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2章 選択

29話 前線の緊張

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「これは・・・予想以上だな」


俺たちは今、船団から主砲を向けられて近づけないでいる、ハルサーマルがしっかりと輸送組合だという旗を掲げ通信をした、それにも関わらずだ。


「どうするんですか先生」

「ザーボもカンチュと同じ感じだったが、更に緊張が増していたからな、このメートア船団がこうなってもおかしくはないだろう」


カンチュからザーボまでの移動に5日掛け、そこから更に5日だ、緊張が増すのは当たり前だな。


「そうかもですが・・・どうするのですか先生」

「ハルサーマル、相手はなんと言ってきている」


通信をしているのはハルサーマルだ、向こうは変な真似をするなと言ってきていた、そして見える場所に俺たちを出させたんだ、もし撃ってきたら俺の魔法と玄武で守る予定だが、さて何て言ってくるんだろうな。


「もう直ぐ船が一隻来ます、その者が安全を確認してからという話です」


ハルサーマルがそう言って通信機を置いていた、無いとは思うが海賊側の奴が潜んでいて、俺たちを悪者にしないだろうな。


「そのまま手を挙げていろ、おかしなマネをするなよ」


小さい船が近づいてきて拡声器で言ってきた、俺たちは手を挙げているが、もう準備は出来ているぞ。


「子供が1人に男が2人、それと女が1人か・・・船の中を調べさせてもらうぞ」


先頭を歩き俺の船に乗ってきた男がそう告げて、俺を調べ始めた、後ろには2人兵士がいて俺たちの動向を見張っているよ。


「亜生奈、玄武をしっかりと持っているんだぞ」

「うんなの、でもネネちゃんは平気なの?」


亜生奈がネニネイを心配している、今ネニネイはヒレを足に変えている、長時間出来ない事なんだがその原因は魔力だ、魔力タンクの指輪を渡しているので1週間は維持できるぞ、だから今乗ってきた奴らはネニネイをマーメイドとは思っていない。


「ふむ、危険な物はないようだ・・・それにしても良い船だな、どちらの持ち物かな?」


男がいやらしい目で俺たちを見てきた、つまり押収しようとしているんだろう、これはちょっと注意してやるか。


「俺の所有物だ、それがどうかしたか?」

「いやなに、ワシが一言いえばお前たちの処遇は決まる、どういう意味か分かるかな?」


遠回し寄こせと言ってきた、そして兵士2人も同じ感じだ、つまりグルだな。


「それを断ったらどうする」

「なに簡単だよ、ワシが連絡して船団の牢屋に入ってもらう、そうだなお前たち」


男が俺たちの後ろにいる兵士たちの方を向いてニヤ付いている、俺の腕の中の亜生奈が怒っているよ。


「この前断ったバカがいましたよね、たしか女でしたか?」

「そうそう、今は牢屋で反省しているだろうよ、そいつの飼ってたイルカを手放せばよかったのに、今はババリオ様の水槽でしたよね」

「そうだったな、ワシがイルカが欲しいと言ったら、拒否してきおったから拘束して痛めつけた、そろそろ出してやるかな」


笑っているこいつらに嫌な予感がした、俺はエリアサーチをしてみたんだ、そして一つの名前が出た。

俺はそれを見て、かなり怒りがこみ上げたよ。


「おい!その女性はいつからここに捕らわれている」

「さあな?もうかなり前の事だ忘れたよ、それよりも早く答えを出さないか」


男にそう言った、どうやら覚えていないほど前のようだ、体調などは近くに行って鑑定を掛けないと分からないが、とても心配だ。


「俺の答えはノーだ!そしてお前ら、よくも俺の友人にひどい事をしてくれたな、タダで済むと思うなよ」


そう言って俺はノームとウンディーネ、それと戦闘用の召喚獣イフリートを出した、こいつらは少し痛い思いをしてもらう。


「な、何をする気だお前!?ワシたちに何かあったら」

「うるさいぞお前っ!ノーム拘束しろ」

「あいよー主」


ノームが木のツタを出して3人の男を拘束した、そしてウンディーネと玄武にはここの防衛を任せ翼をだした。


「おとしゃん」

「亜生奈、俺は友人を助けて来る、少しの間待っててくれ」

「うんなの、悪い奴らはやっつけてなの」


亜生奈に親指を立てて肯定してくれた、それを見てから船団に飛んだんだ、俺に対して対空砲火が飛んできたが、イフリートがそれを防いでくれたよ。


「俺も久しぶりに本気モードになるか、召喚魔法『白虎』」


俺は前の異世界で雷の勇者と言われていた、それを今ここで見せてやる。

白虎が召喚され海の上と分かって嫌がっている、だが俺の機嫌はそんな事を言ってる状態ではない。


「ガウ!ガウガウ~」

「白虎!水の近くで召喚しないでくれと言ったお前には悪いと思う、だが緊急事態だ、聞き分けろ!」


俺の怒りを感じたのか、白虎が「ガウ」って返事をして頷いた、そして雷を纏い始めたよ。


「ガウガウ」

「準備できたな、行くぞ白虎!」


イフリートに防衛してもらっている間に準備が終わった、白虎が雷になり空高く昇り俺に落ちてきた、そして俺は青白い光を纏った。これが俺の本気モードだ、触れるモノは容赦なく黒焦げになる。


