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最終章 平和に向かって

72.1話 (おとは回最終話)再会

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「はぁ~緊張する」


どうも乙葉です、わたしは駅前の待ち合わせ場所でソワソワしながらある人を待っています、わたしお気に入りの服を来て臨戦態勢ではあるんですよ。


「1時間前からいるのは初めてだけど、こんな気持ちになるんだね、知らなかったわ」


駅の方を見たり、周りのお店を眺めたりと、とても落ち着きません、周りの人は目的の人と再会できて笑顔なのに、わたしはまだまだです、いつも待ち合わせ場所に10分前に来ていました、そうすると大抵相手がいたんです。

わたしが付き合うと大抵2か月で別れちゃうのは、今は考えたくないわ、わたしってそれ位の魅力しかないとも思ってるの。


「桃花さんにもそうなるんじゃないかって心配・・・だから友達から始めて、2か月経っちゃった・・・こんなに緊張するのはこの後断れるかもって不安なのよね。それに今日の最後は父さんと話す、この関係が最後になるかもって心配だわ」


そう言っていると駅の方から桃花さんが見えました、わたしは手を振って笑顔で呼びましたけど、顔色は悪いんでしょうね、桃花さんがわたしの顔を覗いて来たわ。


「おう、待たせたみてぇだな乙葉」

「い、いいえ!わたしも今来たところですから、じゃあ行きましょう桃花さん」


どうやら待っていたのが功を奏したようで何も言われなかったわ、わたしは男性が言ってきた言葉をそのまま使わせてもらいました。小説でもそうだし、定番よね。

でもどうしてかな、桃花さんの顔を見たら、わたし落ち着いたわ。


「乙葉、いくらなんでもこれはちょっと」


わたしたちは最初に洋服屋にきました、更衣室で着替えてもらって桃花さんがすごく不満そうです。だって桃花さんが持ってる服に可愛い系がないんです、カッコいいんだけど、こっちも似合うんですよ、女性っぽい服も似合うのに勿体ない。


「ダメですよ桃花さん、桃花さんは綺麗なんだから、もっとそれらしい服を着ないと・・・それに桃花さん、この後お父さんに言うんでしょ」

「ふぇっ!?」


更衣室の前で桃花さんにだけ聞こえるように耳元で言いました、桃花さんが後ろに下がり鏡にぶつかってたわ、その顔は真っ赤でとても可愛かったのよ。


「カッコイイ服も似合うんだけど、やっぱりこういった顔に似合う服も良いのよねぇ」

「たた、たくっ!こここ、こんなのあたしらしくないよ」


恥ずかしそうにして、わたしを更衣室から追い出しカーテンを閉めちゃったわ、そして服を着替えて出てきたの。


「今の服を買いましょう、定員さんお願いします」

「ちょっちょっと待てよ乙葉!」


店員を呼ぶと桃花さんが止めてきたわ、全く往生際が悪いですね。

わたしは店員に服とカードを渡し、桃花さんに近づき下から見上げたんです、桃花さんはちょっと困った顔をしています。


「桃花さんしっかりしてください、これからあのっ!父さんに告白するんですよ、さぁ次行きますよ」


わたしは桃花さんの手を引っ張り、次のお店に向かいました、もちろん買った洋服とカードは回収しましたよ、そしてある程度買ったので、わたしたちの最後の目的地に向かったんです。


