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3章 異世界巡り

50話 船の追手

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「っと言う話だ、俺は許せることではないと思う、みんなはどうだ?」


船に戻るとみんなが昼飯を食べているところだった、俺はあまり食欲がなかったので軽めに済ませたが、みんなもかなり怒っているよ。


「自分が聞いていたカジノの船団は、どんなことでも賭け事にすると聞いています、まさか勝てるからそんなことをしてるなんて、許せない!」


勝率をあげることは悪い事ではない、大本が儲かるのが賭け事だしな、だが今回のは相手が拒否している、それを無理やりとなると話は違うんだ。


「私も同意見だ、卑怯者にはそれなりの罰が必要だな」


ネニネイもハルサーマルと同じ意見のようだ、そしてふたりが同時に、ホタテの串焼きを勢いよく食べ怒っているよ。


「わ、私も悪い事だと思います、でも怖いです」

「イナーク・・・まぁそうだな、お仕置きは相手側がどう出るかによる、とりあえずはリーナの親たちを助けることが最優先だと思ってくれ」


俺の意見を聞いてみんなが頷いてくれた、カジノの船団を敵に回すかは交渉次第だろう、だが利益にならないと思えば向こうは直ぐに力ずくで来る、その時は容赦はしない。俺の考えを皆に伝え俺も串焼きの魚を食べた。


「あいなもそれでいいの、やっつけてやるの」

「あ、アイナ!?」


亜生奈も賛成の様でメナーサちゃんが驚いている、亜生奈ならそれが出来る、だが問題は俺と違いやり過ぎると言う事だ、まぁ俺がさせないけどな。


「その時は、亜生奈がイナークとメナーサちゃんを守るんだぞ、しっかり頼むな」

「うんなの、任せてなのおとしゃん」


亜生奈を撫でて作戦を決めた、俺とハルサーマルとネニネイで攻撃する、玄武も置いていくが亜生奈たちは船の守りだ。


「それで先生・・・気づいてますよね」


話が終わったので俺がコーヒーを飲んでいると、ハルサーマルが少し緊張した声で聞いてきた、ネニネイはその声を聞いてやっと気づいたようだな。


「さすがだなハルサーマル、あの船を追ってきた奴らだろう・・・今俺たちの顔を見られるのはまずい、ここは」


俺は召喚魔法を唱えイフリートとウンディーネを出した、そしてまずは忠告に飛んでもらった。


「なるほど、私たちが動けないから時間稼ぎですね」

「そうだネニネイ、直ぐに攻撃してきたらイフリートたちには反撃を命じる、そうすれば相手は恐らく逃げるだろう、そうなれば俺たちがカジノの船団に着く前に情報がいってしまう、返り討ちにあったというだけの情報なら俺の交渉の材料に使えるって訳だ」


イフリートたちはこの世界の者たちにしてみれば、神の使いとかになる、それが分かれば交渉が有利になるだろう。俺がそんな話をしているとイフリートが攻撃を始めたようで遠くで光が見えた、ウンディーネの念話でいきなり攻撃してきたと言ってきたよ。


「こんなに離れてるのに光が見えますねネニネイさん」

「イナーク、先生ならもっと派手だぞ、お前を助けた時なんて【ヒソヒソ】」

「ええ!?」


ネニネイがイナークに耳打ちしていた、そしてイナークが驚いていたが、俺はいつも手加減をしているぞ。


「それでハルサーマル、自動航行装置ってのは直せるか?」

「それは見て見ない事には・・・でも、恐らく無理だと思います」


ハルサーマルが言うには、動いていた事だけでも奇跡に近いそうだ、恐らくリーナの父親が必死で直したんだろう、普通の者では作りの理解も出来ないらしい。


「リーナの父親は、凄腕の機械工と言う事か?」

「そうですね、エープル大船団にもいましたが、それよりも凄腕なのは確かです」


ハルサーマルの答えを聞いて、そこら辺も相手側は欲しかったのかもしれないと予測をした、そしてそのタイミングでイフリートたちの戦闘が終わった事を念話で知ったんだ、遠くで船が逃げていったよ。