「さてこの奥か」


空から見たがこの船団は全部戦艦だ、そして中心にいる一番大きな戦艦の中に目的の者がいる。俺は砲撃をしてきている中心の戦艦に雷を落とし、降下した。


「う、動くんじゃない!手をあげろ」


俺が甲板に降りると兵士たちが銃を構えてきた、まぁ当たり前かな、だがこんな奴らに構っている暇はないし、余裕もない。


「俺はお前たちの敵じゃなかった、だが何も悪い事をしてない友人がいると知ってな、助けに来た。もし邪魔をするなら容赦しないぞ」

「か、かまわん撃て!」


俺の言い分を理解しないで全兵士が撃ってきた、だが俺の纏っている光がタマを全て蒸発させた。


「たた隊長!」

「ひ、ひるむな誰かランチャーを持ってこい、手榴弾を投げろ!」


俺が目的の場所につながっている通路の階段に向かう途中、どんどん攻撃が激化している、だが俺はお構いなしだ。その間、遠くの戦艦にはイフリートが攻撃をしているのが見えた、俺の怒りが伝わったんだろう、イフリートも怒ってる風貌で炎が燃え上がっている。俺は狭い階段を降りて目的の場所のたどり着き、更に怒りが込み上げてきたよ。


「イナーク!意識はあるか・・・待ってろ!今助けてやる」


傷だらけのイナークが牢屋の中にいたんだんだ、服はボロボロだしアザもひどい、鑑定を掛け状態を見た、手足の爪は剥がされ健も切られている、情報を絞り出す為だろうが、あの男が欲望で逮捕させたのに何か知ってるわけがない。


「クソがっ!待ってろイナーク!今回復をしてやる」


俺は怒りを鉄格子にぶつけ蒸発させた、そして白虎と分離してイナークを回復させた。


「うぅ、も・・・もう殺して、お願い」

「イナークしっかりしろ!傷は治したぞ、分かるか?俺だケンゴだ」


目は開いているんだが焦点が合っていない、体の傷は回復魔法で癒せるが心は治せない、かなり危険な状態だ。俺はイナークを抱き上げ船に向かって通路を歩いた、だがそこに邪魔者が現れたよ。


「止まれ!さもないとランチャーを撃つぞ」


狭い通路の先でバリケードを作り、ロケットランチャーを構えている兵士たちが待っていた、だが俺は返答しないでそのまま歩いた、こいつらと話すことはないんだよ。


「構わん撃て!」


隊長らしき兵士が指示して俺にランチャーが飛んできた、だが白虎の雷がランチャーに飛んで行きかなり手前で爆発したよ、俺は自分でバリアを張ったので煙も衝撃も受けなかった。


「だ、ダメです攻撃が効きません」


ロケットランチャーが俺に効かなくて向こうは焦っている、そして俺と白虎がバリケードまで来たので、相手はかなり怯えているよ。


「お前たちはやってはいけないことをした、しっかりと調べもしないでこんなひどい事をしやがって、お前たちなんかどうなってもしらん、どけ!」


雷魔法のライトニングウエーブでバリケードを兵士もろとも吹き飛ばし俺は進んだ、そして外に出て空で主砲を受けているイフリートに念話をしたんだ。


『イフリートどうだ、いたか?』

『おうマスターいたぞ、先頭のブリッジだぞ、攻撃の指示を出しているのが見えたぞ』


そう返答があったので俺は翼を出し、イフリートと一緒に先頭の船のブリッジの前に飛んだ、そしてガラスをすべてイフリートに壊して貰い、俺は忠告したんだ。


「ここの船団の責任者はお前だな、お前たちは許されないことをした、何をしたか分かるか?」


念話でウンディーネに連絡をして、あの3人を吊るして持ってくるように言った、その間にブリッジにいた奴が帽子をかぶり直し立ちあがったよ、その髭の男が拡声器で言ってきたんだ。


「何のことか分からない、こちらは最善の選択をしているだけだ」


そう返して来た、そして丁度ウンディーネが来たよ、3人が口を塞がれているのに何か叫んでいるな。


「こいつらのしていたことも最善だと言い切れるのか?もしそうなら俺は許さないぞ」


俺の言葉が終わりを迎えると、ウンディーネが拘束した3人をブリッジに放り投げた、相手は分かってないようだ。


「明日まで待ってやる、そいつらをしっかりと調べるんだ、もしそれでも自分たちが悪くないというのなら、俺はこの船団を攻撃する」


エープル大船団の戦力が落ちるがこれは許せない、他の戦闘船団も緊張はあった、だがこんな腐った奴らはいなかった、話せばわかってくれる奴らだったんだ。だがここの奴らはダメだ、なにも調べないし疑問にも思わない、上の奴らがイエスと言ったらそれに従う無能どもだ。


「ま、待て!?そんな事をしたらエープル大船団と敵対することになるぞ」

「だからどうした?その時は一緒に倒すまでだ。だがそうはならない、エープル大船団の船団長とは仲が良いんだ、このことを知らせれば、そちらが除隊することになるだろう、だからよく調べろ!さもないと許さんからな!」


こうして俺は、自分の船に帰りイナークを船の3つある寝室の1つに寝かせた、亜生奈たちがすごく心配して見ているよ。


「イナーク平気なの、おとしゃん」

「分からない、こればかりは本人が立ち直らないとな」


イナークも心配だがイルカたちも心配だ、俺が調べろと言ったのはイルカたちの事も含まれている、調べればあの男がイルカたちを欲かっただけだと分かるだろう。もし、謝罪もなくこちらに引き渡さないなら、もう容赦なく攻撃する、死人は出さないつもりだがボロボロになってもらうぞ。
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