「こんなに買う必要ないだろ乙葉」


荷物を両手に沢山持って、桃花さんが愚痴を言っています、わたしも両手いっぱいに持っていますけど、わたしは満足よ。


「今日だけと思ってるからですよ桃花さん、お父さんが了承したら着てあげなくちゃなんですよ」

「うっ!?・・・だ、だけど、そうなったら乙葉が」


桃花さんがその先を言いそうになったので、わたしは両手で桃花さんの口をふさぎました、服の入った袋が桃花さんの顔に直撃したけど、それは些細なことよね。


「わたしの事は良いんですよ桃花さん、もしそうなってもわたしの思いはずっと変わりません」


この2か月、友達として付き合ってきたけど、もうわたしの思いは固まってるわ、問題はお父さんがどう答えるか、それが問題なのよ。


「って事です、なので気にしないでください」

「そんなもんか?あたしだったら・・・複雑すぎて頭が爆発するな」


そう言われ、わたしは少し考えました、3歳年上の母親とか小説や漫画みたいだなって、でもそう言ったお話はよくあります。

そこは気になるけど先は分からない、でもわたしは桃花さんには幸せになってほしいの、相手が私じゃなくてもね。


「桃花さん、難しく考えすぎです、わたしは自分も幸せで桃花さんも幸せならそれでいいんです、お母さんって呼ぶようになるかもしれませんけどね」

「へっ?・・・そ、そうか、そうなるかもなんだな」


わたしがちょっと茶目っ気のつもりで言ったんですけど、それを真剣に考えてしまっています。

だから、深く考えすぎです、みんなで幸せになれればいいのよ、でもそうなったらいいわねぇ。


「そうよ!だからあたしは嫌だったのよ乙葉」

「だれっ!?」


わたしたちがそんな会話をしていると、横の道から誰かがそんな言葉を発したわ、暗くて見えなかったけど、そいつは出てきたの、そしてその容姿を見て、わたしは怒りが込み上げてきたわ。


「あんた!なんでここにいるのよ、弁護士に」

「そうよ!弁護士に言われたわ、これであたしはもう終わり、それなのにあんたたちは幸せそうね」


あいつが何か言ってきたわ、わたしは服の入った袋を道の端に置き、桃花さんの前に立ったの。


「乙葉そいつは誰だ?何処かで見た気がするんだが」


桃花さんは背が高いので、わたしの上からあいつを見ています、今は髪もボサボサで、化粧もほとんどしてないから分かりにくいかもしれないけど、あいつも結構な有名人です、知っていてもおかしくないです。


「あらあら、あの男に会うっていうのにあたしの事を知らないなんて、そんな事じゃあなた、不幸になるわよ」


それを聞いて、わたしはこいつがどうして失踪したのかが分かったわ、こいつは自信がなかったのよ。


「何を言ってるか知らねぇけど、あんたには関係ないだろ、何なんだ?」

「桃花さん、こいつはお父さんの元妻です」


桃花さんがそれを聞き思い出したようです、今はかなりあいつを睨んでるわ。

あの時は、テレビでもかなり言われていましたからね、そしてこいつがいなくなったから、父さんは自粛して桃花さんの所に行けなかった、こいつさえいなければ桃花さんの怪我だってと思います。

まぁそれが無くてもわたしは嫌いだけど、その話を聞いて更に嫌いになったわ。


「その内分かるから睨む相手を間違えないことね、だってあいつは、女を取っ替えひっかえしてるんだからね」

「あんたが自信がなかっただけでしょ!お父さんが悪いと言いたいだけなのよ、どうしてお父さんを信じてあげられないの」


お父さんの周りには確かに女性は多いわ、でもそれは男性も同じ位いるの、誰にでも優しくて親しみのある人だから、みんなが頼りにするし集まるだけよ、それなのにこいつは浮気と思って逃げた、一度は許してくれたのに、それでもダメだったのよ、そんなのお父さんのせいじゃないわ。


「ふん!あんたもそう言うのね乙葉。でもね、あいつに近づく女の顔を見れば分かるのよ、それが分かれば一緒になんていられるわけないじゃない!」


それを聞いて、わたしは根本的なところが違うと思いました、お父さんのあの顔を見ていれば分かるのよ、あれがあったから、わたしも変わる事だ出来たんだもの。


「確かにあんたの言ってる様に、健吾さんの近くには女性は多いよ、相手の顔を見れば恋をしてるんだろうなって思う」


桃花さんがそう言ってわたしの前に出てきました、そして守ってくれたの、わたしはそれだけで胸がキュってなったわ、カッコよすぎですよ桃花さん。


「そうでしょ、あなた分かってるじゃない」

「勘違いすんな!あんたはその時の健吾さんの顔を見たことがないのか?あたしはあるぞ、あれを見ればきっとそんな考えにならない、なるはずないんだ」


そう言って桃花さんが暗くなったわ、桃花さんもお父さんの暗く、寂しそうな顔を見たことがあるんですね、だからお父さんと電話で話すことはするけど、告白は後にしていたんだわ、断られるって知ってるから。