「マスター戻りましたわ」

「弱すぎで話にならなかったぞ主」

「ご苦労様ウンディーネ、それにイフリート、お前が楽しめる奴らはそういないだろ」


そう言うとイフリートががっかりした顔をして、光になって俺の体に入って行った、ウンディーネもやれやれって仕草をしてから入ったが、歯ごたえがないのは当たり前だ、何せ俺たちは他の世界で、最強と言われた魔王を倒しているんだからな、それもイフリートは魔王と単体で戦えるほどの実力だ、そんな奴を楽しませてくれる者がここにいるわけがない。


「でも先生、あの船をそのまま行かせて良いのですか?」

「その心配はないぞネニネイ、しっかりと監視は付けた」


俺の作ったハチ型ロボット、テトラバチをあの船に潜伏させている、これで相手情報が掴めて、更にどういった作戦をしてくるかわかるだろう。


「そ、そんな物も作っていたのですか先生!」

「ネニネイ、戦いとは情報が鍵だ、それを元に何手先まで読み作戦を立てるかで勝敗が決まるんだぞ」


この世界の戦いは直線的なモノばかりだ、だからエープル大船団はからめ手を使ってきたレリーベたち海賊とその後ろの船団に負けた、普通に戦えば勝てたかもしれないのにな、それほどの差が出来るんだ。


「さ、さすが先生ですね」

「これくらいはハルサーマルも出来るぞ、後で聞いてみると良い」


ネニネイにそう言ったら、ハルサーマルをキラキラした目で見ていた、惚れ直したのかな。だがハルサーマルはそこら辺は苦手だ、身体を動かす方が得意なんだ。


「今日の夜は大変かもなハルサーマル・・・ってどうした?」


そう思いながら俺がコーヒーを新しく注いでいると、メナーサちゃんとイナークが俺を見ていた、亜生奈は頷いているだけだな。


「ケンゴおじさんはすごいんですね、ぼ、僕も先生って呼んでも良いですか」

「わ、わたしもお願いしますケンゴさん・・・わたし、力は強くないけど、そっちの方ならきっと力になれます!」


それを聞いて俺はちょっと嬉しくなった。最近二人は、ハルサーマルや亜生奈との力の差を見せられ、しょんぼりしていたんだ、これで少しは自信が付くだろう。


「そうか、それなら早速これをやってみるか」


俺は収納からチェス盤を出し駒を並べた、作戦を作る前にどういった条件で兵士をどう動かせば良いのかを学んでもらう為だ、その後はもっと専門的な事を取り入れるつもりだ。


「これって」

「シンラ盤に似てますね」


ふたりが不思議そうにコマを見ていた、どうやら似たようなゲーム盤があるようだ、俺はそっちは知らないのでこのままチェスを教えて楽しんだ。


「さて・・・どうだハルサーマル」


次の日、朝食を摂った後すぐにリーナたちの船に乗船した、テトラアンドロイドたちが食事や掃除をしてくれていたので昨日とは見違えた光景だ、同じなのは子供たちのボロボロの服くらいだ、薄いワンピースのような服だから余計ボロボロさが際立つ、奴隷服と言ってもいいかもしれない。


「やっぱりダメです、焼けて使えない部品が多すぎで直せそうもありません」

「それよりネニネイは変わったな、母性と言うやつか?」


ブリッジから下を見ているんだがネニネイが子供たちの服を見てかなり怒り出したんだ、亜生奈にお願いして甲板で服を釣ってもらっている。どうも服が悲惨過ぎて見てられなかったらしい、もし子供たちが倒れているのを見ていたら、追手たちを倒しに海に飛び込んで行ったかもしれない。そんなネニネイをハルサーマルはどこか誇らしげだ、自動航行装置の修理を頑張っているが、どうもだめなようだ。


