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4章 繁盛

79話 勇者の合流

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「母さん、お願いがあるの」


あたしはついに来たかと思って「何かしら?」って返事をして、コップをテーブルに置いたわ、向かいに座ってる光なんて、すごい険しい顔をしてるわ、気持ちは分かるのよ、だって童話の様になるんじゃないかって心配よね。


「ワタシ、旅に出たい・・・どうしても行かないといけないの」

「そ、そんなのダメだルナ!」


光がテーブルを叩いて反対したわ、あたしも反対したいけど、ルナは2ヶ月でとても成長したわ、あたしたちの言う事もしっかりと聞いてくれた、そんな子のお願いだもの、まずは良く聞かないとね。


「訳を話してくれないルナ、あなたは大人の容姿だけど、年齢的には1歳もないの、光もあたしも心配よ」

「実は・・・ワタシはこの世界に生まれた新しい神なんです、ワタシを生み出してくれた人に会いに行きたくて、もう少しでワタシは神の世界に旅立つから・・・だから」


ルナが言いにくそうに言ってるわ、きっとこの後帰ってこれないんだわ、あたしはルナを抱きしめました、帰ってこれないのならあたしたちも行かなくちゃダメよね。


「あなたの気持ちは分かったわ、光準備をしましょ」

「「え!?」」


ふたりが驚いてるわ、同じような仕草でね、あたしたちは、ルナと血は繋がってないけど、仲良く暮らしてきた、心配で反対してるのだもの、一緒に行けば解決よ。
ふたりにそう言って、あたしたちは準備を始めたわ、もちろんユイには既に言ってある、数日前からルナはソワソワしていたのよ。


「気を付けてくださいね」

「ありがとユイ、じゃあ行ってくるわね」


あたしが孤児院の扉に手を掛けると、外側からノブを回して入って来た人がいたの、その人はこの街の領主でした、あたしたちは会った事ないけど、一緒にいる騎士さんが見た事あるんです。


「これはこれは、皆さんお揃いですね、ワタクシは領主のシュシュアル・マルコスと申します」


太った領主がフゥフゥ言いながら名乗ったわ、ユイたち子供はなんの用だろうと思ってるけど、あたしと光は違う事を思ってるわ、そしてそれは領主の言葉で明かされたの。


「ゆ、勇者だったんですか!?」

「そうよユイ、でもあたしたちは勇者って言われるほどの事はしてないの、普通の冒険者なのよ」


ユイたちはとても困った顔です、だから言いたくなかったと思っているけど、領主は関係なしに用件を言ってきたわ、あたしたちに戦争に出るようにってね。
あたしは拒否したの、これからルナと旅に出ないといけないのよ、でもそれを聞いて領主は黙ってなかったわ。


「仕方ありませんな、ではこの孤児院は取り壊しです」

「え!?」

「そ、そんな!?」


光とユイが突然の事で戸惑ってる、でも光が領主に殴りかかろうとしたわ、あたしとルナが止めたけど、領主は笑ってるの、どうあってもあたしたちに参加させたいのよ。


「ワタクシもこんな事は言いたくないのです、しかし戦争で勝てる可能性をあげる為にはそれしかない、どうですかな勇者様、力をお借り出来ますよね?」


あたしと光はルナを見たわ、一緒には行けない、そう言おうとしたの、領主もそれが分かったのかニヤニヤしてる、こいつの言いなりになるのは嫌だけどそれしかない、そう思ったの。


「仕方ないわね、わか」

「従う必要は無いわよ、森田さん」


あたしをそう呼ぶのは、ここに召喚された人達だけ、そう思って領主の後ろを見たの、そこには久しぶりに会う人達がいたわ。
どうしてここにとか、色々考えて頭が追いつかない、でもね織田が前と違うの、領主の前に堂々と立ち腰に手を置いて睨んでる、あたしの知ってる織田委員長じゃないわよ。


「い、委員長・・・どうしてここに」

「そんな事良いじゃない坂崎君、兎に角こいつの言う事は聞かなくて良いわ、あなた達は私と行くのよ」


結局ルナの行きたい所にいけないじゃないって突っ込みたいけど、それを今言うと収集がつきそうもないので黙っています、織田委員長なら話せば分かってくれるわ、でも領主はダメみたいよ。