「こ、小娘が!知った風な口を利くんじゃないよ」


あいつが鞄から黒い物を出しこちらに向けてきました、わたしは咄嗟に桃花さんを押して道の端に寄ったの、その直後にパンって乾いた音がしてきました。


「ま、まさか!?拳銃」

「そうよ乙葉、ちょっと知り合いに借りたの、あいつを撃ち殺したいけど、ほんとにいないみたいだし、あなた達を先にすればあいつも苦しむでしょ、そしてあいつの悔しそうな顔を見たら、あたしもあいつの前で死んでやるの、きっと何処にもぶつけられなくなった怒りで、おかしくなるんじゃないかしら、あはははは!」

「乙葉!」


あいつがまたわたしたちを狙ってきたわ、桃花さんがわたしを抱えて逃げようとしてくれたの、でもあの音がまたして、桃花さんがバランスを崩したわ、わたしも一緒に倒れて頭を打ってしまい、意識が朦朧としました。あいつの顔がグニャグニャしているように見えて分からないけど、あいつが近づいて銃を向けているのは分かったわ。


「もうお終いね乙葉・・・じゃあ、後で会いましょ」


あいつの声は少し反響するように聞こえ、その直後あの音がしました、わたしの意識はそこで無くなったの。でも撃たれる瞬間、あの女じゃない誰かがいたような気がしました。


「乙葉、乙葉返事をしろ!」


しばらくして、誰かがわたしを呼ぶ声がしました、どこかで聞いた声です、目を開けるとそこには兄さんがいたんです。


「兄さん?」

「乙葉、良かった目を覚ましたな、心配したぞ」


そう言われ、わたしは周りを見回しました、どうやらわたしはベッドに寝ているようです、でもここは家じゃないみたい。


「ここって・・・もしかして病院?」

「そうだぞ乙葉、お前と桃花ちゃんはあいつに襲われたんだ、俺とコモエが間に合ったから良かったが、危ない所だった」


あの女とわたしたちの間にいたのは、兄さんだったのね。


「ありがとう兄さん・・・それで桃花さんは無事ですか?」


わたしが体を起こすと、兄さんが横のカーテンを開けてくれて、そこに桃花さんが寝てました。


「足に当たった弾は貫通していた、手術も成功したから、しばらくしたら普通に歩けるようになる」


それを聞いてわたしは安心して全身の力が抜けました。あの時桃花さんは、かなり危険だったと思います、あいつが銃の扱いに慣れてなくて良かったです。


「しばらくしたらふたりとも退院できる、それまで仲良くな」


兄さんがそう言って部屋を出て行きました、わたしは小声で兄さんにお礼を言いました、そして桃花さんを見たの。


「ごめんなさい桃花さん、わたしが答えを急がせたから、あそこに行かなければこんなことにはならなかったのに、ごめんなさい」

「乙葉、お前だって考えすぎじゃねぇか」


わたしが後悔していると、桃花さんの声でそんな言葉が聞こえました、どうやら桃花さんは起きていたようです。


「起きてたんですね桃花さん」

「さっきだけどな・・・それにしても、あの女許せねぇな」


わたしも同意見ね、でもそれを言っている桃花さんがお腹辺りを触って不思議そう、どうしたのかしら?


「おかしいな?あたし、あの女の弾を腹に受けたと思ったんだが」

「そうなんですか?兄さんは足だって言ってましたよ」


足を撃たれたから転び、わたしたちは倒れたんだと思っていましたけど、もしかして違うのかな?


「腹に痛みがあったんだ、間違いないと思う・・・でも傷がねぇな」


それを聞いて、わたしはある事が頭を過りました、でもそれは不可能なはずです、だって戻ってこれないって言ってたんだもの。


「まぁいいか、こうして生きてるんだからよ」

「そうですね・・・桃花さん、わたしと結婚を前提に付き合ってくれませんか」


わたしは、もう桃花さんに告白してほしく無くなりました、きっと結果は同じだもの、それなら愛してる人が傷つかない方を選びたいわ。


「やっぱ分かっちまうか」

「一緒に遊んで桃花さんの事は分かってますからね、だからわたしと一緒にお父さんの前に行きましょう、ふたりでなら勇気が出ます」


わたしは座ったままで横を見て桃花さんにそう言いました、桃花さんも寝たままで同じように顔を向け、目からは涙が流れています、やっぱりつらいんですね。


「ありがとな乙葉・・・これからもよろしくな」

「はい!」


桃花さんのOKの返事を聞いて、私たちは笑い合いました、その後兄さんたちに聞いたんですが、全面的に応援してくれるそうです。
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