上 下
77 / 86
4章 繁盛

76話 邪魔者排除

しおりを挟む
「ワーチズさん、これはどうすれば」

「それはあそこの棚ねシャンサ」

「ワーチズさん、この瓶は」


我は今、すごくしょんぼりと隅っこで作業をしている、それと言うのも子供たちが我には聞かず、全ての作業をワーチズに聞いて行っているのだ、我の方が詳しいのになのだよ。
ワーチズも分からない事を聞かれると、ワーチズが我の所に来る、丁度来たので言ってやったのだ。


「何故我は嫌われているのだ、こんなに愛しているのに、どうしてなのだワーチズよ」


ワーチズがそれを聞き、後ろに下がって行った、そしてたまにシンジ様がする顔をしていた、凄く嫌そうな顔だ。


「あのねフェンデル、その顔をするからよ、正直気持ち悪いわ」

「なぬっ!?」


笑顔をしただけで気持ち悪いと言われてしまった、そう言えば最愛のメムにも言われた気がする、あれは照れ隠しであろうがひどいではないか。


「普通の顔をしてなさい、そうすればあの子たちも・・・その内仲良くなれるわ・・・たぶん」


途中途中顔を逸らして言っている、それほど自信がない程なのかと我はショックだ、しかし作業が進まないのは困る、不本意だが食事をテーブルに並べて呼ぶ時、普通程の笑顔をした、子供たちもそれを見て戸惑いながらも席に着いたよ。
ワーチズを見たら、親指を立てていた、やれば出来るとでも思っているのかもしれない、ワーチズにお礼とばかりに笑顔をして見せた、顔を逸らされてしまった。


「まだまだ出来ていないと言う事か、先は長そうだな・・・皆聞いてほしい、我らは人手がもっと欲しいのだ、今日行った作業が出来る者を集めてくれ、報酬はこの袋に入っている食料だ」


シンジ様の作った大きな袋を収納魔法から幾つも出し中を見せた、皆驚いているが今日ずっと魔法から出していた、誰も見ていなかったのかとツッコミたいがそれは後だ。
袋を縛り答えを待つと了承してくれたのだ、笑顔がこんなにダメなのかと自分にツッコんだよ。


「ねぇフェンデル・・・ほんとに平気なの?」


大きな袋を持った子供たちを見送り、その時ワーチズが我に聞いてきたのだ、子供たちの報酬を心配しているのではない、タダでそんな事をしても誰も来ないと思っているのだ、そこは今から我の行動で変わるのだよ。
ワーチズに後は任せ、我の向かう先は住宅の並ぶ道だ、そこでドアを叩き挨拶をする、そこで少ないが食料を渡し、明日から栄養剤をタダで提供する事を話したのだ、もちろん普通の笑顔でな。


「ほ、ほんとにタダなのかい?」

「そうですよマダム、今日の様にパンも帰りに包みましょう、手伝っていただけるのでしたらスープも作れます、ぜひ来て下さい」


紳士のお辞儀をしてその場を離れた、女性は嬉しそうにしてくれた、その後に訪れた家でも喜んでくれたのだ、タダが怖いのならば、先にタダの物を提供して慣らせれば良いのだ、我は疲れ知らずのビリムヴァンパイア、ここで存分に働くのだ。


「お客さんお帰り、お食事は」

「止めて下さい!」


宿に帰ると亭主が受付に座っていた、食事を取るのか外で食べて来たのかと聞こうとしたんだろう、しかしそこで横の食堂に通じる通路から女性の叫ぶ声がした、亭主は我に頭を下げて食堂に走って行ったのだ、我も気になって後に続いたが、そこには酔っぱらった冒険者風の男に少女が手を掴まれていた、他にも4人もの男が笑って見ている。


「これは許せんな」


子供には優しくせねばならない、我は男たちを蹴散らした、もちろん手加減はしたぞ、亭主と少女からお礼を言われた、お礼をしたいと言われたのだが些細な事なので断った、しかし亭主たちは引かなかったので、明日の診療所に来てくれるようにお願いした、もちろん亭主たちの知り合いにも宣伝を頼んだ、これで広まるのは早いだろう。
明日は忙しくなる、そう思い我はシンジ様に定時連絡のメッセージを空に見せたのだ、こうすると空に飛んでいるスライム何とか?というモンスターがシンジ様に知らせてくれるらしい。