「ゆ、許さんぞ!きさま何者だ」

「あら、私を知らないの?そちらの二人を知ってるのに?」


織田が不思議そう、でもすぐに名乗ったから領主はびっくりしてるわ、だって戦争の相手だものね。
それが分かって騎士たちが剣を抜こうとしたわ、でもすぐに委員長が止めたの。


「あなた達に勝ち目はないわ、外を見てみなさい」


領主たちが外を見ると、そこには冒険者たちがいました、しかもモンスターと一緒です、あたしでも知ってるスライムに似てるわ。
領主たちもそれを見て汗が止まらなくなってる、相当まずい状況だと感じてるのね。


「分かったでしょ?ここで争ったら私たちが得なの、それを黙ってあげるんだからあなたも引きなさいよ」

「ぐっ・・・しかしここはワタクシの領地、そしてそいつらは住民なのだ、このボロ屋を壊しても何も問題はない」


嫌がらせの様に領主が言ってきました、あたしはしまったとか思ったんだけど、委員長は違うみたい、ユイを見て街を出る事を提案してきたの、もちろん費用は全部出してくれるそうです。


「そ、そんな事許さんぞ!」

「あなたには決定権はないわ、彼女たちが決める事・・・っと言っても、もう決まってるわよね」


このままここにいると、また領主に何かされます、それならばとユイたちは出る事を望んだの、あたしもその方が良いと思ったわ。
それを聞いて領主はさすがに許せなかったみたい、騎士たちに言って剣を抜かせたわ、でもその瞬間、冒険者たちがなだれ込んできて取り押さえた、凄く早かったわ。


「は、放さんかきさま!」

「バカねあなた、あんな簡単な挑発に乗るなんてね、でも良かったわ、これで良い報告が出来る」


独り言を言いながら領主たちを外に出すのを見てる委員長は、どこから見ても勇者でした、ユイもすごくキラキラした目をしてるわ、あたしたちとは大違いね。


「さぁ行きましょ」

「あ、あの織田さん、あたしたち他に行く所があるんです、助けてもらったのに申し訳ないんだけど」


あたしのそんな言葉が意外だったみたいで、委員長はびっくりした顔で止まってしまったわ、ごめんなさいってもう一度言ったの、そうしたらね、断られたから驚いてるんじゃないようなの、あたしの言葉使いが丁寧だったから驚いたって言ってきたわ。


「あ、あたしだって本気を出せばこんなモノよ」

「ふふ、そうね本気を出そうとしなかっただけよね・・・でも、いけないって、どこに行こうとしてるのかしら?」


そう言えば、あたしも光も聞いてなかったとルナを見ます、そして目的地を口にされ、あたしと光は反対したんですよ、だって魔族の大陸だったのよ。


「何でですか母さん、さっきは良いって」

「だって、そんな危険な場所とは知らなかったからよ、そうよね光」

「そうだぞルナ、さすがに魔族の本拠地となるとダメだ、俺たちがいてもさすがに危険だ」


大人になったルナは、あたしや光の訓練でそこそこの強さよ、自分の身は守れるわ、でもそれは普通の場所の話で、周りが全て敵とか反対するのは当然よ。


「じゃあ私たちと一緒に行きましょ、丁度魔族の領地に行く所なの、ここはついでに潰しに寄っただけ」

「「「え!?」」」


委員長たちもだとは思わず、3人で声を揃えちゃったわ、委員長の話では、魔王が平和の為に話し合いを持ち込んで来たらしいわ、それに応じる為に移動中みたい。
罠じゃないのかと聞くと、委員長はそれでも行くと言ってきたわ、その可能性は薄いそうだけどね。


「私たちは勘違いをしていたの、ほんとに倒さないといけないのは魔族じゃない、ハイヒューマンなのよ、あいつらはそれだけの事をしてる、だからより強い者を味方に付けたい、だから行くのよ」


委員長はすごく真剣ね、それに怒ってもいるみたい、きっとここに召喚された事が原因かもしれないわ、あたしと光は渋々賛成しました、もちろんあたしたちも同行するわ。
アルテナ国の兵士にユイたちを任せ、手を振って別れました、帰ってきたらあの国に戻ることになりそうね。
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