯を落とし固まってしまった、コモエもさすがに同じ感じだよ、こんな小さい容姿の子に手を掛けたってのか!?テレビで美人有名人が迫ってきても顔色一つ変えなかった親父が、信じられない。


「むむ!?信じておらんな・・・良かろう!後で息子と娘を紹介しようぞ」


そう言いながら、俺たちに新しい杯を渡して来て酒を注いでくれた、どうやら本当のようだ、これは乙葉が聞いたら、かなり動揺するんじゃないか?とても不安だ。


「あ、あの・・・第一婦人と言う事は、もしかして他にもいるのでしょうか?」

「娘よ、良い所に気付いたのう、今はお腹の子供が大きくなってしもうたからのう、ここにはおらんが沢山おるぞ」


小さいマーメイドから衝撃の事実を聞いた、俺は親父の方を見たが、乙葉と何やら楽しそうに話している、ほんと楽しそうだ。だがほんとに平気だろうか?とても心配になってきたぞ。


「まぁ・・・平和って事なのか?ラノベでも、一夫多妻制が多いし、そう言った世界って事だよな・・・うん、あまり考えないようにするべきかな」


杯の酒を一気に飲んで、俺は何とか理解することにした、異世界では聞く事だ・・・うん、そう言う事にしておこう。


「その者たちともゆっくり話す機会もあるじゃろうのう、わらわも次に譲るとするか、お主たちはケンゴの家族でわらわたちの家族も同然じゃ、ゆっくりと過ごすと良いぞ」


そう言ってマーメイドが床に尻尾を付けずにすーっと移動していった、あれは魔法か?魔法なのか?と2度思ってしまったよ。そしてまだ疑問に思いながらも次の席に移動した、そこにはマーメイドの女性と人間の男性がイチャイチャしている、そしてそれの向かいに乙葉くらいの女性と亜生奈位の女の子、それと獣人の子供がいる、他種族連合って感じで、種族で固まっている他のテーブルと少し違った。

そしてこの人たちは、乙葉の結婚式に参加していたメンバーだ、名前はハルサーマルさんとネニネイさん、それとイナークさんにメナーサちゃん、最後の獣人はチェミーシャさんだ、ここで親父以外で知っているメンバーだな、山でバーベキューをした時に仲良くなった。


「俺たちの為にご足労頂き有難うございます」


社交辞令のような挨拶をコモエとして、俺は成人している人たちに酒を注いだ、それ以外の子にはジュースだな。


「自分たちはパーティーが出来て嬉しいよ、それに先生の親子となれば絶対に参加します、そうだよねネネ」


ハルサーマルさんがそう言って、手を握っているネニネイさんを見つめている、ネニネイさんの方も同じ感じだ、このふたりは恋人同士なんだろうな。


「当然だな、参加しないなんてありえない、それに私たちもやってみたいよ」


ふたりが親父の事を先生と呼んでいる、ここにいるメンバーはみんなそうみたいだ、そしてみんな同じ気持ちの様で頷いてくれた。


「いいよねぇ・・・僕の方は失敗しちゃったから、次の作戦を立てないとダメだもん、先は長そうだよ」


メナーサちゃんがそう言ってフォークで皿の肉をつついている、何の話か分からないが大変なんだな。話が止まってしまったので、俺が他に何か話題を考えているとして、乙葉たちが小さいマーメイドに捕まっているのが見えた、あそこが一番大変だ、がんばれよ乙葉。


「そう言えば、ネニネイさんたちマーメイドは水をしっぽに纏わせていますよね、俺たちにも出来ますかね?」


小さいマーメイドを見て話題を思いつき聞いてみた、だがそれを聞いてネニネイさんが腕を組んで考え込んでいる、どうやら難しいようだな。そしてその姿を見てハルサーマルさんが先に言ってくれた。


「君たちからは魔力の反応が感じられないから、今は無理だと思うよ」

「そうだな、恐らく循環が出来ていないんだろう、先生に言えば改善されるかもしれないが・・・大変だと思う」


ふたりがそう言って何故か遠い目をしている、大変なのは仕方ない、だがせっかく異世界に来たんだ、魔法を使ってみたいよな。


「後で親父に聞いてみます、あとお願いがあるのですけど、チェミーシャさんいいですか?」


俺は山で見た時から気になっている事がある、どうしてもやってみたいという衝動を抑えられない、だがラノベでもよくある問題を抱えている、恐らくダメだと言われるので念の為に聞いてみた。


「なんにゃ?」

「出来ればでいいんだほんと、この行動が告白になるとか、夫にしかさせないとかだったら断ってくれて全然良い」


俺は念には念を押した、よくあるだろ、獣人は自分の尻尾やミミを触らせるのは好意を持った者だけとか、それは告白に当たるとかさ、もしそうなら俺は諦める、とても触りたいが仕方ない、だがそうでないのなら触っておきたい。


「良く分からにゃいにゃ?何をする気にゃ?」

「いやその・・・獣人の象徴とも言える耳を触らせてもらえないかなぁってお願いだ、そのモフモフを触ってみたいんだよ」


俺はなるべく丁寧にお願いした、そしたらチェミーシャが笑っていたよ、それにハルサーマルさんたちもだ、どうやら普通に触っても良いらしい、いつも亜生奈がしているそうなんだ。それは羨ましいって亜生奈を見たよ、そして俺は堪能したぞ、やはり良い物だった。


「ありがとう、とても良いモフモフだった」

「これくらいにゃらいいにゃ、ケンゴみたいにされたら・・・さすがに困るにゃけどにゃあ」


そう聞いて、俺は親父のネコ好きを思い出した、近所の猫をワシャワシャってしている事がある、しかもそれをすると普通猫の方が嫌がるのに、猫の方も気持ちよさそうにする、まるでマタタビを嗅がせたみたいにな、あれをここでもやったんだろう。


「今度親父に言っておくよ、ほどほどにしろよってさ」

「よろしくにゃ、あれをされるとその日ずっとおかしいにゃ」


体をコキコキ慣らし、チェミーシャが言ってきたので俺は頷いた。そして他のテーブルにも挨拶に行き、一周したところで自分たちのテーブルに戻った、もちろんその前に親父には魔法の練習をさせてもらうように言ったよ、明日は釣り以外で楽しみが増えたよ。
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