「さて、これで良いのだな、お次は」


明日の邪魔になりそうなやつの動向を探り我の夜は明けた、昼に貴族の治療をしている医者たちが来るそうだ。
我はワーチズの診療所に予定通りの時間に到着し、集まっていた子供たちとワーチズに食事を作った、皆とても喜んでくれた。


「フェンデル、いただきますってなんなのさ」

「ワーチズ、それは我の故郷での祈りなのだ、我が提供しているのだ、皆にも祈ってから食してほしい」


食事の前に頼んだのだ、良く分からず祈ってくれたが、子供と違いワーチズは気になっていたのだろう、これからは普通に言ってくれると約束をしてくれた、食事を我が作った時だけの仕様だな。
そして開業してかなりの人数の患者たちが押し寄せ、何とかさばいていると、予定していた奴らが来た、薬を寄こせと言ってきているのだ、我は拒否したよ。


「な、何故断るのだ!?無料で与えているのだろう、平民に使っているのに貴族はダメとは、処罰されてもいいのか!」

「貴族たちには必要ないならだ、おヌシたちも医者なら分かるだろう、貴族たちは金を払い魔法で治せばいいのだよ、我たちはそれが出来ない弱き者たちを助けている、だから拒否している」


聞いている者たちが大勢いる、それなのにこやつらは言ってきたのだ、それならばと我も言ってやった、医者たちは貴族に与える時、自分たちの手柄にしようとしているのだ、そんな者の為の薬は無い、そう言ってやった、医者たちはかなり悪い立場を感じ去って行ったよ。


「やるわねフェンデル、あたし胸がスカッとしたよ」


ワーチズが背中を叩いてきた、これくらいは誰でも出来るだろう、仕返しを考える医者たちの対処が出来ないのが問題だ、誰もそれが出来ないだけなのだよ、我なら出来るから言ってやった。


「この後、恐らく力ずくで来るぞワーチズ、その時被害が出ないようにしたい、ちょっと耳を貸せ」


これからの作戦をワーチズに話した、それを聞きワーチズは黒い笑顔を見せたよ、我の作戦は、成功した事を食事屋で全員で祝う事だ、そして診療所を空にして盗人に薬を奪わせる、ワーチズの診療所にはそれほど薬はない、盗人どもは全ての薬を奪っていくだろう、そして医者たちは何も知らずに薬を使う、それが原因で体調不良になるとも知らずにな。


「貴族たちは魔法で治るけど、医者たちの責任は重いから処罰されるんだね、良い気味だよ」

「ああ、ワーチズの診療所に薬が無かったのが幸いした」


ワーチズに頭を叩かれたがほんとの事だ、金もなかったから仕方ないが、ほんとに悲惨だったのだ、昼の治療に数名の怪しい奴はいた、恐らく下見をしていたのだろう、我が見てるとも知らず、普通に治療を受け去って行った。
その夜は楽しかった、子供たちと仲良くなれて楽しく会話をしたのだ、ワーチズも嬉しそうだった、そして我たちが診療所に帰ると、予定通り扉が壊され荒らされていた。


「バカだねあいつら」

「欲をかくとダメなのだ、皆もそれを学ぶんだぞ」

「は~い」


我が抱っこしている少女のキメスに告げた、腕に乗ってくれて我はとても至福なのだ、そしてみんなで掃除をして解散した、あいつらは今頃、貴族に手紙でも書いている事だろう、それか自分にも打っているかもしれない、あの毒は直ぐには効果が出ない、だから分かるのは相当後だ。


「その間に我たちは摂取を終わらせる、奴らが気づくころには終わっているのだ」

「さすがというか・・・フェンデルって何者なの?」


ワーチズにはいつか言う時が来るかもしれない、戦場の火がここにも来たらの話だが、ないわけではない。
我は少し困った笑顔を見せ「内緒だ」と告げた、いつか言えたらいいな。

それから10日後、奴らが奴隷落ちしたと噂が流れ、フラフラになって診療所を訪れる貴族たちが現れだしたのだ、もちろんそ奴らは治すぞ、戦いを止めろと言う我の要望を聞けばな。
しおりを挟む

処理中です...