「まぁ航行にはアンドロイドたちを使うし、出来れば直しておきたかったというだけだ、気にするなハルサーマル」

「それは分かっていますが・・・何かしてあげたいんです、ネネほどじゃないけど、自分もあの姿にはちょっと」


そう言われ、俺一人で来ていて良かったと思ったよ、怒った2人を説得する術を俺はもち合わせていない、俺だってあの時怒りがこみ上げていた、冷静な判断が出来たか怪しい。


「そうか・・・それならハルサーマルは他の事で力になってやれ、このボールで遊んで来たらどうだ?」


ウォーターバレットで使うサッカーボールをハルサーマルに放り投げた、ハルサーマルはニコリとして走って行ったよ。


「俺の弟子たちは優しい奴らばかりだな」


ブリッジを走り去るハルサーマルを見て嬉しくなった、良い子に育ってくれているのが分かるからだ、力を付けると性格が変わってしまう者たちも出てくる、そうならないようになるべく導いてはいるが、人の本質は変えることが出来ないからな。


「テトラアンドロイド41号、このまま島まで操作を頼む」


船を運転しているテラアンドロイドの肩をたたいて指示を出した、テラアンドロイドは返事をしない、ただ頭の部分にあるアンテナが動くだけだ、そのアンテナで残りの2隻で操縦している他のロボットに通信して、同じ感じで操縦してくれる。

返事がないのは少し寂しいな、島に帰ったらもう少し人らしくするべきかもしれない。


「用改良だな・・・さてそう言う事だからリーナ、操縦はロボットに任せることになった」

「そうですか・・・有難うございます」


リーナが返事をしたんだが、どうも様子がおかしい、モジモジというか、指をクネクネさせて下を向いているんだ。


「何か心配事かなリーナ?相談なら今のうちに言ってくれ、明日には別れる事になる」

「は、はい・・・あの、抱きしめて貰って良いでしょうか!」


顔をすごく真っ赤にして言ってきたよ、父親を思い出してしまったのかもしれない。俺は直ぐにリーナをハグしてやった、リーナも最初は緊張していたが、しばらくして俺の腰に手をまわして安心している感じになったよ。俺はリーナの頭を撫でてやりながら言ったんだ。


「安心しろリーナ、君たちの親は俺が助ける、島で待っててくれ」

「はい」


ひと言だけ返事をして、リーナが俺の胸に顔をグリグリと押し付けてきた。

きっと大丈夫だ、人が貴重なこの世界で直ぐに命を取ることはしない、怪我をしていても俺が治せる、必ず助け出すぞ。


「おとしゃん、お仕事終わったの」


リーナが落ち着いたので俺たちは甲板に戻ってきた、そこでは綺麗な服に着替えた子供たちが楽しく遊んでいたんだ。亜生奈が仕事が済んだと報告してきた、メナーサちゃんも一緒だから褒めてほしいんだな。俺は亜生奈を撫でながら言ったんだ。


「よく頑張ったな亜生奈、それにメナーサも良くやってくれた、ボールをいくつか出すから遊んでくるといい、その後昼食を摂ろう」

「うんなの、行くのメナーサ」

「分かったよアイナ」


ふたりが俺からボールを受け取り、ハルサーマルとネニネイの所に走って行った、イナークは女の子たちの髪をクシでとかしているな。


「みんなすごく綺麗になってる」

「リーナも着替えてくるといい、イナーク頼むな」


リーナの手を引っ張ってイナークに託した、女の子の着替えはさすがに手伝えないからな、だがリーナが俺の手を離そうとしない、きっと父親の事があったから、離すとその時の事を思い出すのだろう。


「リーナ安心しなさい、着替えたらまた会える」

「そう、ですよね」


リーナがやっと手を離してくれたがやはり心配そうだ、明日別れるんだが平気だろうか。俺は心配しながら食事の支度をテトラアンドロイドたちと始めしばらくして、着替えたリーナが俺の横に来て服をずっと掴んできた。

可愛くなったとか言ったんだが、「うん」っと返事をするだけで、それ以上何も言わなかった、たまに抱き着いてきたが、すぐに離れて服をつまんでくる、きっと寂しいんだろう。
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